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犬の嗅覚は人の約1億倍。においケアの意味が変わる

公開日 2020年10月9日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、窓のそばに落ち着いて伏せている淡い色の犬
人が何も感じない部屋でも、その子の側には情報が残っています。写真:Jessika Arraes/Pexels

犬の嗅覚は人の約1億倍、という数字を見かけたことがあると思います。人の何倍かと問われれば、一般には数千倍から約1億倍とされ、においの種類によって差が非常に大きいと言われています。つまり、1億倍というのは全部のにおいに一律にかかる倍率ではありません。脂肪酸のように、犬にとって意味のある特定のにおいについて言われている数字です。ここを取り違えると、家のにおいケアの方向まで一緒にずれます。この記事では、犬の嗅覚が人の何倍と言われるのかを条件つきで開いたうえで、「人が無臭にした」と感じた部屋が、その子にとってはどうなっているのかを書きます。行き着く答えは1つで、においケアの目標は消すことではなく、その子が嫌がらない状態にすることです。

犬の嗅覚は、人の何倍だと言われているのですか

よく引かれるのは「人の約1億倍」という言い方です。ただし、これは犬の嗅覚を1つの数字で表したものではありません。一般に言われているのは数千倍から約1億倍という幅で、においの種類によってその何倍かが大きく変わる、とされています。

何倍という数字が出てくるときは、必ず何と比べた数字かを確かめる必要があります。この場合の比較の相手は人です。人が「そこににおいがある」と気づける最も薄い濃度と、犬が気づける最も薄い濃度を比べて、何倍薄くても気づけるか、という測り方をした数字だと考えてください。濃さの感じ方が1億倍鮮やかになる、という意味ではありません。

「人の何倍」という数字を読むときの3点
確かめることこの数字の場合読み違えやすい形
何と比べたか人が気づける最も薄い濃度犬同士の比較だと思ってしまう
何を測ったかどのくらい薄くても気づけるかにおいの強さの感じ方だと思ってしまう
どの条件かにおいの種類によって幅が大きいすべてのにおいで1億倍だと思ってしまう

犬の嗅覚をめぐる数字は、資料によって書かれ方が違います。数千倍と書いてあるものも、1万倍と書いてあるものも、約1億倍と書いてあるものもあります。どれかが間違っているのではなく、測っているにおいが違う、というのが実際のところです。

なぜ「何倍」の幅が、数千倍から1億倍まで開くのですか

理由は、においの種類ごとに得意・不得意があるからです。犬の嗅覚は、すべてのにおいに対して均等に鋭いわけではありません。ある種類のにおいには極端に強く、別の種類にはそこまでの差が出ないと言われています。だから、どのにおいで測ったかによって、人の何倍という数字が桁ごと動きます。

体のつくりの側にも理由があります。においを受け取る細胞の数も、鼻の奥でにおいを受け止める面積も、人よりずっと大きいとされています。加えて、犬は鼻を使っている時間そのものが長い。散歩で立ち止まる回数を数えてみると、人が目で見ている時間に相当するくらい、鼻で世界を確かめていることが分かります。何倍という数字は、この使い方の差までは含んでいません。

Note数字の精度を、必要以上に上げないこと

犬の嗅覚が人の何倍か、という話に、小数点以下の精度はありません。「一般に数千倍から約1億倍とされている」という書き方が、いまのところいちばん正確です。細かい数字を1つに決めたくなりますが、決めた瞬間に条件が落ちて、読み違いのもとになります。この記事でも、幅と条件のまま扱います。

「約1億倍」という何倍は、どんなにおいについての数字ですか

大きい数字が出てくるのは、たいてい脂肪酸のなかまのにおいについてです。脂肪酸とは、皮脂や汗、食べもの、体から出るものに広く含まれている成分の総称で、犬にとって意味のあるにおいにあたります。生きものの跡をたどるうえで手がかりになるにおい、と言い換えてもいいかもしれません。

ここが、この記事でいちばん押さえてほしいところです。約1億倍という何倍は、犬が生きるうえで必要なにおいに向けて研ぎ澄まされた数字です。だから、家の中でも同じことが起きます。人にとってはただの布でも、犬の嗅覚にとっては、そこに誰が座ったか、いつ座ったか、何を食べたあとだったかが読み取れる面になっています。

同じものが、人と犬でどう見えているか
もの人が受け取る情報犬の嗅覚が受け取ると言われる情報
寝床の布見た目のきれいさ誰の、いつの、どんな状態のにおいか
食器洗ったかどうか前の食事の脂が残っているかどうか
自分の手石けんの香り石けんの下にある皮脂のにおい
玄関の床何も感じない外から入った人と、その順番
洗ったばかりの体無臭になったと感じる使ったものの成分と、残っている自分のにおい

つまり、犬の嗅覚が人の何倍かという話は、感度の自慢ではありません。受け取っている情報の量が、そもそも違うという話です。ここまで来ると、においケアの意味が変わります。

人が「においが消えた」と感じた部屋は、犬にとってどうなっていますか

結論から書くと、消えていません。人が「無臭になった」と感じるのは、人の気づける濃度を下回ったという意味です。犬の嗅覚が人の何倍かを思い出せば、その下にまだ広い範囲が残っていることが分かります。減ってはいますが、その子にとっては、まだ十分に読み取れる量です。

同じ部屋を、人の側と犬の側から見る 人が気づけなくなった濃度から下にも、犬の嗅覚が届く範囲が広く残っているとされています。同じ部屋の話です。 無臭という言葉は、人の側の言葉です 人の側 洗えばにおいが消える 香りをつければ変わる 換気しても分からない 寝床は見た目で判断する 食器は洗えば終わり 犬の側 洗ったあとの成分が残る 香りが1つ増えただけ 換気の前後で明確に違う 寝床は情報の集まる場所 食器の脂は残っている 消すのではなく、嫌がらない状態にする
掃除で減らせるのは量で、ゼロにできるわけではありません。

ここから、よくある行き違いが説明できます。人が強い香りのものでにおいを覆い隠したとき、犬の側ではもとのにおいが残ったまま、知らないにおいが1つ増えた状態になります。減っていないのに、情報だけが増える。犬が急にその場所を避けたり、逆にしつこく嗅ぎ回ったりするのは、この形になっていることがあります。

Point香りを足す前に、出どころを減らす

順番の話です。においの出どころを減らしてから、必要なら整える。逆にすると、犬の嗅覚にとっては情報が積み重なるだけになります。人の何倍もの範囲を受け取っている相手に対して、上から覆う方法は向いていません。無香料のものを選ぶ理由も、ここにあります。

だから、においケアの意味はどう変わるのですか

目標が変わります。においを消すこと、から、その子が嫌がらない状態にすることへ。犬の嗅覚が人の何倍という前提に立つと、消すという目標はそもそも達成できません。達成できない目標を持ち続けると、掃除も洗う回数も、際限なく増えていきます。

目標を置き換えると、やることが変わる
消すことを目標にすると嫌がらない状態を目標にすると
洗う回数気になるたびに増える決めた間隔を保つ
使うもの香りの強いものに寄る無香料に寄る
掃除の場所部屋全体を追いかける出どころの5か所に絞る
終わりの判断人が感じなくなるまでその子の様子が落ち着いているか
犬の側の負担手を入れる回数が増える手数が減り、予測できる形になる

「嫌がらない状態」は、その子の様子で判断できます。その場所で寝られるか。近づいたときに顔をそむけないか。同じ場所を過剰に嗅ぎ続けていないか。人の鼻ではなく、犬の側の行動を終わりの合図にする、という決め方です。犬の嗅覚が人の何倍かを議論しなくても、目の前の一頭を見れば分かります。

この置き換えには、もう1つの利点があります。洗う回数を増やさなくてよくなること。においが気になるたびに洗うと、皮脂が必要以上に減って、かえって乾きやすくなることがあると言われています。においケアと皮膚のケアは、この一点でつながっています。

においの出どころは、家のどこにありますか

追いかける場所を絞ります。犬と暮らす家でにおいの出どころになりやすいのは、次の5か所です。いずれも、皮脂がたまり、そこに雑菌が加わり、時間が経つ場所という共通点があります。においは、たいていこの3つがそろったところから出ます。

  1. 寝床

    毎日、いちばん長い時間その子が接している場所です。布は皮脂を吸って、乾かないまま抱えます。週に1回洗って、天気のいい日に乾かす。洗える形のものを選んでおくと、この1つだけで家全体のにおいがかなり変わります。

  2. 食器

    洗ったつもりで、ふちと底に脂が残りやすい場所です。ぬるま湯だと脂が伸びるだけのことがあります。水の器も同じで、毎日中を洗って新しい水に替えます。犬の嗅覚にとって、器は毎日いちばん近づく物です。

  3. 体の中でも、脂が集まる場所

    尾のつけ根、脇、口のまわり、足の指のあいだ。ここは皮脂が多めに出るとされる場所で、拭き取りが届きやすい場所でもあります。全身を洗わなくても、この4か所を拭くだけで違いが出ます。

  4. 床と、その子がよく座る場所

    同じ場所に毎日座ると、そこに皮脂が移ります。敷いてあるものを1枚はさんでおくと、洗える形に変わります。床そのものを追いかけるより、洗えるものを1枚置くほうが手数が少なくて済みます。

  5. 空気そのもの

    換気です。1日2回、数分でかまいません。換気は、においの元を減らすのではなく、たまった空気を入れ替える手です。犬の側では、換気の前後の差がはっきり分かるとされています。

この5か所を回すと、部屋全体を追いかける必要がなくなります。においケアは、面積の問題ではなく、出どころの数の問題です。犬の嗅覚が人の何倍だとしても、出どころを減らせば、受け取る量そのものが減ります。

洗う日と洗う日のあいだに、出どころを減らすには何をしますか

毎日きれいにしておきたい場所を、4か所に絞ります。尾のつけ根、脇、口のまわり、足の指のあいだ。全身を洗う日を待たずに、この4か所だけを毎日の側に置きます。やることは拭き取りで、1回あたり2〜3分で終わります。

この4か所を毎日拭くための道具が、mofuwa グルーミングスプレーです。中身は特許電解水、無香料で、界面活性剤も入っていません。犬の嗅覚が人の何倍かという話の流れでいちばん大事なのは無香料であることで、出どころを減らしにいく手が、香りを足す手に変わってしまいません。すすぎも乾かす手間も出ないので、2〜3分のまま毎日回せます。使い方は、清潔な布に含ませてから、毛の流れに沿って一方向に一往復。顔まわりには直接かけず、布に取ってから当てます。清涼飲料水の規格基準をクリアした水なので、口のまわりを拭いたあと、そのままなめても構いません。ブラッシングの前に使うと、毛のあいだのものが浮いて持ち出しやすくなります。

Caution赤み・傷・じくじくしている場所には使わない

拭き取りは、変化のない毎日を重ねる場面のための手です。地肌が赤い、傷がある、かさぶたがある、じくじくしている。こうした場所には使わず、動物病院にご相談ください。においが気になるからといって、そこに家のケアを重ねないでください。においの変化そのものが、体からの合図であることもあります。

「人の何倍」を家の手順に置き換える|においが急に変わったときに伝えること

最後に、犬の嗅覚が人の何倍かという話を、実際の手順に落とします。数字を覚えることが目的ではありません。目標を「消す」から「嫌がらない状態にする」へ置き換えて、出どころを5か所に絞る。やることはそれだけです。

1週間の割り当て
いつやることかかる時間
毎日食器を洗って、水を新しくする1分
毎日1日2回の換気各3分
毎日4か所をグルーミングスプレーで拭く2〜3分
週に1回寝床の布を洗って乾かす干す時間のほか5分
週に1回尾のつけ根と脇の地肌を見る2分
決めた間隔全身を洗うその家の間隔のまま

この表に「部屋全体の消臭」が入っていないのは、意図的です。犬の嗅覚が人の何倍かを前提にすると、空間を無臭にするという目標は、達成できないうえに手数だけが増えます。出どころを減らす手のほうが、時間あたりの効きかたがはっきりしています。

犬の嗅覚が人の何倍かという数字は、覚えておくと使いどころが1つあります。人が何も感じなくても、その子には残っている。これだけです。この一行を持っていると、香りを足す手が止まり、洗う回数を増やす手が止まり、そのぶん出どころを見る目が育ちます。

Cautionいつから・どこから・どんなふうに、の3つを持っていく

掃除や拭き取りの前に確かめてほしいことがあります。体のにおいが数日で急に強くなった、においの質が変わった、耳や口のまわりから今までと違うにおいがする、同時にかゆがる回数が増えた、なめ続けている場所がある。こうした変化があるときは、においケアを足す前に動物病院にご相談ください。伝えるのは、いつから/どこから/どんなふうに変わったかの3つです。犬の嗅覚の話とは別に、においは体の側の変化がいちばん早く出る場所のひとつだと言われています。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。