C02技術・エビデンス
試験条件を読むときに確かめる3か所
「浸透力が35倍」という一行だけを紙に書いて渡されたことがあります。数字は大きいのに、受け取った側は何を確かめればいいのか分からない。そのとき返ってきた質問が「35倍って、何と比べて35倍ですか」でした。試験条件の読み方は、この質問の形をそのまま3つに増やせば手に入ります。何と比べたか、いつ何を測ったか、誰が測ったか。この3か所が書かれていれば、その数字がどこまでの話なのかを読み手の側で決められます。この記事では、実際に社内で使っている数値を材料にしながら、試験条件のどこを見て、どこを見ないでおくのかを書いていきます。
35倍という数字だけを渡されたときのこと|試験条件の読み方を変えた経験
社内の資料に、水分浸透力が精製水の35倍という数値があります。当社の電解水についての数値で、比べた相手は精製水、測ったのは当社です(※自社調べ)。この一行を、条件を省いた形で人に渡したことがありました。返ってきたのは「35倍って、何と比べて35倍ですか」という質問です。もっともな質問で、そのとき初めて、渡した側が条件を落としていたことに気づきました。
数字だけが残った一行は、読む人に仕事を押しつけます。比べた相手が書かれていなければ、読む人は自分の知っている水を思い浮かべて埋めるしかありません。思い浮かべた水が井戸水なのか、精製水なのか、手元の水道水なのかで、35倍の意味は変わります。書いていないところを、読む人がそれぞれ違うもので埋めてしまう。これが、条件を省いたときにいちばん困る形です。
園芸の話に置き換えると分かりやすくなります。「この土は水がしみ込みやすい」と言われても、比べた相手が書いていなければ何も決められません。からからに乾いた土と、朝に水をやったばかりの土では、同じ量の水でもしみ込み方が違います。鉢の大きさ、土の粒の細かさ、注いだ水の量。しみ込みやすさを言うには、どの土に、どれだけ、どうやってかけたかを先に決めなければいけません。試験条件というのは、この「先に決めたこと」の一覧です。
そこから、社内での書き方を変えました。数値を紹介するときは、数字より先に条件を書く。順番を入れ替えただけですが、渡したあとに質問が来なくなりました。試験条件の読み方を身につけるより先に、書く側が条件を落とさなくなる。同じことの裏表ですが、書く側から直したほうが早いという経験になりました。
数字が1つでは動かない理由|犬と暮らす家の物差しに寄せた試験条件の考え方
35倍という数値について、条件の側を書き出してみます。比べた相手は精製水です。何倍かを言うためには、必ず相手が要ります。そして測ったのは当社なので、※自社調べという一行が添えられます。外部の検査機関が実施した試験とは、区別して置く必要があります。ここまでが、この数値の条件の骨格です。
もう1つ、対象についての条件があります。当社の資料では、この浸透の検証について毛髪に触れた瞬間に内部へ浸透し、髪の中心に近い層から膨潤が確認されたという書き方をしています。つまり、測った対象は髪です。犬や猫の皮膚の上で同じことが起きるかどうかは、この検証では測っていません。条件を読むというのは、こういう場所を1つずつ確かめていく作業になります。
ここで、考え方を家の物差しに寄せておきます。犬と暮らしている家で、この数値から言えることはほとんどありません。言えるのは「当社が、精製水と比べて、髪を対象に測った」というところまでです。手ざわりが変わったという実感は、使っている人の側の話で、35倍という数値から出てくるものではありません。数値と実感は、別の場所に置いたままにしておきます。
| 問い | この数値の答え |
|---|---|
| 何と比べた数字か | 精製水と比べています |
| 誰が測ったのか | 当社です。※自社調べという一行を添えます |
| 何を対象に測ったのか | 髪です。犬や猫の皮膚の上ではありません |
| いつまで続くのか | 続く時間は、この検証では測っていません |
| 菌やウイルスとの関係は | 何もありません。別の試験が答えている問いです |
表の下2行を足しておいた理由を書きます。1つの資料に複数の数値が並んでいると、読む人はそれを1つの主張として読んでしまいます。浸透の数値と、菌やウイルスを対象にした試験の記録は、答えている問いがまったく違います。並べて書くと1つの話に見えますが、足し算にはなりません。数値ごとに、答えている問いを1つずつ書き添える。これが試験条件の考え方として、いちばん効きました。
資料には 特許5253483 という番号も載っています。これは水をつくる技術が新しいものとして登録されたことを示すもので、効果を証明したものではありません。登録されているのは電解槽の構造と、水をつくる方法です。できあがった水がどう働くかは、番号からは読めません。浸透の数値と特許の番号は、確かめている対象が最初から別です。並べて1つの主張にすると、どちらの内容からも言えないことが出てきます。
確かめる3か所と、その並びになった背景
ここまでの話を、3か所に畳みます。何と比べたか、いつ何を測ったか、誰が測ったか。この順番になったのは、社内で数値を扱ってきた背景があります。質問されるのは決まってこの順で、しかも最初の1つで詰まることがいちばん多かったからです。
1か所目は、何と比べたかです。◯倍、◯%、◯秒。どれも比べる相手がいて初めて意味を持ちます。35倍なら精製水、という具合に、相手が書かれているかどうかを最初に見ます。相手が書かれていない倍数は、読まないでおくのがいちばん安全です。疑うという意味ではなく、読める形になっていない、というだけのことです。
2か所目は、いつ何を測ったかです。試験には必ず時刻があります。検体を採った時刻、置いた時間、測り終えた時点。そして対象があります。髪なのか、容器の中の検体なのか、床の材質なのか。時刻と対象の2つが書かれていれば、その数値がどの場面の話なのかが決まります。ここが書かれていないと、読む人は自分の暮らしの場面を当てはめてしまいます。
3か所目は、誰が測ったかです。外部の検査機関が実施したのか、当社が測ったのか。当社の資料では、外部の機関が実施した試験には機関名を書き、当社が測ったものには※自社調べを添えています。この一行があるかどうかは、数値の強さの話ではなく、条件を決めた人と確かめた人が同じかどうかの話です。同じであっても書いてあれば読めます。書いていないと読めません。
- 機関名が書かれている:条件を決めた側と確かめた側が別だと分かります
- ※自社調べと書かれている:当社が測ったものだと分かり、外部の試験と分けて読めます
- どちらも書かれていない:出どころが読めないので、その数値は使いません
- 3か所そろっている:その一行の範囲を、読み手の側で決められます
- そろっていて条件がきびしい:数字が小さくても、読める数値のほうが役に立ちます
この3か所の読み方は、当社の資料だけのものではありません。手元にあるどの製品の表示でも、同じ3か所を見れば、その一行がどこまでを言っているのかが分かります。読み方としては、むしろ他社の資料を読むときにいちばん役に立ちます。書いてある数字を比べるのではなく、条件が書かれているかどうかを比べる。その順番で見ると、選ぶときの迷いが減ります。
そのうえで、家で置くものを決めるときの話を書いておきます。犬でも猫でも、口のまわりと前足の先は、人が手を入れた数秒後に舌が通る場所です。だからここに置くものは、条件つきの数値ではなく、中身が何でできているかで決めることになります。mofuwa スキンケアミストに入っているのは電解水だけで、香りをつけるものも足していません。純度は、飲みものに定められた項目と同じ物差しで測ってあります。これは条件つきの数値ではなく、中身についての物差しなので、置かれた場所で意味が変わりません。35倍という数値を根拠にスキンケアミストの使い方を決めることはしていません。散歩から帰ったあと、足の裏と口もとだけを布に取って一往復。それで足ります。
体に起きている変化のほうは、別に扱ってください。地肌の赤みが引かない、同じ場所を舐め続けている、においが日ごとに強くなる。こうしたときに、資料の3か所を読み込んで家で粘るのは遠回りになります。数えるものを、倍数から日数と回数に入れ替えてください。何日前からか、どこに出ているか、1日に何回かを書き留めて、動物病院で相談してください。書き留めたものが、その場での切り分けの材料になります。
3か所を見るようになってから、資料の見え方に起きた変化
この読み方を続けていると、資料の見え方に変化が起きます。いちばん大きな変化は、数字の大きさが目に入らなくなることです。先に条件のほうを探すようになるので、35倍でも3倍でも、同じ手つきで読むことになります。条件が書いてあれば読む。書いていなければ、その一行は使わないまま置いておく。判断が速くなります。
もう1つの変化は、書く側としての変化でした。条件を先に書くと、言えることが目に見えて減ります。減ったぶんを埋めたくなりますが、そこで足すのは数値ではなく、言えないことの並びです。何を測っていないのかを書き添えておくと、読む人が自分で範囲を決められる。試験条件の読み方を渡すというのは、判断を返すことでもありました。
園芸の話に戻ります。しみ込みやすい土を探すより、鉢の前に座って、水をやったあとの土の色を見ているほうが早いことがあります。数値は、その場にいない人に伝えるための道具です。目の前にその子がいるときは、数値より先に手ざわりのほうを見ることになります。3か所の読み方は、そこまで持っていくための道具として使っています。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は商品の情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。掲載している検証データは特定条件下での試験結果であり、すべての環境で同じ結果を保証するものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
