C05犬種・猫種別ケア
サイベリアンのダブルコート|アンダーコートの詰まりを毎日のケアで防ぐ
2月のサイベリアンの背中に指を沈めると、指先に綿のような毛がまとわりついてきます。同じ場所を8月にさわると、今度は指のあいだに硬くてまっすぐな毛が数本はさまります。取れてくるものが、季節でまるごと入れ替わっています。サイベリアンの被毛は三層で、真ん中にある中間毛だけは一年をとおしてほとんど動きません。動いているのは、いちばん外側の上毛と、いちばん内側の下毛のほうです。アンダーコートの詰まりというのは、この動く2つが、動かない中間毛のあいだに留まったものです。だから冬と夏では、詰まっている中身そのものが違います。この記事では冬の詰まりと夏の詰まりを並べて、その日にどちらへ手を入れるかの決め方を書きます。
入れ替わる層と、動かない層|サイベリアンのアンダーコートが詰まる条件
サイベリアンの被毛は三層です。いちばん外側に、水をはじく硬くてまっすぐな上毛。いちばん内側に、綿のように細くて柔らかい下毛。そのあいだに、上毛より細く下毛より張りのある中間毛があります。この三層のうち、季節で大きく入れ替わるのは外側の上毛と内側の下毛で、真ん中の中間毛はほとんど動きません。サイベリアンのアンダーコートを考えるときの出発点は、ここにあります。
作りの理由は、この猫が育った土地の気候にあります。寒さの厳しい地域で、雪と風を外側で受け止めながら、内側に空気をためて体温を保つ。外側と内側は季節に合わせて量を変える必要がありますが、そのあいだで形をつくっている層まで一緒に動いてしまうと、被毛全体が崩れます。だから中間毛は、一年をとおして同じくらいの密度でそこに残ります。
ここから、詰まりの条件が導けます。抜けた上毛も、抜けた下毛も、体の外へ出るときには必ず中間毛のあいだを通ります。動かない層が、一年じゅう同じ場所に網のように張られている。その網に引っかかったまま留まったものが、サイベリアンのアンダーコートの詰まりです。毛の量が多いから詰まるのではなく、通り道が一定だから、季節ごとに違うものがそこに溜まります。
サイベリアンも、自分の舌で毎日毛づくろいをする猫です。その舌は、上毛の面までは届いています。けれど舌が触れているのは表面で、中間毛のあいだに留まったものまでは動かせません。その子の毛づくろいが届かないのは、深さの問題です。人が代わるのは、この届いていない一枚ぶんだけになります。
- 中間毛は季節で動かない:一年じゅう同じ密度の網が体の上にあります
- 上毛は季節で量が変わる:抜けたものは硬く、まっすぐで、長さがあります
- 下毛も季節で量が変わる:抜けたものは細く、綿のようにまとまります
- 抜けた毛は必ず中間毛を通る:出口が一定なので、留まる場所も一定です
- 体格が大きく面が広い:同じ日に全身を回そうとすると続きません
- 舌は表面まで:毛づくろいが届く深さと、詰まる深さがずれています
サイベリアンは被毛の量があります。ただ、詰まりを決めているのは量ではなく、動かない層のあいだを、動く毛が通り抜けられているかどうかのほうです。量の話にすると、答えは「もっと長くブラッシングする」に寄ります。通り道の話にすると、答えは「いま何が留まっているかを確かめてから手を入れる」に変わります。かけた時間より、指に取れたもののほうを見てください。
冬の詰まりと、夏の詰まり|サイベリアンで中身が入れ替わる時期
同じ「アンダーコートが詰まっている」という状態でも、サイベリアンでは冬と夏で中身が違います。秋から冬にかけては下毛が増える時期で、留まるのも下毛です。細くて柔らかい毛が中間毛のあいだで寄り集まり、指で押すと弾力のある面になります。手のひらでなでても気づきにくく、指を沈めてはじめて押し返されます。
春から夏にかけては、順番が入れ替わります。増えていた下毛がまとまって抜けきったあと、今度は外側の上毛のほうが入れ替わります。抜けた上毛は硬くてまっすぐなので、中間毛のあいだに刺さったような形で残ります。冬のように面にはならず、1本ずつ立ったまま留まります。触ると、指のあいだに数本はさまる感じになります。
この時期の差は、換毛期という一語でまとめられがちです。けれどサイベリアンでは、換毛期が来ているという事実より、いまどちらの層が動いているかのほうが、手の入れ方を決めます。同じ道具を同じ動かし方で使っていて、春はうまくいくのに夏は取れない、ということが起きるのはこのためです。取ろうとしている相手が、その時点で別のものに変わっています。
| 時期 | 動いている層 | 中間毛に留まるもの |
|---|---|---|
| 秋(10〜11月ごろ) | 下毛が増えていく | まだ少ない。増えた下毛が中間毛を押し広げる |
| 冬(12〜2月ごろ) | 下毛が最も多い | 綿のような毛が寄って、押すと弾力のある面になる |
| 春(3〜5月ごろ) | 下毛がまとまって抜ける | 抜けた綿が一気に出るので、量そのものが増える |
| 夏(6〜8月ごろ) | 上毛が入れ替わる | 硬くまっすぐな毛が、刺さった形で立ったまま残る |
| 通年 | 中間毛はほとんど動かない | 動かないので、留まる場所そのものは変わらない |
秋と春は、量がまとめて動く時期です。手をかけた実感も得やすい代わりに、追いつかないと感じやすい時期でもあります。反対に冬と夏は、量が動かないぶん気づきにくい時期です。とくに夏は、下毛が減っているので手のひらの滑りがよく、外から見ても内側から見ても整って見えます。それでも指を横から入れると、硬い毛が数本、中間毛に引っかかったまま残っていることがあります。
皮脂の回り方も、この2つで違います。冬の綿のような毛は、皮脂を含むとまとまって固まりやすくなります。夏に残る硬い毛は、それ自体はまとまりませんが、刺さったまま残った毛が根元の風通しをふさいで、皮脂が同じ場所に留まる時間を長くします。どちらも、留まっている時間が長いほど扱いにくくなる、という点だけは同じです。
綿が残る冬と、針が残る夏|サイベリアンのアンダーコートを季節で比較する
2つの詰まりを、同じ項目で並べます。比べるのは、どちらがやっかいかではありません。手ざわり、出る場所、その子の毛づくろいが届くかどうか、人が代わるときの深さ。この4つが、季節でどうずれるかです。同じ「サイベリアンのアンダーコートの詰まり」という言葉の下に、性質の違う2つが入っています。
| 冬の詰まり | 夏の詰まり | |
|---|---|---|
| 留まっているもの | 抜けた下毛(綿のような毛) | 抜けた上毛(硬くまっすぐな毛) |
| 手ざわり | 押すと弾力のある面になる | 指のあいだに数本はさまる |
| 出やすい場所 | 脇の下・内もも・しっぽの付け根 | 背中の中ほど・腰・肩の上 |
| 外からの見え方 | 毛が持ち上がって、量が増えて見える | 整って見える。見た目では分からない |
| 毛づくろいが届くか | 舌は表面まで。面の中には入らない | 舌が上毛を寝かせるので、余計に見えなくなる |
| 人が代わる深さ | 層を1枚ずつ、根元の側から外へ | 上から通すのではなく、横から抜く |
| 動かし方 | 分けた線に沿って、短く | 毛の流れに沿って、長く |
| 毎日のケアで狙うこと | 固まる前に、面を作らせない | 刺さった毛を、その日のうちに外へ |
出る場所が違うのは、抜けた毛が体の上でどう動くかが違うからです。綿のような毛は軽く、体が動くたびに少しずつ移動して、こすれて止まる場所に集まります。脇の下、内もも、しっぽの付け根は、いずれもサイベリアンが座ったり歩いたりするたびに面と面が合わさる場所です。冬の詰まりが同じ数か所に戻ってくるのは、そのためです。
硬い毛は移動しません。抜けた場所にそのまま立って残ります。だから夏の詰まりは、その子がいちばん多く毛を持っている面、つまり背中から腰にかけて、広く薄く散らばります。1か所に集まらないので、まとめて取れたという手ごたえがありません。取れないのではなく、1回で取れる量がもともと少ない、という違いです。
どちらを大変と考えるかは、その子と暮らしている時間によって変わります。ただ、道具や回数を変える前に、いまどちらを相手にしているかを決めておくほうが先です。冬の面に対して長いストロークで表面をなでても届きませんし、夏の刺さった毛に対して層を分けて根元から起こそうとしても、そこには綿が入っていません。相手が違えば、正しい動かし方も違います。
今日はどっちの詰まりか|指に取れたもので決めるサイベリアンの毎日のケア
毎日のケアは、カレンダーではなく指で決めます。3月だから春のやり方、と決めてしまうと、その子の実際とずれます。体格の大きいサイベリアンでは、体の前と後ろで進み方が数週間ずれることも珍しくありません。次の順で、その日に触る1か所だけを確かめてください。
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手のひらを背中に当てて、毛の流れに沿って滑らせる
まず表面を見ます。すっと滑るなら、上毛は寝ていて整っています。途中で毛先が持ち上がる、手のひらが引っかかるなら、その下に何かが留まっています。この段階では、まだ道具を持ちません。滑ったかどうかだけを覚えておきます。
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毛の流れと直角に、指を1本まっすぐ沈める
毛を左右に開くのではなく、差し込むように入れます。指の先が地肌に触れるか、その手前で止まるか。押し返される深さが、そのまま留まっているものの厚みです。すっと届く場所は、今日は触らなくて構いません。
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抜いた指を見て、何がついてきたかを確かめる
綿のように柔らかい毛がまとわりついていれば、冬の詰まりです。硬くまっすぐな毛が数本はさまっていれば、夏の詰まりです。両方ついてくる時期もあります。その日は、量の多いほうを先に相手にしてください。
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冬の詰まりなら、層を1枚だけ出してから通す
指で毛を分けて根元側の層を1枚出し、出した幅のぶんだけブラッシングします。終わったら分ける線を少し上へ移す。これを3〜4回くり返せば、その一帯に届きます。深さを先に決めておくと、道具が地肌に当たりません。綿の面を、1日で全部ほどこうとしなくて構いません。
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夏の詰まりなら、上から押さえずに毛の流れに沿って長く通す
刺さっている毛は、上から押し込むと余計に深く入ります。毛の流れに沿って、根元から毛先まで一続きに動かして、外へ運び出すほうが早く終わります。1回で取れる量は少ないので、往復の回数ではなく、通した長さのほうを揃えてください。
| 指についてきたもの | その日の手の入れ方 |
|---|---|
| 綿のような毛が指にまとわりつく | 層を1枚ずつ出して、根元の側から外へ |
| 硬くまっすぐな毛が数本はさまる | 分けずに、毛の流れに沿って長く通す |
| 両方ついてくる | 多いほうを先に。1日で両方やらない |
| 何もつかず、指が地肌まで届く | その場所は今日はやらなくて構いません |
| 指が止まるのに、何も取れてこない | 皮脂で固まっている可能性。無理に引かない |
中間毛が動かないので、被毛の輪郭は一年をとおしてあまり変わりません。外から見て整っていることは、アンダーコートが通っている証明にはなりません。ひざに乗ってきたついでに、脇の下と背中の中ほどへ指を1本沈める、と決めてしまうと、思い出さなくても回るようになります。手ざわりの差は、数日さわっていれば覚えられます。
指を沈める前に上毛の滑りをそろえておきたい日には、猫用のグルーミングウォーターを使います。脇の下と背中の中ほど、つまり冬の綿が寄る場所と夏の硬い毛が立つ場所へ、布やコットンに含ませて毛の流れに沿ってなでるように当ててください。余分な皮脂と油が乳化して落ちるので、上毛が指の滑る側に戻り、そのまま同じ手で一枚ぶんに入れます。舐めても問題のない基準でつくられているので、毛づくろいをする猫でも量を気にせず使えます。グルーミングウォーターは噴射音の出ないボトルなので、ひざに乗ってきたついでの数十秒でも当てられます。固まっている面に直接かけて、そのまま置かないでください。
指が止まる場所に道具を上から強く入れると、留まっている毛ではなく、生えている中間毛と皮膚を一緒に引っぱることになります。猫の皮膚は動きやすいので、引かれた分だけ持ち上がります。嫌がる、鳴く、体をひねるというときは、その日はそこで止めてください。翌日にもう1枚ぶん進めるほうが、結果として早く終わります。
季節の入れ替わりでは説明がつかない、サイベリアンの詰まり方
ここまでは、上毛と下毛が入れ替わることで説明のつく詰まりの話でした。季節と中身が合っているうちは、毎日のケアの範囲です。合わなくなったときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、道具や回数の話として片づけないほうが安全です。
- 季節と、指に取れるものが合わない:真冬に硬い毛ばかり、真夏に綿ばかり出てくるとき
- いつも同じ一か所だけが戻る:首輪、寝床の縁など、毎日同じ場所を押さえているものを思い出してください
- 左右で手ざわりが違う:寝る向きや、体を寄せている面が関係していることがあります
- その場所をなめ続けている:詰まりより先に、皮膚のほうを見てください
- 層を出したあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 毛づくろいの時間そのものが減った:届かない場所が増えているのではなく、動きの側が変わっていることがあります
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、食欲や元気が落ちている。これらが出ているときは、指を沈める場所を増やすより先に、動物病院で地肌の側を見てもらってください。サイベリアンは被毛の下が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。指が止まる場所が体のどこに何か所あるかを数えておくと、その日のうちに切り分けてもらえます。
相談やトリミングの前には、指が止まる場所、いつからか、その日に指へ取れたものが綿だったか硬い毛だったかの3つをメモしてください。この3つがあると、季節の入れ替わりで説明のつく詰まりなのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれなかった場所は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。前の晩に頑張ると、もとの状態が分からなくなります。
サイベリアンと暮らすうえで、上毛と下毛が入れ替わること自体はなくなりません。三層の被毛は、この猫が寒い土地で体温を保つためにそなえた作りだからです。動かせるのは抜ける量ではなく、抜けた毛が中間毛のあいだに留まっている時間のほうです。冬は綿、夏は硬い毛。指に取れたもので相手を決めて、その子の毛づくろいが届かない一枚ぶんだけを代わる。サイベリアンのアンダーコートで手を入れられるのは、そこです。
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よくある質問
- サイベリアンのブラッシングは、季節で回数を変えたほうがいいですか?
- 回数より、指に取れたもので決めるほうが確かです。冬は綿のような下毛が寄って面になるので、層を1枚ずつ出す手間がかかります。夏は硬い上毛が刺さったまま残るので、1回で取れる量が少なく、通す長さのほうが要ります。同じ回数でも、動かし方が変われば結果は変わります。
- 夏は毛の量が減って見えるのに、アンダーコートは詰まりますか?
- 詰まることがあります。下毛が減っているので手のひらは滑りますが、抜けた上毛は中間毛のあいだに立ったまま残ります。外からは整って見えるので、見た目では分かりません。毛の流れと直角に指を沈めて、硬い毛が指のあいだにはさまるかどうかで確かめてください。
- 猫は自分で毛づくろいをするのに、人が手を入れる必要はありますか?
- その子の舌が届いているのは上毛の表面までです。中間毛のあいだに留まったものは、なめても動きません。人が代わるのは、この届いていない一枚ぶんだけで、全身を毎日やる必要はありません。指が地肌まで届く場所は、その日は触らなくて構いません。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
