C05犬種・猫種別ケア
ソマリの長毛|毛玉の吐き戻しを毎日のケアで防ぐ
ソマリの背中に手を当てると、毛の表面がわずかに湿って、寝ている向きにそろっている場所があります。さっきまで、その子の舌が通っていた跡です。毛球とは、毛づくろいのときに飲み込んだ毛が、胃の中でまとまったもののことをいいます。猫の舌には後ろを向いた細かい突起が並んでいて、毛の流れと逆に動かすと、抜けかけた毛を引っかけて口の中へ運びます。ここで見落とされやすいのは、毛づくろいが行き届いている子ほど、口に入る毛の量は増えるという、逆向きの関係のほうです。この記事では、舌が全身に回っているソマリと、届かない場所が残っているソマリを並べて、抜けた毛がどこへ行くのかという違いから、毛球の話を組み立てます。
舌が通った跡は、毛が寝てわずかに湿ります|ソマリの毛球と、毛づくろいの時間の違い
ソマリの被毛は、体の面ではセミロングと呼ばれる長さです。1本1本は細く、上毛と下毛が重なって密に生えています。毛を1本つまんで光にかざすと、根元から毛先までのあいだに濃い色と淡い色の帯が何本も入っていて、この帯の重なりが被毛全体の色の深さをつくっています。細くて密という条件は、そのまま「抜けたあとの毛が体の外へ落ちにくい」という条件でもあります。抜けた毛は隣の毛に引っかかったまま、根元の側に留まります。
留まった毛を最初に見つけるのは、飼い主の手ではありません。その子の舌のほうです。猫の舌の表面には後ろを向いた細かい突起が並んでいて、毛の流れと逆に動かすと、抜けかけた毛を引っかけて口の中へ運びます。毛づくろいは、その子が自分でおこなっている毎日のブラッシングです。ただしブラシと違って、集めた毛を外に出す場所がありません。引っかけた毛は、そのまま飲み込まれます。
毛球とは、こうして飲み込まれた毛が胃の中でまとまったもののことです。だからソマリの毛球を考えるときの出発点は、毛の量ではなく、その毛がどこから来たのかというほうにあります。抜けた毛が体に留まっている時間が長いほど、舌が回収する量は増えます。そして舌が回収した量は、そのまま口に入る量になります。換毛期には、この流れ全体が一段速くなります。
静電気の話も、ここにつながります。空気が乾く時期は、抜けた毛が隣の毛に貼りついたまま離れません。離れない毛は床に落ちないので、体の外へ出る経路が舌だけになります。うるおいが減る時期に毛球の話が増えるのは、抜ける毛が急に増えるからではなく、抜けた毛の出口が1つに絞られるからです。同じ量の毛が抜けていても、行き先が変われば口に入る量は変わります。
- 毛が細い:抜けても隣の毛のあいだに入り込み、そのまま残ります
- 密に生えている:落ちる隙間が少なく、根元の側に溜まります
- 下毛がある:抜けるのは主に内側なので、外から見ても分かりません
- 体が細く、体を折りたたみやすい:舌が届く範囲が広く、回収量も増えます
- 乾く時期は静電気で貼りつく:床に落ちる経路が塞がれます
毛づくろいは、その子がきれいでいるための行動です。その行動が正しく働いているほど、抜けた毛は体に残らず、口に入ります。ここを「さぼっているから」「手をかけていないから」と読み替えると、答えが「もっと洗う」の方向へずれていきます。ソマリの毛球で動かせるのは、毛づくろいの回数ではなく、舌が回収する前に人の手が通っているかどうかのほうです。
行き届いている子と、届いていない子|猫のソマリで、口に入る毛の量に出る違い
ここから、同じソマリの中で条件を2つに分けます。舌が全身に回っている子と、届かない場所が残っている子です。どちらが良い・悪いという比較ではありません。抜けた毛の行き先が違うだけです。そして行き先が違うと、飼い主が最初に気づくものまで入れ替わります。
まず、行き届いている側です。体のどこを触っても毛が寝てそろっていて、毛先までまとまりがあります。ブラシを通しても、思ったほど毛が取れません。この状態を見ると手入れが足りていると感じますが、ブラシに残らなかった毛は、消えたのではなく、すでに口へ運ばれています。抜けた毛の回収を舌が引き受けているので、毛球としてまとまる量は多くなります。毛づくろいの時間が長い子ほど、この側に寄ります。
もう一方は、届かない場所が残っている側です。肩甲骨のあいだ、腰から尾の付け根、後頭部。舌も後ろ足も回りにくい場所で、ここには抜けた毛が残ります。残った毛は落ちないので、根元でからまり、手のひらで押すと弾力のある面になります。口に入る量は少なくなりますが、そのぶん毛は体の上に積み上がります。もつれとして先に気づくのは、たいていこちら側です。
そして実際には、1頭の中で両方が同時に起きています。胸から前脚の付け根までは行き届いていて、背中の中ほどは届いていない。同じ子の同じ日に、口へ向かう毛と、体に残る毛が並んで存在します。だから聞き方は「うちの子はどちらか」ではなく、「体のどこがどちらか」になります。ソマリの毛球に手を入れるときは、この分け方から始めてください。
| 舌が回っている場所 | 舌が届かない場所 | |
|---|---|---|
| 代表的な部位 | 胸・前脚の付け根・脇腹・腹 | 肩甲骨のあいだ・腰・尾の付け根・後頭部 |
| 抜けた毛の行き先 | 口の中。そのまま飲み込まれる | 体の上。根元に留まる |
| 毛球としてまとまる量 | 多くなる | 少なくなる |
| 先に気づく変化 | 床の抜け毛が少ない/吐き戻し | 毛が固まる/指が止まる |
| ブラシに残る毛 | 少ない(すでに回収されている) | 多い(溜まっていた毛が出る) |
| 人が手を入れる意味 | 舌より先に取り、口へ行く量を減らす | 落ちない毛を外へ運び出す |
| 換毛期の動き方 | 回収量が増え、口に入る量も増える | 面が厚くなり、指が入らなくなる |
うちの子はどこがどちらか|ソマリの毛球で先に決める見分け方
分け方が決まったら、次は自分の家の1頭で確かめます。使うのは目とブラシと指の3つで、必要なのは1日3分ぶんです。猫はうつ伏せのままでも構いません。抱き上げて姿勢を変えると、毛の寝ている向きが崩れて分からなくなります。次の順で回してください。
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毛の表面を、光を斜めから当てて目で追う
舌が通ったあとの毛は、寝ている向きがそろい、わずかに湿っています。乾いてからも、その一帯だけ毛先の向きがきれいに流れています。向きがそろっている場所が、舌の回っている場所です。逆に、毛先があちこちを向いて立ち上がっている場所は、しばらく舌が通っていません。
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同じブラシを、同じ回数だけ部位ごとに通す
胸に5往復、肩甲骨のあいだに5往復、腰に5往復。取れた毛の量を、部位どうしで比べます。比べるのは他の猫とではなく、同じ子の別の場所とです。ほとんど取れない場所は、すでに舌が回収を終えています。まとまって出てくる場所は、抜けた毛が留まっていた場所です。
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毛の流れと直角に、指を根元まで沈める
指が地肌まですっと届くなら、その一帯に溜まりはありません。途中で押し返されるなら、押し返される深さぶんの毛が残っています。取れる毛が多く、指も止まる場所が、いちばん手を入れる価値のある場所です。ここは舌も届いていないので、人が代わるしかありません。
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1日だけ、毛づくろいの時間を書き出す
食後、寝起き、遊んだあと、抱いたあと。毛づくろいが始まった時刻と、続いたおおよその長さを1日ぶんだけ書きます。数える必要はありません。時間が長い日と、床に落ちている毛が少ない日が重なるなら、その子は回収する側に寄っています。ソマリの毛球を考えるうえで、この1日ぶんのメモが基準になります。
| 確かめた結果 | その日にやること |
|---|---|
| 毛の向きがそろい、ブラシに毛が残らない | 舌より先に人の手を通す。回数ではなく順番を前に |
| 毛先が立ち上がり、ブラシにまとまって出る | 外へ運び出す。層を1枚ずつ、根元から |
| ブラシには出ないが、指が途中で止まる | 毛の面が固まりかけています。力ではなく回数を分ける |
| どこも指が地肌まで届く | その日はやらなくて構いません |
床やソファに毛が落ちていないと、抜け毛が少ないと感じます。けれどソマリの被毛は細くて密なので、抜けた毛が床まで届く前に、舌が回収していることのほうが多くなります。床がきれいなことは、抜けている毛が少ないことの証明にはなりません。判断はブラシに出てくる量と、指の入り方で決めてください。目に見えるところだけで決めると、毎回逆の結論になります。
舌より先に、人の手が通る|ソマリのブラッシングと毎日のひとなでの組み合わせ
ここからが毎日の話です。狙いは1つだけで、抜けた毛を、舌より先に人の手で外へ出しておくことです。毛づくろいをやめさせることはできませんし、やめさせる必要もありません。動かせるのは、その子が舐めはじめる時点で、体に何本の抜け毛が残っているかのほうです。
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行き届いている場所から先にブラシを入れる
汚れて見える場所から手をつけたくなりますが、順番は逆にします。毛の向きがそろっている場所ほど、そこの抜け毛は口へ向かっています。胸、前脚の付け根、脇腹。ここを先に通しておくと、その日に飲み込まれる量が減ります。届いていない場所は、口に入る手前ではなく体の上に残っているので、少しあとでも間に合います。
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乾いたまま梳かず、毛を湿らせてから通す
乾いた被毛をそのまま梳くと、抜けた毛が空気中に舞い、体や床に落ち直します。落ち直した毛は、そのあとの毛づくろいでもう一度口に入ります。手を軽く湿らせるか、猫用のグルーミングウォーターを布に含ませて、毛の流れに沿ってひとなでしてからブラシを入れてください。静電気が起きにくくなり、取れた毛がブラシ側に残ります。
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取れた毛を、その場で床に残さない
ブラシから外した毛を床へ落としたままにすると、猫は歩いたあとに脚や腹を舐めます。いったん外へ出した毛が、また同じ子の口へ戻ります。ブラシの毛はその場でまとめて捨ててください。ケアをする場所を1か所に決めておくと、この片づけが数秒で終わります。
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換毛期だけ回数を増やし、それ以外は間隔で調整する
春と秋、下毛がまとまって動く時期は、1回の時間を延ばすのではなく、短い回数を増やします。1回5分を1日2回のほうが、10分を1日1回より嫌がられません。それ以外の時期は、行き届いている場所は2日に1回、届かない場所は3日に1回でも足ります。毎日全身、という前提を持つと、続かなくなった週に一気に戻ります。
洗う回数を増やす方向には寄せないでください。洗う回数が増えると、皮膚のうるおいが減って、毛の滑りが落ちます。滑りが落ちた被毛は、抜けた毛をよけいに抱え込みます。ソマリは細い毛が密に生えているぶん、乾かしきるまでの時間も長くなります。毛球の話をしているときに動かすのは、洗う回数ではなく、ブラシが根元まで届いているかどうかのほうです。
毎日きれいにしておきたい日には、猫用のグルーミングウォーターを使います。猫が嫌がっていたのは中身ではなく音のほうだったので、噴射音の出ないボトルになっています。寝ているそばでも、コットンや柔らかい布に含ませて、毛の流れに沿ってなでる形で使えます。余分な皮脂と油が乳化して落ちるので、細い毛どうしの滑りが戻り、そのあとブラシを入れたときに、根元に留まっていた毛が出てきます。舐めても問題のない基準でつくられているので、自分で毛づくろいをするソマリでも量を気にせず使えます。固まりかけている面へグルーミングウォーターを直接吹きかけて、そのまま放置しないことだけ守ってください。
根元で毛が面になっている場所に、ブラシを上から強く入れると、抜けた毛ではなく、生えている毛と皮膚を一緒に引っぱることになります。毛の面は、その日のうちに全部ほどかなくて構いません。層を1枚出して、出せたぶんだけ運び出す。嫌がる、声を出す、口を近づけてくるというときは、その日はそこで止めてください。翌日にもう1枚ぶん進めるほうが、結果として早く終わります。
毛の量を減らしても変わらないとき|ソマリの毛球を、毛の手入れの話にしないところ
ここまでは、抜けた毛の行き先で説明のつく範囲の話でした。ブラシが根元まで届くようになって、床に落ちる毛の量も変わったのに、様子が変わらないときは、毛の手入れの話として続けないでください。次のような変わり方があるときは、家でできることを積み増す前に、動物病院に相談してください。
- 吐こうとする動作が短い間隔でくり返される:回数と間隔をメモしてください
- 食欲が落ちている、食べる量が続けて減っている:毛の話とは別に見る変化です
- 便が出ていない日が続く、便の様子が変わった:日数を数えておいてください
- 元気がない、動きが減った、隠れる時間が増えた:ふだんとの差がいちばんの情報です
- 体重が落ちている:抱いたときの軽さでも構いません
- 換毛期でもないのに、抜ける毛が急に増えた:季節の区切りと合わない変わり方です
- 同じ場所を舐め続けている、舐めたあとに地肌が見えている:毛より先に皮膚のほうを見てください
吐こうとする動作がくり返される、食欲が落ちている、便が出ない日が続く、ぐったりしている、体重が減っている、地肌が赤い、においがある。これらが出ているときは、ブラッシングの回数を増やすより先に、動物病院で見てもらってください。ソマリは被毛が密で、体の変化が外から見えにくい猫です。吐こうとした回数と、便の出ていない日数を数えて持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
相談に行くときは、いつからか、1日のうち何回か、そのときに何をしていたかの3つを持っていってください。この3つがあると、毛の手入れで説明のつく範囲なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。ブラシに取れた毛の量が変わった日があるなら、それも一緒に伝えてください。前日にあわてて全身を梳かないほうが、もとの状態が伝わります。
ソマリと暮らすかぎり、毛が抜けることも、その子が自分で毛づくろいをすることもなくなりません。減らせるのは抜ける毛の量ではなく、抜けた毛が体に残っている時間のほうです。行き届いている場所は舌より先に、届いていない場所は外へ運び出す。同じブラシを持っていても、その2つは別の仕事です。ソマリの毛球で家から動かせるのは、この順番と、手が届いている深さのところまでです。
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よくある質問
- 毛づくろいの回数が多いのは、やめさせたほうがいいですか?
- やめさせる必要はありません。毛づくろいは、その子が自分の体をきれいに保つための行動です。動かせるのは行動そのものではなく、舐めはじめる時点で体に残っている抜け毛の量のほうです。舌が回っている場所ほど、人の手を先に通す価値があります。落ち着かない様子でずっと舐め続けているときだけ、毛の話とは分けて見てください。
- ブラシに毛がほとんど取れません。ケアはいらないということでしょうか?
- その逆のことが起きている場合があります。ソマリの被毛は細くて密なので、抜けた毛が床まで落ちる前に舌が回収していることがあります。ブラシに残らなかった毛は、すでに口へ運ばれたあとかもしれません。毛の向きがそろっていて、指も地肌まで届くなら手を入れなくて構いませんが、向きがそろっているだけで判断しないでください。
- 換毛期以外は、ブラッシングをしなくてもいいですか?
- 頻度は落として構いませんが、止めないほうが続きます。行き届いている場所は2日に1回、舌が届かない肩甲骨のあいだや腰は3日に1回を目安にしてください。換毛期に入ってから急に毎日にすると、そこで嫌がられて中断しやすくなります。短い時間で回数を分けるほうが、ソマリには合います。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
