C05犬種・猫種別ケア
サモエドはなぜアンダーコートの詰まりが起きやすいのか。ダブルコートから考える
雨上がりの散歩で足まわりを泥だらけにして帰ってきたサモエドが、翌朝にはもう白に戻っていた。拭いた覚えも、洗った覚えもありません。乾いた泥が、毛の表面からぱらぱらと剥がれて落ちただけです。この犬種と暮らした人の多くが、最初の一年でこの場面に出会います。ところが同じ被毛の内側で、まったく逆のふるまいをしているものがあります。抜けたアンダーコートは、乾いても、時間が経っても、そこから出ていきません。勝手にきれいになる毛と、勝手には出ていかない毛。この2つが同じ体の上で同時に起きているのが、サモエドのアンダーコートを考えるときの出発点です。
泥で汚れた翌朝、白に戻っていた|サモエドと暮らす人がまず話す経験
サモエドと暮らしはじめた人が、一年目に必ずといっていいほど驚くことがあります。汚れが、放っておくと落ちることです。雨の日の散歩で足先から腹まで泥をはねて帰ってきて、そのまま寝かせた翌朝、床に乾いた土が少し落ちているだけで、毛はもとの白に戻っている。手で払うと、残っていた分もぱらぱらと離れます。真っ白な犬なのに、思っていたより手がかからない、と感じる瞬間です。
この経験は、勘違いではありません。サモエドの上毛は太くて張りがあり、表面に皮脂の膜をまとっています。泥は毛の表面に乗っているだけで、繊維の中に染み込みません。水分が飛べば、泥は毛から離れて、自分の重さで落ちていきます。白いのに汚れが目立ちにくい、というより、白いまま汚れが残らない作りになっている、というほうが近いです。
ところが、同じ被毛の内側では、まったく逆のことが起きています。換毛期に抜けたアンダーコートは、乾いても落ちません。時間が経っても、外へ出ていきません。抜けた毛には、泥のように「離れて落ちる」という仕組みがそなわっていないからです。抜けた下毛は根元を離れただけで、まわりの毛に囲まれたまま、その場所に留まります。
だから、サモエドでは見た目と内側の状態がずれます。表面は白く、ふわりと整っていて、写真に撮れば何の問題もない。けれど背中の毛を分けて指を入れると、地肌に届く前に押し返される場所がある。汚れは自分で出ていったのに、アンダーコートは一枚も出ていっていない。この2つは、同じ日の同じ体の上で両立します。
- 泥・砂・草の粉:毛の表面に乗るだけ。乾けば離れて落ちます
- 抜けたアンダーコート:根元を離れても、まわりの毛に囲まれて残ります
- 皮脂:離れずに毛に残り、留まった下毛どうしをまとめます
- 水分:上毛の表面はすぐ乾き、下毛の層は遅れて乾きます
- 目で分かるもの:表面の白さだけ。内側は手を入れないと分かりません
白さが戻ることと、被毛の内側が通っていることは、別の話です。汚れが自分で出ていく仕組みは、抜けた毛には働きません。サモエドで手を入れる相手は、表面の汚れではなく、内側に残ったアンダーコートのほうです。洗う回数を増やしても、この相手は減りません。むしろ皮脂の膜まで落ちると、泥が離れにくくなります。
離れるものと、離れないもの|サモエドのアンダーコートが残る背景
なぜ、汚れは出ていくのにアンダーコートは残るのか。ここを分けて考えると、毎日のケアで何をすればいいかが決まります。差をつくっているのは、その毛が何に触れているかです。泥は毛の外側に触れています。抜けた下毛は、毛の内側で、ほかの毛に触れています。外側にあるものは重さで落ちますが、内側にあるものは落ちる先がありません。
サモエドの被毛は、シベリアの北で人と一緒に暮らし、寒さの中で番をしたり橇を引いたりするための作りです。上毛は太く、水と雪を弾き、風を通しません。その内側に、細く柔らかい下毛が詰まっています。下毛の役目は、空気をためて体温を逃さないことです。だから密度が高く、隣どうしが触れ合うほどに詰まっています。この密度こそが、抜けた毛の出口をふさぎます。
換毛期になると、その下毛が根元から離れます。離れた毛は、上下左右をまだ生えている毛に囲まれています。上には水を弾く上毛があり、横には同じ下毛が詰まっている。重力で落ちるためには、いったん外へ出なければなりませんが、その通り道がありません。結果として、抜けた毛は生えている毛のあいだに引っかかったまま、その場所に溜まっていきます。
そこへ皮脂が回ります。皮脂は、泥のように乾いて落ちるものではありません。毛に残り、留まった下毛どうしをまとめます。数日から数週間の単位で、留まった毛は「毛の集まり」から「面」に変わります。指で押すと弾力があり、押し返してくる感触です。ここまで来ると、ブラシの歯は面の上を滑るだけで、内側には届かなくなります。
| 泥や砂などの汚れ | 抜けたアンダーコート | |
|---|---|---|
| どこにあるか | 毛の外側の表面 | 生えている毛に囲まれた内側 |
| 乾いたあと | 毛から離れて落ちる | 離れずに、その場所に留まる |
| 時間が経つと | 自然に減っていく | 皮脂でまとまり、面になる |
| 人がやること | 払う。基本は何もしなくてよい | 外まで運び出す |
| 体格の影響 | ほぼない | 面が広いぶん、残る場所が増える |
サモエドは体格があるので、この「残る場所」の総量が大きくなります。背中、腰、太もも、首まわり。どこも面として広く、片手では覆いきれません。1日で全身に手を入れようとすると、どの場所も浅くしか届かないまま終わります。浅い往復を全身にかけるより、狭い一区画を地肌まで通すほうが、外へ出ていく量は増えます。ここは、体の大きい犬種で共通して起きる話です。
水は、留まった下毛を押し流してはくれません。むしろ濡れた下毛は密度が上がって、乾くときにさらにまとまります。サモエドは被毛が厚く、根元まで乾くのに時間がかかります。内側にアンダーコートが残ったまま洗うと、乾くまでのあいだ、その場所は湿ったままになります。順番としては、外へ運び出してから洗う、が無理のない形です。
出ていかないものだけを、人が外へ運ぶ|サモエドのアンダーコートに手を入れる考え方
ここまでの話を、毎日のケアの言葉に置き換えます。サモエドで人がやることは、汚れを落とすことではなく、自力では出ていけない毛の通り道をつくることです。この言い換えをすると、ブラッシングの目的が変わります。表面をきれいに見せるためではなく、内側から外まで運び出すため。手を動かす向きも、かける時間も、これで決まります。
まず、区画を決めます。全身をひと続きの面として扱わず、背中の右、背中の左、腰、太もも、首まわり、というように分けます。1日にやるのは、そのうち1つか2つで構いません。サモエドの体格で全身を毎日回すのは続きませんし、続かない方法を選ぶと、結局どの場所も浅いままになります。1週間で全部を1周する、という組み方のほうが、内側は動きます。
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指を毛の中へ沈めて、押し返される深さを測る
毛の流れと直角に、指を差し込むように入れます。地肌まで届く場所は、今日の相手ではありません。途中で押し返される場所だけが、アンダーコートが残っている場所です。目で見て決めないでください。サモエドの表面は、内側の状態を教えてくれません。
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毛を分けて、層を一枚だけ出す
上から全部にブラシを入れるのではなく、指で毛を左右に分けて、地肌に近い層を一枚だけ表に出します。出した一枚のぶんだけ道具を通し、終わったら分ける線を少し上へ移す。これを3〜4回くり返せば、その区画は通ります。深さを先に決めるので、道具が地肌に当たりません。
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運び出す向きは、根元から毛先へ、そのまま外まで
途中で手を止めると、いったん動いた毛がまた内側へ戻ります。一往復の終わりを、毛先の外に置いてください。短くこするような動かし方は、留まった毛を面のほうへ押し込みます。長く、ゆっくり、外まで抜ける動きにします。
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面になっている場所は、一度でほどききらない
指が強く押し返してくる場所は、すでに皮脂でまとまっています。力で入れると、抜けた毛ではなく生えている毛と皮膚を引っぱることになります。今日は一枚、明日もう一枚。体をねじる、声を出すというときは、その区画はそこで区切ってください。翌日に続けるほうが、結果として早く終わります。
区画に手を入れる前に、mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて、その区画の毛を流れに沿ってなでておきます。洗い流さずに使えるので毎日の手順に組み込めますし、舐めても問題のない基準でつくられているので、布はたっぷり湿らせて構いません。上毛の滑りがそろうと道具が層の奥まで入り、いったん外へ動いた毛が静電気でまた内側へ戻るのも減ります。洗う日はモイストシャンプーで根元まで洗い、その間の日はグルーミングスプレーで区画ごとに整える。サモエドの体格なら、この2つで1週間の一周が組めます。すでに面になっている場所へ直接吹きかけて、そのまま置かないでください。
| 落とすつもりでいると | 運び出すつもりでいると | |
|---|---|---|
| 見るところ | 表面の白さ | 指が止まる深さ |
| 手を動かす向き | 表面をなでる | 根元から毛先の外へ |
| 1日の範囲 | 全身をざっと | 1〜2区画を地肌まで |
| 洗う位置づけ | これで解決する | 運び出してから洗う |
| 終わりの判断 | きれいに見えたら終わり | 指が地肌に届いたら終わり |
春と秋、下毛がまとまって離れる時期は、やることの中身は変わりません。変えるのは一周にかける日数のほうです。ふだん1週間で全身を1周しているなら、換毛期は3〜4日で1周にする。1回の時間を長くすると、途中で嫌がられて中断しますが、間隔を詰めるだけなら1回あたりの負担は増えません。サモエドの体格では、この組み方のほうが続きます。
白さは戻るのに、その場所だけ戻らない|換毛期の量では説明がつかない残り方
ここまでは、汚れは出ていくがアンダーコートは残る、という条件で説明のつく話でした。その説明では追いつかない変わり方もあります。サモエドは表面がいつも白く整って見えるので、内側の変化に気づくのが遅れがちです。次のような場面は、ブラッシングの回数を増やす話として片づけないでください。
- 運び出したはずの場所が、数日で元の厚みに戻る:換毛期の量では説明がつかない戻り方です
- 換毛期でもない時期に、急に指が止まるようになった:季節の区切りと合っていません
- いつも同じ一か所だけが残る:首輪、ハーネス、寝床の縁など、毎日同じ場所を押さえているものを思い出してください
- 層を出したあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- その場所を気にして、なめる・かく・床にこすりつける:アンダーコートより先に、皮膚のほうを見てください
- 白さそのものが戻らなくなった:乾けば落ちるはずの汚れが落ちていない、という別の変化です
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、一周の日数を詰める前に、動物病院にご相談ください。サモエドは上毛の下が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。指が止まる区画がどこで、そこに最後に手を入れたのがいつかを、日付で伝えてください。
相談やトリミングに行く前には、指が止まる場所、いつからか、直近でその区画に手を入れた日の3つをメモしてください。この3つがあると、換毛期の条件で説明のつく残り方なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。直前の晩にまとめて手を入れると、その区画のもとの厚みが分からなくなります。運び出しきれなかった場所は、そのまま連れて行って構いません。
サモエドと暮らすうえで、アンダーコートが抜けること自体はなくなりません。細く密な下毛は、この犬種が寒さの中で人と働くためにそなえた作りだからです。そして、白い被毛が乾けば汚れを手放すことも変わりません。この2つは同じ体の上で起きていて、片方には人の手が要らず、もう片方には要ります。汚れは待てば出ていきます。アンダーコートは、待っても出ていきません。サモエドの毎日のケアで手が届くのは、後者だけです。そこに絞ると、やることはかなり少なくなります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
