C09シーン別・暮らし
帰省を楽にする、大型犬と暮らす人の毎日の習慣
実家の居間に着いて15分後、その子は部屋のいちばん真ん中で横になっていました。壁ぎわに寄せることも、膝に乗せておくこともできません。体重があると、こちらが動かそうとしても動かないからです。帰省のたびに同じ場面になります。大型犬と暮らしていると、他人の家ではその子を置く場所がありません。結局、床の面積をそのまま借りることになります。畳の上、カーペットの上、家族が座る場所のとなり。ペット連れの帰省で手を入れられるのは、実家に着いてからではなく、家を出る前の毎日のほうです。この記事は、床に当たる3つの面を、帰省の1週間前から毎日の習慣に組み込んでおく、という読みものです。
帰省のたびに同じ場面になる|大型犬を連れた居間で毎回する経験
実家の居間は、たいてい6畳か8畳です。そこに座卓があり、テレビがあり、人が4人か5人います。大型犬が伏せられる場所は、部屋の真ん中にしか残っていません。小さな子なら、座卓の下や壁ぎわの隙間に収まります。体長が1メートルを超えると、その隙間には入りません。入ろうとして、途中で座卓を持ち上げます。
帰省のためにベッドやマットを持っていく方は多いと思います。持っていっても、その上にずっといてくれるとは限りません。知らない部屋では、人がいるほうへ来ます。そして人の足元で伏せます。ペット連れの帰省で毎回起きるのは、この一連です。持っていったペット用のマットは、玄関のそばで畳まれたまま帰ってきます。
自宅なら、床のほうを合わせられます。その子が寝る場所は決まっていて、そこにマットが敷いてあり、洗える。実家ではそれができません。畳もカーペットも、家族が毎日使っているものです。ペットを連れていく側としては、床のほうを変えてくれとは言えません。結果として、その子の体のほうが、実家の床に合わせることになります。
- 玄関で足を拭き終わる前に、上がってしまう:大型犬は玄関で押さえておける時間が短い
- 座卓のまわりを一周してから伏せる:人と人のあいだの床が、そのまま寝床になります
- 暑がって、いちばん涼しい場所へ移る:廊下、玄関の三和土、台所。移るたびに床が変わります
- 数時間、同じ向きで伏せている:体の片側だけが、長い時間ずっと床に当たっています
- 帰るころには毛が固まって残っている:カーペットの毛足に刺さったものは、掃除機で全部は出ません
そして帰省の2日目あたりに、家族の誰かが言います。「なんかにおうね」。悪気はありません。ただ、こちらは慌てます。実家に道具はありませんし、風呂場を借りて大型犬を洗うのは、簡単な話ではないからです。この場面で使える手は、帰省の当日にはほとんど残っていません。だから、行く前の毎日のほうへ持っていきます。
大型犬と暮らしていると、体が大きいこと自体が問題のように語られがちです。そうではありません。困っているのは、床に当たる面積が広く、その面積を人が使う場所と共有しているという条件のほうです。同じ条件は、小さな子が長時間ソファに乗っている家でも起きます。帰省で手を入れる場所を決めるときは、体格ではなく「床に当たっている面はどこか」から数えてください。
なぜ床の面積を借りることになるのか|ペット連れの帰省が畳とカーペットへ向かう背景
立っているとき、その子が床に触れているのは4本の足の裏だけです。手のひら4枚ぶん。ところが伏せると、条件が一気に変わります。胸から腹、脇、後ろ足の内側、尾のつけ根までが、まとめて床に乗ります。大型犬では、この面積が新聞紙を広げたくらいになります。しかも伏せている時間は、立っている時間よりずっと長い。
| 姿勢 | 床に当たる面 | 帰省中にその姿勢でいる時間 |
|---|---|---|
| 立っている | 足の裏だけ | 移動と、来客のあいさつのあいだ |
| 座っている | 足の裏と、尾のつけ根 | 食卓のそば。人が食べているあいだ |
| 伏せている | 胸・腹・脇・内もも・尾のつけ根 | 居間にいる時間のほとんど |
| 横になって寝る | 体の片側がまるごと | 夜と、昼寝の数時間 |
床の側の条件も、自宅とは違います。畳には目があります。毛はその目に沿って入り、掃除機の向きが直角だと出てきません。い草は湿りを吸うので、その子が伏せていた場所は、離れたあとしばらく温度と湿りが残ります。カーペットはもっと分かりやすく、毛足に毛が刺さります。刺さった毛は、掃除機のブラシが当たらない角度になると、そこに残り続けます。
もう一つ、帰省ならではの条件があります。滞在が長いことです。ドッグカフェなら1時間、車での移動なら3時間で終わります。帰省は1泊でも18時間、3泊なら60時間を超えます。その間ずっと、同じ体の面が同じ床に当たっています。時間が長くなると、毛と皮脂が床へ移る量も増えますし、逆に床のほうにあったものが体へ乗ってきます。ペットを連れた帰省が、他の外出とはっきり違うのはここです。
そして、実家には道具がありません。ブラシも、その子に合った布も、乾かすものもない。帰省の当日に、実家で新しく何かを始めることは、ほぼできないと考えておくほうが現実的です。近所に店があっても、大型犬を車に残して買い物には行けません。だから、動かせる条件は「行く前」に全部集まっています。
「畳に毛が入るから」と先に言うと、家族の側が身構えます。ペット連れの帰省を歓迎してもらうには、こちらが黙って手を打っているほうが早い。帰省の前に済ませておけば、実家では何も言わなくて済みます。気を遣わせないことが、次の帰省を楽にします。大型犬は存在感があるぶん、家族の記憶に「大変だった」という印象が残りやすいことも覚えておいてください。
腹・脇・尾のつけ根から手を入れる理由|大型犬の帰省が楽になる毎日の習慣
手を入れるのは3面だけです。腹、脇、尾のつけ根。背中でも、顔でも、足でもありません。この3面を選ぶ理由ははっきりしていて、伏せたときに床へ当たり、なおかつその子が自分で手入れできず、こちらも普段いちばん触っていない場所だからです。背中はブラシが毎日通っています。3面には通っていません。
| 面 | なぜそこが残るか | 触る向き |
|---|---|---|
| 腹(胸から後ろ足のあいだ) | 毛が短く、床に直接当たる。自分で届かない | 前から後ろへ、一方向に |
| 脇(前足のつけ根の内側) | 曲がる場所で、こすれて湿る。閉じているので乾きにくい | 前足を軽く持ち上げて、上から下へ |
| 尾のつけ根 | 座った姿勢でも伏せた姿勢でも当たる。二重に時間が長い | つけ根を中心に、ぐるりと1周 |
ここで大型犬の条件がひとつ効いてきます。片手で持ち上げて仰向けにする、という手が使えません。体重があるので、こちらの腰が先に持ちません。だから3面は、伏せている姿勢のまま、あるいは立っている姿勢のまま、下から手を差し入れて触ります。ひっくり返さない前提で組んでおくと、実家でも同じやり方が使えます。姿勢を変えさせないことが、そのまま毎日続く理由になります。
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帰省の7日前から、1日1面だけと決める
3面を毎日全部やる必要はありません。月曜は腹、火曜は脇、水曜は尾のつけ根。これを2周すれば、帰省の日までに各面を2回ずつ通せます。大型犬は1面でも面積が広いので、3面をまとめてやろうとすると1回が10分を超えて、3日で止まります。1日1面なら3分で終わります。
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帰宅後の、足を拭く流れにつなげる
新しい時間を作らないでください。散歩から帰って足を拭くとき、その子はすでに立ち止まっています。足を拭き終わったその手で、そのまま今日の1面へ移る。帰宅後の数分に混ぜてしまうと、思い出さなくても回るようになります。毎日の習慣として残るのは、たいてい既存の流れにくっつけたものだけです。
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毛の流れに沿って、当てて滑らせる
力は要りません。腹と脇の毛は短く、皮膚が薄い。こするとその場で赤くなります。手のひらか、わずかに湿らせた布を当てて、毛の流れの向きに滑らせるだけ。1面あたり2往復で足ります。途中で毛が寄って束になっている場所があれば、そこは指で開いてから、もう一度同じ向きに通してください。
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帰省の前日は、3面を1回ずつ通して終わる
前日に洗う必要はありません。洗ってしまうと、皮脂が戻る途中で実家の床に伏せることになります。前日にやるのは、3面の総ざらいを1回だけ。ここで手が引っかかる場所があれば、それが帰省中にいちばんにおいの出る場所です。実家で気になったときに、どこを触ればいいかが分かっている状態で出発できます。
3つ目で布を湿らせるものは、mofuwaのグルーミングスプレーにしています。毎日きれいにしておきたいという願いを、大型犬の広い面でも毎日やれる形にした道具です。大型犬に直接吹きかけると量が読めないので、布に3〜4回吹いてから、腹・脇・尾のつけ根の順になでる使い方にしてください。帰省の前日と、実家に着いた翌朝に1回ずつ。舐めても問題のない基準でつくられているので、腹に手を入れたあとにその子が自分をなめても、量を気にせず使えます。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、実家の畳に毛が落ちやすい日も、静電気の起きにくい状態で梳かせます。
室内での過ごし方についても、ひとつだけ。実家に着いたら、その子が伏せる場所に、家から持っていったタオルか薄いマットを1枚だけ敷いてください。ペット用の大きなベッドではなく、体の下に入るだけの1枚で構いません。大型犬はベッドの上に収まりきらないので、大きなものほど使われません。1枚なら、移動先にも持って動けます。帰るときは、その1枚だけを袋に入れて持ち帰ります。
家でやっている順番を、実家でも同じにします。腹・脇・尾のつけ根。場所が変わっても手順が同じなら、その子は次に何をされるか分かっています。知らない家で、知らない順番で触られると、大型犬は体重をかけて抵抗します。押さえられないので、こちらが折れることになる。順番を守ることが、実家で手を入れられるかどうかを決めます。
実家で気づいたその子の変化は、ペット連れの帰省のせいではないことがあります
帰省から戻ってきて、「実家にいるあいだ、なんとなく元気がなかった」と感じることがあります。環境が変わったのだから当然だ、で片づけたくなる場面です。ただ、そこにいくつか、帰省では説明のつかない変化が混ざっていることがあります。環境の変化は、体の側の変化を隠します。だから、戻ってからもう一度見てください。
- 帰省のあいだだけの変化:食が細い、落ち着かない、夜に何度も起きる、人の足元から離れない。家に戻って2〜3日で元に戻ります
- 戻っても続く変化:同じ場所をなめ続けている、後ろ足のつけ根を気にしている。床に当たっていた面に手を入れて、それでも変わらないなら別の理由です
- 床に当たる面の地肌が赤い:長時間同じ向きで伏せていたあとに出ることがあります。3日たっても引かないなら、ケアの回数を増やす前に見てもらってください
- 立ち上がるまでに時間がかかるようになった:これは帰省のせいではありません。大型犬では、関節と体重の話が別にあります
- においの質そのものが変わった:強くなったのではなく、種類が変わったと感じるとき。実家の床のにおいではありません
ここを分けておく理由は、帰省が年に何度もあるものではないからです。次に実家へ行くのは半年後かもしれません。そのあいだ「あれは帰省のせいだった」と思っていると、半年ぶんの変化を見落とします。ペットとの暮らしで判断を先送りにしていい期間は、そんなに長くありません。戻って3日、というくらいの短い区切りを決めておいてください。
床に当たっていた面の地肌が赤い、じくじくしている、同じ場所をなめ続けている、触ると嫌がる、においの質が変わった、食欲が戻らない、立ち上がるときに時間がかかる。帰省から戻って3日たってもこれらが続くときは、手入れの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。大型犬は体が大きいぶん、腹や脇のように普段見ない面の変化が、進んでから見つかることがあります。滞在した日数と、どの面が床に当たっていたかをメモして持っていくと、そのぶん話が早く進みます。
最後に、この記事でやっていることをもう一度書きます。実家の床は変えられません。家族に気を遣わせるわけにもいきません。大型犬は隅に寄せられないので、居間の真ん中で、床の面積をそのまま借りることになります。そこで動かせるのは、床に当たる3つの面だけです。腹、脇、尾のつけ根。帰省の1週間前から、1日1面ずつ。帰宅後に足を拭く流れへくっつけておけば、特別なことは何もしていません。
ペット連れの帰省を何度か重ねると、家族の側の反応が変わってきます。「今回はにおわなかったね」と言われる回が出てきます。それは滞在中に頑張ったからではなく、行く前の1週間に3分ずつ積み上げたぶんです。帰省を楽にするのは、実家での手際ではなく、家での毎日の習慣のほうです。大型犬と暮らしていて、次の帰省が決まっているなら、逆算して7日前に印をつけておいてください。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
