C05犬種・猫種別ケア
シェットランドシープドッグのダブルコート|毛玉を毎日のケアで防ぐ
去年の11月に撮ったシェットランドシープドッグの写真と、7月に撮った写真を並べると、首まわりの太さが別の犬のように違います。冬は胸から首にかけての飾り毛が大きく張り出し、夏はそれが落ちて、首の細さがそのまま出ます。同じ子の、同じ場所です。毛玉ができるのは、この2枚の写真のあいだ——冬毛から夏毛へ、夏毛から冬毛へ入れ替わっている数週間に集中します。被毛が安定している時期には、同じブラッシングでほとんどできません。ですから「毎日やっているのに毛玉ができた」のではなく、「時期が変わったのに、やり方が前の時期のままだった」ということが起こります。この記事では、毛が安定している時期と入れ替わっている時期を並べて、同じ手が通用する週と、通用しない週を分けます。
冬のシェットランドシープドッグと、夏のシェットランドシープドッグ|同じ子に見えない被毛
シェットランドシープドッグは、スコットランドの北にあるシェトランド諸島で、羊を追うために作られた犬です。島は風が強く、雨が多く、夏でも気温が上がりきりません。その気候の中で一日じゅう外にいるために、外側の長い上毛と、内側の細かい下毛という二層の被毛を持っています。首から胸にかけての飾り毛、後ろ脚の飾り毛、尾の毛が長いのも、風と雨を受ける面を厚くするためです。
この犬種で目を引くのは、冬と夏で見た目がここまで変わることです。変わっているのは上毛の長さではなく、その内側にある下毛の量です。下毛が詰まっている冬は、上毛が押し上げられて外へ張り出し、首まわりが一回り太く見えます。下毛が抜けきった夏は、同じ長さの上毛が体に沿って寝るので、輪郭が細くなります。写真で別の犬に見えるのは、そのためです。
毛玉が起きるのは、その入れ替わりの最中です。抜けた下毛は、外へ出るまでに長い上毛のあいだを通らなければなりません。通りきれずに留まった綿のような毛が、歩くたび、寝返りを打つたびに上毛と一緒に動かされ、少しずつ撚られていきます。撚られた芯ができると、そこから先は毛先ではなく根元の側で締まります。シェットランドシープドッグの毛玉は、ここから始まります。
逆に言えば、下毛が抜けていない時期には、留まる材料そのものがありません。安定している時期は、週に2〜3回のブラッシングでも毛玉になりません。同じ子、同じ被毛、同じやり方なのに、ある週から急にできるようになる。変わったのは手のかけ方ではなく、体の側で入れ替わりが始まったという事実のほうです。
- 上毛は長さが変わらない:入れ替わっているのは、内側の下毛だけです
- 下毛は綿のように細い:抜けても外へ落ちず、上毛のあいだに留まります
- 首と後ろ脚の飾り毛が長い:留まった毛が通り抜ける距離が、そこだけ長くなります
- 体はよく動く:牧羊犬らしく動きが多いぶん、留まった毛が撚られる回数も増えます
- 入れ替わりは数週間で終わる:毛玉ができる期間も、そこに合わせて区切れます
量のせいにすると、答えは「もっと長くとかす」になってしまいます。ただ、安定している時期に長くとかしても、そもそも留まっている毛がありません。動いているのは量ではなく、抜け始めたかどうかという時期のほうです。1年を通して同じ回数を守るより、入れ替わりが始まった週に気づけるかどうかで差が出ます。
毛が安定している時期と、入れ替わっている時期|シェットランドシープドッグの毛玉が変わる違い
一年を、2つの時期に分けます。被毛が安定している時期と、下毛が入れ替わっている移行期です。この2つは、毛玉のでき方も、ブラッシングでやるべきことも別物です。同じ「毎日のケア」という言葉でまとめてしまうと、移行期に入ってからも安定期のやり方を続けることになります。
安定している時期は、抜ける下毛がわずかです。ブラシの目に残るのは、まっすぐで長い上毛ばかり。この時期のブラッシングは、毛先をそろえて、外から付いた汚れを落とすための時間です。1週間あいても、指で軽くほどける程度の絡みで止まります。むしろ強くとかしすぎると、乾いた日は静電気で毛先が寄って、そちらのほうが傷みます。
移行期は、抜ける下毛が一気に増えます。1回のブラッシングで、手のひらいっぱいの綿のような毛が出てくる。この時期の目的は、留まった下毛を根元の側から外へ出すことに変わります。ここで安定期と同じように全身を薄く1周すると、上毛の面だけが整って、内側の材料はそのまま残ります。2日あけただけで、ほどけない芯ができ始めます。
| 被毛が安定している時期 | 下毛が入れ替わる移行期 | |
|---|---|---|
| 抜ける下毛の量 | わずか。ブラシに綿が残らない | 多い。1回で手のひらぶん出る |
| 毛玉ができる場所 | ほとんどできない | 首の飾り毛・耳のうしろ・後ろ脚の内側 |
| でき始める速さ | 1週間あいても指でほどける | 2日でほどけない芯ができる |
| ブラッシングの目的 | 毛先をそろえ、汚れを落とす | 留まった下毛を根元から外へ出す |
| 1回に入れる場所 | 全身をひと通り | 3か所に絞って、そこだけ |
| 裏目に出ること | 毎日、強くとかす | 全身を薄く1周して終わる |
| 続く長さ | 3〜4か月 | 3〜6週間 |
取り違えは、両方向で起こります。安定期のやり方を移行期へ持ち込むと、全身1周で終わって、留まった材料が内側に残ります。逆に、移行期のやり方を安定期へ持ち込むと、抜けてもいない下毛を毎日引き出そうとすることになり、毛先と地肌のうるおいのほうが先に削れます。シェットランドシープドッグの毛玉で最初に決めるのは、道具でも回数でもなく、今週がどちらの時期かです。
今週はどちらの時期か|ブラシに残った毛で見るシェットランドシープドッグの見分け方
時期の切り替わりは、カレンダーでは決まりません。その年の気温や、室内で過ごす時間によって前後します。決め手になるのは、ブラシの目に残った毛の質です。量ではなく質を見ます。週に1回、同じ条件で確かめてください。所要は1分もかかりません。
-
ブラシを1本だけ持って、背中の真ん中を10往復させる
場所も回数も固定します。毎週おなじ条件にしておかないと、比べたときの差が道具のせいなのか体のせいなのか分かりません。時間ではなく往復の数で決めるのは、その日の気分で長さが変わらないようにするためです。強さは、毛の面をなでる程度で足ります。
-
ブラシの目から毛を外して、手のひらに広げる
見るのは質です。まっすぐで長く、指で送ると張りが返る毛ばかりなら、まだ安定期です。そこへ細く縮れた、つまむとつぶれる綿のような毛が混ざり始めたら、移行期の入口に入っています。混ざる割合は、週ごとに増えていきます。
-
その綿が、手のひらでどれくらいの厚みになるか見る
薄い膜のように広がる程度なら、まだ入口です。押すと弾力のある塊になるなら、移行期の真ん中です。ここからの3〜6週間が、シェットランドシープドッグの毛玉がいちばん速くできる期間になります。厚みが薄くなってきたら、出口が近いという合図です。
-
首の飾り毛の根元を、指2本で軽く挟んで引く
背中で判断がつかない週は、飾り毛で確かめます。指を離したときに綿のような毛がついてくるなら、その週は首から始める週です。飾り毛は上毛が長いぶん、背中より先に条件がそろいます。首で出て背中で出ない週は、首だけ移行期の手に切り替えれば足ります。
| ブラシに残った毛 | 今週の位置と、やること |
|---|---|
| まっすぐで長い毛だけ | 安定期。いまのやり方のままで足ります |
| 綿のような毛が、薄く混ざる | 移行期の入口。場所を絞る準備を始める |
| 綿が塊になって外れる | 移行期の真ん中。毎日、3か所だけ |
| 綿が減り、また長い毛に戻った | 移行期の出口。回数を戻してよい時期 |
上毛の長さは変わらないので、下毛が抜け始めても、外側の輪郭はしばらく同じままです。飾り毛が落ちて見た目が変わったと気づくころには、移行期はもう2〜3週間進んでいます。シェットランドシープドッグの毛玉に間に合うかどうかは、この2〜3週間をブラシの目で先取りできるかで決まります。写真で比べるのは、あとから確かめるためだけにしてください。
安定期の手と、移行期の手|シェットランドシープドッグの毛玉に対する使い分け
時期が決まったら、手を入れ替えます。入れ替えるのは3つ——回数と、入れる場所と、入れる深さです。力の強さだけは、どちらの時期でも変えません。移行期だからといって強くする必要はなく、強くしたぶんだけ毛先と地肌に返ってきます。
-
安定期は、回数を増やさず、弱さのほうを守る
週に2〜3回で足ります。毛先の側から入れて、引っかかったらそこで止め、根元まで一気に下ろさない。この時期に強くとかす習慣がつくと、移行期に入ったとき同じ力で入れてしまいます。乾いた日は静電気で毛先どうしが寄るので、力を足すほど絡みが増えます。うるおいを残す意味でも、安定期はブラシを軽く持つ練習の時期だと考えてください。
-
移行期は、全身をやめて3か所に絞る
首の飾り毛、耳のうしろ、後ろ脚の内側。シェットランドシープドッグの毛玉は、この3か所から始まることがほとんどです。1日10分を3か所に割るほうが、30分かけて全身を1周するより届きます。体の残りは、移行期が終わってから戻せば間に合います。全身をやろうとして続かなくなるのが、いちばん避けたい形です。
-
移行期の1か所では、層を1枚ずつ根元まで出す
毛を指で分けて、下から1枚だけ層を出します。出した層のぶんだけとかし、終わったら分ける線を少し上へ移す。上から一気に入れると、道具は上毛の面で止まり、留まった下毛は動きません。3〜4回くり返せば、その一帯には届きます。深さを先に決めておくと、歯が地肌に当たりません。
| 安定期 | 移行期 | |
|---|---|---|
| 回数 | 週2〜3回 | 毎日 |
| 1回の時間 | 15〜20分 | 10分 |
| 入れる場所 | 全身をひと通り | 首・耳のうしろ・後ろ脚の内側 |
| 入れる深さ | 毛先から中ほどまで | 層を1枚ずつ、根元まで |
| 力の強さ | 弱く、長く | 弱いまま、回数を分ける |
撚られた毛玉は、外から引っぱると締まる向きに力がかかります。今日は外側の層を1枚外せれば足ります。根元の側を指で押さえて皮膚を引っぱらないようにしてから、外側から順に外してください。体を引く、声を出す、その場所を気にするというときは、そこで手を止めます。翌日にもう1枚ぶん進めるほうが、結果として早く終わります。地肌が見えるほど大きくなっている場所は、家でほどこうとせずトリマーに預けてください。
移行期のあいだは、毛玉予防ジェルを手元に置いておくと、ブラシの前後で持つものが決まります。指先にごく少量とって、首の飾り毛や耳のうしろへ、根元から毛先へ向けてなでるようになじませます。塗っておくと被毛の1本1本がコーティングされて、留まった下毛が撚られにくい状態が続きます。すでに撚られた芯には、その芯に直接なじませてください。毛玉がしっとり濡れる程度まで含ませてからブラシを当てると、ゆるんで外側の層から外せるようになります。ゆるみが足りないときは、同じ場所にグルーミングスプレーを足してもみこむと、ほぐれ方が変わります。毛玉予防ジェルが手元にあると、はさみを入れずに済む場面が増えます。乾いた日は静電気で毛先が寄るので、道具を入れる前になじませておくと、ブラシの引っかかる回数も減ります。
移行期が過ぎても戻る毛玉|道具の選び方と、時期では説明がつかない変わり方
道具の話を、最後に置きました。先に時期があって、道具はそのあとだからです。シェットランドシープドッグでは、安定期用と移行期用の2本があると回しやすくなります。ただ、最初から2本そろえる必要はありません。ブラシの目に綿が混ざり始めた週に、足りないほうを足すのがいちばん外しません。
- 歯の長さは、首の飾り毛に合わせる:飾り毛より短い歯は、その場所の根元まで届きません
- 間隔は、安定期用を広く、移行期用を細かく:安定期に細かい歯を使うと、抜けていない下毛まで引き出します
- 歯の先が丸いもの:地肌に当たる回数が増える移行期ほど、先の形が効いてきます
- 持ち手が滑らないもの:力を抜いたまま長く動かせるかどうかが、毛先の傷み方を分けます
- 2本目は、移行期の入口で足す:必要になってから選ぶほうが、その子の飾り毛の長さに合わせられます
ここまでは、下毛の入れ替わりで説明のつく毛玉の話でした。移行期が終わってブラシに綿が出なくなったのに、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別のものとして見てください。次のような変わり方は、被毛の時期では説明がつきません。
- 安定期のはずの時期に、綿のような毛が出続ける:一年の並びと合わない出方です
- いつも同じ一か所だけが戻る:首輪の当たる位置、寝床の縁、車の座席を思い出してください
- 左右で毛の質が違ってきた:寝る向きだけでは説明がつかないことがあります
- その場所をなめる、かく、床にこすりつける:毛玉より先に、皮膚のほうを見てください
- 層を出したあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、道具を持つ手をその場で止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。これらが出ているときは、ブラッシングの手を増やす前に、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。シェットランドシープドッグは飾り毛の内側が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。何週目から、どの場所で出ているかを控えてから行くと、そこで話が早くなります。
相談やトリミングの前には、ブラシに綿が出始めた週、毛玉ができた場所、その週にやったことの3つをメモしてください。3週ぶんあれば、移行期で説明のつく毛玉かどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれなかった場所は、前の晩に無理に触らず、そのまま連れて行ってください。頑張ってほどくと、もとの状態が分からなくなります。
シェットランドシープドッグと暮らすうえで、冬毛と夏毛が入れ替わること自体はなくなりません。風の強い島で、雨を受けながら羊を追うためにそなえた作りだからです。動かせるのは抜ける量ではなく、入れ替わりが始まったことに何日で気づけるかのほうです。安定している週と、入れ替わっている週を分けて、今週がどちらかをブラシに残った毛で決める。シェットランドシープドッグの毛玉で手が届くのは、そこです。
Product
よくある質問
- シェットランドシープドッグを夏に短くカットすれば、毛玉は減りますか?
- 毛玉の材料になっているのは抜けた下毛なので、上毛を短くしても入れ替わりそのものは変わりません。そのうえ、この犬種の上毛は伸び続ける毛質ではないため、切ったあと元の飾り毛の形に戻るまで時間がかかります。切るかどうかは見た目と暮らし方の好みの話として、トリマーに相談してください。移行期の手の入れ方は、長さを変えても同じです。
- 移行期は、シャンプーの回数を増やしたほうがいいですか?
- 回数より、1回ごとに根元まで乾かしきれるかどうかのほうです。洗うと抜けかけの下毛がまとまって動くので、乾ききる前に上毛の中で固まることがあります。移行期は、普段の1.5倍ほど乾かす時間がかかると見ておいてください。乾かす時間が取れない日は、洗う日を1日ずらすほうが安全です。
- 子犬のうちは毛玉ができませんが、いつごろから始まりますか?
- 下毛がそろってからです。月齢で線を引くことはできませんが、首の飾り毛が伸びてきて、ブラシに綿のような毛が残るようになった年から、移行期の毛玉が起きるようになります。最初の1年は、綿が出始めた週と終わった週をカレンダーに書いておくと、翌年からその子の時期が読めるようになります。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
