C05犬種・猫種別ケア
ベルジアンシェパードのダブルコート|アンダーコートの詰まりを毎日のケアで防ぐ
3月の半ばに最高気温が20度まで上がって、その翌週の朝に8度まで戻る。日本の春には、この振れ幅が何度もあります。ベルジアンシェパードのアンダーコートは、この2週間のあいだに抜け始めて、そして途中で止まります。下毛が動くきっかけは気温の上下なので、上がった週に動き出し、下がった週に動きを止めるからです。止まったとき、根元から離れた下毛はまだ体の上に残っています。次にまた気温が上がれば、別のぶんが動き出して、前回の残りの上に重なります。詰まりと呼んでいるものの中身は、これです。この記事では、一度に抜けきる換毛と、途中で止まる換毛を並べて、残った下毛がどこにたまり、どの週にどちらの手を持つのかを書きます。
気温が上がった週に動き出し、下がった週に止まる|ベルジアンシェパードのアンダーコートの動き方
ベルジアンシェパードの被毛は二層です。外側に張りのある上毛があり、その内側に、細かくて密なアンダーコートが入っています。この下毛は、季節そのものではなく、気温と日照の変化を受けて動きます。寒い時期には密に詰まって体温を保ち、暖かくなるとまとめて根元から離れていく。ここまでは、寒い土地で働いてきた犬種に共通する作りです。
ベルギーの春と秋は、海からの空気に覆われていて、気温が一方向へゆっくり動きます。上がり始めたら上がり続け、下がり始めたら下がり続ける。下毛にしてみれば、動き出したあとに「戻れ」という合図が来ません。だから一度動き出せば、そのまま最後まで抜けきります。この犬種のアンダーコートは、そういう気候を前提にした作りになっています。
日本の春秋は、この前提と噛み合いません。3月に20度まで上がった翌週に8度まで戻る、10月に25度の日と15度の日が並ぶ。上がった週に「抜けていい」と動き出した下毛が、下がった週に途中で止まります。止まった時点で、下毛は根元から離れているのに、まだ体の上にいます。外へ出るきっかけを失ったまま、上毛の内側で行き場をなくしている状態です。
そして、また気温が上がります。今度は別のぶんの下毛が動き出して、前回止まったぶんの上に重なります。一度の換毛が終わらないうちに、次の換毛が始まる。これが春と秋に何度もくり返されるので、ベルジアンシェパードのアンダーコートには、動きを止めた下毛が層になって残っていきます。指で押すと弾力のある面になっているのは、たいてい、この積み重なりです。
- 下毛が動くきっかけは気温の上下:カレンダーの日付ではなく、その週の気温で動きます
- 動き出した下毛は根元から離れる:離れても、上毛の内側にいるあいだは外へ出ません
- 寒さが戻ると、動きが途中で止まる:抜けきる前に止まったぶんが、そのまま残ります
- 次に上がると、別のぶんが重なる:残りの上に新しい層が乗ります
- 春と秋に、これが何度もくり返される:日本ではひと続きの換毛になりません
床に落ちる毛が増える週は、下毛が動いている週です。動いているぶんは、外へ出る力も残っています。むしろ手を入れておきたいのは、抜け毛が急に減った週のほうです。気温が戻って動きが止まり、離れた下毛が体の上に残ったままになっているからです。ベルジアンシェパードのアンダーコートでは、量の増減より、動きが止まったかどうかを見てください。
一度に抜けきる換毛と、途中で止まる換毛|ベルジアンシェパードで何が残るかを比較する
2つを、同じ項目で並べます。比べるのは抜ける量ではなく、その換毛が最後まで進んだかどうかです。同じ一頭の中でも、年によって、また体の場所によって、片方になったり片方になったりします。どちらが起きているかで、手の入れ方が変わります。
| 一度に抜けきる換毛 | 途中で止まる換毛 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 気温が一方向へ動き続ける | 上がって、また下がる |
| 進み方 | 動き出してから最後まで進む | 動き出して、数日で止まる |
| かかる期間 | 2〜3週間でひと区切り | 春と秋の全体に散らばる |
| 体に残るもの | ほとんど残らない | 根元から離れた下毛が層で残る |
| 手ざわり | 指が地肌まですっと届く | 途中で押し返される弾力がある |
| 抜け毛の量 | 特定の2週間に集中する | 少ない週と多い週がくり返す |
| 手を入れる回数 | その2〜3週間だけ増やす | 春と秋のあいだ、一定に保つ |
表のいちばん下の行が、実際の手つきの差になります。抜けきる年なら、集中して2〜3週間だけ手を増やせば足ります。途中で止まる年は、増やすのではなく、切らさないことのほうが効きます。ベルジアンシェパードは体格があるので、集中的に時間をとる日をつくると、その反動で数日空きます。空いた数日のあいだに、また気温が動きます。
もう一つ、手ざわりの行も見てください。抜けきったあとの被毛は、指を沈めると地肌まで届きます。途中で止まったぶんが残っていると、地肌に届く前に、弾力のある層に押し返されます。この押し返しの深さが、そのままその場所に残っている下毛の厚みです。外から見た毛の量ではなく、指がどこで止まるかで判断してください。ベルジアンシェパードは上毛に張りがあるので、外からは詰まっていても整って見えます。
途中で止まった下毛が残る場所|ベルジアンシェパードのアンダーコートが詰まる条件
止まった下毛は、体じゅうに均等に残るわけではありません。残るのは、外へ出ていく力が働きにくい場所です。条件は3つあります。体が動かない面であること、何かに押さえられている面であること、上毛が長くて出口までの距離があること。この3つが重なるほど、同じ場所に層が積み上がります。
| 場所 | 重なっている条件 | 指を沈めたときの手ざわり |
|---|---|---|
| 首まわり | 上毛が長い/首輪が押さえる | 浅いところで押し返される |
| 腿の後ろ | 上毛が長い/座ると押さえられる | 座らせると急に硬くなる |
| 尾の付け根 | 体が動かない面/寝床に当たる | 指が横へ逃げて、まっすぐ入らない |
| 耳の後ろ | 動かない面/出口までが狭い | 細かい毛がひとかたまりで動く |
| 脇の後ろ側 | 押さえられる/風が入らない | 地肌までの距離が左右で違う |
確かめ方は、どこも同じです。毛の流れと直角に、指を1本まっすぐ沈めます。かき分けるのではなく、差し込むように入れてください。地肌に届くなら、その場所の換毛は進んでいます。途中で押し返されるなら、止まったぶんが残っています。ベルジアンシェパードは体が大きいので、5か所すべてを毎日確かめる必要はありません。1日1か所、5日で一巡すれば足ります。
条件のうち、変えられるものと変えられないものがあります。上毛の長さと、体のどこに動かない面があるかは、この犬種の作りなので変えられません。変えられるのは、押さえているもののほうです。首輪をつけっぱなしにする時間、寝床の素材、同じ姿勢で過ごす時間の長さ。ここは家の側で動かせます。詰まりが起きにくい条件をつくるというのは、この部分を一つずつ外していくという意味です。
去年も一昨年も、まず首まわりから硬くなり、次に腿の後ろが来る。順番まで同じなら、被毛の条件ではなく、暮らしのどこかが固定されています。寝る場所、寝る向き、首輪をつけている時間。年ごとに気温の動きは違うのに順番が変わらないなら、押さえている側を疑ってください。ベルジアンシェパードのアンダーコートは、押さえられている面ほど動きが遅れます。
動いている週と止まっている週、どっちで手を入れるか
週ごとに、どちらの週かを決めます。判断は簡単で、手を入れたときに綿のような毛がついてくるかどうかです。ついてくるなら、下毛は動いています。ほとんどつかないのに、指を沈めると押し返されるなら、止まっています。ベルジアンシェパードのアンダーコートでは、この2つで手つきを変えます。
-
動いている週は、回数を増やして、外へ運ぶことに寄せる
下毛が自分で根元から離れて、外へ向かっている週です。この週にやることは、出口までの距離を短くしてやることだけです。1か所につき長くやるより、朝と夜に短く2回。ベルジアンシェパードは面が広いので、1回を長くすると1か所しか回りません。回数を増やすほうが、体全体で見た通り道が増えます。
-
止まっている週は、回数ではなく、届く深さを一定に保つ
動いていない毛は、外から引き出す相手です。回数を増やしても、押し込む向きに力が加わるだけで進みません。指で毛を分けて層を1枚だけ出し、その層のぶんだけ手を通す。終わったら分ける線を少し上へ移して、もう1枚。1か所につき3〜4回で切り上げます。止まっている週は、量ではなく深さのほうを揃えてください。
-
どちらの週も、条件が重なっている場所を先に回す
首まわり、腿の後ろ、尾の付け根。この3か所は、動いている週にも遅れます。先に回すと決めておけば、時間が足りない日でも、いちばん残りやすい場所には手が入ります。背中や体側は、外へ出ていく力が働きやすいので後回しで構いません。ベルジアンシェパードでは、順番のほうが総時間より効きます。
-
気温が10度以上動いた週は、翌週の手を減らさない
上がったあとに下がった週の翌週が、いちばん残りやすい週です。動き出したぶんが止まったばかりで、まだ体の上にあるからです。抜け毛が減ったのを見て手を止めると、その残りがそのまま次の層の土台になります。天気予報で最高気温の振れ幅を見て、大きく動いた翌週は回数を保ってください。
気温が動く時期は、外で過ごす時間も長くなります。体から脂が出るのは毎日で、上毛の表面には外の細かいものが毎日乗ります。毎日きれいにしておきたいという側から手に取るのが、mofuwa のグルーミングスプレーです。布に含ませて、首まわりや腿の後ろのように上毛の長い場所を、毛の流れに沿ってなでるように拭いてください。舐めても差し支えない基準(清涼飲料水の規格基準)をクリアしているので、面の広い犬でも量を加減せずに使えます。上毛の滑りがそろっていると、層を1枚出したときに道具が表面で止まりません。グルーミングスプレーを、すでに層になっている面へ直接吹きかけるのは避けてください。湿ったまま押さえられる時間が増えると、残りやすい条件が1つ増えるだけになります。
指が押し返される場所へ、上から強く道具を入れると、止まっている下毛ではなく、生えている上毛と皮膚を一緒に引くことになります。層は1回で出しきらなくて構いません。分ける線を1本入れて、その層から出たぶんだけを外へ運びます。犬が体をよじる、声を出すというときは、その1枚で終わりにしてください。翌日にもう1枚進めるほうが、結果として早く終わります。
春と秋という時期の区切りでは説明がつかない抜け方
ここまでは、気温の上下でアンダーコートが動いたり止まったりするという条件で説明のつく話でした。週ごとに手つきを変えていても、時期の区切りと合わない変わり方が出てきたときは、別の見方をしてください。ベルジアンシェパードは上毛に張りがあり、下の状態が外から見えません。次のような変化は、換毛の話として片づけないほうが安全です。
- 気温がほとんど動いていない時期に、急に抜け始めた:時期の条件では説明がつきません
- 抜けたあとに、下毛ではなく地肌が見えている:換毛では、上毛まで一緒には減りません
- 左右のどちらか一方だけが薄い:寝る向きや、体を寄せている面と合わせて見てください
- 抜けた場所の地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 同じ場所をなめる、かく、床にこすりつける:アンダーコートより先に、皮膚のほうを見てください
- 層を出したあと、いつもより痛がる:手を入れる前から何かがあった可能性があります
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、1日1か所で5日に一巡する手順を増やすより先に、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。その2週間の最高気温が10度も動いていないのに抜け方が変わったなら、次の週を待たずに電話をしてください。
相談に行くときは、指が押し返される場所、いつからか、その2週間の最高気温がどう動いたかの3つをメモしてください。気温の記録があると、時期の条件で説明のつく換毛なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれていない層は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。前の晩に念入りに手を入れると、もとの状態が分からなくなります。
ベルジアンシェパードと暮らすうえで、アンダーコートが気温に反応すること自体は変わりません。寒い土地で外に立ち続けるための作りが、そのまま日本の不安定な春秋に置かれている、というだけの話です。動かせるのは、換毛が完結するかどうかではなく、止まったぶんが体の上に残っている時間のほうです。週ごとに動いているか止まっているかを見て、条件が重なる場所から先に回す。ベルジアンシェパードのアンダーコートで手を入れられるのは、そこです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- ベルジアンシェパードのアンダーコートは、換毛期以外にも手を入れたほうがいいですか?
- 日本では、春と秋の換毛が一度で終わらないことが多いので、期間の外側にも止まったぶんが残ります。ふだんは1日1か所、5日で一巡する程度で足ります。指を沈めて地肌まで届く場所は、その日はやらなくて構いません。押し返される場所だけ、層を1枚出す。この判断のしかたなら、時期に関係なく同じ手順で回せます。
- 抜け毛の量が減ってきたら、ブラッシングも減らしていいですか?
- 量が減った理由が2つあります。抜けきったか、途中で止まったかです。指を沈めて地肌まで届くなら前者なので、回数を戻して構いません。押し返されるなら後者で、離れた下毛がまだ体の上にあります。この場合は回数を保ってください。床の毛の量ではなく、指の届く深さで決めるほうが確実です。
- 換毛期に短く刈ってしまうのはどうですか?
- 刈るかどうかは、その子の暮らし方や過ごす環境と合わせて、かかりつけやトリマーと相談して決めることです。ここで言えるのは、上毛を短くしても、下毛が気温の上下に反応するという仕組みは変わらないということです。刈った場合も、指を沈めて押し返される場所を探す手順は同じように使えます。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
