C05犬種・猫種別ケア
アメリカンカールはなぜ毛のもつれが起きやすいのか。長毛から考える
アメリカンカールが前脚の内側を舐めて、その脚で頭を拭こうとしたとき、脚が耳の手前で向きを変えて、そのまま頬へ下りていくことがあります。ほかの猫では、前脚は耳を後ろへ倒しながら、頭のてっぺんから耳の後ろまで一続きに通り抜けます。倒れた耳が、脚の通る道をふさがないからです。アメリカンカールの耳は硬い軟骨でできていて、先が後ろへ向かって弧を描いたまま、押されても倒れません。つまりこの猫では、毛づくろいの中で頭をなでる動きそのものを、耳という部品が妨げています。だから毛のもつれは、体じゅうにばらばらに出るのではなく、耳の弧に沿った細い帯に集まります。この記事は、もつれの場所がその子の耳の形で決まっている、という読みものです。長毛の子ではその帯の中で毛が寄りやすく、換毛期にはさらに中身が変わります。どこを探すかを先に決めてしまえば、毎日ふれる場所は手のひら数枚ぶんで足ります。
前脚が耳の手前で向きを変える|アメリカンカールのもつれに気づいた日の経験
猫の毛づくろいは、二段構えでできています。舌が直接届く場所は、舌でそのまま整えます。舌が届かない頭のてっぺん、耳の後ろ、頬の上といった場所は、前脚の内側を舐めて濡らし、その脚で拭くという動きが代わっています。顔を洗っているように見えるあの動作は、体でいちばん舌が届かない一帯を担当している時間です。
アメリカンカールと暮らしている方に、一度その時間を数えてみてほしいのです。窓辺で15分ほど、何もせずに見ているだけで構いません。前脚が頬を拭く回数は、ほかの猫と変わらないはずです。変わるのは、その脚が耳を越えて頭の後ろまで抜けた回数のほうです。手前で向きを変えて頬へ戻る、耳の外側をぐるりと回って首へ下りる。そういう動きが混ざります。
そのうえで、被毛を指で分けてみてください。脇の下、内股、腰のあたりは、たいてい根元まで指が入ります。ところが耳の付け根の後ろと、反った耳の内側に沿った細い帯だけ、毛先が寄って束になっていることがあります。アメリカンカールのもつれは、体じゅうに散らばらず、この帯に偏って出ます。ここが、この猫のもつれを考えるときの出発点です。
はじめて気づくのは、たいてい何かのついでです。抱き上げたときに指が引っかかる、なでていた手が耳の下で止まる、写真を撮ったら耳の裏の毛だけ流れが違う。体のほかの場所が通っているぶん、耳のまわりだけが取り残されているという経験になります。毛の量が急に増えたわけでも、ブラッシングをさぼったわけでもありません。
- 耳の付け根の後ろ:前脚が耳を越えられずに折り返す場所です
- 反った耳の内側に沿う帯:弧の内側は、外を回った脚が触れずに残ります
- 耳の下から頬へ下りる面:脚が外へ迂回するぶん、内側が空きます
- 首の後ろの、耳2つのあいだ:舌も届かず、脚も抜けにくい一帯です
- 体のほかの場所:たいてい通っています。ここを探しに行かないことが大事です
アメリカンカールの被毛は、長毛の子も短毛の子もいます。もつれの出方を毛の量で説明しようとすると、答えは「もっと長くとかす」になります。けれど帯の外はもともと通っているので、時間を足したぶんは通っている場所に使われます。場所の話にすると、答えは「どこをたどるか」に変わります。かける分数より、指が入っている場所のほうを見てください。
反った耳が、なでる動きの通り道をふさぐ|猫のアメリカンカールでもつれる場所が決まる理由
ふつうの猫の耳は、前を向いて立っています。軟骨はしなやかで、前脚が当たれば後ろへ倒れ、脚が過ぎればまた起き上がります。倒れるという性質があるからこそ、前脚は耳の面をなでたまま、頭の後ろまで一続きに通り抜けられます。耳は道をふさぐ部品ではなく、脚が通るときだけ道を空ける可動部として働いています。
アメリカンカールの耳は、そこが違います。この猫の耳は硬い軟骨を持っていて、先が後ろへ向かってしっかりと弧を描いています。押されても倒れず、角度が変わりません。猫の側からすると、頭を拭こうとして伸ばした前脚が、途中で動かないものに当たることになります。当たれば、脚は止まるか、外側へ迂回するかのどちらかです。
この一点だけで、通る道が変わります。倒れる耳なら、脚は耳の上を滑って後ろへ抜けます。倒れない耳なら、脚は弧の外側を大きく回るか、手前で折り返します。どちらの場合も、弧の内側と、付け根の後ろ側には脚が入りません。アメリカンカールでもつれる場所が決まっているのは、猫の毛づくろいが下手だからではなく、脚が通れる道がその形で決まっているからです。
| 倒れる耳の猫 | アメリカンカール | |
|---|---|---|
| 軟骨の性質 | しなやかで、押すと倒れる | 硬く、押しても角度が変わらない |
| 耳の向き | 前を向いて立っている | 先が後ろへ弧を描いて反っている |
| 前脚が当たったとき | 耳が倒れて、道が空く | 耳は動かず、脚のほうが向きを変える |
| 脚が通る道 | 耳の上を滑って、頭の後ろへ抜ける | 弧の外側を回るか、手前で折り返す |
| 脚が触れずに残る場所 | ほとんど残らない | 弧の内側と、付け根の後ろ側 |
| もつれが出る場所 | 体の条件で散らばる | 耳の弧に沿った帯に集まる |
長毛の子では、ここに毛の長さが乗ります。帯の中の毛が長いほど、毛先どうしが触れ合う面積が増え、根元の側で寄りはじめます。もつれは毛先から見えますが、育っているのは根元のほうです。アメリカンカールの帯を指で分けたときに、毛先は流れているのに根元だけ動かない、という手ざわりになるのはこのためです。短毛の子でも帯そのものは同じ場所にできますが、寄りが面になるまでに時間がかかります。
換毛期になると、帯の中身が入れ替わります。抜けた毛は本来なら床へ落ちますが、前脚が通らない帯の中では、生えている毛にひっかかったまま残ります。そこへ皮脂が回ると、留まった毛どうしがまとまって、指で押すと弾力のある面になります。空気が乾く時期には、静電気で毛先が互いに寄る動きも加わります。どれもよそでは起きていて、帯の中だけ外へ出ていかない、という違いです。
もうひとつ、猫のアメリカンカールで押さえておきたい理由があります。耳の反り方には、その子ごとの差があります。ゆるく反っている子もいれば、後ろへ深く巻いている子もいます。反りが深い子ほど、前脚が迂回する幅が広がり、空く帯が長くなります。だから「アメリカンカールならここ」と一律には言えません。うちの子の耳がどこまで反っているかを見て、そのぶんの帯を引く、という順番になります。
体を探さず、耳の弧だけをたどる|アメリカンカールのもつれをめぐる毎日の考え方
ここまでで、探す場所が決まりました。アメリカンカールのもつれで毎日ふれるのは、耳の弧に沿った帯だけです。体じゅうを順番に確かめる必要はありませんし、確かめようとすると時間が伸びて続かなくなります。猫の側にも、長く押さえられるより短く終わるほうが受け入れられやすい、という事情があります。
帯にふれる前に毛先の滑りをそろえておくと、コームを通す距離が短くなります。猫用 mofuwa グルーミングウォーターは、犬猫向けのグルーミングスプレーと同じ電解水をベースに、猫向けに少しイオンを調整し、容器を音の出ないものへ替えた商品です。吹きつける音がしないので、抱き上げたついでの20秒のあいだ、うとうとしている子のそばでも使えます。猫は自分で毛づくろいをするので、体にかけるものは口に入るものになります。グルーミングウォーターは清涼飲料水の規格基準をクリアした水でできていて、量を気にせず使えます。柔らかい布に含ませて、帯の毛先を毛の流れに沿ってなでてから、根元へ指を沈めてください。耳の中に入らないよう、布は弧の外側だけに当てます。
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耳を倒そうとしないところから始める
硬い軟骨を持つ耳なので、人が押しても倒れません。倒して奥を見ようとすると、猫は頭を引きます。耳そのものは動かさず、根元を親指と人差し指で軽く支えるだけにしてください。支えるのは動かすためではなく、猫が頭を振ったときに手が滑らないようにするためです。
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弧の外側を、指の腹でなぞって帯を引く
耳の付け根から、反りに沿って外側を1本の線でなぞります。そのまま外へ指2本ぶん広げた範囲が、その子の帯です。反りが深い子ほど帯は長くなります。うちの子の帯がどこからどこまでかを一度決めてしまえば、次の日から探す時間はなくなります。
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帯の中で毛を分けて、根元に指を沈める
毛の流れと直角に指を差し込みます。地肌まで届くなら、その場所は通っています。途中で押し返されるなら、そこに寄りが育っています。毛先が流れて見えることは、根元が通っている証明にはなりません。アメリカンカールは耳のまわりの毛が外から整って見えるので、目より指のほうが早く気づきます。
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止まった場所だけ、目の細かいコームを短く通す
帯に沿って、毛の流れの向きに、3〜4回だけ。長い距離を一気に引かないでください。根元がまだ動かないうちに引くと、締まる向きに力が入ります。1日でほどききらなくて構いません。今日は毛先の側だけ、明日は指1本ぶん根元へ、という進め方のほうが結局は早く終わります。
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終わったら、耳の中には何もしないで閉じる
帯の手入れと、耳の中の話は別です。綿棒や布を耳の中へ差し入れないでください。中に汚れが見えて気になるときは、家で取ろうとせず動物病院に相談してください。ここで扱っているのは、あくまで耳のまわりに生えている毛のほうです。
| 帯に指を沈めたときの手ざわり | その日にすること |
|---|---|
| 地肌まですっと届く | 何もしなくて構いません。翌日また触ります |
| 毛先の側だけ引っかかる | コームを毛先の側に3〜4回。根元は触りません |
| 途中で押し返され、根元が動かない | 毛先の側から少しずつ。今日は1本ぶんだけ進めます |
| 面のように締まっていて指が入らない | 無理に引かず、トリミングか動物病院で相談してください |
アメリカンカールのもつれで動かせるのは、抜けた毛や寄った毛が帯の中に留まっている時間の長さです。1回を長くするより、短い接触を毎日切らさないほうが、留まる時間は短くなります。抱き上げたら耳の根元を支えて、弧に沿って指を一度沈める。それだけを、思い出さなくてもできる動作にしてしまうのが続けるこつです。うるおいが足りない乾いた時期は、この20秒の頻度だけ上げてください。
耳の反りが決まっていく時間と、アメリカンカールのもつれに出る変化
アメリカンカールの耳は、生まれたときから今の形をしているわけではありません。生後しばらくのあいだに反りの向きと深さが定まっていき、そこから先はその形で暮らします。つまり帯の位置と長さも、その時期に合わせて決まっていきます。子猫のころに引いた帯を、そのまま何年も使わないでください。1年に一度は、弧を指でなぞり直して帯を引き直すほうが実際に合います。
季節でも変化します。換毛期には帯の中に留まる毛が増え、同じ場所でも指が止まる深さが浅くなります。空気が乾く時期には静電気が加わって、毛先どうしが寄りやすくなります。帯の場所は変わらず、帯の中身だけが季節で入れ替わる、という変化のしかたです。だから時期によって触る回数を変えるのは理にかなっていますが、探す場所を増やす必要はありません。
年齢が上がると、前脚を上げて頭を拭く動きそのものが減っていくことがあります。回数が減れば、もともと届いていなかった帯の外側にも、少しずつ寄りが出はじめます。帯の外に新しいもつれが出てきたときは、耳の形ではなく、毛づくろいの動きのほうが変わったと考えてください。そのときは帯を広げるのではなく、その子が1日に何回頭を拭いているかを、もう一度数えるところからです。
- 片側の帯だけが短い間隔で戻る:寝るときに下になる側や、寄りかかっている面を思い出してください
- 帯の外に、点々ともつれが出てきた:耳の作りでは説明がつきません。動きのほうの変化です
- その場所を気にして、後ろ脚でかき続けている:もつれより先に、地肌のほうを見てください
- 頭を振る回数が増えた:毛の話として片づけず、動物病院で相談してください
- 帯を分けたときに、地肌が赤い・においがある:家で続けるより、早く見てもらうほうが安全です
- 触ろうとすると声を出す、頭を強く引く:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめたりかいたりし続けている、頭を振る回数が増えた、毛が根元から抜けて地肌が見えている、元気や食欲が落ちている。これらは帯の中に留まった毛の話ではなく、地肌の側に出ている変化です。当てはまるものがあれば、帯をたどる回数をこれ以上増やさずに、動物病院で地肌を見てもらってください。アメリカンカールは耳のまわりが外から整って見えるので、指で分けたときの地肌の色が、いちばん早い手がかりになります。20秒の手入れは、その日も続けてかまいません。
相談やトリミングに行く前には、指が止まる場所、いつからそうなったか、直前に触った日の3つをメモしてください。この3つがあると、耳の形で説明のつくもつれなのか、別の見方をする変化なのかを、その場で切り分けてもらえます。ほどききれなかった帯は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。前の晩に頑張って引くと、もとの状態が分からなくなります。
アメリカンカールと暮らすうえで、耳が反っていること自体は変わりません。硬い軟骨で後ろへ弧を描く耳は、この猫がもともと持っている作りです。変えられるのは反りではなく、前脚が通らない帯の中に毛が留まっている時間のほうです。体じゅうを探さない。弧に沿って帯を1本引く。その帯だけを毎日20秒たどる。アメリカンカールのもつれで動かせるのは、そこです。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
