C09シーン別・暮らし
水が苦手な猫と暮らす人のための旅行とペットホテル|5分で終わらせるケア
3泊の旅行から迎えに行った日、担当の方に「ほとんどケージの奥から出ませんでした」と言われました。体はどこも汚れていません。毛も乱れておらず、預ける前に見た姿とほとんど同じでした。それなのに、家に帰って玄関で抱いた瞬間、においが違いました。うちの部屋のにおいでも、その子のにおいでもない、乾いた別の家のにおいです。水が嫌いな猫と暮らしていると、こういうときに使える手が最初から1つ減っています。洗うという選択肢がないまま、落とすものだけが体に乗っている。そう思っていたのですが、落とすものは汚れではありませんでした。
3泊のあいだ、ケージの奥から出なかったそうです|旅行でペットを預けた日の経験
5月の連休でした。旅行でペットを預けるのは初めてで、いちばん心配していたのは食べるかどうかです。迎えに行くと、ごはんは夜のうちに少しずつ減っていて、トイレも使われていました。そこは安心したのですが、続けて言われたのが冒頭の一言です。3泊のあいだ、その子はケージの中でもいちばん奥の、暗いところから出ませんでした。昼間はまったく動かず、人が近づくと体をさらに奥へ入れていたそうです。
体を見ても、拾えるものはありませんでした。足の裏も汚れていません。毛にからんだものもありません。爪も伸びていません。動いていないのだから、汚れる機会もなかったということです。水が嫌いな猫なので、こちらは帰ってから洗えないことをずっと気にしていました。けれど、洗うほどのものは体についていません。それなら何も要らないはずでした。
違ったのは、においだけです。玄関でキャリーから抱き上げた瞬間に分かりました。うちのにおいではなく、その子のにおいでもない、乾いた、少しだけ薬品のような、別の建物のにおいです。顔を近づけなくても分かる強さでした。室内に放しても、その子はまっすぐ寝床へ行きません。部屋の真ん中で座って、そこから長いあいだ毛づくろいをしていました。時間を計っていたわけではありませんが、20分以上は続いていたと思います。
- 汚れ:足の裏にも毛にも、ほとんどついていない
- 抜け毛:動いていないので、キャリーの中に落ちていた量も少ない
- 爪と毛の乱れ:預ける前と変わらない
- におい:はっきり変わっている。玄関で抱いた時点で分かる
- 帰宅後の行動:寝床へ行かず、部屋の真ん中で長く毛づくろいをした
- 食べる量と水の減り方:翌日にはふだんの幅に戻っていた
並べてみると、変わったものは1つだけです。汚れていないのに、においだけが入れ替わっている。旅行でペットを預けるときに想像していたのは、他の子と接して汚れて帰ってくる、という絵でした。実際に起きたのはその逆で、動かなかったからこそ残ったものがありました。水が嫌いな猫と暮らす家では、この違いが手当ての中身をまるごと変えます。
動いていないのに、においだけが入れ替わっている背景|水が嫌いな猫を旅行で預けるということ
においには2つの出どころがあります。その子から出たものと、その子が浴びたものです。ふだん家の中で気にするのは前者ですが、預け先から帰ってくるときに乗っているのは、ほとんどが後者です。3泊なら約72時間。そのあいだ、その子はずっと同じ空気の中にいました。空調で回っている空気、隣のケージの子のにおい、掃除に使われているもののにおい、ケージに敷かれていた布のにおい。それが被毛のあいだに入っています。
被毛は、面積で考えると相当に広いものです。細い毛の1本ずつが空気に触れていて、毛と毛のあいだにも空気が入っています。その空気は、体が動くたびに少しずつ入れ替わります。家にいる猫は、日に何度も場所を移ります。窓辺、椅子の上、棚の上、押し入れの中。それぞれ空気の条件が違うので、1か所のにおいが集中することがありません。
預け先では、これが起きませんでした。隠れて動かないということは、毛のあいだの空気が72時間入れ替わらないということです。ここが、旅行でペットを預けるときの、猫だけに強く出る条件だと思います。犬は預け先でも散歩に出たり、人と接したりして、体の位置が変わります。猫は隠れます。しかも、隠れる場所は決まってケージの奥の、いちばん空気の動かないところです。動かないことが、においのつく条件になっている、という逆の関係になります。
| 体についているもの | 3泊のあと | 水を使う必要があるか |
|---|---|---|
| 土や食べこぼしの汚れ | ほとんどない | そもそも落とすものがない |
| 抜けた毛 | 家にいるときより少ない | 要らない。ブラシで足りる |
| 他の子の毛や唾液 | ケージが分かれていれば少ない | 接していないなら要らない |
| ケージの布の繊維 | 少しついている | 手で払える範囲 |
| 移ったにおいを持つ空気 | いちばん多い | 水では落とすものではない |
| 自分の毛づくろいで移った唾液 | 帰宅後に増える | 乾くのを待つほうが早い |
この表のいちばん下の行は、少し補足が要ります。帰ってきた猫は長く毛づくろいをします。毛づくろいというのは、においのついた毛を口に入れる動作でもあります。だから、においを落とすというのは見た目や部屋の快適さの話ではなく、その子が口に入れるものの話でもあります。旅行から帰った日にできるだけ早く手を打ちたい理由は、ここにあります。
ただ、水が嫌いな猫にはその手がありません。濡らせないという条件は、旅行でペットを預けたあとでも変わりません。しかも帰宅後の数時間は、いちばん触られたくない時間でもあります。抱いて確かめる、拭く、ブラシをかける。どれも、その子にとっては環境が変わったところへ人の手が足される形になります。水が嫌いな猫と暮らす家では、体に手を入れるという選択肢が、帰った日にはほとんど残っていません。
体ではなく布を替える|水が嫌いな猫を旅行で預けるときの考え方
残っているのは、その子が触れる面のほうです。体に手を入れられないなら、体が触れるものを全部入れ替えてしまう、という組み立てにします。においを持った空気は、その子の毛のあいだにあります。そこへ人が手を入れなくても、触れる面が新しければ、においが行き来する相手がいなくなります。逆に、帰ってきた猫を、前と同じ布の上に置くと、預け先のにおいと家のにおいが同じ場所で混ざります。
替える面は4つです。キャリーの中の布、寝床の布、その子がよく乗る椅子や棚の座面、それと水と食器。この4つで、帰宅後の数時間に体が触れる面はほぼ全部です。旅行でペットを預ける準備というと持ち物の話になりがちですが、水が嫌いな猫の家では、帰ってからの面のほうが先に効きます。
ここでいちばん大事なのが、いつやるかです。出発の前日までに、家の布を洗って乾かしておいてください。帰ってきた日に洗うのでは間に合いません。旅行から戻った日は、荷物が床に出ていて、洗濯機はすでに人の分で埋まっていて、乾かす時間が残っていません。そして、いちばん必要なのがその日です。自分の荷造りの予定に「家の布を洗う」を1行入れておくだけで、帰った日の5分が成立します。
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玄関で、キャリーの中の布だけを抜く
猫は出しません。上のフラップから手を入れて、体の脇から布の端を持ち、水平に引きます。預け先へ持たせた布は、家に持ち込まずに袋へ入れてください。そのまま洗濯機へ回します。持ち込むと、その1枚が家の中でにおいの出どころとして残ります。所要は1分です。
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キャリーごと室内へ運んで、扉を開けて、離れる
抱き上げません。呼びません。出てくるかどうかはその子が決めます。水が嫌いな猫は、たいてい触られることにも敏感です。帰宅後にこちらから近づかないと決めておくと、出てくるまでの時間が短くなります。
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寝床の布と、よく乗る場所の布を替える
猫が出てくる前に済ませます。前日までに洗って乾かしておいた布に入れ替えるだけなので、2か所で2分ほどです。置き場所は変えないでください。面は新しくしますが、位置は同じにします。位置まで変えると、変わったものが2つになります。
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水の器を洗って、新しい水に替える
旅行のあいだ器は空でしたが、置いていた場所のほこりが乗っています。器を洗って、新しい水を入れて、同じ場所へ戻します。飲んだ量が見えるように、水位を覚えておいてください。帰宅後にいちばん早く出る変化が、水の減り方です。1分。
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窓を数分だけ開けて、部屋の空気を動かす
その子が驚かない範囲で、離れた部屋から順に開けます。においを足すもの、たとえば香りのついた消臭剤を焚くのは、この日はやめておきます。においを1つ増やすことになり、猫の側の条件が増えます。1分。
5つ合わせて5分です。この5分のあいだ、その子の体には一度も触っていません。水が嫌いな猫と暮らす家で、旅行でペットを預けたあとにできることは、ここまでだと思っています。体に手を入れるのは、翌日以降でかまいません。においの大半は、面を替えて、空気を動かして、その子が自分で毛づくろいをするうちに、1日か2日で家のにおいのほうに寄っていきます。
翌日以降に体へ手を入れるときも、水は使いません。使うのは mofuwa グルーミングウォーターです。犬猫向けのスプレーを猫が嫌がるという声が集まったときに、中身ではなく容器のほうを変えた商品で、チューチューボトルなので噴射音が出ません。この子が反応していたのも、濡れること自体ではなく、音と、突然かかる感触の2つでした。グルーミングウォーターを布に含ませてから、背中を毛の流れに沿って一往復させます。体に直接かけないでください。布を経由させると、音と感触の2つがどちらもなくなります。猫は自分で毛づくろいをするので、背中に当てたものは口に入ります。舐めても差し支えのない基準でつくられているので、拭いたあとの毛づくろいを止める必要がありません。
旅行でペットを預けるとき、預け先へ布を1枚持たせる家は多いと思います。その1枚は、預け先の空気を72時間吸って戻ってきます。だから、帰りのキャリーに敷く布は、持たせたものとは別に用意してください。迎えに行く日、家を出るときに乾いた1枚を持っていって、預け先で入れ替える。持たせたほうは袋に入れて、家では開けずに洗濯機へ。この入れ替えを預け先の玄関でやってしまうと、帰り道の30分から1時間ぶんのにおいが乗りません。毎日の習慣にはならない作業ですが、旅行のたびに1回だけのことです。
帰宅後にやることが3つに減りました|旅行でペットを預けたあとに残った変化
8月と、先月の11月に、同じ預け先へ旅行でペットを預けました。どちらも3泊です。2回目からは前日までに布を洗い、迎えに行く日に乾いた布を1枚持っていきました。帰宅後にやったのは、玄関で布を抜くこと、寝床とよく乗る場所の布を替えること、水の器を替えること。この3つだけです。窓を開けるのは家族に頼んだので、こちらの手はさらに減りました。
| 1回目(5月) | 2回目(8月) | 3回目(11月) | |
|---|---|---|---|
| 前日までに布を洗ったか | 洗っていない | 洗った | 洗った |
| 帰りの布を別に持っていったか | 持っていない | 持っていった | 持っていった |
| 帰宅後にかかった時間 | その日は決まらないまま | 5分 | 3分 |
| 帰った日の毛づくろいの長さ | 20分以上続いた | 10分ほど | 10分ほど |
| においが気にならなくなるまで | 3日 | 2日 | 翌日 |
| 体に触れた回数(帰った日) | 抱いて確かめた1回 | ゼロ | ゼロ |
数字で見ていちばん変わったのは、毛づくろいの長さでした。1回目に20分以上続いていたものが、2回目からは10分ほどで終わっています。面を替えると、その子が自分でやる作業のほうが短くなる、という順序です。こちらが体に手を入れていないので、これは布のほうの効き方だと思っています。3回目は、においが翌日には気にならなくなりました。
もう1つ残ったのが、毎日の側の習慣です。旅行のために「前日までに布を洗って乾かす」をやったら、旅行のない週にも寝床の布を週に1回替えるようになりました。もともと、水が嫌いな猫と暮らしていると、体に手を入れる回数を増やせません。そのぶんを布で受けるという形が、旅行をきっかけに毎日のケアの側へ移ってきた感じです。室内で猫が触れている面は、思っているより少ないので、替える場所を3か所に決めておけば時間もかかりません。
旅行から戻って3日たっても、食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、毛が部分的に薄くなっている、隠れたまま出てこない、トイレの回数が変わったまま。こうした変化があるときは、布を替えたり手当てを増やしたりする前に、動物病院にご相談ください。預けていたあいだの環境によるものなのか、別の理由が重なっているのかは、家では分けられません。預けた日数、預け先で食べていた量、帰宅後に見た変化を書き出して持っていくと、その場で切り分けてもらいやすくなります。水が嫌いな猫は、家で確かめられる範囲がもともと狭いので、早めに相談するほうが結果として短く済みます。
最初のころは、水が嫌いな猫を旅行のあいだ預けること自体を迷っていました。帰ってから洗えないので、汚れて帰ってきたらどうするのか、というところで止まっていたからです。実際に3回やってみて分かったのは、落とすものが汚れではなかった、ということでした。汚れていないのににおいだけが変わるのは、動かなかったからです。落とす相手が空気なら、水は最初から要りません。旅行でペットを預けるかどうかを迷っている家に伝えたいのは、たぶんこの1点だけです。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
