C05犬種・猫種別ケア
パグの短毛|顔のシワの汚れを毎日のケアで防ぐ
指先が鼻の上に近づいた瞬間、パグは顔をすっと横へ引きました。それまで膝の上でおとなしくしていたのに、手だけを避けます。前の日、鼻の上のシワを拭こうとして、指の腹が目のふちに当たっていました。汚れは半分残ったままです。パグの顔まわりで難しいのは、シワにたまった汚れを落とすことではありません。その手が、目に触れずに済むかどうかです。この記事は、拭く向きの話から始めます。
顔を背けられて終わる|パグのシワの汚れが残る理由
その子は怒っていません。鳴きもしません。ただ、こちらの手が顔の高さに来たところで、首だけを横に引いて、視線を外します。手を追いかければ、今度は膝から降ります。鼻の上のシワは半分だけ拭けて、目の下と口角はそのまま残ります。パグと暮らしている方なら、この終わり方に見覚えがあるはずです。
多くの場合、飼い主はここで手順を疑います。布が固いのか、綿棒のほうがいいのか、湿らせすぎたのか。道具を変え、力を弱め、声をかけながらやってみる。それでも同じところで終わります。パグのシワの汚れが残る理由は、落とし方の側にはありません。拭き終わる前に、手が止められているだけです。
- 手が顔の高さに来た時点で、首を横に引く:まだ触れてもいないのに避けられます
- 鼻の上は拭けても、目の下でやめられる:目に近い場所ほど、先に終わります
- 布を持ち替えているあいだに立ち上がる:一度切れた集中は、その日は戻りません
- 抱き上げると顔を胸にうずめる:顔まわりに手が来ることそのものを避けています
- おやつを見せても、顔だけは触らせない:体はいくらでも触らせてくれるのに、顔だけが別です
最後の一行が、いちばんはっきりした手がかりです。体は触らせてくれるのに顔だけ避けるということは、触られること全般が嫌いになったのではなく、顔に手が来たときに何かがあったということです。パグの場合、その「何か」はたいてい一つに絞れます。指が、目に触れています。
パグのシワは、顔の作りの都合で、目のすぐそばを通っています。汚れを追いかけて手を動かすほど、指先は目に近づきます。汚れを落としきった日ほど、翌日に顔を背けられる。この逆転が起きているあいだは、道具をどれだけ替えても毎日のケアは前に進みません。
シワと目の距離が近い|パグの顔の作りにある背景
なぜ指が目に届いてしまうのか。ここはパグという犬種の顔の作りから説明がつきます。パグは鼻が短く、顔の前面に深いシワが横向きに走ります。しかもシワは一本ではなく、鼻の上・目の下・口角と、複数の場所にあります。そのうえ目が大きく、顔の面から前に出ている作りを持っています。
この2つが重なると、何が起きるか。シワを拭くために置いた指が、そのまま目の可動域の中に入ります。ほかの犬種なら、汚れの出る場所と目のあいだに数センチの余白があります。パグにはその余白がありません。これがパグのシワの汚れをめぐる、いちばん大きな背景です。
| 汚れが出る場所 | 目との位置関係 | 手を入れたときに起きやすいこと |
|---|---|---|
| 鼻の上のシワ | 両目のあいだを横切っている | 上から手を下ろすと、指の付け根が目にかぶる |
| 目の下 | 目のすぐ真下 | 汚れを追って上へ動かすと、指先が下まぶたに当たる |
| 口角 | 目からはいちばん遠い | 後ろ向きに拭けば触れないが、前へ動かすと近づく |
| あごの下 | 目とは重ならない | 顔を上げさせる必要があり、上から手が来る形になる |
表を縦に見ると、汚れの出る場所そのものより、手をどちらへ動かすかで目に触れるかどうかが決まっていることが分かります。同じ場所を拭いていても、動かす向きが逆なら結果は変わります。パグのシワの汚れを減らす手がかりは、場所の側ではなく向きの側にあります。
もう一つ、パグの被毛の話をしておきます。パグの毛は短く、密に生えています。長い毛を持つ犬種なら、被毛の上から布を当てて、毛の層を挟んで拭くことができます。短毛のパグでは、布はほぼ皮膚に直接当たります。間に緩衝がないぶん、こちらの指の動きがそのまま伝わります。少し強く押した、少し行き過ぎた、がごまかせません。
毛が短いことは、抜け毛が少ないことを意味しません。パグは換毛期になると短い毛がよく抜け、顔まわりにも落ちた毛が残ります。ブラッシングを顔の近くでやると、抜けた毛が目に入る場面が出てきます。換毛期は、拭くときだけでなくブラッシングの向きも顔から外す時期だと考えておいてください。
体格の話も、手の入れ方に関わります。パグは首が短く、胴が詰まった体格です。首が長い犬種なら、顔を背けられても手を回し込む余地が少しあります。パグは顔を横に引くだけで、こちらの手の届く範囲から出てしまいます。追いかけると体ごと動くので、そこで一度終わります。「もう一度だけ」が効かない体格です。
シワの重なったところは空気が通りにくく、皮脂と汗、それに食べたあとの水分が一緒に留まります。だから、外から汚れをつけていない日でも、そこは湿ります。散歩に行かなかった日、家から出ていない日でも、毎日のケアの対象になるのはこのためです。汚れが「たまるまで待つ」という考え方が合いません。
取れた汚れの量ではなく、明日も触らせてもらえるか|パグのシワの考え方
顔の作りは変えられません。シワの数も、目の位置も、そのままです。変えられるのは、こちらの手の動かし方だけです。そしてその手順を決める基準を、ここで一度入れ替えます。その日に汚れが取れたかどうかではなく、明日も顔を触らせてもらえるかどうかで決める。これがパグのシワと付き合う考え方の中心です。
基準を入れ替える理由は、犬の側の記憶の残り方にあります。目のふちに指が当たるのは、痛みというより驚きに近い出来事です。それでも、顔に手が来た次に何が起きたかは、一度で残ります。そして残ったあとは、汚れが軽い日でも重い日でも、同じように顔を背けられます。1日ぶんの汚れと引き換えに、その先の何十日ぶんを失う計算になります。
逆に言えば、半分しか拭けなくても、目に触れずに終わった日は、翌日につながります。パグのシワの汚れは、1回で片づける相手ではありません。毎日少しずつ触れる状態を保っているほうが、結果として溜まりません。
図の左右は、どちらも同じ場所を拭いています。違うのは動かす向きだけです。目から遠ざかる方向にしか動かさないと決めてしまえば、汚れを追いかけて手が迷うことがなくなります。迷って止まっている手は、犬の側からは「何かされそうな手」に見えます。向きを先に決めることは、その時間を消すことでもあります。
- 汚れは、追わない:一回の動きで取れなかったぶんは、明日に回します
- 戻す動きを入れない:往復させると、片道は必ず目に向かいます
- 指先ではなく、指の腹で:点で当てるほど、位置がずれたときに深く入ります
- 顔を背ける前に、こちらが手を離す:終わりを犬に決めさせないのが、翌日への一手です
- 1日で全部やろうとしない:鼻の上、目の下、口角、あごの下を日替わりにしても構いません
3つ目の「指の腹で」は、短毛のパグではとくに効きます。綿棒や指先のような細いものは、狙いは定まりますが、外れたときに一点へ力が集まります。面で当てておけば、少しずれても目のふちに入り込みません。汚れの落ち方は少し悪くなります。それでいい、というのがここでの考え方です。
向きを決めて手を入れる|パグのシワの汚れを毎日のケアで防ぐ変化
ここまでの話を、実際の手順に落とします。パグのシワの汚れを毎日のケアで防ぐために変えるのは、道具ではなく手を入れる高さと、動かす向きと、終わらせる人の3つです。順番に置き換えていってください。
-
手は、目の高さより下から入れる
上から手を下ろすと、指が視界に入った時点で顔を引かれます。あごの下あたりから、下から上へ手を持っていってください。パグは顔が前を向いているので、下からのほうが視界に入りにくく、そこから鼻の上へは回り込めます。最初に変えるのはここです。
-
布は、指の腹に巻いて面をつくる
柔らかい布かコットンを、人差し指の腹に当てて押さえます。綿棒は使いません。面で当てるぶん一度に取れる量は減りますが、位置がずれても目に入りません。湿らせるなら、mofuwa グルーミングスプレーを布のほうへ一度吹いてから指に巻いてください。パグの顔に向けて吹くことはしません。拭いた布は口のまわりを通るので、飲料に求められる水質の規格を満たしてつくられているものなら、量の加減で迷わずに済みます。したたるほど含ませると、そのまま目に流れます。
-
鼻の上は、中心から外側へ
鼻筋の真ん中に指を置いて、そこから左右のほうへ、ゆっくり外に向かって動かします。上下には動かしません。下から上へ動かすと目のほうへ向かい、上から下へ戻すときにも同じ場所を通ります。片道だけ、外向きに。
-
目の下は、目から頬へ下ろす
目の下に指の腹を置いたら、そのまま頬へ向かって下ろします。上へ寄せる動きはしません。ここがいちばん事故の多い場所です。汚れが目に近い側に残ったら、その日はそこで終わりにしてください。残ったぶんは明日拭けます。
-
口角とあごの下は、口から後ろへ引く
口角は目からいちばん遠いので、少し余裕があります。それでも向きは同じ考え方で、口の側から耳の側へ、後ろに引きます。あごの下は顔を上げさせずに、こちらが下からのぞき込む姿勢で入れてください。上を向かせると、また上から手が来る形になります。
-
顔を背ける前に、こちらから手を離す
全部拭き終わっていなくても、20秒か30秒で切り上げます。座っているうちに終わった日と、背けられて終わった日では、翌日の始まり方が違います。終わりをこちらが決める。パグのシワのケアで、いちばん長く効いてくるのがこれです。
同じ時間にまとめると、どちらも中途半端に終わります。顔は20〜30秒、体のブラッシングはそれとは別の時間に。換毛期は抜けた毛が顔まわりに残りやすいので、体をとかしたあとに顔へ手を持っていくのは避けてください。抜けた短い毛が指について、そのまま目のふちへ運ばれます。順番は、顔が先、体があとです。
この組み方に変えると、1回で取れる汚れの量は確実に減ります。それでも数週間で顔まわりの状態が変わってくるのは、拭ける日が毎日続くからです。週に一度きれいにする日と、六日ぶん湿ったまま置く日を繰り返すより、毎日20秒のほうが、シワに何かが留まっている時間は短くなります。汚れを防ぐという言い方をするなら、防いでいるのは量ではなく、留まっている時間のほうです。グルーミングスプレーを布に含ませておくのも、20秒で終えるためです。乾いた布で同じ場所を何度も往復させるより、湿らせた面で一度なでるほうが、手が顔の近くにある時間が短くなります。パグの顔まわりでは、その時間の長さがそのまま翌日の差になります。
そして、顔を背ける以外のサインが出たときは、ケアの話から離れてください。シワのところの皮膚が赤い、においがある、触ると熱い、じゅくじゅくしている、自分で床や家具に顔をこすりつけている、目やにの色や量が変わった、目を開けにくそうにしている、まぶしがる、白目が赤い。これらは拭き方を変えて様子を見る対象ではないので、動物病院で診てもらってください。顔まわりは自分でこすってしまう場所なので、様子を見ている期間が短いほうが安全です。受診の前に拭いてしまうと状態が分からなくなることがあるため、そのまま連れて行ってください。
パグのシワは、たまるまで待てる場所ではありません。皮脂と水分は、家から出ていない日でも同じように留まります。だから道具は、毎日20秒の側にそろえておきます。布と、それを湿らせるボトルを同じ場所に置いておくだけで、明日の20秒は始めやすくなります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
