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帰省、はじめて犬を迎えた人はどうしている?

公開日 2023年12月2日|文=mofuwa編集部

明るい居間で、床に置いた敷き物の上に淡い色の犬が落ち着いて寝そべっている
その子にとって帰省は、行き先が増えることではなく、寝る場所が入れ替わることです。写真:Rachel Claire/Pexels

帰省の初日、実家の居間で犬が一晩じゅう立ったままだった、という話をよく聞きます。昼のあいだは人が多くて平気そうだったのに、夜、みんなが寝室に上がって電気が消えたところから動かなくなる。ペット連れの帰省が初めてだと、これが心配していい変化なのかどうかも分かりません。初めての帰省は、その子にとっては初めての外泊です。移動した距離ではなく、眠る場所が入れ替わったことのほうが大きい。だからこの記事は、なぜそうなるのかを先に書いて、そのあとに手順を置きます。やることは、実家へ持っていくものを、出発の1週間前から家の中で先に使って寝てみることだけです。

初めての帰省は、その子の初めての外泊です|変わるのは行き先ではなく、毎日の寝る場所

犬の毎日は、時計ではできていません。同じものが同じ順番で並んでいる、という形でできています。朝、いちばんに置かれる器。散歩から戻って足をふく場所。夜、人がテレビを消してから電気が落ちるまでの手順。寝床の布に、自分のにおいがついていること。この並びが毎日くり返されているので、その子は次に何が起きるかを知っていられます。

ペット連れの帰省で崩れるのは、この並びのうちのいくつかです。昼のあいだは人が多く、声も動きも多いので、崩れていることが表に出ません。問題は夜です。人が寝室へ上がり、家の音が止まった時点で、床の感触も、においも、光の入り方も、全部が知らないものだと分かります。初めての帰省でその子が立ったまま動かなくなるのは、たいていこの時間です。

はじめて犬を迎えた人にとって、いちばん困るのはここから先です。震えている、寝ない、ごはんを残す。それが初めての外泊としてよくあることなのか、心配して連れ帰るべきことなのか、比べる相手がいません。飼って何年もたっていれば「去年もこうだった」と言えますが、初めてなら手持ちの記録がゼロです。基準を持っていないことは、経験が足りないという話ではなく、単に比較できる過去がないという話です。

帰省で入れ替わるものと、持っていけるもの
その子の毎日にあるもの帰省で入れ替わるか持っていけるか
寝床の布・毛布入れ替わる(実家の物になりがち)持っていける。いちばん効く1枚
食器と水の器入れ替わる持っていける。ペット用の器をそのまま
床の感触入れ替わる(畳・カーペット)持っていけない
家族以外の人の声と足音増える持っていけない
夜、電気が消えるまでの順番入れ替わる人の側で近づけられる
自分のにおい薄くなる布に載せて持っていける

この表で目を止めてほしいのは、いちばん下の行です。持っていけるもののうち、その子の側にとって意味が大きいのは「自分のにおいがついた布」1枚だからです。床の感触や人の声は変えられません。でも、知らない床の上に、知っているにおいの面を1枚置くことはできます。初めての外泊で足がかりになるのは、そこです。

Note新品を用意すると、いちばん効くものが消えます

帰省の前に新しいベッドやブランケットを買いたくなりますが、新品にはその子のにおいがまだ載っていません。実家に着いて広げた瞬間は、床と同じで「知らないもの」です。ペット連れの帰省で持っていくなら、いま使っていて、少し毛がついている布のほうが役に立ちます。買うなら1週間以上前に買って、家で使ってから持っていってください。

持っていくものを、家の中で先に使って寝てみる|帰省の1週間前から始める手順

やることは1つです。実家へ持っていくものを先に決めて、その物だけで、家の中で1週間寝かせる。初めての帰省を、当日にいきなり始めないための手順です。犬の側から見ると、実家で広げられる布が「今週ずっと寝ていた布」になります。次の5つを順に進めてください。

  1. 1日目:持っていくものを3つだけ決める

    布を1枚、器を1つ、かじれるものを1つ。3つより多くしないでください。荷物の量の問題ではなく、実家で人が置き忘れる確率の問題です。ペット用の器はふだん使っているものをそのまま抜いてきます。ここで新品を混ぜないこと。決めた3つは、その日から家の定位置に戻します。

  2. 2日目から:決めた布だけで寝かせる。ほかの寝床は片づける

    いま複数の場所で寝ているなら、その週だけ布を1枚に絞ります。この布は、帰省が終わるまで洗いません。においが載っていることが、この手順のほとんどすべてです。毛やほこりが気になるときは、粘着ローラーで表面を取るだけにしてください。

  3. 3日目:家の中で、寝る部屋を1回だけ動かす

    同じ布を持って、ふだん寝ていない部屋の床に敷きます。廊下でも、洗面所の前でもかまいません。これが「場所は変わるが、布は同じ」という経験そのものです。この日にうまく寝られなくても、失敗ではありません。動かすのは1回だけ、時間は夜のひと晩でなくてよく、30分横になれたら十分です。

  4. 5日目:布を持って、床材の違う場所で15分過ごす

    玄関の上がり口、ベランダ、フローリングではない部屋。実家の床は畳かカーペットのことが多いので、家の中でいちばん感触の違う場所を選びます。布を敷いて、その上でおやつを1つ渡すところまで。ここでも長くしません。15分で切り上げて、いつもの場所に戻します。

  5. 7日目:荷物をまとめる。布はいちばん上に入れる

    3つを紙袋か布袋に入れます。布は畳んでいちばん上へ。実家に着いたとき、玄関で最初に取り出すのがこの1枚になるからです。ペットシーツや食べ物は下でかまいません。当日の朝に探すものがない状態にしておくと、人の側の余裕がそのままその子の側に回ります。

実家に着いてからの順番も、ここで決めておきます。最初にやるのは、荷ほどきでも挨拶でもなく、布を床に敷くことです。その子を降ろす前に、居間の隅か、人が座らない壁ぎわに1枚敷きます。次に器を置いて、水だけ入れる。ここまでを2分で終えてから、その子を室内に入れてください。初めての帰省で最初に触れる面が、1週間寝ていた布になります。

Point布を敷く場所は「壁ぎわで、人が通らないところ」

実家の居間は、家にいるときより人の動きが多い部屋です。部屋の真ん中に敷くと、その子は四方から人が来る場所で休むことになります。壁が背中側にあって、出入口が見える位置を選んでください。ペット連れの帰省では、この置き場所を最初に決めてしまうと、そのあと家族に説明する回数も減ります。

3日目でつまずくのはよくあることです|同じ布で寝かせる頻度を上げないほうがいい理由

この1週間で、ほとんどの人が同じ場所でつまずきます。3日目、部屋を動かした夜に寝ない。そこで多くの人が考えるのが「回数を増やして慣れさせよう」です。初めて犬を迎えた人ほど、うまくいかない日をその日のうちに取り返そうとします。けれど、ここで頻度を上げると逆へ進みます。

動かす回数を増やすと、その子の側では「布を持って移動すること自体が、落ち着けない合図」になります。1週間の手順の目的は、場所に慣らすことではなく、布と眠りを結びつけることです。頻度を上げて場所を何度も変えると、結びつく相手が布ではなく移動のほうになります。場所を動かすのは1週間に1回、床材を変えるのも1回。これ以上は増やさないでください。

この1週間でよくあるつまずきと、そのときにやること
つまずきそのとき起きていることやること
3日目、別の部屋で寝ない布と眠りがまだ結びついていない30分横になれたら戻す。頻度は上げない
布のにおいが気になって洗いたくなる手順の中身そのものを外そうとしている粘着ローラーで表面だけ取る
別の毛布のほうを気に入っている持っていく1枚を決め直す機会その毛布に差し替えて、残り日数で寝かせる
5日目、床材の違う場所で固まる感触の差が大きすぎる15分を5分に短くする。翌日はやらない
実家が新しいベッドを用意してくれた善意の側が先に動いている両方置いて、その子が選ぶほうに任せる
1週間前から始められなかった日数が足りないだけで、手順は同じ3日でも布を1枚に絞ることを優先する

実家が新しいベッドを用意してくれていた、という場面は本当によくあります。ここで断るのは気まずいので、両方を並べて置いて、その子に選ばせるのがいちばん角が立ちません。ほとんどの子は、初めての外泊の初日には、においのついた側を選びます。それを見てもらえれば、次の帰省では説明が要らなくなります。ペット連れの帰省は、その子だけでなく、迎える側にとっても初めてのことだからです。

頻度の話をもう1つ。実家では、洗う手を増やさないでください。他人の家の風呂場を借りて洗うと、乾かしきるまでの時間と場所が確保できません。畳やカーペットの上で半乾きのまま過ごすことになるほうが、その子にとって負担になります。洗わない日のケアに寄せて、グルーミングスプレーを布に含ませ、足先と口のまわりだけをその日1回ふくくらいで十分です。実家にいるあいだの毎日は、増やすのではなく減らす方向で組んでください。

Caution「慣れさせるため」に、初日から長く放っておかないでください

初めての帰省で、その子を居間に1頭だけ置いて人が寝室へ上がる、という形にすると、知らない床・知らないにおい・知らない静けさが同時に来ます。可能なら初日だけは、人が寝る部屋の床に布を敷いてください。翌日からは居間に戻せます。1日目に無理をさせないことは甘やかしではなく、2日目以降を楽にするための順番です。

実家で出た変化のうち、家でできることはどこまでか

帰省中に出る変化には、家でできることで届く範囲と、そうでない範囲があります。初めて犬を迎えた人は、この線を持っていないので、全部を自分の手でどうにかしようとしがちです。先に分けておきます。

見るときは、数で見てください。「あまり食べない」ではなく「いつもの半分を2回続けて残した」。「元気がない」ではなく「散歩に出ても10分で座り込んだ」。初めての帰省では比べる過去がないので、その場で数字にしておくことが、そのまま次回の基準になります。スマートフォンのメモに1日1行で足ります。この1行は、帰省から戻ったあとの数日にも続けてください。戻ってから何日で元の並びに戻るかが、次のペット連れの帰省での予測になります。

Caution早めに動物病院へ相談したほうがいいとき

下痢や嘔吐が続く、まる1日ほとんど水を飲まない、呼吸が速い状態が続く、足を引きずる、同じ場所をなめ続けて地肌が見えている、日中もずっと震えている、丸1日ほとんど食べない。帰省の途中でこれらが出たときは、家に帰るまで待たずに、その土地の動物病院にご相談ください。初めての帰省では「移動で疲れただけ」と考えたくなりますが、はじめて犬を迎えた人ほど、迷ったら早いほうを選んで問題ありません。出発前に、実家の近くで診てもらえる場所を1つ調べておくと、その判断が軽くなります。

戻ってきてからのことも書いておきます。持っていった布は、家に着いてもすぐには洗わないでください。その布には、家のにおいと実家のにおいが両方載っています。数日そのまま使って、いつもの並びが戻ってから洗うほうが、切り替えがなだらかになります。器も同じで、帰った日に急いで元の位置へ戻さなくてかまいません。

最後にもう一度。初めての帰省で、その子の側に起きているのは初めての外泊です。人にとっては年に何度もある移動でも、犬にとっては眠る場所が初めて入れ替わる日です。だから準備の中心は、荷物の量でも移動の手段でもなく、持っていく1枚の布を家で先に寝かせておくことになります。1週間かけて用意できるのは、その子にとって「知っている面」を1枚つくることだけです。それが、知らない床の上でいちばん効きます。

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よくある質問

実家に着いた初日の夜、まったく寝ようとしません。どうすればいいですか。
布を敷いた場所を、人が寝る部屋の床に移してみてください。初めての外泊では、知らない床と知らない静けさが同時に来ています。人の呼吸の音が聞こえる位置に布があるだけで、横になれることがあります。声をかけ続けたり、抱き上げて連れ歩いたりはしないでください。動きが増えるほど、眠りに入る合図から遠ざかります。翌日からは居間へ戻して構いません。
準備を思い出したのが出発の3日前でした。いまからでも間に合いますか。
間に合います。日数が足りないときは、手順を減らさずに順番を変えてください。優先するのは「寝床の布を1枚に絞って、その布だけで寝かせる」ことです。部屋を動かす日と床材を変える日は省いてかまいません。3日でも、その子のにおいは布に載ります。ペット連れの帰省で持っていく1枚が、家で寝ていた布であることのほうが先です。
帰省から戻ったあと、同じ布はいつまで使えばいいですか。
少なくとも、ごはんの量と寝る時刻がいつもどおりに戻るまでは、そのまま使ってください。目安は3日から1週間です。洗うのはそのあとで、洗ったあとに落ち着かないようなら、次の帰省まではその布を寝床の定位置に置いておきます。初めての帰省で使った1枚は、2回目以降も同じ役割を持たせられます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。