C05犬種・猫種別ケア
キースホンドはなぜ静電気が起きやすいのか。ダブルコートから考える
冬の夕方、ラグの上でキースホンドにブラシを通して、その手を離した瞬間、たてがみの毛先が一斉に持ち上がってブラシを追いかけてきました。指を近づけても、パチッとは来ません。音も痛みもないのに、毛だけが立っています。そのまま毛の中へ指を沈めると、内側は静かで、むしろ吸いつくように重い。キースホンドの静電気は、立っている場所と、起きている場所がずれています。毛先を手のひらで押さえれば、その数秒だけは寝ます。離せば、また同じ形に戻ります。押さえても戻るのは、押さえた場所で起きていないからです。この記事は、その層のずれについての読みものです。
ブラシを離した瞬間、たてがみだけが持ち上がる|キースホンドと暮らす人に多い経験
キースホンドの静電気で、最初に気づくのは音ではありません。乾いた季節に部屋でブラッシングをしていると、ブラシを持ち上げた先へ、首まわりのたてがみの毛先がついてきます。ブラシを止めると、毛は落ちずに立ったままです。1本ずつが少しずつ違う向きへ開いて、輪郭が一回りふくらんで見えます。触っても、指先に来るあの感触はありません。
手のひらを毛先に当てて、上から軽く押さえると、その場所だけは寝ます。手を離すと、数秒で元の形に戻ります。もう一度押さえると、また寝ます。押さえているあいだだけ収まって、離すと戻る。これが、キースホンドの静電気で多くの飼い主が経験する場面です。毛先に手をかけている時間は長いのに、何も変わっていきません。
同じときに、毛の中へ指を沈めてみてください。立っているのは外側の層だけで、指が入っていくと、途中から様子が変わります。内側の毛は動かず、指に絡んで、押し返してくるほど密に詰まっています。外は開いていて、中は詰まっている。この差が、キースホンドの静電気を考えるときの出発点になります。
もう一つ、覚えておきたい場面があります。ブラッシングを始めた直後より、10分ほど続けたあとのほうが、毛先はよく立ちます。始めたときには寝ていた背中の毛が、途中から持ち上がってくる。手を動かした時間の長さと、毛の立ち方がつながっています。キースホンドの被毛の中で、こすれ続けている場所があるということです。
- 毛先だけが立つ:根元の側は動かず、外側の層だけが開きます
- 押さえると寝て、離すと戻る:手を離した瞬間から数秒で元の形へ
- 指を沈めると内側は密:外の開き方と、中の詰まり方が逆になっています
- ブラッシングの途中から増える:時間が経つほど立ち方が大きくなります
- パチッという音は出にくい:痛みや音より先に、見た目のほうへ出ます
毛が大きく立つほど、静電気が強いように見えます。ところがキースホンドの上毛は、もともと体から離れて立つ作りをしています。静電気がなくても、この犬種の毛はある程度立っています。だから「今日は立っているから強い」という見方は、あまり当てになりません。見るなら、立っている量ではなく、ブラシを離したときについてくるかどうかのほうです。
立っているのは外側だけ|キースホンドの静電気が生まれている層の背景
キースホンドの被毛は、性質の違う2つが重なってできています。外側にあるのが上毛で、まっすぐで硬く、根元から先まで太さがあまり変わりません。内側にあるのが下毛で、細く、短く、綿のように密です。この犬種の上毛は、下毛の層に支えられて、体から離れる向きに立ち上がります。寝かせて流すのではなく、立てて空気の層をつくるための作りです。
オランダの運河で、船の上を歩いて見張りをしていた犬種です。水の上は風が抜けます。上毛を立てて風を受け止め、その内側の空気を下毛で抱え込む。これが、この体の作りが担ってきた仕事でした。だから上毛は根元の側で密に詰まり、先へ行くほど互いに離れていきます。外から見える部分は、隣の毛と触れていない部分です。
ここが、静電気の話につながります。ものとものがこすれ合うと、電気の偏りが生まれます。こすれるためには、触れていなければなりません。キースホンドの被毛でいちばん密に触れ合っているのは、上毛の根元と下毛が重なっている、内側の層です。外に出ている毛先は、隣の毛と離れているので、こすれる相手がほとんどいません。
| 外に出ている毛先 | 上毛と下毛のあいだの層 | |
|---|---|---|
| 毛どうしの距離 | 離れている | 密に触れ合っている |
| こすれる回数 | 少ない | 体が動くたびに繰り返し |
| 空気の通り | よく通る | ほとんど動かない |
| 乾きやすさ | 先に乾く | うるおいが残りやすい場所 |
| 静電気との関係 | 結果として立つ | 電気の偏りが生まれる |
| 手が届いているか | 毎回さわっている | ブラシが届いていないことが多い |
内側の層でこすれて生まれた電気は、その場所に留まりません。毛の1本1本をつたって、外側へ広がっていきます。行き着く先が毛先です。同じ向きに偏った毛先どうしは互いに離れようとするので、開いて立ちます。つまり、立っている毛先は、内側で起きたことの表示灯のようなものです。表示灯を手で押さえても、内側では何も変わりません。
ブラッシングを続けるほど毛が立ってくるのも、これで説明がつきます。ブラシの歯は、外側の毛先だけでなく、内側の層まで届いています。1往復ごとに、根元の側でこすれる回数が増えています。キースホンドは被毛の面が広いので、丁寧に回すほど、その回数は積み上がります。手を止めずに続けていると、静電気は減るのではなく増えていきます。
換毛期には、条件がもう一つ足されます。抜けた下毛は、密な層のあいだに留まって、すぐには外へ出てきません。留まった毛は、動かないまま、まわりの毛とこすれ続けます。換毛期のキースホンドで静電気が目立つのは、毛の量が増えたからではなく、内側の層にこすれる材料が増えているからです。
立っている毛は、起きている場所ではない|犬としてのキースホンドの静電気に向かう考え方
ここまでの話をひとことにすると、こうなります。キースホンドの静電気で、手を入れるべき場所は、立っている毛先ではありません。毛先は結果が出ているところで、原因が動いているのは、指を沈めないと届かない内側の層のほうです。手のかけ方を、外から内へ移すという考え方になります。
犬としてのキースホンドは、体の面が広く、内側の層まで手が届くのに時間がかかります。だから、全身を毎日ていねいに回そうとすると、こすれる回数のほうが先に増えます。回す面積を狭くして、そのぶん届く深さを上げるほうが、この犬種の被毛には合います。今日は首まわりだけ、明日は腰だけ、と決めてしまって構いません。
内側の層に手を入れるときは、上から押しつけないでください。指で毛を左右に分けて、層を1枚ぶんだけ出します。出した層に沿って、短くブラシを動かす。長いストロークで表面をなでるより、こすれる距離は短くなります。分ける線を少しずつ上へ移していけば、その一帯に届きます。キースホンドの被毛では、この分ける手間が、そのままこすれる回数の差になります。
湿りの届け方も、同じ考え方で変わります。部屋の湿度を上げると、まず変わるのは外側の毛先です。内側の層は空気が動かないので、部屋の湿りが届くまでに時間がかかります。加湿をした日の夜ではなく、翌日の朝に手ざわりが変わっていることのほうが多くあります。1日で判断せず、数日の幅で見てください。うるおいは、外から順番に入っていきます。
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ブラシを持つ前に、毛を分けて内側の手ざわりを確かめる
毛の流れと直角に指を沈め、地肌まで届くかどうかを見ます。途中で押し返されるなら、そこは抜けた毛が留まっている場所です。先に確かめておくと、その日にどこを回すかが決まります。確かめるだけなら1分で終わります。
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回す場所を1か所に絞って、層を1枚ずつ出す
首まわり、肩、腰、後ろ脚のうしろ。この日はここ、と決めます。分けた層の上だけを、短い距離で動かします。面を広げないぶん、同じ場所を何度も往復しないで済みます。キースホンドの静電気は、往復の回数に比例して大きくなります。
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留まっている抜け毛を、外へ運び出す
こすれる材料そのものを減らします。換毛期は、この工程だけで手ざわりが変わることがあります。抜けた毛が外へ出れば、内側の層で動くものが減ります。取りきろうとせず、その日に出た分だけで終えてください。
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終わったあと、毛先には触れずに手を離す
立っている毛先を寝かせようとして、最後になで直したくなります。そこでもう一度こすることになるので、静電気の観点では逆に働きます。形を整えるのは、翌日の手ざわりを見てからで構いません。
キースホンドの被毛は手ざわりがよく、外側をなでている時間が長くなりがちです。その時間を、そのまま内側の層を分ける時間へ移してください。触っている総量は変えず、触る深さだけを変えるという考え方です。ブラッシングの時間を増やす必要はありません。増やすと、内側でこすれる回数のほうが先に増えます。
触れているものの素材も、内側の話とつながっています。厚い被毛の犬は、抱き上げられたときに服と広い面で触れます。ラグや寝床の面も同じです。キースホンドの静電気を減らしたいときは、この子が1日でいちばん長く体を預けている面から見直すほうが早いことがあります。毛の側だけを何度も触るより、当たっている面のほうを1つ替えてみてください。
毛先が寝るのは最後|キースホンドの静電気で先に出てくる変化
内側の層に手が入るようになっても、見た目はすぐには変わりません。キースホンドの上毛は、もともと立つ作りだからです。毛先が寝ることを目印にすると、変化が出ていても気づけません。先に動くのは、もっと小さいところです。順番に挙げます。
- ブラシを離したとき、毛がついてこなくなる:いちばん早く出ます。数日で分かることがあります
- ブラッシングの後半で、立ち方が増えなくなる:こすれる回数が減った合図です
- 指を沈めたときの押し返しが弱くなる:内側に留まっていた毛が減っています
- 抜けた毛が、床に落ちるようになる:舞って服につく量が減ります
- 朝と夜の手ざわりの差が小さくなる:うるおいが内側まで届いています
- 毛先の開きがそろってくる:ここまで来るのがいちばん最後です
この順番で見ていくと、2週間ほどで最初の2つが動きます。動かないときは、回している面が広すぎるか、層を分けずに表面だけを通していることが多いです。手をかける量ではなく、届いている深さのほうを疑ってください。キースホンドの被毛では、この2つが混同されやすいところです。
毎日きれいにしておきたい、という日に使っているのが mofuwa グルーミングスプレーです。布に含ませて、分けた層に沿って根元の側をなでてください。立っている毛先へ直接吹きかけると、表面だけが湿って、届かせたい内側の層は乾いたままになります。ブラシを入れる前に根元の側の手ざわりがそろっていると、同じ1往復で内側にかかるこすれ方が変わります。洗う日はモイストシャンプーや入浴シャンプーで地肌まで洗い、洗う日と洗う日のあいだはグルーミングスプレーで層を分けながら整える。この2本で役割が分かれています。舐めても差し支えない基準(清涼飲料水の規格基準)をクリアしているので、面の広いキースホンドでも量を気にせず使えます。
季節が変わると、条件のほうが先に外れます。空気が湿ってくると、内側の層に残るうるおいが増えて、毛先の開きは自然に小さくなります。乾いた時期に手を入れた記憶は、次の冬にそのまま使えます。その年に何をしたかを短く書き残しておくと、翌年は同じ場所から始められます。キースホンドと暮らす時間は長いので、記録は1行で足ります。
地肌が赤い、フケのようなものが増えた、においがある、同じ場所をなめたりかいたりしている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、触ると痛がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、層を分ける手を止めて、動物病院にご相談ください。キースホンドは上毛の下が外から見えないので、地肌の変化に気づくのが遅れることがあります。首まわり・肩・腰・後ろ脚のうしろのどこで気づいたか、いつからかを1行書いてから連れて行ってください。
最後に、この記事でいちばん伝えたかったことをもう一度書きます。キースホンドの静電気で立っているのは外側の毛で、電気の偏りが生まれているのは、上毛と下毛が密に触れ合っている内側の層です。立っている場所と、起きている場所が違う。だから毛先を押さえても戻りますし、表面を長くなでるほど増えていきます。指を沈めて、層を1枚ずつ分ける。手を入れる深さを変えるだけで、この犬種の冬は少し静かになります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
