C09シーン別・暮らし
赤ちゃんが生まれた家、シニア猫と暮らす人はどうしている?
ベビーベッドを寝室に入れた週から、その子が窓際で寝ている時間が、1日16時間から細切れになりました。場所は変えていません。変わったのは、夜中にその窓際の横を人が3回通るようになったことだけです。うちの子は17歳で、一日のほとんどを同じ1か所で過ごしています。赤ちゃんが来ると、家の中から静かな場所が先に減ります。そして老猫は、そこが静かでなくなっても自分からは移りません。他に知っている場所がないからです。ペットの側で何かが起きているというより、家の音のほうが動いた、という話です。この記事では、寝床を持って運ぶのではなく、その子が自分で移れるようにするための手順を5つに分けて書きます。
赤ちゃんが来た月に、家から静かな部屋が2つ減りました|老猫が長く寝ている場所の前提
最初に、家の音がどう動いたかを書きます。赤ちゃんが来た月、寝室にベビーベッドが入りました。夜中に人が起きて、明かりがついて、廊下を通ります。同じ月に、洗濯機を回す回数が1日1回から2回になりました。部屋の数は変わっていませんが、静かな時間が続く部屋は2つ減っています。寝室と、洗濯機のある脱衣所です。どちらも、その子が長く寝ていた側の部屋でした。
老猫は、一日の大半を寝て過ごします。うちの子は17歳で、朝から夕方まではほとんど窓際にいます。ここで大事なのは長さではなく、寝る場所が1か所に決まっていることのほうです。若い猫は、日差しの向きや室温で寝る場所を変えます。年を取ると、移動そのものが減るので、1日のうちに使う場所の数が少なくなります。うちの子が一日に使っていた場所は、水の器を含めて3か所だけでした。
だから、その3か所のうち1つが静かでなくなっても、行き先がありません。ペットのケアの話をする前に、ここを先に見ておく必要がありました。赤ちゃんが来た家で老猫が同じ場所にいるのは、そこが気に入っているからとは限りません。他に知っている場所がないので、動かないだけ、という状態がありえます。実際、うちの子は窓際にいたまま、寝ている時間が2時間ごとに切れるようになりました。
- 音の回数が増えた:夜中に廊下を通る回数、明かりのつく回数、洗濯機の回数
- 音の出る時刻がばらけた:日中にまとまっていた家事が、朝と夜にも分かれた
- 人の通り道が増えた:台所と寝室を往復する回数が、以前の数倍になった
- ものが増えた:床に置くものが増えて、その子が通っていた経路が細くなった
- ドアの開け閉めが増えた:閉めておく部屋ができて、入れる場所が1つ減った
- 変わらなかったもの:その子の寝場所。3か所のまま、1か所も増えていない
泣き声も、洗濯機も、夜中の明かりも、減らせるものではありません。減らそうとすると、家族の生活のほうに無理が出ます。ここで動かせるのは、その子が使える場所の数のほうです。いまの3か所に、静かな時間が長い場所を1つ足す。足りないのは静けさそのものではなく、選べる行き先です。ペットの側に我慢してもらう、という組み立てにはしません。
耳で1週間測ってから、部屋を1つ決める|老猫の静かな場所を作り直す5つの手順
手順は5つです。全部を1日でやろうとしないでください。1つ目に1週間かかりますし、4つ目は待つだけの時間です。赤ちゃんが来た家では、こちらの手が空く時間も限られます。1週間ぶんの記録と、布1枚と、待つことでできています。道具を買う手順はありません。ペット用品を足す前に、場所のほうを決めます。
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1週間、部屋ごとの音を耳で測る
決まった時刻に、部屋の真ん中で30秒立って、聞こえた音を紙に書きます。朝7時・昼2時・夜9時の3回。書くのは「大・中・小」の3段階と、聞こえたものの名前だけです。機械は要りません。その子が受け取っているのも、機械の数値ではなく、いま聞こえている音だからです。1週間で21行たまります。赤ちゃんのいる家では、抱いたまま立つことになりますが、それで構いません。
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いちばん静かな部屋ではなく、ぶれの小さい部屋を選ぶ
21行を見て、部屋を1つ決めます。選ぶ基準は「いちばん静かだった部屋」ではありません。朝・昼・夜で段階が動かなかった部屋のほうを選びます。老猫が困るのは大きな音そのものより、静かだと思っていた場所が急にうるさくなることのほうです。うちは、いちばん静かだったのは納戸でしたが、洗濯物を出し入れするたびに段階が動くので外しました。
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寝床を移す前に、その部屋へ古い布を1枚だけ置く
決めた部屋の、壁が2面あって片側からしか人が来ない角に、洗っていない古い布を1枚置きます。その子が寝ていた場所に敷いてあったもので構いません。洗ってしまうと、その子のにおいが消えます。においが残っている布は、老猫にとって「もう知っている場所」の合図になります。新しいベッドを買って置くのは、この段階ではしません。
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自分で移るのを待つ。抱いて連れて行かない
ここが手順の本体です。待つ期間を先に決めておきます。うちは2週間にしました。その間、こちらからは何もしません。連れて行かない、呼ばない、布の場所を動かさない。老猫は、新しい場所を1日では選びません。数日は前を通るだけで、そのうち座って、そのあと寝るようになります。移った日を紙に書いておくと、あとで役に立ちます。
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移ったら、水を先に、数日おいて食事をそこへ運ぶ
寝る場所として使い始めたら、水の器をその部屋へ移します。食事は同じ日にせず、3〜4日おいてからにしてください。変化を1つずつにするのは、この5つの手順で通しています。水と食事が移ると、こちらがその部屋へ毎日行く用事ができます。老猫の毎日のケアで、これが効いてきます。
| 部屋 | 朝7時 | 昼2時 | 夜9時 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 寝室 | 中(廊下の足音) | 小 | 大(明かり・泣き声) | ぶれが大きい。外す |
| 脱衣所 | 大(洗濯機) | 大(洗濯機) | 中 | 音が続く。外す |
| 台所 | 大 | 中 | 大 | 人が立つ回数が多い。外す |
| 納戸 | 小 | 小 | 小 | 出し入れのたびに動く。外す |
| 和室 | 小 | 小 | 小 | 1週間、段階が動かなかった。ここに決めた |
| 玄関 | 中 | 中 | 中 | 宅配が増えた。外す |
この表を作ってから決めると、家族にも説明しやすくなります。「和室にこの子の場所を作る」ではなく、「1週間測って、和室だけ音の段階が動かなかったから、そこにする」という言い方になります。赤ちゃんが来た家では、部屋の使い方をめぐる相談が増えます。記録が1枚あると、その相談が短く済みました。ペットの居場所を決める話も、感覚ではなく紙の側に置けます。
寝床ごと持って運ぶとつまずきます|赤ちゃんとペットの毎日で、待つ側にまわる順番
最初にやってしまったのが、これでした。その子が寝ていたベッドを持ち上げて、和室へ運びました。結果は、その子は窓際の、ベッドが置いてあった床のうえで寝ました。老猫が覚えているのは、寝床という物ではなく、場所のほうです。物を動かしても、場所は動きません。運んだ翌日にベッドを元へ戻して、手順を組み直しました。
つまずくところは、だいたい決まっています。下に並べたのは、うちで実際にやってしまったことと、途中で気づいてやめたことです。共通しているのは、どれも「早く移ってほしい」という理由から出ていることでした。赤ちゃんが来た家では、こちらに待つ余裕がなくなります。だから、待つ期間を先に決めて紙に書いておく、という順番にしました。
| つまずき | 何が起きたか | 代わりの手 |
|---|---|---|
| 寝床ごと運んだ | 床の同じ場所で寝た。物ではなく場所を覚えている | 布を1枚、新しい部屋に置くだけにする |
| 抱いて連れて行った | 10分でもとの場所へ戻った | 自分で歩いて行くまで待つ |
| 布を洗ってから置いた | 3日間、近づきもしなかった | 洗わない布を使う。においを残す |
| 新しいベッドを買った | 上に乗らないまま2週間過ぎた | 先に古い布。新しい物は移ったあと |
| 家全体を静かにしようとした | 家族の生活が回らなくなった | 1部屋だけを静かに保つ |
| 水と食事を同じ日に移した | 食事の場所が分からず、器の前で立ち止まった | 水が先、3〜4日おいて食事 |
| 移らないので3日でやめた | 元の場所のまま、細切れの睡眠が続いた | 2週間と決めて、その間は触らない |
待つ期間を2週間にしたのは、老猫が新しい場所を選ぶまでの日数に幅があるからです。うちの子は9日目に和室で寝ました。2週間たっても移らなかったときは、布をもう1枚足すか、部屋そのものを選び直します。足すのは布であって、こちらの手ではありません。回数を増やすと、そこは人が来る場所になってしまい、静かな場所として成り立たなくなります。ペットのケアで頻度を上げたくなる場面ですが、ここは上げないところです。
音がまったく届かない部屋を探すと、たいてい見つかりません。うちの和室にも、泣き声は届いています。選んだのは、朝・昼・夜で音の段階が動かない部屋でした。老猫にとっては、大きさより、変わらないことのほうが効きます。ペットの側に完全な静けさを用意しようとすると、赤ちゃんのいる家では手順そのものが止まります。届いていい、という前提から始めてください。
移ったあとに水と食事を運ぶ|老猫の被毛と皮膚を毎日見るコツと、動物病院に相談するやり方
移ったあとに、もう一つ起きることがあります。静かな部屋は、こちらが行く回数の少ない部屋でもあります。これまで、その子は家族が集まる部屋の窓際にいたので、通りがかりに毎日見ていました。和室に移ってからの数日、こちらがその部屋へ入る用事がありませんでした。老猫のケアで、これはいちばん避けたい形です。だから、水と食事をそこへ運びます。用事のほうを作る、という順番です。
老猫は、自分でできる量が減っています。毛づくろいで口が届く範囲が狭くなり、届かない場所を人が代わりに触ることになります。後ろ足のつけ根、尾のつけ根、背中の真ん中、あごの下。この4か所は、赤ちゃんが来ても来なくても変わらず、人の手が要る場所です。赤ちゃんが来た家で変わるのは、その手を出せる時刻と回数のほうでした。
| いつ | 見る場所 | 何を見るか |
|---|---|---|
| 朝、水を替えるとき | 水の減り方 | 前の日より多い・同じ・少ない、の3段階だけ |
| 朝、水を替えるとき | あごの下 | 食べたあとの汚れが残っていないか |
| 夜、食事を出すとき | 背中の真ん中 | 毛の流れが寝たままになっていないか |
| 夜、食事を出すとき | 尾のつけ根 | 毛が固まっている場所がないか |
| 週に1回 | 後ろ足のつけ根 | 被毛の下の皮膚が見える程度に分けて見る |
| 週に1回 | 体重 | 同じ曜日、同じ時刻に |
触る回数は増やしていません。増やしたのは、その部屋へ行く用事の数だけです。水を替えるのと食事を出すので1日2回。そのついでに、上の表の1〜2行を見ます。老猫は、触られている時間そのものが体力を使うので、赤ちゃんが来た時期に手数を増やすのは向いていませんでした。見るだけの回数を増やして、手を入れるのは週に何回か、というやり方に落ち着いています。ペットの毎日のケアは、触る時間より、目を通す回数のほうが動かしやすいところでした。
水を使わない日のケアも、この部屋でやるようにしました。猫用の洗い流さないグルーミングウォーターを布に含ませて、あごの下と尾のつけ根を毛の流れに沿って一往復。猫用は噴射の音が出にくい容器なので、静かな場所として作った部屋でも使えます。体に直接吹きかけず、布に取ってから当てるのは、老猫が音そのものに反応するからです。汚れを落としきるためではなく、届かなくなった場所に人の手を通しておくためのものです。
静かな場所へ移ってから2週間たっても、寝ている時間が細切れのまま、食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、体重が落ちている、トイレの回数が変わったまま、同じ場所をなめ続けている、触ると声を出す、被毛の一部が固まったまま戻らない。こうした変化が続くときは、部屋の音の話として扱わずに、動物病院にご相談ください。1週間ぶんの音の記録と、移った日を書いた紙、体重の推移を持っていくと、そのまま伝えられます。赤ちゃんが来た時期は、家の側の変化と、その子自身の変化が重なりやすい時期です。迷ったときは早いほうを選んで構いません。
最後にもう一度書いておきます。この手順は、老猫を新しい部屋へ移すためのものではなく、移れるようにするためのものです。動かすのは布1枚と、水と食事の置き場所だけ。決めるのは部屋で、選ぶのはその子です。赤ちゃんが来て家の音が変わったとき、ペットの側に慣れてもらうのではなく、選べる場所を1つ足す。うちではこの順番のほうが、結果として早く落ち着きました。
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よくある質問
- 赤ちゃんが生まれてすぐで、1週間も音を測る余裕がありません。短くできますか。
- 3日でも足ります。朝・昼・夜の3回を3日ぶん、9行あれば、部屋ごとのぶれの大きさは見えてきます。書くのは3段階と、聞こえたものの名前だけです。抱いたまま30秒立って、耳で聞いた印象をそのまま書いてください。行数が少ないぶん、判断に迷ったら、迷った2部屋の両方に古い布を1枚ずつ置いて、その子が選ぶほうを見る、という決め方でも構いません。
- 2週間待っても、老猫が新しい部屋へ移りません。どうすればいいですか。
- こちらの手を増やさず、布をもう1枚足してください。その子が寝ていた場所に敷いてあったもの、あるいは家族の衣類でも構いません。それでも動かないときは、部屋のほうを選び直します。ぶれの小さい部屋が他になければ、いまいる場所の周りで、人が通る側に何かを置いて経路を1本ずらす方法もあります。ペットのケアと同じで、待つ期間を決めて、その間は動かさないほうが結果が読めます。
- 水と食事を新しい部屋へ移すと、家族が近づけなくなりませんか。
- 近づいてもらって構いません。避けたいのは、決まった時刻以外に人が出入りすることのほうです。水を替える朝と、食事を出す夜。この2回はこちらが必ず行きます。それ以外の時間は静かなままにしておく、という使い方です。赤ちゃんを抱いてその部屋へ入るのも、時刻が決まっていれば問題になりませんでした。ペットの側から見ると、人が来ること自体より、来る時刻のほうが手がかりになります。老猫が受け取っているのは、人の有無ではなく、いつ来るか分からない、という状態のほうです。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
