C05犬種・猫種別ケア

ボーダーコリーと暮らすなら知っておきたい、アンダーコートの詰まりの話

公開日 2020年11月24日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、白と黒の被毛のボーダーコリーが落ち着いて休んでいる
走る犬の体には、風が当たる面と当たらない面があります。アンダーコートの詰まりは、その差から始まります。写真:Joolsmagools ®️/Pexels

ボーダーコリーが原っぱを30分走って帰ってきた日、胸の毛に指を入れるとすっと地肌まで届いたのに、腰の毛では指が途中で止まりました。同じ日の、同じ一頭の体の話です。差をつけたのは、抜けたアンダーコートが外へ出られたかどうかでした。走っているあいだ風が当たる面では押し出され、風が回り込まない面では上毛の内側に残ります。この記事では、胸と前脚の付け根を「風が当たる面」、腰と後肢の内側を「風が当たらない面」として、2つを比較していきます。

走っているあいだ、風はボーダーコリーの体のどこを通るか

ボーダーコリーの被毛は、外側の上毛と、その内側にある細く密なアンダーコートの二層でできています。上毛は雨や日ざしを受け止める側、アンダーコートは体温を逃がさない側です。そしてアンダーコートは、抜けたあとに自然と落ちてはくれません。細くて縮れているので、抜けたそばから上毛にからみ、そのまま体に残ります。

残ったものが外へ出るきっかけは、二つしかありません。人の手でブラシを入れるか、風が毛の根元まで通って押し出すかです。このうち風のほうは、その子が走っているあいだに勝手に起きています。ボーダーコリーは牧羊犬として、一日中低い姿勢で走り続ける仕事を担ってきた犬種です。走る時間が長いぶん、体に当たる風の量も多くなります。

ただし、風は体の全面には当たりません。前へ進む体には前から風が来るので、胸、前脚の付け根、肩、首の前側は、走っているあいだずっと風を受け続けます。ここでは上毛が根元から起き、空気が入れ替わり、抜けたアンダーコートは押し出されていきます。走って帰ってきたあとの胸に指を入れると、すっと地肌まで届くのはこのためです。

いっぽう、体の後ろ半分は前半分の陰になります。風は体の側面をなでて流れていき、腰の上、後肢の内側、尾の付け根、後ろ足の脇の奥へは回り込みません。ここは走っているあいだも空気が動かない場所です。抜けたアンダーコートは上毛の内側に留まり、走った時間の分だけ積み上がっていきます。

Note運動量が多いことは、悪いことではありません

走る時間が長い子ほど詰まる、という話ではありません。風が当たる面は、むしろ走るほど整っていきます。問題は、整う面と整わない面の差が、走った時間の分だけ開いていくことです。ボーダーコリーの体格は中型で、胴に対して脚が長く、地面すれすれの姿勢で走る子が多い犬種です。この姿勢だと、風は背中の上を流れて、腰の下側にはいっそう届きにくくなります。

風が当たる面と当たらない面|アンダーコートの詰まりを比較する

同じ一頭の体で、二つの面を並べます。被毛の作りは同じ、抜ける量も同じ。違うのは風が通っているかどうかだけです。それだけで、ここまで入れ替わります。

同じ体でも、風が通るかどうかで条件が入れ替わります
見るところ風が当たる面(胸・前脚の付け根・肩)風が当たらない面(腰・後肢の内側・尾の付け根)
走っているあいだの空気たえず入れ替わるよどんで、ほとんど動かない
抜けたアンダーコート押し出されて外へ出る上毛の内側に留まる
上毛の起き方根元から起きている寝たまま、重なっている
指を入れたとき地肌まですっと届く途中で止まる、押し返される
濡れたあとに乾く速さ早い遅い。湿りが長く残る
皮脂の広がり方毛先まで運ばれる根元にとどまりやすい
ブラッシングの手数少なくて足りる同じ面積でも倍かかる
飼い主が気づく時期換毛期のはじめ換毛期が終わるころ
同じ一頭の体に、二つの面がある 走るボーダーコリーの体では、前から風を受ける面と、その陰になる面が分かれます。抜けたアンダーコートが外へ出られるかどうかは、この差で決まります。 ブラシの手数を、この差に合わせて配ります 風が当たる面 胸・前脚の付け根・肩 空気がたえず入れ替わる 抜けた下毛が外へ出る 指が地肌まで届く 手数は少なくて足りる 風が当たらない面 腰・後肢の内側・尾の付け根 空気がよどんで動かない 下毛が上毛の内側に残る 指が途中で止まる 手数を倍かける 気づく時期がずれるので、遅れて出てくるのはいつも後ろ側です
被毛の作りは同じでも、風が通るかどうかで結果が入れ替わります。

この表でいちばん見ておきたいのは、いちばん下の行です。風が当たる面は換毛期のはじめに毛が舞うので、飼い主はすぐ気づきます。ところが風が当たらない面は、抜けた毛が外へ出ないので、床にも服にも落ちません。落ちないから気づかれず、換毛期が終わって「もう抜けなくなったな」と思ったころに、腰を撫でて初めて手ごたえの違いに気づくことになります。

もうひとつ、乾く速さの行も見てください。ボーダーコリーのアンダーコートは密なので、風が届かない面では雨や水遊びのあとの湿りが長く残ります。湿った下毛が留まったままだと、上毛と絡んでほどけにくくなります。詰まりが濃くなるのは、たいてい雨の日が続いた週です。

胸と腰、どっちから先にブラシを入れるか

毎日のケアで迷うのはここです。答えは決まっていて、どっちから先かと言えば、風が当たらない面が先です。理由は毛の状態ではなく、その子が同じ姿勢でいてくれる時間のほうにあります。

ボーダーコリーは動きたい犬種です。じっとしている時間には限りがあります。胸から始めると、集中が続いているうちに手数の少ない面が終わり、手数の要る腰が最後に回ってきます。そして腰にたどり着くころには、その子はもう立ち上がっています。順番を入れ替えるだけで、同じ10分の中身が変わります。

  1. 腰の上から始める。指を立てて、地肌まで下ろす

    ブラシより先に指です。毛の流れに逆らって指を差し込み、地肌に触れるかどうかを確かめます。途中で止まるなら、そこが今日いちばん手数を配る場所です。触れるなら、その日は軽く整えるだけで足ります。

  2. 後肢の内側と、尾の付け根を先に済ませる

    後肢の内側は、犬にとって触られ慣れていない場所です。無理に持ち上げず、立ったままの姿勢で、脚の内側に手を滑り込ませて上から下へ。嫌がったらその日は途中でやめて構いません。明日また同じ場所から始めればいいだけです。

  3. 少しずつ、面を分けて起こす

    詰まった面を一度に起こそうとしないでください。片手で毛を分けて、地肌が見える幅だけをブラッシングします。その幅を隣へ、また隣へとずらしていきます。ボーダーコリーの腰は面積があるので、一日で終えようとしないほうが続きます。

  4. 胸と前脚の付け根は、最後に流す

    ここはすでに風が仕事をしています。抜けた毛を受け取るだけなので、上から下へ一方向に通せば足ります。手数をかけすぎると、必要な上毛まで引っぱることになります。

  5. 終わったら、両手で腰と胸を撫でて比べる

    手のひらに返ってくる感触が、昨日とどう違うか。比較する相手は他の犬ではなく、同じ体の別の場所です。この一往復が、翌日どこから始めるかを決めてくれます。

Point毎日のケアは、時間より場所で決める

「毎日15分」と決めると、忙しい日に飛びます。「今日は腰の左半分」と場所で決めるほうが続きます。ボーダーコリーの換毛期は量が多いので、全身を毎日は終わりません。体を4つか5つの区画に分けて、順に回してください。風が当たらない面には、回す回数を倍に配ります。

ブラシを入れる前に、触る区画だけを湿らせておくと、静電気で毛が散らばりにくくなります。mofuwa グルーミングスプレーは、この一吹きのためにそのまま使えます。吹きかけてから通すだけなので、「今日は腰の左半分」と決めた日の手順が、それ以上長くなりません。還元水100%で香料もアルコールも足されていないため、密なアンダーコートの根元まで届かせる量をかけても、数えずに済みます。濡らしきる必要はありません。上毛が寝ている面をひとなでできる程度で足ります。

ラフとスムース|詰まる深さが変わる条件

ボーダーコリーには、被毛の長さで二つのタイプがあります。飾り毛の長いラフ(長毛)と、全身が短く整っているスムース(短毛)です。どちらもアンダーコートを持っています。ここを「短毛だから下毛がない」と読み違えると、スムースの子のケアが後回しになります。

二つで変わるのは、抜けた下毛が引っかかる場所の深さです。

そのほかにも、同じ犬種のなかで条件を分けるものがあります。体格が大きめの子は、腰の面積そのものが広いので、風の陰になる範囲も広くなります。年齢が上がって走る時間が減った子は、風から受け取っていた分がまるごと減ります。若いころと同じケアの回数では追いつかなくなる子が多いのは、このためです。

同じボーダーコリーでも、条件でケアの配り方が変わります
条件変わるところ毎日のケアで足すこと
ラフ(長毛)詰まりが地肌から離れた層にできる毛を分けて、層ごとに通す
スムース(短毛)詰まりが地肌のすぐ上にできる指の腹で地肌を確かめてから
体格が大きめ風の陰になる面積が広い区画を細かく分ける
走る時間が減った風が押し出す分がなくなる胸側にも手数を配り直す
雨や水遊びが続いた週湿った下毛が絡んで残る乾かす順番を後ろ側から

どの条件でも、やることの中身は同じです。風が届いていない面に、人の手で風の代わりをすること。変わるのは、どのくらいの深さに指を届かせるかと、どのくらいの回数を配るかだけです。

換毛期の時期が過ぎても、腰の手ざわりが戻らないとき

ボーダーコリーの換毛期は、春と秋に大きな山が来ます。この時期は抜ける量そのものが増えるので、風が当たらない面の詰まりも濃くなります。山が過ぎれば、手ざわりは戻っていくのがふつうです。戻らないときは、風と手数の話では説明がつきません。

Caution詰まりの下で起きていることは、ブラシでは分かりません

皮膚が赤い、腫れている、においがある、同じ場所をしつこく舐め続けている、地肌が見える範囲が広がっている、触ると痛がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、ブラッシングの手数を増やさずに動物病院にご相談ください。詰まりをほどくことを優先すると、その下で起きていることが分かりにくくなります。

受診のときは、いつから、体のどこか、換毛期の山の前か後かをメモしていってください。ボーダーコリーは被毛が厚いので、見た目だけでは伝わりにくい場所があります。指を入れたときの手ごたえと、左右の違いを言葉にしておくと早く伝わります。

無理にほどけない詰まりは、家で引っぱらないでください。皮膚ごと引き上げてしまいます。トリミングサロンで、その子の被毛に合った道具で外してもらうほうが安全です。ボーダーコリーの上毛は、刈ってしまうと同じようには戻らないことがあるので、短く刈る判断も家では決めないでください。

毎日きれいにしてあげたいという気持ちのほうは、経過を見ているあいだも変わりません。犬は体から脂を出しますし、走れば外の汚れもつきます。mofuwa グルーミングスプレーが吹きかけるだけの形なのは、その毎日を毎日のまま続けられるようにするためです。ボーダーコリーでは、風が届いていた胸の側から手ざわりが戻ってきます。風が届かない腰と後肢の内側に、今日も一吹きと一往復を足してください。二つの面の差が開かずに済むのは、その積み上げのほうです。

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よくある質問

ボーダーコリーのアンダーコートは、短く刈ってしまえば楽になりますか?
家で決めないでください。上毛とアンダーコートは役割が違い、短く刈ると生えそろい方が変わることがあります。上毛は日ざしや雨を受け止める側なので、なくなると別の負担がかかります。暑さが気になるときも、刈るかどうかはトリミングサロンや動物病院に相談してから決めてください。
換毛期に、抜ける量そのものを減らすことはできますか?
抜ける量は季節で決まるので、家で減らすものではありません。家でできるのは、抜けたアンダーコートが体に留まる時間を短くすることだけです。風が当たらない面に手数を配ると、その時間が短くなります。量を減らすのではなく、出口をつくると考えてください。
走らせる時間を増やせば、詰まりは減りますか?
風が当たる面は整いますが、風が回り込まない面は変わりません。走る時間を増やすと、むしろ二つの面の差が開きます。運動は運動として必要な分だけにして、腰と後肢の内側には人の手で別に手数を配ってください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。