C09シーン別・暮らし
水が苦手な猫と暮らす人のための車でのおでかけ|5分で終わらせるケア
車のエンジンをかけて15分、後部座席のキャリーをのぞくと、その子は同じ姿勢のまま、前脚をなめる動きを止めています。猫は移動のあいだ、毛づくろいをほとんどしません。緊張しているあいだは、体の表面を整える動きが後回しになるからです。水が嫌いな猫と暮らしていると、こういう日ほど、濡らした布を持ち出したくなります。けれど車に乗っているというだけで、その子の手持ちはもう埋まっています。犬なら降りてすぐに足を拭けますが、猫の場合、そこに水を使う手は足せません。この記事では、移動中に何もしないと決めたうえで、降りたあとに毛づくろいが戻る時間を待ち、そこから5分で終わらせる組み立て方を書きます。
キャリーの中で毛づくろいが止まる|猫にとって車での移動が持っている背景
猫は一日のうち、起きている時間のかなりの部分を毛づくろいに使います。毛の流れをそろえ、抜けかけた毛を口で外へ出し、体の表面についたものを移動させる。猫にとってのケアは、人が手を出す前から、その子自身の仕事として毎日行われています。ここが犬との大きな違いです。犬は自分の背中をなめられませんが、猫はほぼ全身に自分の口が届きます。
その毛づくろいが、車に乗ると止まります。キャリーに入れられ、床が揺れ、聞いたことのない音が続く。安心していないあいだ、猫の体は毛づくろいを後回しにします。移動が1時間なら1時間ぶん、その子の被毛は自分では整えられていません。降りたときに毛がぺたりと寝ていたり、口のまわりが乾いた感じに見えたりするのは、そのためです。
そして、降りてからしばらくすると、毛づくろいが一気に戻ります。キャリーから出て、床のにおいを確かめて、落ち着いたと判断した時点からです。猫の側から見ると、車での移動は「止めていた仕事が、あとでまとめて戻ってくる」時間です。この戻ってくる時間が、この記事のいちばん大事な部分になります。
- 閉じた空間で姿勢を変えられない:キャリーの中では、体をひねる動きが取れません
- 音と揺れが続く:止まっている時間がないので、区切りがつきません
- 温度が上がりやすい:車内は温度が動くので、そのぶん体の負担が増えます
- 毛づくろいが止まる:移動時間のぶん、その子の毎日のケアが抜け落ちます
- 降りたあとに一気に戻る:戻り方の勢いは、緊張していた長さに比例します
車から降ろしたときの見た目を、汚れとして受け取らないでください。止まっていた毛づくろいが再開されていないだけのことがあります。人が手を出さなくても、落ち着いて30分もすれば、その子自身が整え直します。ここで先回りして拭いてしまうと、いちばん負担の高い時間に手が1つ増えることになります。
水が嫌いな猫に、移動の日だけ水を使う手を足せない理由
水が嫌いと言われる猫でも、水そのものを怖がっているとは限りません。多くの場合、濡れた被毛が乾くまでのあいだ、体温が奪われて動きが取りづらくなる状態のほうを避けています。だから、濡れたあとにはかならず長い毛づくろいが要ります。乾かして、毛の流れを戻して、においを整える。水を使うというのは、その子に長い仕事を1つ渡すことでもあります。
ここに車での移動が重なると、順番が最悪になります。移動中はもともと毛づくろいが止まっています。戻せる手段を持っていない時間に、乾かす必要のあるものを増やしていることになるからです。水が嫌いな猫にとって、移動の日に水を使う手は、足せないというより、足す場所がありません。
犬の場合は、ここが違います。降りた直後に足を拭いても、その子は自分でどうにかしようとしません。人が拭いて、人が乾かして、それで終わります。猫は、人が濡らしたぶんを、そのあと自分で引き受けます。だから同じ「移動の日のケア」でも、犬と猫では、手を出してよいタイミングが入れ替わります。この記事の題が犬ではなく猫になっているのは、この一点のためです。
| 犬の場合 | 水が嫌いな猫の場合 | |
|---|---|---|
| 移動中の毛づくろい | もともと自分では整えない | 止まっている。あとでまとめて戻る |
| 降りた直後に拭く | 人が拭いて、そこで完結する | 濡らしたぶんを、その子が引き受ける |
| 水を使う手 | 移動の前後どちらでも足せる | 移動の日には足す場所がない |
| 人がやること | 落とす手を出す | 戻る時間を待って、短く済ませる |
| 終わりの合図 | 拭き終わったとき | その子の毛づくろいが落ち着いたとき |
ここまでを整理すると、移動の日に人ができることは、増やすほうではなく、置く時間を選ぶほうだと分かります。車に乗る前も、乗っているあいだも、降りた直後も、水を使う手は置けません。置けるのは、その子の毛づくろいが戻ってきたあとの、短い時間だけです。
降りてからの15分を待つ|犬と猫で順番が入れ替わる、車移動の考え方
待つ時間の目安は15分です。車を降りて、キャリーを静かな場所に置いて、扉を開けたまま何もしない。その子が自分から出てきて、床を確かめて、前脚をなめはじめたら、そこが合図です。15分というのは平均的な目安で、はじめての場所なら30分かかることもあります。時計ではなく、毛づくろいが始まったかどうかで判断してください。
毛づくろいが始まってから手を出す理由は2つあります。1つは、その子が落ち着いたという状態の証明になること。もう1つは、すでに動き出している仕事に人の手を混ぜるほうが、止まっているところへ割り込むより短く済むことです。移動そのものが負担なのだから、そのあとの手は短いほうがいい。だから5分で切り上げます。
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キャリーを静かな場所に置き、扉を開けたまま何もしない
抱き上げない、名前を呼び続けない、のぞき込まない。出てくるかどうかは、その子に決めさせてください。水が嫌いな猫は、たいてい環境の変化そのものにも敏感です。移動が終わったことを、その子が自分で確認する時間が要ります。ここを飛ばすと、あとの5分が10分にも15分にもなります。
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毛づくろいが始まったのを見てから、はじめて布を用意する
前脚をなめる、顔をこする、背中を口で追う。どれか1つでも始まったら、そこからです。布は乾いたまま当てず、グルーミングスプレーを含ませてから当ててください。直接その子に吹きかけるのは避けます。水が嫌いな子にとって、体に何かがかかる感覚は、それ自体が一つの負担になります。
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背中側から始めて、顔と口のまわりは最後にする
背中は、その子から見て手が届きにくく、かつ移動中に車のシートやキャリーの底に触れていた面です。ここを毛の流れに沿って2、3回なでるだけで終わりにします。顔と口のまわりは、猫がいちばん先に自分で手をつける場所なので、人が急いでやる必要がありません。最後に回して、嫌がったらそこでやめます。
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5分たったら、途中でも切り上げる
時間で区切るのは、ここだけです。やり残したところは、その子の毛づくろいが片づけます。移動の日にすべてを終わらせようとしないでください。翌日のふだんの時間に、いつもどおりのケアへ戻せば足ります。5分で切り上げるという決め方が、次の車での移動をやりやすくします。
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水を飲める場所と、隠れられる場所を先に用意しておく
移動のあいだ、水を飲む量は落ちています。降りてから毛づくろいが戻るまでのあいだに、水の器を静かな場所へ置いてください。飲む量が戻るのと、毛づくろいが戻るのは、だいたい同じころに起きます。隠れられる場所があると、その時間が短くなります。
この5分で手に持つのが mofuwa のグルーミングスプレーです。水が苦手な猫は、洗えない子ではなく、湯に入れないほうがいい子です。毎日きれいにしておきたいという側は、濡らして乾かす手を通らずに満たせます。使い方はひとつだけ決めておいてください。その子に直接吹きかけず、布に含ませてから当てる。音と、体に何かがかかる感覚の両方が省けます。口に入っても差し支えない基準でつくられているので、このあと毛づくろいが戻ってきて背中に口が入っても、量を気にせずにいられます。乾いた布だと引っかかる背中も、毛の流れに沿って2、3回なでるだけで整います。
遠出から帰った日ほど、全身をきれいにしてから寝かせたくなります。けれど降りた直後は、その子にとって一日でいちばん手持ちが少ない時間です。そこへ全身のケアを重ねると、水が嫌いな猫の場合、次に車へ乗せるときの抵抗が強くなります。5分で切り上げて、残りは翌日に置いてください。翌日に回すことは、手抜きではありません。
3回めの車で起きる変化|毛づくろいが戻るまでの時間が短くなる
この組み立ては、1回では結果が見えません。見るべきものが、その子の見た目ではなく時間だからです。車を降りてから毛づくろいが始まるまで、何分かかったか。それだけを、移動のたびに記録してください。1行で足ります。日付と、移動時間と、戻るまでの分数。
- 1回め:降りてから毛づくろいが始まるまで、25分かかった
- 2回め:同じ道のりで18分。待っているあいだ、こちらは何もしない
- 3回め:12分。ここまで来ると、5分の手が最後まで入るようになる
- 長くなった回:道が混んだ、暑かった、行き先が初めてだった。理由が残ります
戻るまでの時間が短くなるというのは、車での移動そのものへの慣れが進んだということです。水を使う手を増やさなかったぶんが、そのまま慣れの側に残ります。逆に、移動のたびに濡らした布で追いかけていると、その子にとって車は「降りたあとに嫌なことが続く場所」になります。水が嫌いな猫では、この結びつきが特にできやすいと考えておいてください。
当日の朝にキャリーを出すと、その子はキャリーを見た時点で移動を予測します。前の日から部屋に置いて、扉を開けたままにしておくと、車に入るまでの緊張が一段下がります。これは水を使わない手で、しかも当日の手数を増やしません。降りたあとに毛づくろいが戻るまでの時間にも、そのまま効いてきます。
最後に、待ち方の工夫では片づけないほうがよい変化を書いておきます。移動から半日たっても毛づくろいがまったく戻らない。同じ場所だけをなめ続けて、そこの被毛が薄くなっている。水を飲む量が翌日になっても戻らない。皮膚が赤い、じくじくしている、においがある。車から降りたあと、いつもより息が荒い状態が続く。こうしたときは、慣れの問題として何度も車に乗せる前に、動物病院にご相談ください。移動のストレスと、体の側の変化は、家では見分けがつきにくい形で重なります。記録してきた「降りてから毛づくろいが戻るまでの分数」を、その日の移動時間と一緒に伝えてください。家で切り分けられない部分が、その場で分かれます。
水が嫌いな猫と暮らしていると、水を使えないことが不利に思えます。けれど車での移動に限れば、水を使えないという制約が、そのまま正しい順番を教えてくれます。移動中は何もしない。降りたら待つ。毛づくろいが戻ってから5分だけ。犬と同じやり方を持ち込まず、猫の側の時間に合わせる。それだけで、次の車が少し楽になります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
