C05犬種・猫種別ケア
ボーダーコリーのダブルコート|毛玉を毎日のケアで防ぐ
合図を出す前に足元へ来て、そのまま座って、こちらの手元をじっと見ています。ボーダーコリーと暮らしていると、1日に何度もこの姿勢を見ます。羊を動かす仕事の犬は、走る時間と同じくらい、指示を待って止まっている時間を持っています。家の中でもそれは変わりません。そして座るたびに、尾と後ろ脚の長い飾り毛は、体と床のあいだに畳まれます。毛玉は、この「触れている場所」ごとに、できかたが分かれます。歩いているときにこすれてできる毛玉と、座っているあいだ押さえられてできる毛玉。前者は毛先の側に、後者は根元の側にできます。この記事では、その2つを並べて、どちらに手を入れる日なのかを見分けるところまで書きます。
指示を待つあいだ、ボーダーコリーは座っています|飾り毛が床につく時間
ボーダーコリーの被毛は、体幹と四肢で長さが違います。背中と体側の毛は体の線に沿って寝ていて、指を入れるとすぐ下毛の層に届きます。いっぽう尾、後ろ脚の裏、胸、耳のうしろには、長い飾り毛が伸びます。この飾り毛は体幹の毛より細く、まっすぐで、風にも手にもよく動きます。ダブルコートの下毛は全身にありますが、その上に乗っている毛の長さが、場所によって大きく違うということです。
ここに、この犬種の一日の過ごし方が重なります。羊を動かす仕事は、走りっぱなしではありません。指示を待つあいだ、伏せるか座るかして止まっている時間が、走っている時間と同じくらいあります。家の中でも同じで、呼ばれて足元まで来て、次の合図を待って座る。ドアの前で座る。食事の支度を見て座る。ボーダーコリーは、待つ姿勢を自分から取る犬です。1日の合計にすると、座っている時間はかなりの長さになります。
座ると何が起きるか。尾は体の横か下へ回り込み、後ろ脚の飾り毛は腿の裏からかかとにかけて、床と体のあいだに挟まれます。そこには体重がかかります。歩いているときのように毛が動くわけではなく、同じ形のまま、しばらく押さえられ続けます。立ち上がった瞬間に毛は戻りますが、押さえられていたあいだに毛どうしが噛み合った場所は、そのまま残ります。
つまりボーダーコリーの毛玉は、1種類ではありません。動いているときにこすれてできる毛玉と、止まっているあいだ押さえられてできる毛玉があります。この2つは、できる場所も、できる深さも、気づくまでの時間も違います。ブラッシングをしているのに毛玉が出てくる、という時間の多くは、片方の場所にしか手が入っていないことから生まれます。
- 飾り毛は尾・後ろ脚の裏・胸・耳のうしろ:体幹より長く、細く、絡みやすい毛です
- 座る回数が多い:待つ姿勢を自分から取るので、押さえられる時間が積み上がります
- 座ると尾が体の下へ回る:尾の下面は、立っているときには触れない面です
- 後ろ脚の裏が床に接する:かかとから腿の裏までが、接地の面になります
- 換毛期に抜けた毛が出られない:押さえられている場所では、抜けた下毛が外へ運ばれません
飾り毛の長さだけを理由にすると、答えは「短く切る」しか残りません。ここで見たいのは長さではなく、その毛が1日のうちどれだけの時間、どんな力で押さえられているかのほうです。同じ長さの飾り毛でも、座る時間が短い子と長い子では、根元の側の状態が変わります。ボーダーコリーで毛玉を考えるときは、被毛の長さと、その子の姿勢の癖を、いつも一緒に見てください。
歩いているときに触れる場所と、座ったときに触れる場所|毛玉のできかたを比較する
2つの毛玉を、同じ項目で並べます。比較するのは大きさでも数でもなく、どんな力がかかっているか、どの深さにできるか、いつ気づけるかです。力のかかり方が違うので、手の入れ方もそこで分かれます。
歩いているときにできる毛玉は、摩擦から生まれます。前脚の内側、脇、胸の下、そしてハーネスや首輪の当たる体側。毛が動きながらこすれるので、動く側の毛先どうしが先に噛み合います。できるのは毛先の側で、数日で束になります。ブラッシングをすると毛先で道具が引っかかるので、気づくのは早いほうです。
座ったときにできる毛玉は、圧から生まれます。尾のつけ根と尾の下面、後ろ脚の飾り毛の裏、座骨のまわり。毛は動かないまま、同じ向きに折られて押さえられ続けるので、折れ目のできる根元の側から噛み合います。数週間かけて育ち、しかも座っている姿勢のままでは見えません。ボーダーコリーの毛玉で気づくのが遅れるのは、ほとんどがこちら側です。
| 歩いているときに触れる場所 | 座ったときに触れる場所 | |
|---|---|---|
| かかる力 | 動きながらの摩擦 | 止まったままの圧 |
| 場所 | 前脚の内側、脇、胸の下、体側 | 尾のつけ根と尾の下面、後ろ脚の裏 |
| できる深さ | 毛先の側。先に毛先が束になる | 根元の側。折れ目から噛み合う |
| 育つ速さ | 数日 | 数週間 |
| 気づき方 | ブラシが毛先で引っかかる | 立たせて持ち上げるまで見えない |
| 換毛期の影響 | 抜けた毛が毛先に絡む | 抜けた毛が押さえられて出られない |
| 手の入れ方 | 毛先からほどいて、根元へ向かう | 体勢を変えさせてから、根元の側だけ |
この2つには、気づける順番があります。歩く側の毛玉は自分から手に当たってきますが、座る側の毛玉は、こちらが姿勢を変えさせないと存在ごと隠れています。毎日ブラッシングをしていて毛玉がないと思っていた場所に、ある日いきなり硬い塊が見つかる。ボーダーコリーでよく起きるこの順番は、道具や回数の問題ではなく、犬が座ったままケアを受けていることから来ています。
落ち着いている姿勢のほうがやりやすいので、座ったままブラシを入れるのは自然なことです。ただ、その姿勢のとき、尾の下面と後ろ脚の裏は床と体のあいだにあります。そこはブラシが入らないだけでなく、目でも見えません。毎日のケアの中に「一度立たせる」を1回だけ足してください。全部を立たせてやる必要はなく、最後の30秒を立たせるだけで、届く場所が2つ増えます。
毛先の絡みか、根元の押しつぶれか|どっちの毛玉かを立たせて確かめる
見分ける作業は、立たせた状態でしかできません。座っている姿勢は、確かめたい場所をそのまま隠してしまうからです。おやつを持つ手で軽く前へ誘導して立たせ、支えながら片手で確かめます。1か所につき20秒ほどで済みます。次の順で回してください。
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立たせて、体側と前脚の内側にブラシを一度通す
まず歩く側を見ます。毛先で引っかかるなら、こすれてできた毛玉です。この段階では根元の側は分かりません。引っかからなかったからといって、座る側までなにもない、という意味にはなりません。ボーダーコリーは体側の毛が寝ているので、ここは比較的通りやすい場所です。
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尾を持ち上げて、尾の下面を見る
立っているときには体の後ろへ流れているので、尾の下面は視界に入りません。座ったときにだけ体と床のあいだに来る面が、ここです。指で毛を分けて、根元から数センチのところに硬い部分がないかを見てください。ボーダーコリーの尾は飾り毛が長いので、毛先だけ見て判断すると見落とします。
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後ろ脚の裏を、かかとから腿へ向かって指で上げていく
毛の流れと逆に、指を根元へ向かって滑らせます。途中で押し返される場所、指が止まる場所を探してください。止まった場所の毛を1本つまんで送ると、折れ目のついた毛が指の中で引っかかります。折れているなら、それは押さえられてできた側です。
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見つけた塊をつまんで、硬いのが毛先か根元かを確かめる
つまんだまま少し引くと、動く場所と動かない場所が分かります。毛先だけが束で、根元が動くなら歩く側。根元が硬くて、毛先はばらけているなら座る側です。両方が硬いときは、時間が経っています。その日は無理にほどかず、まず外側の毛先からだけ手をつけてください。
| 確かめたこと | その日にやること |
|---|---|
| 体側で毛先が引っかかる | 毛先からほどく。根元には入らない |
| 尾の下面の根元が硬い | 尾を持ち上げたまま、根元の側だけ |
| 後ろ脚の裏で指が止まる | 立たせて、層を1枚出すぶんだけ |
| どこも指が通る | その日は毛先を流すだけで足ります |
| 塊が硬く、皮膚が引っぱられる | その場で止めて、日を分けます |
確かめた結果は、その日にやることを1つに絞るために使います。両方の毛玉があるからといって、同じ日に全身へ両方の手を入れる必要はありません。ボーダーコリーは動きたい犬なので、長く押さえられること自体を嫌がります。今日は尾の下面だけ、明日は後ろ脚の裏だけ、と場所を分けたほうが、結果として全部が回ります。
立たせてから入る|乾いた時期に毛玉が増えるボーダーコリーの毎日のケア
ここからは毎日のケアの話です。3つ挙げますが、3つとも毎日やること、にはしていません。1回のブラッシングの中で決めることが1つ、週の単位で決めることが1つ、部屋の側で1度だけ決めることが1つ。決める単位をずらしてあるので、忙しい週でも全部が同時に止まりません。
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1回のブラッシングの最後に、30秒だけ立たせる
座ったままでも、体側と背中には手が届きます。足りないのは、最後の30秒だけです。立たせて、尾を持ち上げて、後ろ脚の裏へ一度手を入れる。ここまでを1回のケアの形として固定してください。時間を足すのではなく、姿勢を1回変えるだけです。ボーダーコリーは合図に応えるのが得意な犬なので、立つことそのものは覚えます。
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週に2〜3回、根元の側にだけ層を1枚出して入る
毛先をほどくのは毎日でも構いませんが、根元の側は毎日いじる場所ではありません。指で毛を分けて地肌の見える線を1本つくり、その線のまわりだけに道具を通します。終わったら線を数センチ移して、また同じことをする。3〜4回くり返せば、尾の下面か後ろ脚の裏のどちらかが終わります。換毛期はこれを週4〜5回に増やしますが、1回を長くはしません。
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待つ場所の床を、1つだけ替えてみる
毛玉のできる場所は、その子がどこでどれだけ座るかで決まります。いつも待っている場所の床が毛足の長いラグなら、飾り毛はそこへ入り込んだまま押さえられます。その一枚を目の細かいマットに替えるだけで、接地の条件が変わります。家じゅうを替える必要はありません。いちばん長く座っている場所を1か所だけ選んでください。
時期の話も入れておきます。冬の乾いた室内では、飾り毛のような細くて長い毛ほど静電気が起きやすく、毛先どうしが寄ります。寄ったところへ座る時間が重なると、根元の側の毛玉が育つ速さが上がります。換毛期と乾いた時期が重なる季節の変わり目は、回数を数回ぶん増やす時期だと決めておくと、あとから慌てずに済みます。うるおいが足りない時期は、ブラシを強く当てるほど毛先が傷むので、力ではなく回数で調整してください。
座ってできた毛玉は、根元の側で皮膚に近い場所にあります。そこを引くと、絡んだ毛ではなく皮膚のほうが動きます。ボーダーコリーは我慢する子が多いので、痛くても最後まで立っていることがあります。体をよじる、頭を回して手を見る、耳が後ろへ倒れる。この3つが出たら止めてください。ほどけない塊は、日を分けるか、トリマーに任せるほうが安全です。
毛玉予防ジェルは、いま分けた2つの場所に、それぞれ別の使い方があります。飾り毛の毛先側は、手のひらでのばしてから毛の流れに沿ってなでる。乾いた時期に毛先が寄りにくい状態を続けるための塗り方で、これを続けた週は、ブラシが毛先で止まる回数が減ります。すでに噛み合ってしまった根元の塊には、そこへ直接もみこみます。毛と毛のあいだにジェルが入るとすべりが出て、塊がゆるみます。それでもゆるんでこない塊には、グルーミングスプレーを重ねてもう一度もみこみます。すべりが増えて、指で毛束を分けられるところまで来ます。
この順番が要るのは、毛玉ができたあとに残る選択肢が、ふつうは切ることしかないからです。ボーダーコリーの座る側の毛玉は根元の側にできるので、はさみを入れる位置は、いちばん皮膚に近いところになります。そこを切ると、皮膚まで切ってしまうことがあります。飾り毛は伸びるのに時間がかかるので、切った場所は長いあいだ長さが揃いません。毛玉予防ジェルでゆるめてからほぐすというのは、はさみを持たずに済ませるための手順です。根元にもみこんだ日は、ほぐし終わってから少し歩かせて、湿ったまま座らせないでください。押さえられる場所に湿りが残ると、条件が1つ増えるだけになります。
同じ場所にだけ毛玉が戻るとき|ボーダーコリーで見直したい条件
ここまでは、姿勢と飾り毛の作りで説明のつく毛玉の話でした。立たせて両方に手を入れていても、同じ一か所だけが短い間隔で戻るときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数の話として片づけないほうが安全です。
- 換毛期でもない時期に、急に増えた:季節の区切りと合わない変わり方です
- 左右のどちらか一方だけに戻る:座るときにいつも同じ側へ体重をかけている可能性があります
- 座り方そのものが変わった:片側へ流して座る、立ち上がるのに時間がかかる。毛玉より先に、姿勢のほうを見てください
- その場所を気にしている:なめる、かじる、床にこすりつける。皮膚のほうが先です
- 毛を分けた地肌が赤い、においがある:押さえられて湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、道具を持つ手をその場で止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、立ち上がり方や座り方が変わった、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、ブラッシングの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。ボーダーコリーは動くことが好きなぶん、痛みを見せずに動き続けることがあります。同じ一か所が2回続けて戻った時点で、次のブラッシングを待たずに連れて行って構いません。
相談やトリミングの前には、塊の場所、いつからか、その子が一日のうちどこで長く座っているかの3つをメモしてください。3つ目は忘れられやすいのですが、座る側の毛玉ではいちばん効く情報です。前の晩に無理にほどこうとすると、もとの状態が分からなくなります。硬い塊はそのまま連れて行ってください。
ボーダーコリーと暮らすうえで、待つ姿勢そのものを減らすことはできません。合図を待って止まるのは、この犬種が仕事の中で身につけてきた形だからです。動かせるのは座る回数ではなく、座っているあいだ押さえられていた場所に、立たせてから手が届いているかどうかのほうです。歩く側は毛先から毎日、座る側は根元から週に何度か。触れている場所ごとに手を分ける。ボーダーコリーの毛玉で飼い主の側が変えられるのは、そこです。
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よくある質問
- 座ったままブラッシングしても大丈夫ですか?
- 体側や背中には届きますが、尾の下面と後ろ脚の裏には届きません。その姿勢のとき、その2か所は体と床のあいだにあるからです。最後の30秒だけ立たせて、尾を持ち上げてから手を入れてください。全部を立たせてやる必要はなく、姿勢を1回変えるだけで届く場所が増えます。
- 飾り毛を短く切れば、ボーダーコリーの毛玉は減りますか?
- 毛先どうしが噛み合う量は減りますが、根元の側で押さえられる条件は変わりません。切ったあとも、座っているあいだ体重がかかる場所は同じだからです。長さを変える前に、立たせて根元の側に手が届いているかどうかを先に見てください。切るかどうかは、そのうえで決められます。
- 冬になると毛玉が増えるのはなぜですか?
- 乾いた室内では細くて長い飾り毛ほど静電気で寄りやすく、毛先が噛み合いやすくなります。そこへ座る時間が重なると、根元の側で育つ速さが上がります。ブラシを強く当てるより、1回を短くして回数を増やすほうが、その時期には合っています。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
