C05犬種・猫種別ケア
スパニッシュウォータードッグの巻毛|毛のもつれを毎日のケアで防ぐ
スパニッシュウォータードッグの背中の毛を根元からつまんで、指で毛先までたどってみてください。途中で毛が1本ずつに分かれず、何本かがまとまったまま、細い房になって指を抜けていきます。昨日ブラシをかけたかどうかとは関係なく、この房は先月より少し太くなっています。もつれは、1日の出来事としてではなく、1年という長さの中で積み上がっていきます。この犬種は伝統的に、年に一度だけ全身を同じ長さに刈ってきました。毎月かたちを整える犬とは、そもそも手当ての単位が違います。この記事では、毎月整える犬と、年に一度だけ刈る犬を並べて、この単位の差がどこに効いてくるのかを書きます。
刈るのは年に一度|スパニッシュウォータードッグのもつれが1年かけて積み上がる条件
スパニッシュウォータードッグの被毛は、強く巻いた一層の毛です。イベリア半島の南、アンダルシアの土地で、羊や山羊の群れをまとめる仕事と、漁の手伝いの両方を担ってきた犬です。この犬種の毛は、まとまって抜ける換毛期を持ちません。切らないかぎり伸び続け、伸びた毛は隣の毛と寄り集まって、細い房になります。1本ずつに散らばるのではなく、束のまま長くなる。ここが、スパニッシュウォータードッグのもつれを考えるときの前提になります。
そして、この犬種には古くからのやり方があります。伸びた被毛を、年に一度、全身まとめて同じ長さに刈る。羊の毛刈りと同じ時期、同じ道具で済ませていた土地もあります。毎月かたちを整えるのではなく、1年伸ばして、1年ぶんを一度に落とす。この犬種の被毛の扱いは、そういう単位で回ってきました。房になった毛は、その1年のあいだ、ほどかれることを前提にしていません。
だから、もつれの見方も変わります。毎月そろえる犬なら、もつれは「先週からの数日で進んだかどうか」で測れます。スパニッシュウォータードッグでは、その物差しが合いません。いま指に触れている房の太さは、前に刈った日から今日までの積み上げの結果です。今週ブラッシングを1回多くしたかどうかでは、ほとんど動きません。動くのは、1年をどう配るかという配分のほうです。
1年のあいだに、もつれが進む条件はいくつか重なります。まず長さです。長くなるほど、根元と毛先の距離が延び、毛先の側が動いて絡みます。次に濡れた回数。水に入ったあと、房が乾くまでのあいだに毛どうしが寄ります。乾いた季節には、静電気で細かいごみが房の表面に寄ってきます。そのどれもが、1日では目に見える差になりません。3か月たつと、はっきり手に返ってきます。これが、スパニッシュウォータードッグのもつれが1年単位でしか語れない理由です。
- まとまって抜ける換毛期がない:季節でいったんリセットされる、という区切りがありません
- 毛が房になって伸びる:1本ずつではなく、束の単位で太くなっていきます
- 切るのは年に一度:長さがいちばん短い日と、いちばん長い日の差が大きくなります
- 水に入るのを好む子が多い:濡れて乾くたびに、房の中の毛が寄ります
- 体に密着した被毛:根元の側は動きが少なく、変化が外から見えません
- 乾いた季節の静電気:房の表面に細かいごみが寄って、太さが増して見えます
ほかの犬種のもつれの記事を読むと、ブラッシングの回数を増やす手当てが並びます。スパニッシュウォータードッグでは、その手をそのまま持ち込むと、被毛の質そのものが変わります。房を作りながら伸びる毛を、無理に1本ずつへほどくと、巻きが伸びて元に戻らなくなります。この犬種でやることは、毛を散らすことではなく、房と房のあいだに境目を残しておくことです。回数の話ではなく、何をするかの話になります。
毎月整える犬と、年に一度だけ刈る犬|スパニッシュウォータードッグのもつれを比較する
2つの型を、同じ項目で並べます。比べるのは毛の絡みやすさではなく、手当てをどの単位で組み立てるかという一点です。ここがずれていると、正しいことをしているのに結果が出ない、という時間が長くなります。スパニッシュウォータードッグのもつれで起きているのは、たいていこのずれです。
毎月かたちを整える犬では、被毛は数週間ごとに切りそろえられます。長さが一定の範囲に収まっているので、毛先の動く距離も一定です。もつれは、そのあいだの数日から数週間の出来事として現れます。だから毎日のブラッシングが効きます。今日の1回が、来週の状態を変えます。手当ての単位は、1回のブラッシングです。
年に一度だけ刈る犬では、長さが月ごとに変わっていきます。刈った翌月の毛先と、刈る前の月の毛先では、動く距離も、絡む相手の数も違います。同じ手を1年じゅう同じ強さで続けても、途中から合わなくなります。手当ての単位は、1回ではなく1年です。今月やることと、半年後にやることが、そもそも別のものになります。
| 毎月整える犬 | 年に一度だけ刈る犬(スパニッシュウォータードッグ) | |
|---|---|---|
| 毛を切る回数 | 数週間ごと | 1年に一度、全身を同じ長さに |
| 被毛の長さ | いつも一定の範囲に収まる | 月ごとに長くなり続ける |
| もつれの単位 | 数日から数週間 | 1年。刈った日からの積み上げ |
| ブラシの役割 | 毛を1本ずつに散らして流れをそろえる | 房をほどく道具としては使わない |
| 毎日やること | 全身をとかす | 房の境目を指で確かめる |
| 気づくきっかけ | とかしたときの引っかかり | 指を根元まで沈めたときの止まり方 |
| 手を入れ直せる時期 | いつでも。翌日に戻せる | 次に刈る日まで、長さは戻らない |
この比較で、いちばん実害が出るのは「取り返し」の行です。毎月整える犬なら、1週間手が止まっても、次のトリミングで整います。スパニッシュウォータードッグでは、刈る予定の3か月前に手が止まったぶんは、刈る日まで残ります。だからこの犬種では、手当ての強さより、途切れないことのほうが効きます。週に1回でも構いません。1年のあいだ、同じことが続いているかどうかで差がつきます。
もうひとつ、うるおいの扱いにも差が出ます。毎月切る犬では、乾いて傷んだ毛先は次のカットで落とせます。年に一度の犬では、その毛先が11か月そこにあり続けます。毛先を守ることが、そのまま房の太さを抑えることにつながります。洗う回数を増やして地肌のうるおいを減らすより、乾いた季節に房の表面を落ち着かせるほうが、この犬種では理にかないます。
ほどくのか、指で分けるのか|スパニッシュウォータードッグのもつれにどっちの手を使うか
単位が決まったら、次は手の中身です。もつれに対して人がやれることは、大きく2つに分かれます。絡んだ毛を1本ずつに散らして「ほどく」か、房と房のあいだに線を入れて「分ける」か。この犬種で選ぶのは、後者です。理由は、房になること自体がこの被毛の姿だからです。
ほどく手は、毛を1本ずつ独立させる方向へ働きます。まっすぐな毛や、ゆるやかに波打つ毛では、これが正解です。強く巻いた毛でこれをやると、巻きが伸びて、被毛が別のものになります。いちど伸びた巻きは、次に刈るまで戻りません。年に一度しか刈らない犬では、その状態で11か月を過ごすことになります。
分ける手は、房そのものは残したまま、隣の房とくっついた部分だけを外していきます。道具は指です。根元の側から指を差し入れて、くっついている面を上へ裂くように離す。力は要りません。離れないところは、その日は離さずに置きます。翌週にもう一度触れば、たいてい前より浅いところで離れます。
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背中や脇に、指を4本まっすぐ沈める
毛の流れに沿ってではなく、直角に差し込みます。指が地肌まで届くか、途中で止まるかを見ます。止まった深さが、房どうしがくっついている厚みです。スパニッシュウォータードッグは被毛が体に密着しているので、外からは分かりません。
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止まった場所で、房の境目を目で探す
沈めた指のまわりに、毛のまとまりの切れ目が見えます。その線が、もともとの房の境目です。新しい線を自分で引かないでください。すでにある境目をたどるほうが、毛に力がかかりません。
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境目に沿って、根元から毛先へ向かって裂くように離す
両手の親指と人差し指で房をはさみ、境目から上へ持ち上げるように離します。横へ引っぱらず、上へ。途中で止まったら、そこで終わりです。無理に最後まで通すと、根元の毛ごと引くことになります。
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離れた房を、そのままの形で置く
とかして流れをそろえる必要はありません。房のまま戻してください。この犬種では、房が房として立っている状態が整っている状態です。1日に2〜3か所で足ります。全身を回すのは、1週間かけて構いません。
| ほどく手 | 指で分ける手 | |
|---|---|---|
| やっていること | 毛を1本ずつに散らす | 房の境目だけを外す |
| 道具 | 目の細かいブラシやコーム | 指。道具を持たない |
| 巻きへの影響 | 伸びて、戻らなくなる | 巻きは残る |
| 向く被毛 | まっすぐな毛、波打つ毛 | 強く巻いて房になる毛 |
| 失敗したとき | 次のカットで整えられる | 次に刈る日まで残る |
| この犬種での出番 | 使わない | 毎日のケアの中心 |
毛玉予防ジェルは、房が固まったときにはさみを持たなくて済むように作られたジェルです。手のひらにごく少量とってのばし、房の毛先から中ほどまでを、握るようにして通してください。指で離れなかった面は、なじませてからもう一度触ると、前より浅いところで離れます。塗っておくと、房どうしがくっつきにくい状態が続きます。根元へ塗り込まないこと、量を増やさないことの2つだけ守ってください。乾いた季節に、房の表面が静電気で細かいごみを拾うのも落ち着きます。
指で離れない房を、根元近くではさみで切って外そうとするのは、この犬種でいちばん起きやすい事故です。房は皮膚に密着していて、どこまでが毛でどこからが皮膚なのかが、外からは分かりません。離れない房は、その日は離さずに残してください。毛玉予防ジェルをなじませて、翌週にもう一度境目をたどるほうが、はさみを持たずに済みます。次に刈るまでの期間が長いときや、指で触れて熱を持っているときは、自分で外そうとせず、担当のトリマーか動物病院にご相談ください。
刈った翌月と、刈る前の月|スパニッシュウォータードッグのもつれが動く時期
1年を単位にすると決めたら、その1年をどう配るかを決めておきます。刈った翌月と、刈る前の月では、同じ手を同じ回数やっても、意味が変わります。短いうちは房そのものがまだ小さく、指を沈めれば地肌まで届きます。長くなると、境目をたどる距離が延びて、1か所にかかる時間が増えます。時期ごとに、やることの中身を先に決めておいてください。
この配り方の中で、いちばん取りこぼしやすいのが5〜7か月目です。房はもう十分に太いのに、まだ「刈る日」が遠いので、後回しになりやすい時期です。ここで手が止まると、8か月目以降に触れる場所が一気に減ります。指が入らなくなるからです。週に1回、2か所でも構いません。この時期に触った回数が、刈る前の月の負担を決めます。
水に入った日の扱いも、時期で変えてください。短いうちは、そのまま乾かして構いません。長くなってからは、乾く前に房を指で分けておきます。濡れた房は乾くときにいちばん締まります。締まったあとで分けようとすると、力が要ります。順番を入れ替えるだけで、翌月の状態が変わります。
年に一度という間隔は、忘れます。刈った日にその場で翌年の予定を書いておくと、1年の配分が組み立てられます。3か月目、6か月目、9か月目に印を入れて、その週だけ全身をひととおり触る日にする。スパニッシュウォータードッグのもつれは、思い出した日にまとめてやる手当てでは追いつきません。予定を先に置くほうが、結果として手をかける総時間は短くなります。
1年という単位では説明がつかないもつれ|スパニッシュウォータードッグで手を止める線
ここまでは、房を作りながら1年伸びる被毛で説明のつくもつれの話でした。指で分ける手を続けていて、それでも同じ場所だけが短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。スパニッシュウォータードッグは被毛が体に密着していて、地肌の様子が外から見えません。次のような変わり方が出ているときは、房の太さの話ではなく、地肌の側の話として扱ってください。
- 刈ってすぐの月なのに、同じ場所だけが固まる:長さの積み上げでは順番が合いません
- 左右のどちらか一方だけが進む:同じ生活をしているのに差が出ているということです
- 房を分けたあとの地肌が赤い、においがある:分ける手を続ける前に、見てもらってください
- 房が熱を持っている:触って温度差を感じるときは、その場で手を止めてください
- その場所をなめる、かく、床にこすりつける:本人が気にしているというサインです
- 触ろうとすると避ける、声を出す:痛みがあるときは、無理に境目を探さないでください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、元気や食欲が落ちている。どれか1つでも当てはまるときは、指で分ける回数を増やして様子を見る前に、動物病院にご相談ください。房の下は、飼い主が毎日見ている面ではありません。気づいたときには、しばらく前から続いていることがあります。前に刈った日からの月数と、その場所に気づいた日を一緒に伝えると、切り分けが早く済みます。
見てもらう日やトリミングの前には、3つを書き留めてください。前に刈った日、固まりに気づいた日、その場所に何回手を入れたか。この3つがあると、1年の積み上げで説明のつくもつれなのか、それとも別のことが起きているのかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に頑張って外そうとしないでください。房の境目がどこにあったかを、その場で見てもらえなくなります。外しきれていない房は、そのままの形で見てもらって構いません。
スパニッシュウォータードッグと暮らすうえで、毛が房になっていくこと自体は、なくすものではありません。群れを追い、水に入る仕事のために備わった被毛の姿だからです。変えられるのは、その房が隣の房とくっついたまま何か月置かれるかという、時間のほうです。ほどこうとせず、境目を残す。1回ではなく1年で配る。刈る日を先にカレンダーへ書く。スパニッシュウォータードッグのもつれで動かせるのは、そこです。
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よくある質問
- スパニッシュウォータードッグに、ブラシは使わないほうがいいですか?
- 房をほどく目的では使わないでください。強く巻いた毛をブラシで1本ずつに散らすと、巻きが伸びて元に戻らなくなります。この犬種で戻せるのは、次に刈る日です。毎日のケアで使うのは指で、やることは房の境目を確かめて、くっついた面だけを外すことになります。道具を持たない手当てが中心になる犬種です。
- 刈る間隔は、年に一度でなければいけませんか?
- 決まりではありません。暮らし方や住んでいる土地の気候によって、年に2回にする方もいます。大事なのは回数そのものより、次に刈る日までの月数を自分で把握しておくことです。月数が長いほど、途中の時期に手を入れておく意味が大きくなります。刈った日に次の予定を書いておくと、1年の配分が決めやすくなります。
- 途中でどうしても外れない房は、そのままでいいのでしょうか?
- 指で離れない房を、はさみで切って外そうとしないでください。房は皮膚に密着していて、境目が外から分かりません。触って熱を持っている、地肌が見えない、その場所を気にしているといったときは、次に刈る日を待たず、担当のトリマーか動物病院にご相談ください。判断がつかないときも、そのまま見てもらうほうが安全です。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
