C09シーン別・暮らし

共働きで時間がない人のための車でのおでかけ|5分で終わらせるケア

公開日 2024年11月23日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの入る車の窓ぎわで、落ち着いてすわっているクリーム色の犬
運転席から手は届きませんが、目は届きます。車の中でできるのは、そこまでです。写真:Pexels/Pixabay

土曜の午前、動物病院までの片道25分のあいだに、赤信号で止まったのは9回でした。その9回のうち最初の1回で、はじめて助手席の足元をきちんと見ました。口の周りが少し濡れていて、あとは先週と同じでした。家に帰ってから拭いたのは、その1か所だけです。かかった時間は1分でした。共働きで時間がないと、犬のためにまとまった時間を平日に作るのはほとんど無理です。ところが車での移動のあいだだけは、他の用事が一切入ってきません。運転しているので手は使えませんが、その子は1メートル以内にいて、しかも動きません。この記事は、車の中をケアの時間にせず、その子を見る時間に使う、という話です。

赤信号で止まった20秒に、はじめて足元を見ました|車で犬と出かけた日の経験

その日の予定を先に書きます。土曜の9時に家を出て、動物病院まで25分、待合で30分、帰りが25分。午後は買い出しと洗濯で埋まっていました。平日は朝と夜の2つの時刻しか動かせないので、犬のことをまとめてやれるのは土曜の午前だけです。その土曜の午前も、動物病院に行くと半分が移動で消えます。共働きで時間がないというのは、1日の総量が足りないという意味ではなく、空いている時刻がないという意味でした。

行きの1つ目の信号で止まったとき、手持ちぶさたになって助手席の足元を見ました。20秒ほどです。その子はクッションの上で伏せていて、口の周りが少しだけ濡れていました。前足の先はきれいで、耳のつけ根も先週と同じ。見たのはそれだけで、車の中では何もしていません。次の信号でもう一度見て、同じでした。この移動のあいだ、こちらは運転席から一歩も動けません。動けないぶん、目だけは1か所に置いておけます。

帰ってきてから、口の周りだけを布で一往復しました。1分もかかっていません。それまでは土曜の午前に「全身をやらないといけない」と思っていて、始めるまでに時間がかかり、始めると30分を超えて、結局途中で切り上げていました。やる場所が1か所に決まっていると、始めるまでの時間がゼロになります。時間がない家でいちばん重いのは、作業そのものではなく、どこから手をつけるかを決める部分でした。

Note運転中に手を出す話ではありません

書いているのは、走行中に犬へ手を伸ばす話ではありません。手を出せないからこそ、目だけを使うという組み立てです。信号や踏切で完全に停止しているあいだに、決めておいた1か所を見る。動き出したら前を見る。それ以上のことは車の中ではしません。車での移動を作業の時間にしようとすると、危ないうえに、時間がない家では続きません。

家では見られないのに、車の中でだけ見られる理由|時間がないことと、動けない位置

家の中では、その子も人も動いています。台所に立てば足元に来て、洗濯機の前に移ればついてきて、座れば少ししてから離れていく。視線が同じ場所にとどまる時間が、そもそも数秒しかありません。じっくり見ようとすると、こちらが止まってその子を呼ぶ必要があります。呼んで、押さえて、見る。この3つの動作は、平日の朝と夜には入りません。

もう一つ、家の5分には性質があります。時間がない家では、空いた5分は必ず作業に使われます。洗い物、たたみかけの洗濯物、明日の支度。見るという行為は成果物が残らないので、作業に押し出されます。押し出されたことにも気づきません。だから「今週その子のどこを見たか」を思い出せないまま、次の週が来ます。

車での移動は、この2つがどちらも起きない場所でした。その子はクレートかシートの上から動きません。こちらも運転席から動けません。距離が固定され、しかも作業が一切できない。家の中では絶対に作れない条件が、移動のあいだだけ勝手に成立しています。犬と暮らしていて、この条件がそろう場面はほかにあまりありません。

家の5分と、車での移動25分では、何が違っているか
家の5分車での移動25分
その子の位置動く。呼ばないと止まらない同じ場所から動かない
こちらの位置動く。ついでに何かをやってしまう運転席から動けない
距離そのつど変わる1メートル以内で固定
手使える。だから作業になる使えない。だから見るだけになる
中断電話・宅配・家事が入る入らない
残るものやった作業見た1か所の記憶

この表を作ってから、車の中でやることを決め直しました。手が使えない場所で作業をしようとするのをやめる。降りてから急いで拭くのでもなく、乗る前に全部済ませておくのでもありません。移動中は見るだけにして、手を動かすのは家に着いてから。順番をこう決めると、時間がない平日でも、土曜の午前でも、同じ形で回せるようになりました。

信号1回につき1か所だけ|車での移動を、作業ではなく観察に使う考え方

やり方は単純です。乗る前に「今日見る場所」を1つ決めて、止まるたびにそこだけを見ます。複数を見ようとすると、どれも思い出せません。1か所だけなら、降りたときに言葉にできます。犬の体を5か所に分けておいて、車での移動1回につき1か所。5回の移動で一巡します。共働きの家なら、通院と買い物を合わせて2週間ほどで一巡する計算です。

  1. 乗る前に、今日の1か所を声に出して決める

    口の周り、耳のつけ根、前足の先、腹側、尾のつけ根。この5つを順番に回します。決めるのはエンジンをかける前です。走り出してから考えると、結局どこも見ないまま着きます。声に出すのは、覚えておく手間を省くためです。

  2. 完全に停止しているあいだだけ、その1か所を見る

    信号、踏切、駐車場に入る前。20秒あれば足ります。近づいて確かめようとしないでください。見えた範囲で構いません。車での移動中に分かることは限られていて、それでいいという前提で始めます。

  3. 3段階でしか判断しない

    「先週と同じ」「濡れているか汚れている」「分からない」。この3つだけです。程度を測ろうとすると時間がないところに判断が増えます。分からないは、分からないのまま記録して構いません。3回続けて分からないなら、そこは明るい場所で見る必要がある、という別の情報になります。

  4. 降りたら、その場で1行だけ残す

    スマホのメモに「11/23 口の周り 濡れ」。これだけです。日付と場所と3段階。書く量を増やすと、翌週にはもう書かなくなります。移動のたびに1行なので、1か月で8行から10行ほどたまります。

  5. 家に着いたら、見た1か所だけに手を入れる

    全身はやりません。口の周りなら口の周りだけ、尾のつけ根なら尾のつけ根だけ。1か所なら1分から2分で終わります。「先週と同じ」だった日は、何もしなくて構いません。やらない日があることが、この形を続けられる理由です。

この順番でいちばん効いているのは、最後の1つです。見た場所しか触らない、と決めてしまうこと。見ていない場所に手を出し始めると、結局は全身に戻り、時間がないので途中でやめることになります。移動のあいだに1か所を見て、家でその1か所だけをやる。犬のケアの範囲を、車の中で決めてしまう形です。

Point同乗者がいる日は、見る係を渡してしまう

家族が一緒に乗っている日は、こちらは運転に集中して、見る係を後ろの席の人に渡します。渡すときは「今日は前足の先だけ見て」と場所を指定してください。場所を指定しないと「元気だったよ」しか返ってきません。降りたときに「濡れてた」「先週と同じ」のどちらかを聞ければ足ります。時間がない家では、自分以外の手と目が使える形にしておくかどうかで、実際に集まる情報の量が変わります。

10回の移動で記録が10行たまったあとの変化|家でやる時間が2分に減った

3か月ほど続けて、メモが14行たまりました。読み返して分かったのは、変わっている場所が体全体ではなく、いつも同じ2か所に寄っていたことです。口の周りと、腹側。前足の先と耳のつけ根は、ほとんどが「先週と同じ」でした。犬の全身を毎回やる必要があるのかどうかを、それまで一度も確かめたことがありませんでした。

車での移動のたびに残した記録を、場所ごとにまとめ直したもの
見た場所回数先週と同じ変わっていた
口の周り3回1回2回
腹側3回1回2回
尾のつけ根3回2回1回
耳のつけ根3回3回0回
前足の先2回2回0回

この表ができてからは、家でやることが決まりました。口の周りと腹側は移動のたびに、残りの3か所は月に1回。1回にかかる時間は2分ほどです。以前は土曜の午前に30分を確保しようとして、確保できずに何もしない週がありました。いまは移動が2分の作業を連れてくる形になっているので、やらない週がなくなりました。時間がないという条件は変わっていませんが、必要な時間のほうが小さくなりました。

手を入れる道具はmofuwa グルーミングスプレーです。布に含ませて、見た1か所を毛の流れに沿って一往復させます。1か所2分で終わるのは、すすいで乾かす工程がこの作業に入っていないからです。口の周りなら顔をつかまず、横から布を当てるだけ。口の周りに当てられるのは、清涼飲料水の規格基準で確かめられた水からできているからで、当てる量をいちいち数えずに済みます。移動から帰ってきた直後は、その子も落ち着いていないので、水の器を替えて、少し休ませてから始めています。

土曜に全身を洗う日はモイストシャンプーのままで、そこは動かしていません。動かしたのは、移動があった日に2分だけ入るほうです。グルーミングスプレーは梳かすとき用のスプレーも兼ねているので、布を当てたあとそのまま櫛を通せます。暖房を入れた車から降りた日は毛が逆立って布が滑りにくくなりますが、先に吹きかけておくと櫛が引っかかりません。30分を確保できる週を待つのをやめて、2分が毎回入る形にしたのが、3か月で起きた変化です。

Caution同じ場所が3回続けて変わっていたときは、動物病院にご相談ください

記録がたまってくると、同じ1か所だけが3回続けて「変わっていた」と並ぶことがあります。ほかの場所は「先週と同じ」なのに、そこだけが戻らない。これは拭き取りの回数を増やして様子を見る場面ではありません。あわせて、同じところをなめ続けている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、においの質が変わった、食べる量が落ちているといった変化が重なっているときは、動物病院にご相談ください。移動の日に取ったメモは、日付と場所が並んでいるので、そのまま持っていけます。いつからかを答えられると、その場で切り分けてもらえます。時間がない家ほど、早めに相談するほうが結果として短く済みます。

最後に、この形が何をしていたのかを書いておきます。車での移動は、犬のケアの時間ではありませんでした。ケアの範囲を決める時間です。運転席からは手が届きませんが、目は届きます。20秒の観察が、家に着いてからの2分を決める。時間がないと感じているとき、足りていないのは作業の時間ではなく、どこに手を入れればいいかを決める時間のほうでした。移動のあいだにそれが終わっていれば、家では迷わずに始められます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。