C05犬種・猫種別ケア
バセンジーはなぜ体のにおいが起きやすいのか。短毛から考える
玄関を入った来客が「犬、いるんだよね?」と言う。バセンジーと暮らしていると、この一言を何度も聞きます。姿は見えているのに、犬がいる家のにおいがしない。この犬種は、犬の中でも体臭が立ちにくいことで広く知られています。ところが数年暮らしたある夕方、膝に乗ってきたその子の耳のうしろだけが、いつもと違うにおいをしていました。ほかの場所はふだんどおりです。背景が静かな家では、ひとつだけが、そのまま輪郭を持って残ります。バセンジーの体臭は、強さの話ではなく、ひとつ出たときに何が読めるかという話になります。
来客がまず口にするのは、においのなさ|バセンジーの体臭をめぐる経験
バセンジーと暮らしている人が、外から来た人によく言われることがあります。犬がいるとは思わなかった、という一言です。玄関を開けた瞬間に、犬のいる家のにおいが立ってこない。ソファに犬用の毛布があり、床には水皿が置かれているのに、鼻のほうには何も届かない。この犬種と暮らしはじめた人が、最初の数か月でだいたい一度は経験する場面です。
だから、この犬の体臭は「どうやって減らすか」という形では話題になりません。ふだんは、ほとんど意識されないままです。意識されるのは、ある日ひとつだけが立ったときです。膝に乗ってきたときの耳のうしろ。抱き上げたときの前足の指のあいだ。額のしわの奥。全体がなんとなく強くなったのではなく、一点だけが、はっきりと違うにおいをしている。
毛の長い犬や下毛の厚い犬と暮らしていると、この出方はあまり起きません。日ごろから体全体がある程度のにおいを持っているので、一か所で起きた小さな変化は、その中に埋もれます。気づくのは、全体がひとまわり強くなったときです。そのころには、始まりの場所はもう分からなくなっています。
バセンジーではその順番が逆になります。背景が静かなので、ひとつ出た時点で気づけて、しかも場所がすでに特定されている。変化そのものは小さいのに、そこから読み取れることが多い。この犬と暮らすうえで、体臭はやっかいなものというより、いちばん早く動く手がかりの一つとして扱えます。
- ふだんの背景が静か:家に犬のにおいが積み上がりません
- 出るときは1か所:全体ではなく、点として立ちます
- 場所が最初から分かる:どこから来ているかを探す手間が要りません
- 気づくのが早い:埋もれないので、始まったばかりで拾えます
- 来客の鼻が使える:外から入った人の一言が、いちばん正確な物差しです
- ふだんを覚えておける:背景が単純なぶん、変化との差がはっきりします
背景が静かだと、日ごろ体に触れる回数そのものが減っていきます。においで呼ばれることがないからです。けれど、においが出ていないことと、皮膚に何も起きていないことは別の話です。この犬種では、においが手入れのきっかけになりません。だからこそ、においとは関係なく触る時間を、こちらから決めておく必要があります。触っていれば、ひとつ立ったときに「いつからか」が言えるようになります。
においが留まる場所を持たない被毛|バセンジーの体臭が立ちにくい理由
バセンジーは中央アフリカ、コンゴ盆地のあたりで生まれた犬です。藪の中を走って獲物を追い立てる仕事をしてきました。暑くて湿った土地で、一日じゅう動く。そのために被毛は極端に短く、細く、体にぴたりと寝ています。下毛はほとんどありません。熱を外へ逃がす必要があったので、毛を厚くする方向には進まなかった作りです。引き締まった体つきと長い脚も、同じ仕事から来ています。
ここで、においが強くなる仕組みのほうを見ます。においの成分は、出た瞬間に強いのではありません。どこかに留まって、そこで時間がたつことで強くなります。毛が長く、密で、二層になっている犬では、毛と毛のあいだに空気の層ができます。その層に皮脂と湿り気とにおいが入り込み、空気が動かないまま留まる。毛の中が、においの置き場所になっています。
バセンジーの被毛には、その置き場所がほとんどありません。毛が短くて体に寝ているので、皮脂は毛の表面に薄く広がり、そのまま空気に触れます。留まる時間が短ければ、そこで強くなる時間もありません。犬としては珍しいほど体臭が立ちにくいと言われる理由は、体質というより、この被毛の作りのほうにあります。
ただし、体のどこにも置き場所がないわけではありません。皮膚どうしが触れて、空気が止まっている場所だけは残ります。額のしわの奥、耳のつけ根と耳の内側、口のまわり、前足の指のあいだ、巻いた尾の内側とそのつけ根。ここは毛の長さと関係なく、面と面が合わさっているので、そこだけ空気が動きません。バセンジーで置き場所ができるのは、この数か所に限られます。
| 場所 | なぜ空気が止まるか | そこに移ってくるもの |
|---|---|---|
| 額のしわの奥 | 皮膚が折り重なっている | 皮脂と、こすれたときの汚れ |
| 耳のつけ根・耳の内側 | 耳が立っていても根元は閉じる | 皮脂と湿り気 |
| 口のまわり | 食器と毎日触れる面 | 食べもの・水・食器のふちの油分 |
| 前足の指のあいだ | 指と指が合わさっている | 散歩でついた汚れと湿り気 |
| 巻いた尾の内側 | 尾が体に接している | 皮脂と、寝床から移ったもの |
| 体の広い面 | 毛が短く、空気が通る | ほとんど留まりません |
この表の最後の行が、この犬種のいちばんの特徴です。背中や脇腹といった面積の広い場所は、においの置き場所になりません。つまりバセンジーで体臭が立ったとき、出どころは表の上の5行のどれかに、ほぼ絞られます。探す範囲がはじめから狭いので、気づいた日にその場で確かめられます。
毛が短く、皮脂が薄く広がっている犬です。洗う回数を増やすと、その薄い層がすぐに減ります。減ったぶんは体が出し直しますが、出し直しているあいだの皮膚は乾きやすい状態です。においが気になったからといって、全身を洗う回数を増やす方向へは寄せないでください。動かすのは、空気が止まっている数か所のほうです。
ひとつ出れば、それだけが輪郭を持つ|バセンジーの体臭で拾える変化の大きさ
背景が静かな家では、ひとつのにおいがそのまま輪郭を持ちます。そこで大事になるのは、強さではなく、5つの中身です。どこか、いつからか、どんな質か、そこが湿っているか、その場所を気にしているか。バセンジーではこの5つが、気づいたその日にほとんど揃います。他の犬種なら数週間かけて絞り込むことを、最初の日にやれるということです。
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どこか|手のひらで5か所を順に押さえて、手を嗅ぐ
額、耳のつけ根、口のまわり、前足の指のあいだ、尾の内側。手のひらを軽く当てて、そのまま自分の手を嗅ぎます。においが手に移る場所が、その日の1か所です。全身を嗅ぎ回る必要はありません。バセンジーは体の広い面には留まらないので、探す場所は最初から決まっています。
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いつからか|前に触ったのがいつだったかを思い出す
「昨日は何もなかった」と言えるかどうかで、その後の見方が変わります。言えないときは、そこから毎日触る時間を作ってください。日付が言えるだけで、変化の速さという情報が1つ増えます。速く出たものと、ゆっくり出たものでは、意味がまったく違います。
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どんな質か|言葉にして、その場でメモする
酸っぱい、甘い、生ぐさい、金属のような。正確な表現でなくて構いません。自分の言葉で残しておくと、次に嗅いだときに比べられます。質が変わったかどうかは、強くなったかどうかより先に見る情報です。バセンジーは背景が静かなので、質の違いがそのまま拾えます。
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湿っているか|その場所を、乾いた布で軽く押さえる
布に湿り気が移るかどうかを見ます。湿っている場所は、空気が止まっているうえに、乾く時間も足りていない場所です。指のあいだと耳のつけ根は、ここで差が出やすい場所です。乾いていて、においだけがあるときは、別の見方をします。
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気にしているか|その場所への行動が変わったかを見る
かく、床にこすりつける、触られるのを避ける。においより先に行動が変わっていたなら、順番としては皮膚のほうが先に動いています。この場合、においは結果として出てきたものです。家で追いかける話ではなくなります。
5つが揃ったら、1週間そのまま記録します。毎日「同じ場所・同じ質・湿り気の有無」の3つだけを書く。強さを点数にしなくて構いません。バセンジーの体臭は、点数にするほどの幅で動かないことのほうが多いからです。動くのは、場所が増えたかどうかと、質が変わったかどうかです。
| 1週間後の動き | 読み方 |
|---|---|
| 同じ場所・同じ質のまま | 空気が止まっている条件が続いています。その場所の乾く時間を作る |
| 場所は同じで、質が変わった | 強さではなく質の変化です。家で追いかけないほうが安全です |
| 場所が2か所、3か所と増えた | 1か所の話ではなくなっています。相談の目安に入ります |
| 1〜2日で消えた | 外から一時的についたものだったと考えられます |
| 消えたのに、同じ場所へ戻る | 戻る間隔を書き足してください。間隔が短くなるかを見ます |
この記録が、この犬種でいちばん価値のあるものになります。背景が静かなので、記録の一行一行がぼやけません。毛の中に留まるにおいがある犬では、記録をつけても「全体としてなんとなく」という書き方になりがちです。バセンジーでは、場所と質がはっきり書けます。相談することになったときに、この差がそのまま役に立ちます。
基準が低いまま暮らす|バセンジーの体臭に向き合うときの考え方
ここまでで分かるのは、この犬種で守りたいのが背景の静かさそのものだということです。背景が上がってしまうと、ひとつ立ったときの輪郭がぼやけます。手を入れる先は、体を強くこするほうではなく、においが留まる場所を増やさないほうへ向きます。毎日やることは多くありません。
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寝床の布を、週に1回洗う
毛が短い犬は、体と布の距離が近くなります。皮脂は毎日そこへ移り、移った先で時間がたちます。体をいくら拭いても、翌朝また同じ布の上で寝れば戻ります。カバーを2枚用意して、洗う日を曜日で決めてしまうと止まりません。ソファに掛けている布や、車のシートに敷いているものも同じ扱いです。
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食器と水皿を、1日1回洗って乾かす
口のまわりは、バセンジーで数少ない置き場所の一つです。食器のふちに残った油分は、次の食事でそのまま口まわりへ戻ります。水皿はぬめりが出る前にこすってください。口まわりのにおいだけが翌日には戻るという場合、動かすのは布の回数ではなく食器のほうです。ここは1〜2日で結果が出ます。
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空気が止まる数か所だけ、乾いた布で押さえる
全身を拭く必要はありません。額のしわ、耳のつけ根、指のあいだ、尾の内側。まず乾いた布で押さえて、湿り気を先に取ります。湿ったまま拭き足すと、乾く時間が延びるだけです。乾いた布のあとで、必要なところだけ湿らせた布を当ててください。1か所につき10秒あれば足ります。
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部屋の窓を、1日2回・5分ずつ開ける
換気は体臭を減らす手ではありません。家の背景を上げないための手です。背景が上がると、その子のひとつが埋もれます。バセンジーで拾える情報の多さは、背景が静かであることの上に成り立っています。寒い時期でも、犬が起きて動いている時間に短く開ければ足ります。
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洗う回数は、増やさずに保つ
短い被毛は、落としすぎの影響が早く出ます。皮脂の薄い層が減ると、そのあいだ皮膚は乾きやすい状態になります。においがひとつ出たからといって、全身を洗う回数を増やさないでください。1か所の話は、1か所で終わらせるのが、この犬種では合っています。
この犬種で気をつけたいのは、洗う回数ではなく、その一回でどれだけ持っていくかのほうです。毛が短く、皮脂が薄く広がっている体では、しっかり洗えたという手ごたえと、取りすぎたという結果が同じ日に重なります。取られた皮脂は数日かけて戻りますが、戻っているあいだの背景は、ふだんの静かさとは違うところに置かれます。ひとつ立ったときに読めるというこの犬種の利点は、そのあいだだけ働きません。
mofuwa モイストシャンプーに、香料は入っていません。ペットは自分のにおいを好むので、余分なにおいが乗ること自体が、その子にとっては負担になるからです。バセンジーでは、そこに理由がもう一つ増えます。洗ったあとに香りが残ると、ひとつ立ったかどうかを翌日に比べられません。背景を静かなまま保つというのは、においを減らすことだけでなく、においを足さないことでもあります。
洗う日は、置き場所になっている5か所——額のしわ、耳のつけ根、口のまわり、指のあいだ、尾の内側——を先に泡で満たしてから、体の広い面へ手を広げてください。広い面はもともと留まらない場所なので、時間をかける必要がありません。こすらずに、しわを開いて泡を置いていくだけにします。奥まで流せたかどうかは、乾かしたあとにもう一度そこへ指を入れて、指の腹がすべるかどうかで分かります。
においの質が急に変わった、においの出る場所が2か所以上に増えた、その場所の皮膚が赤い・じくじくしている、耳を気にして頭を振る、同じ場所をかき続けている、触ると痛がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、拭く回数を増やす前に動物病院にご相談ください。バセンジーはふだんの背景が静かなぶん、変化がそのまま輪郭を持って出てきます。迷ったら早いほうを選んでください。
相談に行くときは、1週間の記録をそのまま持って行ってください。場所・いつからか・質・湿り気の有無。この4つが書いてあるだけで、その場でできる切り分けの幅が変わります。前の晩に念入りに洗ってから連れて行くと、もとの状態が分からなくなります。気になる場所は、そのまま連れて行ってください。
バセンジーと暮らすうえで、体臭が立ちにくいこと自体は変わりません。暑い土地で藪の中を走るために、この犬種がそなえた被毛の作りだからです。その静かな背景は、においを気にしなくていいという意味ではなく、ひとつ立ったときに読めることが多いという意味です。置き場所は数か所しかない。出たときは、そのどれかに絞れる。バセンジーの体臭は、減らすものというより、いちばん早く届く一報として受け取るほうが、この犬種には合っています。
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mofuwa モイストシャンプー
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
