C09シーン別・暮らし

水が苦手な猫と暮らす人が引越しの前後で困ること、その手当て

公開日 2024年9月14日|文=mofuwa編集部

明るい何もない部屋で、段ボール箱のそばに落ち着いてすわっている淡い色の猫
引越しの日に人が見ておけるのは、その子が体をなめた回数のほうです。写真:Tranmautritam/Pexels

引越しの当日、朝8時から夕方5時まで、その子はキャリーの中と、荷物を出し終えた6畳の部屋にいました。そのあいだに毛づくろいをしたのは、こちらが見ていた範囲で2回だけです。ふだんなら、1時間に3回か4回はやっています。水が嫌いな猫なので、体を拭くことも、まして洗うことも、その日はできません。犬なら途中で外へ連れ出して歩かせられますが、猫は箱と部屋から出せません。手が届く場所がここまで少ない日は、引越しのほかにありません。この記事では、その日に出てくる疑問を8つ並べて、順に答えていきます。最後の1つは、やらなくていいことです。

引越し当日、キャリーはどこに置けばいいですか

答えから書きます。荷物が最後まで残る部屋の、壁が2面ある角。床には直接置かず、台の上か、段ボールを2つ重ねた高さに置きます。そして扉の向きを、人が通る側ではなく壁のほうへ向けてください。引越しの当日は、業者の方が何度も同じ廊下を往復します。扉が通路を向いていると、その子は通るたびに顔を上げます。壁を向いていれば、視線が通路と交わりません。

置き方をここまで細かく書くのには理由があります。キャリーの中で毛づくろいができる姿勢が取れるかどうかが、その日の最初の手がかりになるからです。猫が後ろ足のつけ根や尾のつけ根をなめるには、体をひねって丸くなる必要があります。奥行きの足りないキャリーだと、そもそもその姿勢が取れません。姿勢が取れないから毛づくろいをしていないのか、落ち着かないからしていないのか、区別がつかなくなります。当日のうちに区別したいので、広さは先に確かめておきます。

水の器だけ補足します。水を嫌いな子でも、それは濡れることが嫌いなのであって、飲むことは別です。引越しの日は、こちらが忙しくて器のことを忘れがちですが、朝に入れて、昼に一度見て、夕方にもう一度見る、くらいはできます。減り方が分かると、あとで役に立ちます。器がこぼれてキャリーの中が濡れると、水が嫌いな子にはそれだけで一日が終わってしまうので、引っかけ式にしておくと安心です。

猫を出していいのは、いつからですか|引越しの日に「大丈夫」の目安になるもの

荷物が入り終わった時刻ではなく、その子が新居のキャリーの中で一度でも毛づくろいをしたあとです。時計では決めません。引越しのその日に、どのくらいで落ち着くかは家ごとに違いますし、同じ家でも部屋の広さや音の入り方で変わります。こちらの都合で「20時になったから」と開けると、たいてい早すぎます。逆に、こちらが疲れて忘れていると、必要以上に長く閉じ込めることになります。

毛づくろいを目安にする理由は単純で、その子が自分の体に手をつけられる状態かどうかが、そのまま出ています。周りを警戒しているあいだ、猫は毛づくろいをしません。体をなめるには、いったん周囲から注意を外す必要があるからです。逆に言えば、キャリーの中で一度でもなめ始めたら、その部屋の空気はその子にとって「大丈夫」の側に寄っている、という読み方ができます。

引越し当日、出すタイミングを決める3つの見え方
キャリーの中の様子どう読むかこちらがやること
体を丸めて前足をなめた注意が周囲から一度外れています扉を開けて、そのまま部屋を出ます
座って、目を細めている近いところまで来ていますあと30分、静かに待ちます
伏せたまま、耳が扉のほうを向いているまだ音を追っています扉は開けず、部屋の物音を減らします
奥で固まって動かない時間が要ります夜まで待ちます。声もかけません
水を飲んだ落ち着きの目安の1つになります毛づくろいと合わせて見ます
鳴き続けている出したくなりますが、開けるのは早いです人が同じ部屋に座って、何もしません

扉を開けたあと、そのまま部屋を出るのがこつです。こちらが見ていると、出てくるまでの時間が延びます。引越しの当日は人の出入りが多いので、扉を開けたあとの1部屋だけは、こちらから入らない時間を作ります。うちは開けてから40分ほどで、自分から出てきて部屋の隅をひとまわりしました。そのあと、また毛づくろいを始めています。

一日じゅう箱の中にいた体を、拭いたほうがいいですか

その日は拭きません。これが、この記事でいちばん書きたかったところです。水が嫌いな猫と暮らしていると、引越しのような日ほど「せめて拭いてあげたい」と思います。一日じゅう狭いところにいたのだから、と。ただ、当日に人の手を入れてしまうと、こちらが唯一持っている手がかりが消えます。毛づくろいの量です。

順番に説明します。当日、その子の体に起きていることは、こちらには見えません。触れないからです。見えるのは、その子が自分でどれだけ体をなめたかという、外から数えられる量だけです。この量が、引越しの前と比べて減っているのか増えているのかで、その日をどう受け取ったかが分かります。ここで人が代わりに拭くと、その子の側の量に人の側の手が混ざって、翌日から比べられなくなります。

もう一つ、実際的な理由もあります。水が嫌いな猫にとって、湿ったもので体を触られること自体が、その日の中でいちばん大きな出来事になりかねません。場所が変わり、音が変わり、においが変わった日に、こちらから3つ目の変化を足すことになります。引越しの日は、変化の数を増やさない日にしておくほうが、翌日以降が早く落ち着きます。汚れは、翌日でも3日後でも間に合います。

Note何もしないのが不安なときは、器のほうを見ます

手を出さないと決めると、たいてい落ち着かなくなります。そのぶんの気持ちは、水の器と、トイレの回数のほうへ向けてください。朝に入れた水がどれだけ減ったか。トイレを使ったか、使っていないか。この2つは、触らずに数えられて、あとで動物病院に伝えるときにもそのまま使えます。引越しの当日にやることとしては、これで十分です。犬なら散歩に出して気を紛らわせられますが、猫はそれができないぶん、人のほうも手持ち無沙汰になります。

そもそも毛づくろいの量とは、何を数えることですか

回数と、長さと、場所の3つです。正確に数える必要はありません。引越しの日にストップウォッチを持って座っている人はいませんし、そこまでしなくても差は見えます。うちがやったのは、部屋に入るたびに「なめていた/なめていなかった」を紙に正の字で書くことだけでした。それでも、ふだんの日と当日の差はすぐ分かります。

毛づくろいの量として数える3つ
数えるものどう数えるか何が見えるか
回数部屋に入ったときに、なめていたかどうかを1回ぶん書くふだんと比べた増減がいちばん出やすい項目です
長さ「すぐやめた/しばらく続いた」の2段階で足ります落ち着きの深さが出ます
場所前足/顔まわり/背中/後ろ足のつけ根/尾のつけ根同じ場所ばかりかどうかが分かります
やめ方自分でやめたか、音がしてやめたか周囲をどれだけ気にしているかが出ます
時間帯朝・昼・夕方・夜の4つに分けるだけ落ち着いてくる時間帯が見えます

比べる相手は、ほかの猫ではありません。引越しの前の、その子自身です。だから、できれば引越しの1週間前から、同じ紙に同じ数え方で書いておきます。荷造りで手が空かない時期なので、正の字だけで足ります。1日に何回、という数字が5日ぶんあれば、当日の2回という数字がどれだけ低いのかが分かります。数字がないと「少なかった気がする」で終わってしまいます。

ちなみに、犬と暮らしている方には少し分かりにくい指標かもしれません。犬は、体の手入れの多くを人が代わりにやっています。猫は自分でやります。だから猫の場合、手入れの量そのものが、その子の状態を映す指標になります。引越しのように人が触れない日でも読める指標があるのは、猫のほうです。水が嫌いな子で、拭くことも洗うこともできない家では、なおさらここを使うことになります。

毛づくろいが止まったときは、なぜ待つのですか

止まっている時間の長さを、まず数えるためです。引越しの当日に毛づくろいが減るのは、よくあることです。ふだん1時間に3回の子が、当日は半日で2回。この程度なら、翌日から戻っていくことが多いと思います。ここで人が手を出すと、戻り始めたのがその子の側の変化なのか、こちらが触ったせいなのかが分からなくなります。だから、待って、数えます。

待つ長さの目安も決めておきます。新居に入ってから24時間のあいだに一度も毛づくろいをしていない、水を一度も飲んでいない、トイレを一度も使っていない。この3つのうち2つが重なったら、待つのをやめます。引越しの疲れとして片づけずに、動物病院に電話をして状況を伝えてください。何時に移動して、何時間キャリーにいて、水がどれだけ減ったか。数えてあると、そのまま伝えられます。

気をつけたいのは、こうした変化を見て、こちらが原因を決めてしまわないことです。毛づくろいが止まった、というだけで、体のどこかに理由があると言い切れるものではありません。逆に、引越しのせいだと決めつけて放っておくのもよくありません。分かるのは「ふだんと違う」というところまでで、そこから先は診てもらう領域です。水が嫌いな猫の場合、体に触れる機会が少ないぶん、こうした外から数えられる変化が数少ない入口になります。

Caution待たずに相談していい範囲

引越しからの日数にかかわらず、まる1日食べていない、水を飲んでいない、トイレの回数が明らかに減った、隠れたまま出てこない状態が2日続く、呼吸が速い、同じ場所をなめ続けて毛が薄くなってきた。こうしたことがあるときは、様子を見る時間を作らずに動物病院にご相談ください。引越しの直後は、新しい病院を探すところからになる家も多いので、移る前に近くの動物病院を1つ調べておくと、この電話が早くかけられます。

増えているときは、どこを見て分けますか

まんべんなくやっているか、同じ場所ばかりかで分けます。引越しのあと、毛づくろいが増えること自体は珍しくありません。においの変わった体を、その子なりに整え直しているような形になります。全身を順にやっていて、数日で量がふだんに近づいていくなら、そのまま見ていて構いません。分けたいのは、片側の後ろ足だけ、尾のつけ根だけ、というふうに1か所へ集まっている場合です。

毛づくろいが増えたときの、2つの分かれ方
まんべんなく増えている1か所に集まっている
なめている場所前足・顔・背中・後ろ足と移っていく毎回、同じ1か所から始まる
日ごとの変化3〜5日で、量がふだんに近づく日がたっても減らない、または増える
やめ方自分でやめる。呼ぶと顔を上げる呼んでもやめない。手を出すと嫌がる
毛の様子変わらないその場所だけ毛が寝ている、薄い、湿っている
こちらの手数えるだけでよい動物病院に相談する側に振り分けます
水が嫌いな子の場合拭かずに待てます自己判断で拭かず、まず診てもらいます

右の列に当てはまるとき、そこを拭いてきれいにする、という手当ては選ばないでください。水が嫌いな猫に対して、嫌がる形で1か所を触ると、その場所への関心をかえって強めることがあります。しかも、拭いたことで見た目が変わってしまうと、診てもらうときに元の様子を伝えられません。写真を1枚撮って、日付を書いて、そのまま持っていくほうが役に立ちます。

左の列、つまり全身をまんべんなくやっている場合は、こちらの仕事は数えることだけです。引越しの当日が2回、翌日が5回、3日目が9回、4日目が12回。この並びが見えていれば、戻っている途中だと分かります。数字が並ぶまでは判断しない、と決めておくと、途中で手を出さずに済みます。水が嫌いな子と暮らす家では、手を出さないと決めるための材料が、いちばん要ります。

犬もいる家では、引越しの順番が変わりますか

変わります。犬を先に、猫をあとにしてください。理由は、犬は外に出せるからです。引越しの当日、犬は散歩に連れ出せますし、荷物の出入りが激しい時間帯だけ知人に預けることもできます。猫はどちらもできません。だから、こちらの手が空いているうちに犬の段取りを終わらせて、残った手を全部、猫の1部屋に回します。同居していると、つい同じように扱いたくなりますが、当日の条件がまるで違います。

同居している家でよく起きるのが、犬のほうが早く落ち着くので、猫も同じくらいで落ち着くと思ってしまうことです。犬は翌日から散歩に出て、新しい道のにおいを嗅いで、外で疲れて帰ってきます。猫は部屋の中だけで、同じ景色を何日も見ています。戻るまでの日数は、猫のほうが長くかかることが多いと考えておいたほうが、こちらが焦らずに済みます。引越しの前後で、犬と猫を同じ物差しで見ないでください。

もう一つ、犬と猫の同居で気をつけたいのが、新居での再会の時期です。猫の毛づくろいがふだんの量に戻るまでは、扉を閉めたままにしておきます。犬のほうは新しい家に慣れて動きが大きくなっている時期なので、そこへ猫を出すと、猫にとっては変化がもう1つ増えます。数えている数字が戻ってからで、遅すぎることはありません。

やらなくていいことは、どれですか

5つあります。引越しの前後に、これはやらなくて構いません。やることを増やすより、やめるものを先に決めておくほうが、当日に迷わずに済みます。水が嫌いな猫と暮らす家では、そもそも選べる手が少ないので、少ない手をどこに使うかを決めるほうが早く終わります。

引越しの前後に、やらなくていいこと
やらないことそう決める理由
引越しの直前に洗う水が嫌いな猫には、それ自体が大きな出来事になります。当日の変化と混ざります
当日に体を拭く毛づくろいの量という、唯一の手がかりが読めなくなります
新しい寝床やおもちゃを用意する新居で覚えるものが1つ増えます。前から使っているものをそのまま持っていきます
前の家のにおいを消してから運ぶ布は洗わずに運びます。当日に新しくするものを増やしません
新居を先に見せておく猫は下見で慣れるより、入ってからの日数のほうで慣れていきます
毛が落ちるのを追いかける荷ほどきの最中は、床が毎日変わります。落ち着いてから1回で足ります

洗うことについて、もう少し書きます。引越しという区切りがあると、その前にきれいにしておきたくなります。ただ、水が嫌いな猫にとって、洗われることは引越しと同じくらいの出来事です。同じ週に2つ重ねると、どちらで何が起きたのかが分からなくなります。洗う予定があるなら、引越しの2週間以上前に済ませておくか、新居で毛づくろいの数字が戻ってから、にしてください。

そのぶん、新居で数字が戻ってきたころに、水を使わない日のケアを1つだけ足しました。猫用のグルーミングウォーターを布に含ませて、背中から尾のつけ根までを毛の流れに沿って一往復。噴射音が出にくい容器のものを選んだのは、引越しの直後の部屋では、音が1つ増えるだけでその子が場所を移してしまうからです。体に直接吹きかけず、布に含ませてから触るようにすると、水が嫌いな子でもいったん受け取ってくれることがあります。引越しの前後にやることとしては、これが最後で構いません。

8つの疑問を、引越し当日から7日目までに置き直す

最後に、ここまでの答えを日付の側から並べ直します。引越しの前後で人がやることは、思っているより少なくて、しかもほとんどが「数える」と「置く」です。水が嫌いな猫と暮らしていると、触れる場面が少ないぶん、この2つに集中できます。表に入らなかったものが、さきほどのやらなくていいことです。

引越しの当日から7日目までにやること
いつやること見るもの
1週間前毛づくろいの回数を、正の字で書き始めるふだんの1日あたりの回数
前日キャリーを部屋に出し、いつもの布を洗わずに入れる自分から入るかどうか
当日の朝最後まで残す1部屋を決めて、キャリーを台の上へ扉の向きと、体を丸められる奥行き
当日の日中水の器を朝・昼・夕に見る。体には触らない減り方と、毛づくろいの回数
当日の夜新居で扉を開けて、部屋を出るキャリーの中で一度なめたかどうか
2日目部屋に入る回数を減らす。数え続ける回数が前日より増えているか
3〜4日目同じ部屋で、人が座っているだけの時間を作るまんべんなくか、1か所に集まっているか
5〜7日目数字がふだんに近づいたら、扉を開ける範囲を広げる犬と同居なら、この段階まで扉は閉めたまま

この表の中で、こちらが手を出しているのは「置く」と「開ける」だけです。引越しの当日から7日目まで、猫の体には一度も触れていません。水が嫌いな子と暮らしていると、これは我慢しているように感じますが、実際には、触れないぶんだけ数字が濁らずに済んでいます。犬のほうは同じ期間に足を拭き、散歩に出て、外の刺激を受け取っています。同じ家の中でも、やっていることがここまで違います。

最後に残る疑問は、たいてい「いつまで待てばいいのか」というところだと思います。目安は、毛づくろいの回数が引越しの前の数字の幅に戻ることと、水の減り方が戻ることの2つです。両方がそろえば、部屋のほうはその子にとって家になっています。片方だけ戻っていないときは、そこだけを見ます。何日で戻るかは家ごとに違うので、日数ではなく、自分の家の数字で決めてください。引越しは、比べる相手が自分の家にしかいない出来事です。

そして、7日たっても数字が戻らないとき、あるいは戻ったあとでまた落ちたときは、引越しの話としては扱わないでください。食べる量が減ったまま、水を飲む量が明らかに増えた、同じ場所をなめ続けている、トイレの回数が変わったまま、隠れて出てこない。こうしたことがあれば、数えていた紙を持って動物病院にご相談ください。引越しの前後は変化が多いので、原因を1つに決めにくい時期です。決めずに持っていくほうが、結果として早く済みます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。