C05犬種・猫種別ケア

日本猫はなぜ毛玉の吐き戻しが起きやすいのか。短毛から考える

公開日 2026年3月24日|文=mofuwa編集部

明るい窓辺の淡い色の床で、クリーム色と白の猫が自分の毛づくろいをしている
外を歩いていた時間は、室内では別のことに使われます。舌が毛の上を通る回数は、そこで変わります。写真:彥荏王/Pexels

日本猫が窓辺で毛づくろいを始めて、前足から脇腹、背中へと舌が移っていくのを数えていたら、20分たっていました。途中で一度やめて、また戻ってくる。午後のうちに、同じことが3回ありました。外を歩いていたころのこの子が、一日のうちどれだけ毛づくろいをしていたかは、誰も数えていません。毛球とは、毛づくろいのときに飲み込んだ毛が、消化されずに胃の中でまとまったものです。つまり量を決めているのは、舌が毛の上を通った回数と、そのとき体に残っていた抜け毛の量です。日本猫は長いあいだ外と家を行き来して暮らし、いまは室内で過ごす子がほとんどになりました。この記事は、その置き換わりが毛球の話にどうつながるのか、という読みものです。

外を歩いていた時間が、いまは毛づくろいに置き換わる|日本猫と暮らしてきた人の経験

日本猫という呼び方には、血統の定義がありません。日本で長く暮らしてきた、雑種の猫たちの総称です。だから被毛にも幅があります。それでも共通しているのは、この猫たちが長いあいだ、外と家を行き来しながら暮らしてきたということです。納屋や軒先に居場所があり、日中は外を歩き、夕方に戻ってくる。数十年前まで、それがふつうの日本猫の一日でした。

いまは違います。多くの家で、猫は室内だけで暮らします。安全のためであり、近所との関係のためでもあり、その判断そのものはこの記事で扱う話ではありません。ここで見たいのは、外で使われていた時間が、室内では何に置き換わったのかということです。猫の一日の長さは変わっていません。変わったのは、起きているあいだの時間の使い道のほうです。

以前、外へ出ていた日本猫と暮らしていた方からは、こんな話を聞くことがあります。帰ってきた子の背中に手を当てると、毛がざらついていて、細かい土や草の切れはしがついている。抜け毛は、その日のうちに体からいなくなっていました。風が通り、草をかき分け、雨に濡れて乾く。外の環境そのものが、抜けた毛を体から落としていく働きをしていたことになります。

室内では、その働きがありません。抜けた毛は、抜けたその場所に残ります。日本猫の被毛は多くが短毛で、抜けても長毛のように塊になって落ちることが少なく、根元の近くにひっかかったまま、毛先だけが表に出ている状態で留まります。手のひらでなでても取れず、少し力を入れてはじめて指につく。この残り方が、あとで書く毛球の話につながります。

そして、室内で暮らす日本猫は、よく毛づくろいをします。窓辺に日が差せばそこで、人が帰ってくればその前で、寝床に入る前にもう一度。することが少ない時間ほど、猫は自分の毛を整えるほうへ時間を使います。これは行儀の話でも、几帳面さの話でもありません。安心して過ごせる場所にいるから、そこに時間を使えている、という順番です。

Note毛球は、その子の性格の話ではありません

毛づくろいをよくする子を「きれい好き」と呼ぶことがあります。ただ、日本猫で毛球の量を分けているのは性格ではなく、舌が毛の上を通る回数と、そのとき体に残っていた抜け毛の量という、2つのかけ算です。回数のほうは、暮らし方が決めています。抜け毛の量のほうは、人が先に手を入れれば動かせます。動かせるのは後ろ側です。

起きている時間の使い道が変わりました|室内の日本猫で毛球が増える理由

室内で毛づくろいの時間が増える理由は、いくつか重なっています。ひとつは、移動する距離が減ったこと。外を歩いていたころは、一日の活動のかなりの部分が移動でした。室内では、部屋のあいだを行き来しても数十メートルにしかなりません。その分だけ、じっとしていられる時間が長くなります。猫が起きたまま静かにしている時間の使い道として、毛づくろいはいちばん手近にあります。

もうひとつは、体の表面が汚れなくなったことです。逆に聞こえるかもしれません。けれど猫の毛づくろいは、汚れを落とすためだけの動きではなく、毛の向きをそろえ、体温を調整し、気持ちを落ち着けるための動きでもあります。落とすべき汚れがなくても、この動きはなくなりません。外で泥をかぶって帰ってくる日がなくなっても、舌が通る回数はむしろ増えていきます。

三つ目は、季節の感じ方です。外で暮らしていれば、日の長さも気温も、体でそのまま受けます。室内は空調で温度が保たれ、換毛期の始まりと終わりの区切りが、はっきりしなくなります。春と秋にまとめて動いていた抜け毛が、一年をとおして少しずつ出る形に近づく子もいます。ピークは低くなりますが、抜け毛が体の上にある期間そのものは長くなります。

そこへ、冬の乾燥が重なります。暖房の入った部屋では空気のうるおいが下がり、被毛にも静電気が起きやすくなります。静電気が起きると、抜けた毛は落ちずに体へ貼りつきます。毛先どうしが寄って、根元の側に細かい毛が集まる。この状態で毛づくろいをすれば、舌が拾う量は当然増えます。日本猫の毛球が冬に話題になりやすいのは、抜ける量ではなく、抜けたあとの残り方が変わるからです。

外で過ごしていたころと、室内で暮らすいまで、何が入れ替わったか
外を行き来していたころ室内で暮らすいま
起きている時間の使い道移動と見回りに多くを使う静かに過ごす時間が長い
抜けた毛のゆくえ風・草・雨で体から落ちていく抜けた場所に残り、根元に留まる
毛づくろいの回数戻ってきたあとに集中する一日のあちこちに分かれて増える
季節の区切り日の長さと気温をそのまま受ける空調で薄れ、換毛期が長く延びる
冬の被毛外気で湿り、静電気が起きにくい乾燥で静電気が起き、抜け毛が貼りつく
飲み込む毛の量体に残っている在庫が少ない在庫が残ったまま舌が通る

短毛であることも、ここに関係します。長毛の猫では、抜けた毛がからまって目に見える塊になり、床やソファに落ちるので、人のほうが気づきます。日本猫の短い毛は、1本ずつが軽く、まとまらないまま被毛の中に紛れます。飼い主から見て「うちの子は抜け毛が少ない」と感じる子でも、被毛の中を指で探すと、根元の側に細かい毛が溜まっていることがあります。見えていないことと、ないことは別です。

毛球という言葉は、飲み込んだ毛が胃の中でまとまったものを指します。猫が毛を飲み込むこと自体は、毛づくろいをしている以上、避けられません。日本猫の毛球を考えるときに動かせるのは、飲み込むかどうかではなく、一度に飲み込む量のほうです。そして量を決めているのは、舌が通ったときに体の上にどれだけ在庫があったか、という一点です。

飲み込む量は暮らし方で動きます|日本猫の毛球を毎日のケアで減らす考え方

ここからが、変えられる条件の話です。毛づくろいの回数を人が減らすことはできませんし、減らそうとするものでもありません。猫にとって必要な動きだからです。動かせるのは、舌が通る前に、体の上の在庫をどれだけ外へ出しておけるか。日本猫の毛球を毎日のケアの話として扱うなら、考え方はこの一本に絞れます。

在庫を出す道具は、その子の毛の長さで変わります。日本猫の多くは短毛なので、長い歯のブラシは毛先の上を滑ってしまい、根元に留まった細かい毛には届きません。短い毛の子では、道具を持つ前に、少し湿らせた手のひらで背中をなでるだけでも、指に驚くほどの量がついてきます。まずそこで在庫の見当をつけて、それから道具を選ぶ順番のほうが、無駄がありません。

手を入れる場所は、舌が通る場所と重ねます。猫が毛づくろいで多く通るのは、前足、胸、脇腹、そして届く範囲の背中です。その子の毛づくろいが届かないのは、肩甲骨のあいだと、しっぽの付け根から腰にかけての面です。ここは舌が届きにくいので在庫が残りやすく、同時に、他の場所をなめるときに毛が寄ってくる場所でもあります。人が代わるのは、まずこの2か所からで足ります。

時間帯も条件のひとつです。日本猫が長く毛づくろいをするのは、食事のあとと、寝る前です。その前に在庫を減らしておけば、同じ回数の毛づくろいでも、口に入る量が変わります。夜に短くブラッシングして、そのあとその子がひとしきり毛づくろいをして眠る、という並びをつくれると、毎日のケアが生活の中に残ります。朝にやるか夜にやるかで迷うなら、その子が長くなめている時間の直前を選んでください。

冬は、静電気の側からも手を入れられます。空気のうるおいが下がると抜け毛が貼りつくので、加湿と、寝床の素材を替えることの2つが効いてきます。毛が貼りつかなければ、抜け毛は床に落ちます。掃除の手間は増えますが、床に落ちた毛は、その子の口には入りません。日本猫の毛球を減らすという意味では、床に落ちてくれるほうが望ましい、という見方になります。

毎日きれいにしておきたい、という側から道具を選ぶなら、そこに置かれるのがグルーミングスプレーです。布に含ませて、背中から腰にかけてを毛の流れに沿ってなでるように拭くと、根元に留まっていた細かい毛が指と布に移ります。舌が通る前に在庫を外へ出しておく道具で、その一手を毎日くり返せる形にしたものです。グルーミングスプレーは舐めても問題のない基準でつくられているので、自分で毛づくろいをする猫の背中にかけても、量を気にせずに使えます。全身を洗うのは毎日はできませんが、この2分なら毎日置けます。

mofuwaグルーミングスプレーを日常のケアとして使用してもらうことにより、毛玉予防や被毛を清潔に保つことができます。スプレーしてブラッシングするだけなので、体力低下によりなかなかシャンプーができないシニア犬やシャンプーが苦手な猫ちゃんなどにもおすすめです。清涼飲料水の基準をクリアしているという安全性も高く評価できるポイントです。

近藤 竜太 先生/白金高輪動物病院 院長・獣医師(麻布大学卒/比較眼科学会所属)
東京都港区白金1-2-2 白金ザ・スカイ西棟1階
※実際にお使いいただいている獣医師のご感想です。本記事の監修を受けたものではありません。
飲み込む量を決めている条件と、動かせるかどうか
条件動かせるか家でできること
毛づくろいの回数動かさない猫に必要な動き。減らそうとしない
体に残っている抜け毛の量動かせる舌が通る前に、道具か手のひらで外へ出す
在庫が残りやすい場所動かせる肩甲骨のあいだと腰から先に手を入れる
手を入れる時間帯動かせるその子が長くなめている時間の直前に置く
冬の静電気動かせる部屋のうるおいと、寝床の素材を替える
換毛期の長さほぼ動かせない区切りが薄い前提で、通年の習慣にする
Point毎日5分より、舌が通る前の2分です

日本猫の毛球を減らすという話になると、ブラッシングの時間を延ばす方向に寄りがちです。けれど在庫は、出しきってしまえばそれ以上出ません。10分かけて全身を回すより、その子が毛づくろいを始める直前に、肩甲骨のあいだと腰を2分だけ。この置き方のほうが、口に入る量は変わります。時間の長さより、順番のほうが結果を分けます。

在庫を減らしても吐く回数が変わらないとき|日本猫の毛球で家の側が終わる線

ここまでは、飲み込む毛の量という、家で動かせる範囲の話でした。吐き戻しそのものは体の反応であって、この記事で扱っている範囲の外にあります。回数や様子が変わったときに、毛の手入れの側で答えを探さないでください。次のような変化は、ブラッシングの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。

Cautionこの6つは、毛の在庫では動きません

吐こうとする動きがくり返されるのに何も出ない、食欲が落ちている、便が何日も出ていない、水を飲む量が急に変わった、元気がない、体重が落ちてきた。いずれかに当てはまるときは、毛の手入れの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。日本猫は体調の変化を表に出しにくいことがあります。半日ぶん様子を見て記録をそろえるより、その回数を持って先に動物病院へ行くほうが早く片づきます。

相談に行くときは、いつからか、一日のうちいつ起きているか、そのときの様子、直前に何を食べたか、ブラッシングを最後にしたのはいつかをメモに書いていってください。日本猫は年齢の分かりにくい子も多いので、家に来た時期と、そのときの見た目の年齢も添えておくと役に立ちます。動画が撮れていれば、それがいちばん伝わります。

毛球という言葉は、家で扱える部分と、そうでない部分をまたいでいます。飲み込む量を減らすところまでが、毎日のケアの範囲です。その先で起きていることは、家で判断する話ではありません。この線を先に引いておくと、ブラッシングを増やして様子を見る、という時間の使い方をしなくて済みます。

日本猫が室内で暮らすようになって、失われたものと増えたものがあります。風と草が抜け毛を落としていく働きは失われ、静かに過ごす時間と、毛づくろいの回数が増えました。そのぶんを人が代わる、というのが、いまの日本猫の毛球との付き合い方になります。舌が通る前に在庫を減らしておく。やることは、それだけです。その子が毛づくろいを始めるのを見てから手を伸ばすのではなく、始める前に2分だけ先回りする。日本猫と暮らす一日の中に、その2分を置いてください。

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掲載しているご感想は個人の感想であり、効果を保証するものではありません。本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。気になる変化が続く場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。