C04悩み解決
シニア期の耳のにおい|若い頃と同じケアでは追いつかない
めくって覗いた耳の中は、この3か月ずっときれいなままでした。耳垢もほとんどなく、赤くもない。それなのに、顔を近づけるとにおいだけがあります。13歳を過ぎたころから、こういう食い違いをよく聞くようになります。シニア期の耳のにおいは、耳の中ではなく、耳のつけ根の外側と頬が触れ合っている面から出ていることがあります。そこは耳の中ではないので、耳掃除ではまったく届きません。若い頃と同じケアで追いつかなくなるのは、手を抜いたからではなく、においの出どころのほうが移っているからです。
耳の中を覗いた経験が、毎回空振りに終わる
週に一度、耳をめくって中を見る。これを続けている飼い主ほど、シニア期に入ってから困ることになります。見ているのに、においの出どころが見つからないからです。耳垢は少ない。赤くもない。じゅくじゅくもしていない。それでも、顔のあたりから確かににおいがする。
このとき起きているのは、観察が足りないことではありません。見ている場所と、においの出ている場所が、そもそも別なのです。耳の中は、シニア期でも若い頃と同じようにきれいなことがあります。だから何度覗いても空振りになります。
よく聞くのは、こういう経験です。どれも、耳の中を疑っているあいだは説明がつきません。
- 綿棒で入り口を拭いても、白いまま出てくる:それなのに、においは変わらない
- においが強い日と弱い日がある:耳の中の様子は、どちらの日も同じに見える
- 片側だけにおう:左右の耳の中を見比べても、違いが見つからない
- 寝起きがいちばん強い:起きて動き出すと、少し薄くなる
- 顔を近づけると、耳の中より少し下のほうが強い:どこ、と指させないまま終わる
最後の1つが、この記事の入口です。においが強いのは、耳の穴ではなく、そこから少し外側でした。耳をめくり上げたときに裏返る、耳の外側の面。そして、その耳がふだん重なっている頬の側。この2つが触れ合っている面から、においは出ています。
耳の中がきれいだったという確認は、無駄ではありません。中を候補から外せた、という情報です。そのうえで、次にどこを見るかの話になります。シニア期の耳のにおいで手が止まるのは、中を除外したあとの行き先を持っていないからです。
においの背景にあるのは、頬と耳が重なっている面
垂れ耳の子は、耳が頬にかぶさっています。立ち耳の子でも、耳のつけ根の外側は頬の上のほうと接しています。ここは、皮膚と被毛が向かい合わせに重なっている面です。手のひらを合わせたときの、内側と同じ状態だと考えてください。
この面には、においが出るための条件が4つ揃っています。しかも4つとも、耳の中とは関係がありません。
| 条件 | その面で起きていること |
|---|---|
| 向かい合わせに触れている | 空気が入る隙間がなく、換気がされない |
| 皮脂が出る | 耳のつけ根のまわりは、皮脂の出る場所が集まっている |
| 毛が密に生えている | 根元が乾かず、湿った状態が長く続く |
| こすれ続けている | 頭を動かすたびに擦れ、はがれた皮膚と被毛が面に残る |
湿っていて、換気がなく、皮脂と汚れがあり、温度も下がらない。この状態が長く続けば、雑菌が関わってにおいが立ちやすい条件になります。耳の中で同じことが起きればすぐ気づきますが、面は外側なので、めくらないかぎり目に入りません。しかも、めくった瞬間に空気が入るので、開いた状態で見てもふだんの様子とは違って見えます。
重要なのは、この面が耳の中ではないという一点です。綿棒も、洗浄液も、耳の中に向けて使うものです。どれだけ丁寧にやっても、耳の裏側と頬の面には届きません。耳掃除の頻度を上げても、においが変わらないのはそのためです。やっていることが足りないのではなく、届く範囲の外にあります。
立ち耳だから関係ない、とはなりません。頭を少し傾ける癖のある子は、傾いている側の耳のつけ根が頬に当たり続けます。片側だけにおう子で、耳の中に左右差が見つからないときは、頭の傾きを見てください。傾きは、正面からより、後ろから見たほうが分かります。
若い頃、この面が問題にならなかったのは、閉じっぱなしにならなかったからです。顔を上げる、体の向きを変える、前足で顔をこする、床に顔をこすりつける。1日のうちに何十回も面が開き、そのたびに空気が入っていました。においが立つ前に、条件のほうが崩れていたわけです。
シニア期に重なる3つの変化と、面ができる時間
では、シニア期に何が変わるのか。耳そのものは、そこまで変わりません。変わるのは、面が押しつけられている時間の長さです。そして、それを決めているのは3つの変化です。3つとも、耳とは関係のないところから始まります。
| 変化 | 面に何が起きるか | 家で気づくきっかけ |
|---|---|---|
| 頭が少し傾いたままになる | 傾いた側の面が、起きているあいだも当たり続ける | 後ろから見ると、耳の高さが左右で違う |
| 片側を下にして寝る時間が長くなる | 下になった側の面が、体重で押しつけられる | 毎回、同じ側を下にして寝ている |
| 顔まわりを自分でこすらなくなる | 面が開かれる回数が、1日のうちで減る | 前足で顔を洗う、床に顔をこすりつける動作を最近見ない |
1つ目は、いちばん気づかれにくい変化です。首の筋肉が落ちたぶん、頭がまっすぐ支えられず、わずかに傾いたまま落ち着く。飼い主から見ると顔の角度が少し変わっただけですが、耳の側では、当たっている面がずっと同じという状態になります。ただし、傾きが目に見えて強いときは別の話です。それは後で触れます。
2つ目は、時間の長さがそのまま効いてきます。シニア期の犬は、1日の多くを横になって過ごします。12時間寝ていて、そのうち8時間が同じ側を下にしていれば、その側の面は8時間押しつけられ続けたことになります。若い頃は同じ12時間でも、向きを変える回数が多く、面が入れ替わっていました。
3つ目が、いちばん静かに効きます。顔をこする動作は、かゆいからやっているとはかぎりません。体を伸ばしたあと、起き上がったあと、食事のあと。きっかけがあるたびに顔を動かし、そのたびに耳が動いて面が開いていました。シニア期は、この動作の回数そのものが減ります。減っていることには、なかなか気づけません。やらなくなった動作は、記憶に残らないからです。
3つが重なると、時間はこうなります。若い頃、面が閉じたままだったのは長くて1〜2時間。シニア期は、それが6〜8時間になります。同じ皮脂の量でも、同じ湿り方でも、置かれている時間が数倍になれば、においの立ち方は変わります。若い頃と同じケアでは追いつかない、というのは、掃除の腕の話ではなく、この時間差の話です。
床置きの食器で食べていると、シニア期の子は首を深く下げ続けることになります。食事のあいだ、耳は頬に押しつけられたままです。台に乗せて高さを上げると、その時間だけでも面が開きます。においの話をしているつもりが、食器の高さの話になることは珍しくありません。首や肩に負担がある子ほど、ここは効いてきます。
耳のにおいの考え方を、中から面へ入れ替える
やることを増やす前に、見る場所を入れ替えます。シニア期の耳のにおいで最初にやるのは、出どころを3か所に絞って確かめることです。耳の穴、耳をめくった裏側、その耳が当たっていた頬。順に鼻を近づけて、どこがいちばん強いかを決めます。3つ目がいちばん強ければ、この記事の話です。
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3か所に順に鼻を近づけて、出どころを決める
耳の穴、耳の裏側、頬の順です。耳を持ち上げてから10秒待ってください。めくった直後は空気が入ってにおいが散ります。10秒置いてから確かめると、面に留まっていたぶんが分かります。片側ずつ、左右を分けてやってください。
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1日3回、面を10秒だけ開ける
耳を軽く持ち上げて、そのまま10秒。持ち上げるだけで、こすりません。朝、夕方、寝る前。この3回だけでも、面に空気が入る回数は増えます。嫌がる子は、片側5秒から始めてください。触られること自体に慣れていない子は、耳ではなく首のうしろから手を入れると受け入れやすくなります。
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寝る向きを、意図的に入れ替える
寝床の位置を90度回すか、いつも下になっている側に薄いクッションを置きます。下になっている側の面が、いちばん長く押しつけられています。強引に向きを変えさせる必要はありません。寝床の向きが変われば、自分から入る向きも変わります。
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拭き取りは、耳の裏と頬の面だけ
耳の中には入れません。乾いた布で押さえて水分を移してから、湿らせた布で耳の裏側と頬を1回ずつ拭きます。こすらず、押し当てて離す。面の奥まで指を入れず、めくって見える範囲で止めてください。拭いたあと、乾くまで10秒は耳を下ろさないでください。濡れたまま閉じると、条件は元に戻ります。
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週に1回、左右を比べる
同じ曜日、同じ時間に、左右のにおいと湿り方を比べます。比べる相手は、他の子でも去年でもなく、その子の反対側の耳です。左右で差が出はじめたときが、いちばん早く気づけるタイミングになります。
毎日の顔まわりのケアは、シニア期になるほどシャンプーの回数を増やしにくくなります。手を入れるのは、耳をめくった裏側と、その耳が当たっていた頬の面だけです。耳の中には入れないでください。この面を1日に何十回も開けていたのは、もともとその子の前足でした。減ったのはその動作のほうなので、開ける回数を人の側で足すことになります。ただし頬は、口のすぐ隣です。ここに何かを置けば、その日のうちに舌が通ります。朝置いたものが昼には残っていない、という話をよく聞くのはそのためです。mofuwaスキンケアミストが電解水100%でできているのは、その舌を先に勘定に入れているからです。当てるのは、耳を持ち上げて10秒たったあと。閉じたままの面に置くと、湿ったものを湿った面へ足すことになります。赤くなっている部分やじゅくじゅくしている部分には使わないでください。
頭の傾きがはっきりしている、まっすぐ歩けない、耳を触ると痛がる、耳の中が赤い・じゅくじゅくしている、耳の穴から強いにおいがする、耳を床にこすりつける動作が急に増えた、片側だけ急ににおいが強くなった、聞こえていない様子がある。いずれかに当てはまるときは、家庭で面を見ている段階ではありません。時間を置かずに動物病院にご相談ください。シニア期は、耳の中と平衡感覚の変化が同時に起きることがあります。耳のにおいだけの話として扱わないでください。
相談するときは、「耳の中を毎週見ているが何も見つからず、においは耳の裏と頬のあたりがいちばん強い」という言い方で伝えてください。においがする、とだけ伝えると、耳の中の話として進みます。どこを見て、何が見つからなかったかを一緒に渡すと、そのぶん早く先へ進めます。受診の前日に耳を洗ったり拭いたりしないでください。その日の状態が、いちばんの材料になります。
最後に、考え方の整理をもう一度。シニア期に増えたのは、においの量ではなく、面が押しつけられている時間です。耳の中がきれいなのに耳がにおう、という食い違いは、観察が甘いから起きているのではありません。見る場所を耳の中から、耳と頬が触れ合う面へ移す。それだけで、これまで空振りだった確認が、毎回どこかに当たるようになります。
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
