C09シーン別・暮らし
シニア犬と暮らす人が旅行とペットホテルで困ること、その手当て
2泊の予定を決めたあと、カレンダーの前で30分ほど手が止まりました。同じ2泊を、5年前は何も考えずに決めていたからです。そのころは金曜に預けて日曜に迎えに行き、帰った日の夜にはもう元どおりでした。いまは13歳です。旅行の日程そのものは変わっていないのに、ペットを預けるという判断だけが毎回重くなりました。ペットホテルが変わったわけでも、日数が延びたわけでもありません。老犬を預けていいのかどうかは、その子が丈夫かどうかでは決まりません。決まるのは、その子の毎日を作っているもののうち、どれだけを預け先へ持っていけるかです。この記事では、旅行のたびに出てくる問いを8つに分けて、順番に答えていきます。最後の1つは、やらなくていいことです。
老犬を旅行のあいだ預けても大丈夫でしょうか
答えから書きます。「大丈夫かどうか」では決められません。その子が丈夫かどうか、預け先が良いところかどうか、という並べ方をしているかぎり、毎回同じところで迷います。決めるときに使えるのは別の物差しで、その子のいつもを、どこまで預け先へ持っていけるかです。持っていける量が多ければ預けられますし、少なければ日数を削るか、別の形にします。
なぜ物差しを変えるかというと、丈夫さは日ごとに変わるからです。今週は調子がよくて、来週は動きが鈍い。その日の状態で判断すると、旅行を決める日と出発の日で答えが変わってしまいます。持っていけるものの数は、こちらの準備で決まるので、旅行の1か月前でも数えられます。老犬とペットの旅行を毎回同じ手順で決められるようにするには、数えられる側で判断するほうが早く済みます。
もう一つ、この物差しには利点があります。預けるという選択が、ゼロか百かではなくなります。持っていけるものが3つなら3つぶん、5つなら5つぶん、その子の毎日が続きます。全部は無理でも、半分持っていければ、帰宅後に戻すのは残り半分です。老犬を預けることで失われるものを、あらかじめ数で持っておけると、旅行のあいだも迎えに行く日も、こちらの気持ちの置き所が変わります。
若いころは平気だった3泊が、いまは同じではないのは、なぜですか
日数が同じでも、止まるものの量が違うからです。若いころのその子は、毛づくろいも、体の向きを変えることも、水を飲みに行くことも、自分でやっていました。人がやっていたのは、ごはんと散歩と、たまのブラッシングくらいです。いま老犬になって、人が代わりにやっている手が増えています。旅行でペットを預けると、その増えたぶんが日数ぶん止まります。
| 若いころ | いま | |
|---|---|---|
| 体の向きを変える | 自分で変える | 長く同じ姿勢のことがある |
| 届かない場所の手入れ | 自分の口が届く | 人が代わっている場所がある |
| 水の器まで行く | 自分で行く | 器を近くへ動かしている |
| ごはんの時刻 | 多少ずれても食べる | 時刻がずれると残ることがある |
| 夜のあいだ | 朝まで動かない | 室内で起きる回数が増えた |
| 帰宅後に戻るまで | その日のうち | 数日かかることがある |
表の右側が、そのまま「人が代わっている手」の一覧です。3泊で止まるのは、この右側にあるものだけです。左側にあることは、預け先でもその子が自分でやります。だから、迷ったときに数えるのは日数ではなく、右側の項目の数です。老犬と暮らしている家ごとに、この右側の中身は違います。よその家の3泊と、うちの3泊が同じでないのは、この一覧が違うからです。
もう一つ、老犬には戻る速さの問題があります。若いころは、旅行から帰った日の夜には元の毎日に戻っていました。いまは、ごはんの時刻が戻るのに2日、夜の起き方が戻るのに3日ほどかかります。つまり、3泊の旅行は3日ではなく、戻る日数を足した6日ぶんとして効いてきます。ここを見落とすと、預けた日数だけで足りると考えてしまいます。
老犬なら、旅行は何泊までにしておくべきですか
何泊までという一律の数字はありません。数え方はあります。人が代わっている手の数に、泊数を掛けてください。手が2つで3泊なら6、手が5つで2泊なら10です。この数が大きいほど、帰宅後に戻すぶんが増えます。うちの場合、8を超えた回は戻るのに5日かかり、5以下の回は3日で戻りました。数字そのものに意味はありませんが、同じ家の中で回ごとに比べられるという点が使えます。
- 手を数える:届かない場所の手入れ、器を動かす、寝床の向きを直す、夜に一度見る、薬や食事の補助など、その子ごとに数えます
- 泊数を掛ける:2泊なら2、3泊なら3。日帰りは0.5として扱っています
- 前回の数と比べる:前回が6で3日で戻ったなら、今回の9は4日から5日と見込みます
- 減らせる手はないか見る:預け先でも続けられる形に変えられる手が1つあれば、掛け算の前の数が減ります
- 泊数のほうを削る:手が減らせないときは、こちらを削ります。1泊減らすと数がまとまって下がります
- 迎えに行く時刻を早める:最終日の朝に迎えに行くと、実質の泊数が0.5減ります
この数え方の良いところは、旅行を短くする以外の手が見えることです。手のほうを1つ減らせれば、泊数を削らずに済みます。たとえば、器を近くへ動かしている手は、預け先でも同じ位置関係を作ってもらえば続きます。届かない場所の手入れは続きませんが、帰宅後にまとめて戻せます。続くものと続かないものを分けると、削るべきものが自然に決まります。
家に人を来てもらうのと、ペットを預けるのとでは、どちらがいいですか
どちらが良いかは決まっていません。外れるものが違うので、その子にとって重いほうを避けるという選び方をします。家に人に来てもらうと、場所は変わりませんが人が変わります。預けると、人も場所も変わります。数だけ見れば預けるほうが変化が多いのですが、老犬によっては、知らない人が室内に入ってくることのほうが重いことがあります。
| 家に来てもらう | 預ける | |
|---|---|---|
| 場所 | 変わらない | 変わる |
| においと床 | いつものまま | いつもと違う |
| 人 | 変わる。しかも来る時間だけ | 変わる。ずっといる |
| 夜のあいだ | ひとりになる時間がある | 人か他の子の気配がある |
| 何かあったとき | 気づく人がその場にいない時間がある | その場に人がいる |
| 帰宅後に戻すもの | 人の出入りの記憶 | 場所・におい・時刻 |
判断の材料は3つです。ひとつめは、夜にひとりで過ごせるか。老犬になって夜に起きる回数が増えているなら、誰かがいる形のほうが向きます。ふたつめは、知らない人が室内に入ってきたときの反応。来客のたびに落ち着かないなら、家に来てもらう形は思ったより重くなります。みっつめは、こちらが連絡を取れるか。旅行先から様子を聞ける形かどうかで、こちらの落ち着き方が変わります。
うちは、この3つで預けるほうを選びました。夜に起きる回数が増えていたのが決め手です。ただ、選んだあとにやったことは同じでした。持っていける「いつも」を数えて、そのうち何を渡すかを決める。どちらを選んでも、この作業は必要になります。旅行の形を先に決めてからペットの準備を考えると、たいてい前日に間に合いません。
老犬の「いつも」とは、具体的に何を指すのですか
4つに分けています。場所、時刻、物、人の手。この4つが組み合わさったものを、その子は毎日として受け取っています。旅行でペットを預けると、このうち場所と人の手は必ず外れます。預け先の部屋は違う部屋ですし、こちらの手はそこにありません。逆に言えば、持っていけるのは時刻と物の2つだけです。ここがはっきりすると、準備でやることも決まります。
| いつもの中身 | 預けると | こちらができること |
|---|---|---|
| 場所(部屋・床・におい) | 外れる | 戻すのは帰宅後。持っていけません |
| 時刻(ごはん・水・夜) | 持っていける | 時刻だけを紙に書いて渡す |
| 物(器・敷物・段差の補助) | 持っていける | 洗わずに、使っている状態のまま渡す |
| 人の手(届かない場所の手入れ) | 外れる | 帰宅後にまとめて戻す。数日かかる前提で |
預け先へ渡すものは、この表がそのまま答えになります。物は、洗わずに持っていってください。使っている状態のままの敷物と器が、その子にとって唯一の知っているにおいになります。前日にきれいに洗うと、荷物としては清潔になりますが、手がかりは消えます。旅行の前に洗うものと、洗わないものを分けておいてください。
書いて渡すものは、時刻だけにしています。ごはんの時刻、水を替える時刻、夜に見てもらう時刻。紙1枚に時刻だけを並べます。細かく書くほど親切に思えますが、量が増えると、実際にはどこから読めばいいのかが伝わりにくくなります。老犬の毎日は、時刻の並びでできています。時刻さえ同じなら、部屋が違っても、その子の1日の形は残ります。
場所と人の手は持っていけません。これは準備が足りないからではなく、預けるという形がもともと持っている条件です。だから、そこを埋めようとして荷物を増やす必要はありません。代わりにやっておくのは、外れる2つを数えておくことです。人の手が3つ外れるなら、帰宅後に戻すのも3つ。旅行の前に数えてあると、迎えに行った日に何から手をつけるかで迷いません。
帰ってきた日に、老犬のどこを見るのか知りたいです
体ではなく、時刻が戻る速さを見てください。帰宅後にその子の体を確かめたくなりますが、老犬の場合、その日に分かることはあまり多くありません。分かるのは、翌日からの数日です。ごはんの時刻、水を飲む時間帯、夜に起きる回数。この3つが何日で預ける前の形に戻るかを見ると、今回の旅行がその子にとってどのくらいだったのかが数字で残ります。
| 日 | 見るもの | 戻っていないときの扱い |
|---|---|---|
| 帰った日 | 水を飲む量。室内で落ち着く場所 | この日は何もしない。戻っていなくて当然です |
| 1日目 | ごはんの時刻と、食べた量 | 時刻を動かさず、量だけ記録します |
| 2日目 | 夜に起きる回数 | 室内の寝床の位置を、預ける前と同じに戻します |
| 3日目 | 3つとも預ける前の幅に入ったか | 入っていれば旅行の影響として扱えます |
| 4日目以降 | 3つのうち戻らないものがあるか | 戻らないものが1つでもあれば、下の相談の目安へ |
体のほうに手を入れるのは、時刻が戻り始めてからで足ります。順番としては、時刻が先、手入れが後です。帰宅後すぐに全身を触ろうとすると、移動と場所の変化に手入れが重なって、その子の側で受け取るものが増えます。老犬は変化を1つずつしか受け取れないと考えて、日を分けるほうが結果として早く戻ります。
手を入れるときは、外れていた手をそのまま1つ戻すだけで足ります。mofuwa グルーミングスプレーは、その戻す1か所に使う道具です。布に含ませて、人が代わっていた場所を1日1か所ずつ。4か所あるなら4日かけます。まとめてやりたくなりますが、預けていた日数ぶんの手を1日で戻そうとすると、触っている時間そのものが長くなります。老犬は立ったままでいられる時間に上限があるので、1回をどこまで短く切れるかが、続けられるかどうかを決めます。グルーミングスプレーは舐めても差し支えのない基準でつくられているので、口のまわりから始めても、そこで手を止めずに済みます。においが気になるときも同じで、1日1か所の順番は変えていません。湯を使う日は、時刻が3つとも戻ってから別に取ります。
老犬を預けるとき、やらなくていいのはどれですか
4つあります。前日に体を洗うこと、荷物を増やすこと、新しい物を持たせること、帰宅後の当日にまとめて手入れをすること。どれも良かれと思ってやることですが、旅行でペットを預ける前後では、その子の側で受け取る変化を増やす方向に働きます。やらないと決めておくと、前日の夜と帰宅後の夜が、そのぶん静かになります。
| やらないこと | そう決める理由 |
|---|---|
| 前日に体を洗う | 移動と場所の変化に、体の側の変化が重なります。切り分けられなくなります |
| 荷物を増やす | 使っていない物は、預け先でも使われません。物は使っているものだけ |
| 新しい敷物や器を持たせる | 新しい物にはいつものにおいがありません。持っていける2つのうち1つを自分で消すことになります |
| 帰宅後の当日にまとめて手入れ | 戻すのは4日かけて1日1か所。当日は何もしないほうが早く戻ります |
| 預け先からの写真を何度も見返す | こちらの落ち着きのためなら見て構いませんが、その子のためにはなりません |
| 日数を延ばして慣らそうとする | 老犬では、慣らすより回ごとに同じ形で通すほうが向いています |
最後の2つについて補足します。写真を何度も見返すのは、旅行中のこちらの習慣として自然なことです。やめる必要はありませんが、それがその子の側を良くしているわけではない、とだけ分けておいてください。そして、日数を延ばして慣らす方向は、老犬には向きません。回数を重ねて短く通すほうが、戻る速さが安定します。
4つのうち2つを持っていく|旅行で老犬を預けるときに最後まで残る疑問
ここまでを、1枚に並べ直します。その子のいつもは、場所・時刻・物・人の手の4つでできています。旅行でペットを預けると、場所と人の手が外れ、時刻と物は持っていけます。だから準備は、時刻を紙に書くことと、使っている物を洗わずに渡すことの2つで足ります。何泊にするかは、人が代わっている手の数に泊数を掛けた数で決めます。帰宅後は、体ではなく時刻が戻る速さを見て、手入れは1日1か所ずつ戻します。
| いつ | やること |
|---|---|
| 1か月前 | 人が代わっている手を数える。泊数を掛けて前回と比べる |
| 2週間前 | ペットの持ち物を決める。以後、その物は洗わない |
| 前日 | 時刻だけを書いた紙を1枚。体は洗わない |
| 当日 | 使っている状態の物を、そのまま渡す |
| 預けているあいだ | 家の側は動かさない。寝床の位置もそのまま |
| 帰った日 | 何もしない。水を飲む量だけ見る |
| 1〜3日目 | ごはんの時刻・夜に起きる回数が戻るかを見る |
| 4日目以降 | 外れていた人の手を、1日1か所ずつ戻す |
留守のあいだ、家の側でやっておくことを聞かれることがあります。答えは「何もしない」です。旅行のあいだに部屋を片づけて、寝床を洗って、家具の位置を変えると、帰宅後に戻る場所が変わってしまいます。持っていけなかった場所という項目を、こちらの手で壊すことになります。室内はそのままにしておいて、帰ってきたその子が同じにおいの同じ場所に戻れるようにしておくほうが、戻る日数は短くなります。
最後まで残る疑問は、たいてい「今回のこれは旅行のせいなのか、年齢によるものなのか」というところです。切り分け方は1つで、3つの時刻が4日目までに預ける前の幅へ戻るかどうか。戻るなら、旅行と場所の変化として扱えます。戻らないなら、旅行とは別のものが動いています。老犬と暮らしていると、この2つはとても見分けにくくなります。数字を3つだけ見ると決めておくと、迷っている時間が短くて済みます。
旅行から帰って4日たっても、食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、夜に起きる回数が減らない、立ち上がるまでの時間が長くなった、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、においの質が変わった、下痢や嘔吐が続いている。こうした変化が残っているときは、手入れの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。老犬では、場所が変わったことによる一時的な変化と、そうでないものが重なって見えます。泊数と、預ける前後で記録した3つの時刻を持っていくと、その場で切り分けてもらえます。3つの数字がそろっていれば、予約を取る電話の段階から話が短くなります。
老犬と旅行の話は、行けるか行けないかで語られがちですが、実際に決まるのは泊数と、帰ってからの4日の使い方です。時刻を3つ書いて渡し、使っている物は洗わずに持たせ、外れた手は1日1か所ずつ戻す。回を重ねて短くなるのは、預ける準備のほうではなく、帰ってから元に戻るまでの日数です。次に預けるときは、前回の紙に書いた3つの数字と並べるところから始められます。
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
