C04悩み解決

シャンプー嫌いが出やすい子には共通点がある|体の構造から考える

公開日 2024年7月22日|文=mofuwa編集部

明るい浴室で、濡れた被毛のまま立っている犬
シャンプーを嫌がる犬種差の中身は、濡れて重くなった体と、すべる足元です。写真:Goochie Poochie Grooming/Pexels

シャンプーの最中、その子は濡れて重くなった体を、すべる床の上で四本の足だけで支えています。被毛が水をどれだけ含むかは毛質と毛量で決まり、含んだ水の分だけ体は重くなります。嫌がり方の犬種差として名前が挙げられることの多い子たちは、この「濡れると重くなる毛」と「体重が四肢に集中する立ち方」が重なっている子です。犬種の名前で覚えても、混血の子や、同じ犬種でも毛量が違う子には当てはまりません。この記事では犬種名を使わず、水を含む毛の量と足裏の接地という2つの軸で比較して、うちの子がどちらでつまずいているのかを見分けます。

シャンプーを嫌がる犬種差は、濡れた体の重さに出る

同じ温度のお湯、同じ手順、同じ人が洗っても、嫌がる強さには差が出ます。その差をひとまとめにして犬種差と呼んでいますが、中身をほどいていくと、名前ではなく「濡れたときに、その子の体がどれだけ重くなるか」という物理の話に行き着きます。被毛は水を抱え込み、抱え込んだぶんだけ体は重くなります。増えた重さを支えているのは、その子の四本の足だけです。

乾いているときの体重は、飼い主なら知っています。けれど、シャンプーの最中の体重を量ったことがある人はほとんどいません。ここが見落とされてきたところです。毛が水を含む量は、毛質と毛量で決まります。同じ体重の子でも、含む水の量には大きな幅があります。

濡れたときに重くなりやすい、毛の条件
毛の条件濡れたときに起きること
二層になっている(下毛がある)下毛が水を抱え込む。表面が乾いて見えても、内側は濡れたまま重い
長い水が毛先まで移動し、体から離れた位置に重さがぶら下がる
巻いている・縮れている毛と毛のあいだにすきまが多く、水が留まる場所が増える
密に生えている同じ長さでも本数が多く、含む水の総量が増える

4つのうち、いくつ当てはまるかで見てください。犬種の名前を使わないのは、混血の子にも当てはめられるようにするためと、同じ犬種のなかでも毛量に幅があるからです。2つ以上当てはまる子は、洗っている途中から別の子のように嫌がることがあります。「洗い始めは平気だったのに」と感じているなら、この重さが理由かもしれません。

Note猫のシャンプーでも、起きていることは同じです

長毛の猫は、犬の二層の毛と同じように水を抱え込みます。犬種差という言い方をしますが、起きているのは毛の作りの話なので、犬か猫かではなく、条件がいくつ重なっているかで見てください。猫は自分で毛づくろいをするぶん、濡れて重い状態そのものに慣れていません。

水を含む毛と、含みにくい毛を比較する

1つめの軸です。シャンプーを嫌がる犬種差を比較するときは、まず毛が水を含む量で二分します。ここで分かれるのは、嫌がる強さではなく、嫌がりはじめるタイミングのほうです。

毛が水を含む量で、シャンプー中に起きることを比較する
水を多く含む毛水を含みにくい毛
毛の作り二層/長い/巻いている/密一層/短い/直毛/すきまがある
お湯をかけたとき内側まで水が入り、手で握ると水が滴る表面をつたって落ち、地肌までは届きにくい
体の重さ抱き上げると、はっきり重いほとんど変わらない
すすぎにかかる時間泡が抜けるまで時間がかかり、重い状態が長く続く短時間で終わる
乾かす時間タオルで押さえても、置くと水が戻ってくるタオルだけでかなり減る
嫌がり方途中から急に踏ん張る、座り込む、動かなくなる最初の数十秒だけ抵抗して、あとは受け入れる

嫌がり方の出方が違うところに注目してください。水を多く含む毛の子は、洗い始めではなく、途中から嫌がります。これは洗われること自体ではなく、重くなった体で立ち続ける時間が長いことへの反応です。逆に、水を含みにくい毛の子が最初だけ嫌がるのは、お湯が当たった驚きへの反応で、重さとは別の話になります。

この違いは、洗う手順の組み方を変えます。重さで嫌がる子には、全身を一度に濡らさないという手が効きます。後ろ足、お腹、背中、首まわりというように部分ごとに濡らして流していけば、体が同時に重くなる範囲を減らせます。洗い終わるまでの合計時間は少し伸びますが、いちばん重い瞬間の重さが下がります。

乾かす場面でも同じことが起きます。水を多く含む毛の子は、タオルで押さえた直後は軽くなったように見えても、しばらくすると下毛から水が上がってきます。タオルを2枚用意して、1枚目で押さえ、2枚目で仕上げる。これだけで、重い状態が続く時間が短くなります。ドライヤーの音が苦手な子ほど、この段階で水を減らしておく意味があります。

足元がすべる条件を、4つ数える

2つめの軸です。同じだけ重くなっても、その重さを支えられる子と支えられない子がいます。差がつくのは足裏の接地です。体重が四本の足の狭い面に集中する子ほど、濡れた床の上で踏ん張りがきかなくなります。足元が滑って、体が重い。この2つがそろうと、その子は立っていられません。

足元がすべりやすくなる、4つの条件
条件なぜすべる側に働くか
足先が小さく、肉球の面積が体重のわりに狭い同じ体重が狭い面に乗る。踏ん張る力の逃げ場が増える
足裏の毛が、肉球より長く伸びている肉球が床に触れず、毛が床の上をすべる
爪が伸びていて、立つと先に爪が当たる指が浮き、床に触れる面がさらに狭くなる
浴槽や洗い場が、平らでつるつるしている濡れると水の膜ができ、摩擦が減る

4つのうち、下の3つは今日変えられます。足裏の毛と爪は、洗う前に整えておくだけで接地が戻ります。床は、浴槽の底に滑り止めのマットを1枚置くだけで変わります。犬種差だと思っていたものの一部は、この3つを整えるだけで消えることがあります。変えられないのは、足先の大きさと肉球の面積という体の作りだけです。

すべっている子は、音でも分かります。爪が床をひっかく音、足が空回りする音、体を支えきれずに壁に当たる音。洗っているあいだに出る音は、その子が何と戦っているかの記録です。お湯の音や声で聞こえにくいので、シャワーを止めたときに一度だけ耳をすませてみてください。

Caution足裏の毛と爪は、洗う日に整えないでください

洗う直前に足を触られること自体が、その子にとっては手順が1つ増えたことになります。整えるのは、洗う日とは別の日にしてください。足裏の毛は肉球が見える長さまでで十分で、深く刈り込む必要はありません。爪は血管の位置が見えにくい子もいるため、不安があればトリミングサロンか動物病院にお願いしてください。

うちの子は、重さとすべりのどっちで止まっているか

2つの軸が分かったところで、うちの子がどっちなのかを決めます。嫌がる場面が起きるタイミングを見れば、ほとんどの場合は分かれます。次の表を、洗っているあいだに思い出せる形で覚えておいてください。

重さで嫌がる子と、すべりで嫌がる子のどっちか
見ている場面重さ側の子すべり側の子
お湯をかけ始めた直後平気なことが多い。変わるのは濡れて数十秒たってから足が濡れた時点で固まる
体の姿勢体を低くする、座り込む、伏せてしまう前に進もうとして後ろ足が流れる、爪を立てる
滑り止めのマットを敷いたとき嫌がり方はあまり変わらない目に見えて落ち着く
部分ごとに短く区切って洗ったとき落ち着くあまり変わらない
洗い終わったあとタオルで水を取ると急に動き出す床から出た瞬間に普通に歩く

どっちを先に手当てするかは決まっています。すべり側が先です。足裏の毛、爪、マットの3つは今日変えられて、しかも次の1回から結果が出ます。重さのほうは毛の作りなので減らせません。減らせるのは、重い状態が続く時間だけです。順番を逆にすると、変えられないほうに手をかけて、変えられたはずのものが残ります。

両方に当てはまる子もいます。その場合も順番は同じで、すべりから手をつけてください。足元が決まると、重さへの反応が一段小さくなります。支えられる足があれば、重い体でも立っていられるからです。逆に、重さだけを減らしても、すべる床の上ではやはり体を固くします。

濡らす前と直後に抱き比べる、家での見分け方

ここまでを1回で確かめられる、家での見分け方があります。濡らす前と、すすぎ終わった直後に、同じように抱き上げて重さを比べるだけです。数字で見たいなら、飼い主が体重計に乗り、その子を抱いてもう一度乗って、引き算してください。

  1. 洗う前に、抱き上げて重さを覚える

    立たせている場所で、いつもと同じ抱き方をしてください。体重計を使うなら、この時点の数字を控えます。ここが基準です。

  2. すすぎが終わった直後に、もう一度抱き上げる

    タオルを当てる前です。タオルで押さえてしまうと、いちばん重い状態が分からなくなります。差が体感ではっきり分かるなら、その子は水を多く含む毛です。

  3. 差が分かったら、次の1回で洗う範囲を区切る

    後ろ足、お腹、背中、首まわりのように部分ごとに濡らして流します。同時に重くなる範囲を減らすのが目的なので、全部を洗い終わるまでの合計時間は変わってかまいません。

  4. 差が分からないのに嫌がるなら、床を変えて1回試す

    重さでは説明がつかない子です。滑り止めのマットを敷き、足裏の毛と爪を整えた状態で、同じ手順で洗ってみてください。ここで変われば、すべり側です。

  5. 3回分、嫌がり方をメモする

    いつ嫌がったか(濡らす前・洗っている途中・すすぎ・乾かすとき)を一行ずつ書きます。タイミングが毎回同じなら条件の話、毎回ばらばらなら別の理由を考えます。

Caution嫌がり方が急に変わったときは、動物病院にご相談ください

これまで平気だった子が急にシャンプーを嫌がるようになった、触られると鳴く、特定の場所だけ避ける、洗ったあとに足を気にして舐め続ける、皮膚が赤い、においが変わった。こうしたときは、条件の話ではありません。関節や皮膚に痛みがあると、立っていること自体がつらくなります。自己判断で手順を変える前に、動物病院にご相談ください。

濡れたときの重さも、足元のすべりも、その子の側では調整できません。人が変えられるのは、浴室に立っている時間と、体をこする回数のほうです。mofuwa 入浴シャンプーは、お湯に溶かして浸かるだけで洗えるつくりで、泡を被毛にのせてかき分ける工程がありません。この記事で数えた8つの条件のうち、重さの側に当てはまる子ほど、こすっている時間がそのまま耐えている時間になっています。すすぎが軽く済むぶん、いちばん重い状態が続く時間も短くなります。範囲を区切る日は、桶に張って後ろ足だけ、お尻まわりだけ、という入れ方もできます。

最後に、犬種差という言葉の使い方をひとつだけ。名前で覚えると、その名前に当てはまらない子の変化を見落とします。この記事で数えた条件は、毛の作りが4つ、足元が4つの合わせて8つです。うちの子にいくつ当てはまるかを数えておけば、混血の子でも、同じ犬種で毛量の違う子でも、同じ物差しで比べられます。シャンプーを嫌がるのは性格の問題ではなく、条件の重なりです。

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よくある質問

短毛の子なら、シャンプーを嫌がることはないのですか?
毛が水を含みにくくても、足元がすべれば嫌がります。むしろ短毛で足先の小さい子は、重さでは説明がつかないぶん、床とマットの話になります。犬種差として語られるものの中身が、その子ではすべり側に寄っているだけです。
浴槽ではなく、洗面台で洗ったほうがいいですか?
場所そのものより、接地が変わるかどうかで考えてください。ステンレスやホーローは濡れるとよくすべります。どこで洗うにしても、滑り止めのマットを1枚敷いて、四本の足が同じ高さで床につく広さを確保してください。落ちる不安があると、体を固くします。
洗う回数を減らせば、嫌がらなくなりますか?
回数を減らしても、濡れたときに重くなること自体は変わりません。減らすのは回数ではなく、重い状態が続く時間です。洗わない日にタオルで拭く手順を挟んでおくと、体を触られること自体には慣れていきます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。