C09シーン別・暮らし
シニア犬と暮らす人のためのドッグカフェ|5分で終わらせるケア
90分のあいだに顔を上げたのは4回でした。写真を1枚も撮らなかったので、あとから思い出せたのがその4回だった、という意味です。6年前に同じ店の同じ窓際へ連れて行ったときは、席についてすぐ立ち上がり、店員が通るたびに顔を向けて、60分で水を3回飲みました。老犬になってからのドッグカフェは、こちらから見ると何も起きていない時間です。連れてきた意味があったのかと、帰りの道で一度思いました。ここでは、その「何もしない時間」の中身を数え直して、席の選び方を入れ替えるまでの話を書きます。
同じ窓際の席で、6年前と今年に起きていたこと|老犬とドッグカフェへ通って残った経験
同じ店に、6年あいだを空けて2回行きました。最初は3歳のころです。窓際のいちばん見晴らしのいい席を取って、そこに座らせました。座らせたというより、座っていませんでした。席についてから最初の10分で4回立ち上がり、隣のテーブルの犬を見て、店員が通るたびに顔を向けています。60分のあいだに水を3回飲み、帰り道は歩いて15分の距離をふつうに歩いて帰りました。そのときのドッグカフェは、こちらにとっても分かりやすい時間でした。何かが起きているのが目に見えます。
今年、同じ店の同じ席を取りました。ここからが本題です。その子は席の横に敷いたものの上に伏せて、90分のあいだ、ほとんど姿勢を変えませんでした。顔を上げたのは、隣のテーブルに料理が置かれたときと、こちらが立ち上がったときと、外で大きな音がしたときと、店を出る直前の4回です。水は1回。写真は撮っていません。撮るような場面が来ないまま90分が過ぎました。
帰りの道で考えていたのは、正直に書くと「これなら家にいるのと同じではないか」ということでした。老犬を連れ出すのは、こちらにも手間がかかります。移動があり、店を選び、時間を取ります。その手間の先に、何も起きない90分がある。そう思ったところで一度、通うのをやめようかと考えました。やめなかったのは、その日の夜にひとつだけ、いつもと違うことがあったからです。
- 立ち上がった回数:3歳のとき10回以上/今年は0回
- 水を飲んだ回数:3回/1回
- 顔を上げた回数:数えきれない/4回
- 写真の枚数:20枚以上/0枚
- 席から離れた距離:2メートルほど/0メートル
- その夜の寝つき:いつもどおり/足を伸ばして寝るまでが早かった
並べると、上の5つは全部が「減った」です。ところがいちばん下だけは違います。その日の夜、いつもは体を丸めたまま寝つく子が、早い時刻に足を伸ばして寝ていました。1回だけのことなので、これで何かが言えるわけではありません。ただ、減ったものだけを数えていると、この1行は最後まで表に出てきません。老犬とドッグカフェの話は、ここから組み直しました。
動きの数で見ているかぎり、答えは必ず「減った」になります|老犬のドッグカフェが変わって見える理由
若い犬にとってのドッグカフェは、新しいものが一度に入ってくる場所です。知らない床のにおい、知らない犬、食器の音、人の声。立ち上がって近づき、嗅ぎ、また戻る。その往復の回数が、そのまま「楽しんだ量」に見えます。こちらもその回数を見て、行ってよかったかどうかを決めていました。3歳のころは、それで判断が成立していたということです。
年を重ねると、入ってくるものの届き方が変わることがあります。耳の聞こえ方や目の見え方が以前と同じではなくなり、関節の動きも変わります。立ち上がるという動作そのものに、以前よりも手数がかかるようになります。だから老犬は、同じ量の刺激を受け取っていても、返す動きの数が少なくなります。受け取っていないのか、返していないだけなのか、外からは区別がつきません。動きの数を指標にしていると、この区別が一生つかないままになります。
そこで、その日に数えられるもののうち、動きの数以外を並べ直しました。下の表がその結果です。同じ子の、6年ぶんの差です。
| 数えたもの | 3歳のとき | 今年 | 向き |
|---|---|---|---|
| 立ち上がった回数 | 10回以上 | 0回 | 減った |
| 席から離れた最大の距離 | 2メートル | 0メートル | 減った |
| こちらの足に体が触れていた時間 | ほぼ0分 | 90分のうち80分ほど | 増えた |
| こちらの声に耳が動いた回数 | 分からない | 話すたびに動いた | 増えた |
| 自分から姿勢を直した回数 | 多い | 2回 | 減った |
| 店を出るときの立ち上がり | こちらより先 | こちらが立ってから | 変わった |
表の3行目と4行目が、この日いちばん大きかったところです。3歳のときは、こちらの足に体が触れている時間はほとんどありませんでした。席を離れて、戻ってきて、また離れる。今年は90分のうち80分ほど、前脚か胸のどこかが、こちらの足に当たっていました。触れていることに気づいたのは、席を立とうとして足が動かせなかったからです。
つまり、その子にとってのドッグカフェの意味が入れ替わっています。3歳のときは、外に何があるかを見に行く場所でした。老犬になってからは、人と同じ場所に長くいられる時間のほうへ移りました。家でも同じ部屋にはいますが、家では人が立ったり座ったり、台所へ行ったりします。90分続けて、同じ高さで、同じ場所にいることは、家ではほとんど起きません。
この読み方が正しいかどうかは、こちらには断定できません。ただ、動きの数だけで見ると「連れて行っても何もしない」という結論しか出てこないのに対して、距離で見ると別の見え方が出てきます。見え方が2つあるなら、片方だけを根拠に通うのをやめる必要はありません。老犬とドッグカフェの話は、意味がなくなったのではなく、意味の置き場所が移ったのだと考えることにしました。
見晴らしのいい席をやめて、足元と角で選ぶ|老犬とドッグカフェへ行く日の席の考え方
意味の置き場所が移ったなら、席の選び方も変わります。3歳のころに選んでいたのは、窓際で、通路に面していて、他のテーブルがよく見える席でした。刺激を届けるための席です。その基準のまま老犬を連れて行くと、届く刺激は同じだけあるのに、返す動きがないので、こちらから見て何も起きない時間になります。しかも出入口に近い席ほど、人と犬が通るたびに音と空気が動きます。
いま使っている条件は3つです。こちらの足元に、その子の場所が作れること。壁が2面ある角であること。出入口から遠いこと。この3つで選ぶと、たいてい店のいちばん奥のテーブルになります。見晴らしはありません。ドッグカフェで見晴らしを捨てるのは、最初は損をしている気がしました。実際にやってみると、捨てているのは「こちらが見たかった景色」のほうでした。
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予約のときに、席の場所だけ聞いておく
混み具合ではなく、「奥の壁ぎわの席が空いている時間帯はありますか」と聞きます。条件を出すのではなく、空いている時間を教えてもらう形にすると、店にも負担がありません。老犬を連れて行く日は、いちばん空いている時間帯を選ぶほうが、結果として席も選べます。
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座る前に、椅子の横の幅を見る
テーブルの下ではなく、こちらの椅子の横に、その子が体を伸ばせるだけの床があるかを見ます。テーブルの下は人の足が動く場所で、しかも暗く、立ち上がるときに頭が当たります。老犬に必要なのは、姿勢を変えるときに邪魔がない床のほうです。
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敷くものは、家で使っているものを持っていく
店の床に直接伏せさせるより、家のにおいがついた1枚を敷きます。洗いたてではなく、いつも寝ている状態のものを持っていってください。長く同じ姿勢でいる子ほど、下に何があるかが最後まで残ります。厚みは、床の冷たさが伝わらない程度で足ります。
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座ってから最初の1分は、何もしない
水を出したり、声をかけたり、写真を撮ったりを最初にやらないほうが、その子は早く落ち着きます。こちらが動くと、老犬はそのたびに顔を上げます。1分だけ、こちらが動かない時間を作ります。それから水を置きます。
奥の角の席を取ると、写真は撮りにくくなります。他の犬とも会いません。それでも通う理由があるとすれば、その子にとっての意味が「見ること」から「そばにいること」へ移っているからです。意味が移ったのに席の基準だけ昔のままだと、その子は刺激の側だけを受け取って、そばにいる時間を落ち着いて使えません。席を変えるのは、減ったものに合わせる作業ではなく、残っているもののほうに合わせる作業です。
動く範囲が狭くなったぶん、拭く場所も減りました|老犬とドッグカフェを重ねた毎日の変化
席を変えてから3回通いました。90分のうち顔を上げる回数は、増えていません。増えなくてよかったと思っています。変わったのは、店を出るときの立ち上がり方でした。1回目は、こちらが立ってから、しばらくしてゆっくり立ちました。3回目は、こちらが荷物を持った時点で自分から立っています。順番が同じで、間だけが短くなりました。
帰ってからの手も変わりました。3歳のころは、店内を歩き回っていたので、持ち帰るものが体のあちこちに散っていました。いまは動く範囲が席の横だけなので、外のものが当たる場所が数か所に固定されます。顎の下、口の周り、床側になっていた前脚のつけ根、胸の下端。この4か所を順に拭けば終わります。全身をやろうとしていたころより、かかる時間が短くなりました。
| どこ | なぜそこか | かかる時間 |
|---|---|---|
| 顎の下 | 伏せているあいだ、床にいちばん近い場所です | 1分 |
| 口の周り | うとうとしているあいだに湿ります | 1分 |
| 床側の前脚のつけ根 | 体重が片側にかかっていた場所です | 1分 |
| 胸の下端 | 敷いたものと接していた面です | 1分 |
| 水の器 | 帰ってすぐ新しい水に替えます | 30秒 |
| メモ | 顔を上げた回数と、立ち上がるまでの間を書きます | 30秒 |
拭き方も変えました。老犬を長く立たせておけないので、立たせるのは前脚のつけ根を見るときの30秒だけにして、あとは伏せたまま触ります。顎の下と口の周りは、伏せている姿勢のまま横から手を入れられます。mofuwaのグルーミングスプレーを柔らかい布に含ませ、そのまま一往復させる形にしています。吹きかけて梳かすところまでで終わる道具なので、すすぐために体を起こさせる工程が出てきません。湯船そのものが負担になる年齢では、この「起こさない」が道具を選ぶ基準になります。顎の下は、そのあと自分でなめにいく場所です。なめても差し支えない成分でつくられているので、布に含ませる量を控えなくて済みます。体を起こさせずに済むぶん、こちらも急がなくてよくなりました。
洗うかどうかについても、老犬になってからは考え方を変えました。ドッグカフェへ行った日に毎回洗っていたころは、洗う工程のほうが、店にいた90分より体に響いていた気がします。いまは、家に帰ってから4か所を拭いて終わりにしています。洗う日は別に立てて、その日は出かけません。洗う日はモイストシャンプー、その間の日はグルーミングスプレーという分け方にしてあり、どちらも毎日の中に場所があります。1日に2つのことを重ねないというだけの話ですが、老犬と暮らしていると、これがいちばん効きました。
最後に、切り分けておきたいことを書きます。店で伏せている時間が長いこと自体は、年齢による変わり方の範囲でも起こります。ただし、立ち上がるまでにかかる時間が回を追うごとに延びている、いつも同じ側だけを下にしている、同じ場所をなめ続けている、水を飲む量が明らかに変わった、帰った翌々日になっても食べる量が戻らない。こうした変化が重なっているときは、席や通い方を調整する前に動物病院にご相談ください。老犬の変化は、こちらが慣れてしまうと気づきにくくなります。通った日と、いた時間と、立ち上がるまでの間をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
老犬をドッグカフェへ連れて行っても、こちらから見て何も起きない時間が続きます。それは変わりませんでした。変わったのは、その90分を何で数えるかのほうです。動きの数で数えると減っていくだけですが、こちらの足に触れている時間で数えると、増えているものがあります。意味がなくなったのではなく、意味の置き場所が刺激からそばにいることへ移った。そう考えると、席の選び方も、帰ってからの5分も、自然に決まりました。ドッグカフェは、老犬にとって「行っても何もしない場所」ではなく、「何もしないでいられる場所」のほうだったのだと思います。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
