C12Q&A・豆知識
耳の毛は抜くべき?
垂れ耳の犬の耳の入口に、細い毛が束になって生えていることがあります。犬の耳毛を抜くべきかどうかは、一律には決まりません。決め手になるのは、その子の耳が乾いているかどうかです。乾いている耳なら、抜く理由がありません。耳毛を抜くという作業がやっているのは、毛の量を減らすことよりも、耳の中に空気を通すことのほうだからです。空気がすでに通っているなら、目的は先に達しています。この記事では、犬の耳毛を抜くかどうかを、毛の量よりも耳の乾き方から決める見方に置き換えて、8つの問答に分けて書きます。ただし、家で抜く手順は書きません。その理由も、途中で物として説明します。
犬の耳毛は抜くべきですか
答えは条件で割れます。耳の中が乾いていて、においが翌日に戻らず、耳の入口の毛が穴をふさいでいないなら、犬の耳毛を抜く理由はありません。湿った状態が続いている、毛が密に詰まって空気の通り道が細くなっている。そういうときにはじめて、抜くかどうかが問題になります。抜く・抜かないは犬種で決まるものではなく、その日のその子の耳の状態で決まります。
犬の耳毛の話がややこしく見えるのは、「抜いたほうがいい」と「抜かなくていい」の両方を見かけるからです。どちらも間違ってはいません。見ている耳が違うだけです。耳の中が湿りやすく、毛が濃く、垂れ耳で入口がふさがれている子を前にすれば、空気を通す話になります。乾いていて毛も少ない子を前にすれば、触らないという話になります。同じ言葉で、別の耳のことを話しています。だから、よそで見た結論をそのまま持ってきても、自分の家の子には当たりません。
猫の場合は、耳の入口に毛が密に生えている子が少なく、耳毛を抜くという話題そのものがあまり出てきません。この記事は犬の耳毛を中心に書きますが、見るところが「乾いているか」である点は、犬でも猫でも変わりません。猫の耳のまわりで気になることが出たときも、毛の量ではなく、湿りが続いているかどうかから見ていくことになります。
毛の量を基準にすると、毛が多い子は全部抜く、少ない子は放っておく、という決め方になります。けれど、毛が多くても隙間があれば空気は通りますし、毛が少なくても皮脂で毛が束になれば通りません。量は目に入りやすいので基準にしたくなりますが、実際に効いているのは、その隙間のほうです。犬の耳毛を見るときは、本数ではなく、毛と毛のあいだに空きがあるかどうかを見てください。
耳毛を抜くのは、そもそも何のためにやることなのですか
作業の中身を、物として書いておきます。犬の耳毛を抜くことでやっているのは、耳の入口にある通り道の断面を空けることです。毛が密に生えていると、耳の穴の入口が毛で埋まります。埋まると、中の空気が入れ替わりにくくなります。抜くのは、その入れ替わりを戻すための作業です。毛そのものを敵にしているわけではありません。
この目的が分かると、判断の順番が入れ替わります。最初に見るのは毛の量ではなく、空気の通りのほうになります。空気が通っているかどうかは、毛の本数を数えても分かりません。分かるのは、耳の中が乾いているか、拭いたあとににおいが戻るまでにどれくらいかかるか、といった、通ったあとの結果のほうです。
| 毛を減らす作業だと考えると | 空気を通す作業だと考えると | |
|---|---|---|
| 目安にするもの | 耳毛の量が多いか少ないか | 毛と毛のあいだに空きがあるか |
| やる間隔 | 生えてくるたび、定期的に | 通らなくなったときだけ |
| 終わりの決め方 | 見えている毛がなくなったら | 空気が通るようになったら |
| 乾いている耳では | それでも抜く理由が残る | 抜く理由がなくなる |
| 誰が決めるか | 見た目で人が決められる | 耳の中を見られる人が決める |
| 失敗の形 | 抜きすぎ、抜きつづける | 湿りに気づくのが遅れる |
耳の入口の毛には、外からのほこりや小さな虫が入りにくくなるという役目もあるとされています。全部なくすことが目的ではありません。ここを取り違えると、毎回きれいに抜き切ることがゴールになってしまいます。空気を通すという目的から見れば、必要なのは通り道の分の隙間だけで、それ以上は要りません。
もう1つ、順番の話をしておきます。耳の中が湿るのは、毛があるからだけではありません。洗ったあとに乾ききっていない、雨で濡れたままだった、垂れ耳が入口をふさいで空気が回らない。こうした条件が重なると、毛の量とは関係なく湿りが続きます。犬の耳毛を抜く前に確かめておきたいのは、毛より先に、この条件のほうです。
うちの子の耳が乾いているかは、どこを見れば分かりますか
耳の中に指や道具を入れずに、外から見て分かることだけを並べます。ここで見るのは、耳の入口とそのまわりだけです。奥をのぞきこもうとすると、かえって触りすぎになります。毎日のケアのついでに、数秒で終わる範囲で足ります。
- 耳の内側のふちの皮膚:さらりとしているか、しっとりと光っているか。触らず、光の当たり方で見ます
- においの戻り方:ケアをした翌日ににおいが戻るなら、乾いている時間が足りていません
- 耳を振る回数:1日に何回振ったか。数えられるのは飼い主だけです
- 入口の毛の様子:ばらけているか、湿って束になって寝ているか
- 左右の差:片側だけ違うときは、耳毛の量ではなく別の条件が効いています
- 洗ったあとの残り方:全身が乾いても耳のまわりだけ湿っているなら、そこが最後に乾く場所です
この6つは、どれも耳の中に何も入れずに分かります。犬の耳毛を抜くかどうかを考える段階では、これで足ります。耳の中の様子まで見る必要が出てきたときは、そこがもう家の判断の外側です。奥のほうに何かが見えている、耳の入口が赤い、触ると嫌がる。そういうときは、抜く抜かないを考える前に動物病院にご相談ください。
| 見るところ | 乾いている耳 | 湿りが続く耳 |
|---|---|---|
| 入口の毛 | 1本ずつばらけている | 束になって寝ている |
| ふちの皮膚 | さらりとして見える | しっとり光って見える |
| においの戻り | 翌日は戻っていない | 翌日にはもう戻っている |
| 振る回数 | 日によって増減しない | 日ごとに増えている |
| 左右 | 同じように見える | 片側だけ様子が違う |
| 洗ったあと | 全身と同じころに乾く | 耳のまわりだけ最後まで残る |
1週間だけ記録してみると、この表のどちら側かが決まります。書くのは、耳を振った回数と、においが戻ったかどうかの2つだけです。被毛の手入れの記録と一緒に、日付の横に数字を1つ書けば済みます。7日分たまると、その子の平常値が出ます。平常値があると、次に変わったときにすぐ気づけます。耳毛を抜くかどうかの判断も、この平常値の上で考えるほうが早く決まります。
乾いている耳でも、念のため抜いておいたほうがいいですか
乾いている耳では、抜く理由が立ちません。空気を通すという目的が、すでに達しているからです。目的が達している作業を続けると、残るのは作業のほうだけになります。犬の耳毛を抜くことそのものは、皮膚から毛を引き抜く作業です。目的のない引き抜きを毎月重ねる意味は、あまりありません。
「念のため」は、積み上がると間隔になります。1回きりのつもりが、生えてくるたびの作業になり、やがて予定表に載ります。そうなると、その日の耳の状態を見なくなります。予定に入っているからやる、という形に変わってしまうからです。判断が要らなくなるのは楽ですが、その楽さと引きかえに、湿りが出はじめたときの気づきが遅れます。
予防という言葉を使うなら、その中身はこうなります。繰り返しにくい条件をつくること、つまり乾く時間を確保することのほうです。毛を先に減らしておくことではありません。洗ったあとに耳のまわりから乾かす、雨の日は帰ってすぐ水気を取る、寝床を湿ったままにしない。どれも耳毛には触れませんが、空気を通すという目的には届いています。
耳の入口に毛が生えていること自体は、その子の体のつくりです。生えていることと、通り道がふさがっていることは、別のことです。ふさがっていないなら、生えていても困りません。犬の耳毛を抜くかどうかで迷ったときは、「毛があるか」ではなく「隙間があるか」に置き換えて考えると、迷う回数そのものが減ります。判断の材料を、目に入りやすいものから、実際に効いているものへ移す作業です。
家で犬の耳毛を抜くのは、どうしてすすめられないのですか
この記事では、家で犬の耳毛を抜く手順を書きません。やり方を伏せているのではなく、手順の形にすると、いちばん大事な判断の部分が抜け落ちてしまうからです。手順は「やると決めたあと」のものです。この記事が書きたいのは、その手前の「やるかどうか」のほうになります。理由は、気持ちの問題ではなく、物の条件として5つあります。
- 耳毛は皮膚から生えています:抜けば根元に空いた部分が残ります。乾いていない耳では、そこが湿りにさらされます
- 力の加減を人が測れません:犬が動いた瞬間に、意図した力より強くかかります。動く方向は選べません
- 垂れ耳では奥が見えません:通り道は途中で向きが変わるので、外から全部は見通せません
- どこまで抜いたかが分かりません:本数も範囲も自分では数えられず、「まだ残っている」で続けてしまいます
- 痛がっているかを確かめられません:その場で犬に聞けません。嫌がる理由が痛みなのか音なのかも分かれません
5つを並べると、共通点が見えます。どれも「その場で確かめられない」という形をしています。確かめられないものが多い作業ほど、途中で止める判断が難しくなります。サロンや動物病院がこの作業を引き受けているのは、腕の差というより、耳の中を見る道具と、途中でやめる基準を持っているからです。
だから、家でやることと任せることの線はここに引けます。家でやるのは「乾いているかを見ること」まで。抜くかどうかの判断と、実際に抜く作業は、耳の中を見られる人に渡します。毎日のケアの中で犬の耳毛を見る習慣があれば、渡すときに伝えられることが増えます。それが、家の側でできるいちばん大きな仕事です。
耳の入口が赤い、触ると嫌がる、頭を片側に傾けている、耳を振る回数が急に増えた、においが日ごとに強くなる、耳のまわりの毛が抜けている。こうした変化があるときは、犬の耳毛を抜く抜かないを家で決める前に、動物病院にご相談ください。耳の中で何が起きているかは、家からは見えません。いつから、どちらの耳で、1日に何回振っているか。この3つをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
サロンや動物病院では、抜く・抜かないをどう決めているのですか
任せる側として知っておくと安心なことを書いておきます。耳の中を見られる人は、まず「今どうなっているか」から決めます。毎回すべての耳毛を抜くわけではなく、通り道の分だけ、その日に必要な範囲で手を入れることになります。だから、前回と今回で範囲が違うことがあります。違って当然です。その日の耳が違うからです。
こちらから伝えられることがあると、その判断が早くなります。飼い主にしか分からない情報が、いくつもあります。耳の中を見られるのは向こう側ですが、1日に何回振っているか、においが翌日に戻るか、洗ったあと耳のまわりが最後まで湿っているかは、家にいる人しか知りません。
-
耳を振る回数を、3日分だけ数えておく
正確でなくて構いません。「1日2〜3回」「10回以上」くらいの粗さで足ります。数字があると、次に行ったときと比べられます。
-
においが戻るまでの日数を書いておく
ケアをした日を0日として、においが戻ったと感じた日を書きます。この日数が、乾いている時間の長さの代わりになります。
-
洗った日と、乾かし終えた時刻をメモする
耳のまわりが最後まで残ったかどうかも一緒に。湿りの理由が耳毛ではなく乾かし方にあることが、ここで分かる場合があります。
-
前に抜いてもらった時期を伝える
間隔が分かると、次にどうするかを決めやすくなります。分からなければ「覚えていない」でも構いません。
| 聞くこと | 聞いておくと何が変わるか |
|---|---|
| この子の耳は、抜く必要がありますか | 毎回やるものだという前提を、いったん外せます |
| どこまで抜きましたか | 家で見るときの基準が、その範囲になります |
| 次はどのくらい先に見せればいいですか | 予定ではなく、状態で間隔を決められます |
犬の耳毛の話で家と外の役割を分けると、こうなります。家は毎日見る側、外は中を見て手を入れる側です。どちらか一方だけでは決まりません。毎日見ているからこそ「いつもと違う」が分かり、中を見られるからこそ「どうするか」が決まります。この分担ができていれば、抜くべきかどうかで迷う時間はかなり短くなります。
抜かない子の毎日のケアでは、耳のまわりに何ができますか
耳毛を抜かないと決めた子でも、やれることはあります。目的が「空気を通すこと」なら、毛以外の側からも近づけるからです。耳の中には何も入れません。手を入れるのは、耳のまわりの被毛と、乾く時間のほうです。どれも毎日のケアのついでにできる範囲で足ります。
- 洗ったあとは、耳のまわりから先に乾かす:最後に回すと、そこだけ湿ったまま残ります
- 入口にかぶさる被毛を、指で持ち上げて風を通す:垂れ耳の子ほど、ここで差が出ます
- 雨の日や水辺のあとは、帰ってすぐ耳のまわりの水気を取る:時間がたつほど乾きにくくなります
- 寝床が湿っていないか、週に1度だけ触って確かめる:顔の当たる側が湿っていることがあります
- 耳のまわりの毛が伸びすぎていないか見ておく:切るかどうかは、抜くかどうかとは別の話として相談できます
耳のふちと、その下の皮膚は、犬の側からは触りようのない面です。前足でかくことはできますが、あれは触るというより叩く動きで、湿りを取る動きにはなりません。mofuwa スキンケアミストは、犬猫の皮膚がヒトのおよそ3分の1の薄さで、しかも口の届く場所は舐めてしまう、という前提から組み立てられた電解水のミストです。耳の中には使いません。布に取って、耳のふちと、めくって見える範囲の外側だけを通します。散歩から帰って足の裏や口のまわりを拭くついでに、耳のまわりも1回だけ通すと続きます。
抜くかどうかの判断は、耳の中を見られる人が持っています。家でやっているのは、犬の耳毛を抜く抜かないという判断が必要になる回数を、先に減らしておくことのほうです。乾いている時間が長い耳では、そもそも相談の材料が出てきません。毎日のケアの意味は、そこにあります。
乾いているかどうかで決める|犬の耳毛をめぐる8つの答え
ここまでを、8つの短い答えに畳んでおきます。覚えておくのは、いちばん上の1行だけで足ります。
| 問い | 短い答え |
|---|---|
| 抜くべきですか | 乾いていて、通り道がふさがっていなければ、抜く理由はありません |
| 何のための作業ですか | 毛を減らすためではなく、耳に空気を通すためのものです |
| 乾いているかは、どう見ますか | 入口の毛・ふちの皮膚・においの戻り・振る回数・左右差を見ます |
| 念のため抜くのは | 目的が達しているので、理由が立ちません |
| 家で抜けますか | 確かめられないことが多すぎるので、任せる側の作業です |
| 外ではどう決めていますか | その日の耳を見て、通り道の分だけ手を入れています |
| 家では何ができますか | 乾く条件を作ることと、毎日見て記録することです |
| いつ相談しますか | 赤み・傾き・振る回数の増加・においが強まったときです |
この表を上から読むと、犬の耳毛の話が「毛の話」から「乾きの話」に置き換わっていることが分かります。毛の量は目に入りますが、決めているのは空気の通りのほうです。目に入るものと効いているものがずれているとき、人は目に入るほうを基準にしてしまいます。耳毛を抜くべきかという問いが繰り返し出てくるのは、そのずれが理由です。
最後に、この記事で答えられないことをはっきりさせておきます。その子の耳を実際に見ていないので、抜くべきかどうかは決められません。書けたのは、決める材料と、その材料をどこで手に入れるかまでです。材料を持って相談に行けば、その場で決まります。
耳を振る回数が増えた、頭を傾けている、耳の入口が赤い、触ると嫌がる、においが日ごとに強くなる、耳のまわりの毛が薄くなった、片側だけ様子が違う。こうした変化が続くときは、犬の耳毛を抜くかどうかを家で決めたり、耳のケアの回数を増やしたりする前に、動物病院にご相談ください。皮膚のほうに何かが起きていて、その結果として湿りが続いている場合もあります。いつから、どちらの耳で、1日に何回振っているか。この3つを書いて持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
