C05犬種・猫種別ケア

シェットランドシープドッグのダブルコート|毛玉を毎日のケアで防ぐ

公開日 2024年3月26日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの草の上に、首まわりの毛が長い小型の犬が立っている
首まわりの飾り毛は、冬と夏でボリュームが変わります。毛玉が集中するのは、その入れ替わりの数週間です。

去年の11月に撮ったシェットランドシープドッグの写真と、7月に撮った写真を並べると、首まわりの太さが別の犬のように違います。冬は胸から首にかけての飾り毛が大きく張り出し、夏はそれが落ちて、首の細さがそのまま出ます。同じ子の、同じ場所です。毛玉ができるのは、この2枚の写真のあいだ——冬毛から夏毛へ、夏毛から冬毛へ入れ替わっている数週間に集中します。被毛が安定している時期には、同じブラッシングでほとんどできません。ですから「毎日やっているのに毛玉ができた」のではなく、「時期が変わったのに、やり方が前の時期のままだった」ということが起こります。この記事では、毛が安定している時期と入れ替わっている時期を並べて、同じ手が通用する週と、通用しない週を分けます。

冬のシェットランドシープドッグと、夏のシェットランドシープドッグ|同じ子に見えない被毛

シェットランドシープドッグは、スコットランドの北にあるシェトランド諸島で、羊を追うために作られた犬です。島は風が強く、雨が多く、夏でも気温が上がりきりません。その気候の中で一日じゅう外にいるために、外側の長い上毛と、内側の細かい下毛という二層の被毛を持っています。首から胸にかけての飾り毛、後ろ脚の飾り毛、尾の毛が長いのも、風と雨を受ける面を厚くするためです。

この犬種で目を引くのは、冬と夏で見た目がここまで変わることです。変わっているのは上毛の長さではなく、その内側にある下毛の量です。下毛が詰まっている冬は、上毛が押し上げられて外へ張り出し、首まわりが一回り太く見えます。下毛が抜けきった夏は、同じ長さの上毛が体に沿って寝るので、輪郭が細くなります。写真で別の犬に見えるのは、そのためです。

毛玉が起きるのは、その入れ替わりの最中です。抜けた下毛は、外へ出るまでに長い上毛のあいだを通らなければなりません。通りきれずに留まった綿のような毛が、歩くたび、寝返りを打つたびに上毛と一緒に動かされ、少しずつ撚られていきます。撚られた芯ができると、そこから先は毛先ではなく根元の側で締まります。シェットランドシープドッグの毛玉は、ここから始まります。

逆に言えば、下毛が抜けていない時期には、留まる材料そのものがありません。安定している時期は、週に2〜3回のブラッシングでも毛玉になりません。同じ子、同じ被毛、同じやり方なのに、ある週から急にできるようになる。変わったのは手のかけ方ではなく、体の側で入れ替わりが始まったという事実のほうです。

Note毛が多いからできる、という話ではありません

量のせいにすると、答えは「もっと長くとかす」になってしまいます。ただ、安定している時期に長くとかしても、そもそも留まっている毛がありません。動いているのは量ではなく、抜け始めたかどうかという時期のほうです。1年を通して同じ回数を守るより、入れ替わりが始まった週に気づけるかどうかで差が出ます。

毛が安定している時期と、入れ替わっている時期|シェットランドシープドッグの毛玉が変わる違い

一年を、2つの時期に分けます。被毛が安定している時期と、下毛が入れ替わっている移行期です。この2つは、毛玉のでき方も、ブラッシングでやるべきことも別物です。同じ「毎日のケア」という言葉でまとめてしまうと、移行期に入ってからも安定期のやり方を続けることになります。

安定している時期は、抜ける下毛がわずかです。ブラシの目に残るのは、まっすぐで長い上毛ばかり。この時期のブラッシングは、毛先をそろえて、外から付いた汚れを落とすための時間です。1週間あいても、指で軽くほどける程度の絡みで止まります。むしろ強くとかしすぎると、乾いた日は静電気で毛先が寄って、そちらのほうが傷みます。

移行期は、抜ける下毛が一気に増えます。1回のブラッシングで、手のひらいっぱいの綿のような毛が出てくる。この時期の目的は、留まった下毛を根元の側から外へ出すことに変わります。ここで安定期と同じように全身を薄く1周すると、上毛の面だけが整って、内側の材料はそのまま残ります。2日あけただけで、ほどけない芯ができ始めます。

同じシェットランドシープドッグでも、2つの時期で毛玉のでき方が違う
被毛が安定している時期下毛が入れ替わる移行期
抜ける下毛の量わずか。ブラシに綿が残らない多い。1回で手のひらぶん出る
毛玉ができる場所ほとんどできない首の飾り毛・耳のうしろ・後ろ脚の内側
でき始める速さ1週間あいても指でほどける2日でほどけない芯ができる
ブラッシングの目的毛先をそろえ、汚れを落とす留まった下毛を根元から外へ出す
1回に入れる場所全身をひと通り3か所に絞って、そこだけ
裏目に出ること毎日、強くとかす全身を薄く1周して終わる
続く長さ3〜4か月3〜6週間
同じやり方が通用する週と、通用しない週 シェットランドシープドッグの一年は、被毛が安定している時期と、下毛が入れ替わる移行期が交互に来ます。毛玉が集中するのは移行期だけで、そこだけ手の入れ方が変わります。 移行期は3〜6週間。そこだけ別のやり方になります 12〜2月 安定期(冬毛) 下毛がそろい、抜ける量が少ない 3〜5月 移行期(冬毛から夏毛へ) 下毛がまとめて抜け、毛玉が集中 6〜8月 安定期(夏毛) 飾り毛が落ち、輪郭が細く見える 9〜11月 移行期(夏毛から冬毛へ) 春より長く続く子が多い時期 乾いた日 静電気で毛先が寄る絡み 時期に関係なく起き、毛玉とは別物
毛玉の量ではなく、いま一年のどこにいるかを先に決めてから手を決めます。

取り違えは、両方向で起こります。安定期のやり方を移行期へ持ち込むと、全身1周で終わって、留まった材料が内側に残ります。逆に、移行期のやり方を安定期へ持ち込むと、抜けてもいない下毛を毎日引き出そうとすることになり、毛先と地肌のうるおいのほうが先に削れます。シェットランドシープドッグの毛玉で最初に決めるのは、道具でも回数でもなく、今週がどちらの時期かです。

今週はどちらの時期か|ブラシに残った毛で見るシェットランドシープドッグの見分け方

時期の切り替わりは、カレンダーでは決まりません。その年の気温や、室内で過ごす時間によって前後します。決め手になるのは、ブラシの目に残った毛の質です。量ではなく質を見ます。週に1回、同じ条件で確かめてください。所要は1分もかかりません。

  1. ブラシを1本だけ持って、背中の真ん中を10往復させる

    場所も回数も固定します。毎週おなじ条件にしておかないと、比べたときの差が道具のせいなのか体のせいなのか分かりません。時間ではなく往復の数で決めるのは、その日の気分で長さが変わらないようにするためです。強さは、毛の面をなでる程度で足ります。

  2. ブラシの目から毛を外して、手のひらに広げる

    見るのは質です。まっすぐで長く、指で送ると張りが返る毛ばかりなら、まだ安定期です。そこへ細く縮れた、つまむとつぶれる綿のような毛が混ざり始めたら、移行期の入口に入っています。混ざる割合は、週ごとに増えていきます。

  3. その綿が、手のひらでどれくらいの厚みになるか見る

    薄い膜のように広がる程度なら、まだ入口です。押すと弾力のある塊になるなら、移行期の真ん中です。ここからの3〜6週間が、シェットランドシープドッグの毛玉がいちばん速くできる期間になります。厚みが薄くなってきたら、出口が近いという合図です。

  4. 首の飾り毛の根元を、指2本で軽く挟んで引く

    背中で判断がつかない週は、飾り毛で確かめます。指を離したときに綿のような毛がついてくるなら、その週は首から始める週です。飾り毛は上毛が長いぶん、背中より先に条件がそろいます。首で出て背中で出ない週は、首だけ移行期の手に切り替えれば足ります。

ブラシに残った毛と、その週がどこにいるか
ブラシに残った毛今週の位置と、やること
まっすぐで長い毛だけ安定期。いまのやり方のままで足ります
綿のような毛が、薄く混ざる移行期の入口。場所を絞る準備を始める
綿が塊になって外れる移行期の真ん中。毎日、3か所だけ
綿が減り、また長い毛に戻った移行期の出口。回数を戻してよい時期
Point見た目のボリュームでは、時期が分かりません

上毛の長さは変わらないので、下毛が抜け始めても、外側の輪郭はしばらく同じままです。飾り毛が落ちて見た目が変わったと気づくころには、移行期はもう2〜3週間進んでいます。シェットランドシープドッグの毛玉に間に合うかどうかは、この2〜3週間をブラシの目で先取りできるかで決まります。写真で比べるのは、あとから確かめるためだけにしてください。

安定期の手と、移行期の手|シェットランドシープドッグの毛玉に対する使い分け

時期が決まったら、手を入れ替えます。入れ替えるのは3つ——回数と、入れる場所と、入れる深さです。力の強さだけは、どちらの時期でも変えません。移行期だからといって強くする必要はなく、強くしたぶんだけ毛先と地肌に返ってきます。

  1. 安定期は、回数を増やさず、弱さのほうを守る

    週に2〜3回で足ります。毛先の側から入れて、引っかかったらそこで止め、根元まで一気に下ろさない。この時期に強くとかす習慣がつくと、移行期に入ったとき同じ力で入れてしまいます。乾いた日は静電気で毛先どうしが寄るので、力を足すほど絡みが増えます。うるおいを残す意味でも、安定期はブラシを軽く持つ練習の時期だと考えてください。

  2. 移行期は、全身をやめて3か所に絞る

    首の飾り毛、耳のうしろ、後ろ脚の内側。シェットランドシープドッグの毛玉は、この3か所から始まることがほとんどです。1日10分を3か所に割るほうが、30分かけて全身を1周するより届きます。体の残りは、移行期が終わってから戻せば間に合います。全身をやろうとして続かなくなるのが、いちばん避けたい形です。

  3. 移行期の1か所では、層を1枚ずつ根元まで出す

    毛を指で分けて、下から1枚だけ層を出します。出した層のぶんだけとかし、終わったら分ける線を少し上へ移す。上から一気に入れると、道具は上毛の面で止まり、留まった下毛は動きません。3〜4回くり返せば、その一帯には届きます。深さを先に決めておくと、歯が地肌に当たりません。

回数・場所・深さを、時期でどう入れ替えるか
安定期移行期
回数週2〜3回毎日
1回の時間15〜20分10分
入れる場所全身をひと通り首・耳のうしろ・後ろ脚の内側
入れる深さ毛先から中ほどまで層を1枚ずつ、根元まで
力の強さ弱く、長く弱いまま、回数を分ける
Cautionできてしまった芯を、力でほどこうとしないでください

撚られた毛玉は、外から引っぱると締まる向きに力がかかります。今日は外側の層を1枚外せれば足ります。根元の側を指で押さえて皮膚を引っぱらないようにしてから、外側から順に外してください。体を引く、声を出す、その場所を気にするというときは、そこで手を止めます。翌日にもう1枚ぶん進めるほうが、結果として早く終わります。地肌が見えるほど大きくなっている場所は、家でほどこうとせずトリマーに預けてください。

移行期のあいだは、毛玉予防ジェルを手元に置いておくと、ブラシの前後で持つものが決まります。指先にごく少量とって、首の飾り毛や耳のうしろへ、根元から毛先へ向けてなでるようになじませます。塗っておくと被毛の1本1本がコーティングされて、留まった下毛が撚られにくい状態が続きます。すでに撚られた芯には、その芯に直接なじませてください。毛玉がしっとり濡れる程度まで含ませてからブラシを当てると、ゆるんで外側の層から外せるようになります。ゆるみが足りないときは、同じ場所にグルーミングスプレーを足してもみこむと、ほぐれ方が変わります。毛玉予防ジェルが手元にあると、はさみを入れずに済む場面が増えます。乾いた日は静電気で毛先が寄るので、道具を入れる前になじませておくと、ブラシの引っかかる回数も減ります。

移行期が過ぎても戻る毛玉|道具の選び方と、時期では説明がつかない変わり方

道具の話を、最後に置きました。先に時期があって、道具はそのあとだからです。シェットランドシープドッグでは、安定期用と移行期用の2本があると回しやすくなります。ただ、最初から2本そろえる必要はありません。ブラシの目に綿が混ざり始めた週に、足りないほうを足すのがいちばん外しません。

ここまでは、下毛の入れ替わりで説明のつく毛玉の話でした。移行期が終わってブラシに綿が出なくなったのに、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別のものとして見てください。次のような変わり方は、被毛の時期では説明がつきません。

Caution被毛の時期では説明がつかない変化

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。これらが出ているときは、ブラッシングの手を増やす前に、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。シェットランドシープドッグは飾り毛の内側が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。何週目から、どの場所で出ているかを控えてから行くと、そこで話が早くなります。

相談やトリミングの前には、ブラシに綿が出始めた週、毛玉ができた場所、その週にやったことの3つをメモしてください。3週ぶんあれば、移行期で説明のつく毛玉かどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれなかった場所は、前の晩に無理に触らず、そのまま連れて行ってください。頑張ってほどくと、もとの状態が分からなくなります。

シェットランドシープドッグと暮らすうえで、冬毛と夏毛が入れ替わること自体はなくなりません。風の強い島で、雨を受けながら羊を追うためにそなえた作りだからです。動かせるのは抜ける量ではなく、入れ替わりが始まったことに何日で気づけるかのほうです。安定している週と、入れ替わっている週を分けて、今週がどちらかをブラシに残った毛で決める。シェットランドシープドッグの毛玉で手が届くのは、そこです。

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よくある質問

シェットランドシープドッグを夏に短くカットすれば、毛玉は減りますか?
毛玉の材料になっているのは抜けた下毛なので、上毛を短くしても入れ替わりそのものは変わりません。そのうえ、この犬種の上毛は伸び続ける毛質ではないため、切ったあと元の飾り毛の形に戻るまで時間がかかります。切るかどうかは見た目と暮らし方の好みの話として、トリマーに相談してください。移行期の手の入れ方は、長さを変えても同じです。
移行期は、シャンプーの回数を増やしたほうがいいですか?
回数より、1回ごとに根元まで乾かしきれるかどうかのほうです。洗うと抜けかけの下毛がまとまって動くので、乾ききる前に上毛の中で固まることがあります。移行期は、普段の1.5倍ほど乾かす時間がかかると見ておいてください。乾かす時間が取れない日は、洗う日を1日ずらすほうが安全です。
子犬のうちは毛玉ができませんが、いつごろから始まりますか?
下毛がそろってからです。月齢で線を引くことはできませんが、首の飾り毛が伸びてきて、ブラシに綿のような毛が残るようになった年から、移行期の毛玉が起きるようになります。最初の1年は、綿が出始めた週と終わった週をカレンダーに書いておくと、翌年からその子の時期が読めるようになります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。