C09シーン別・暮らし

賃貸で暮らす、保護犬・保護猫を迎えた人はどうしている?

公開日 2020年11月7日|文=mofuwa編集部

明るい光の入る部屋で、淡い色の床に猫と犬が静かに休んでいる
においの出どころは体ですが、においが残っていくのは部屋の側です。手が届く場所から順に動かします。写真:Muhammad Khawar Nazir/Pexels

賃貸のワンルームで、迎えて3日目の夜。その子はまだソファの裏から出てきません。手を伸ばすと体が固くなるので、触るのはあきらめて、水皿だけ置いて離れます。ところが部屋のにおいのほうは、その日から確実に変わりはじめます。保護犬・保護猫を迎えた人が最初にぶつかるのは、においの出どころである体に、まだ手が届かないという一点です。ペットのにおいのケアは、ふつう体から始まります。ブラシを通し、布で拭き、いずれ洗う。その入口が、迎えたばかりの時期にはすべて閉じています。この記事では、体に触れない期間のケアを、部屋の側から組み立て直す手順を書きます。寝床の布、その子が通る場所、そして触れるようになってからの体。動かす順番はこの3つです。

体に触れないまま、においだけが部屋に残る|賃貸で保護犬・保護猫を迎えた最初の2週間に家でできること

保護犬・保護猫を迎えた最初の数日は、ほとんどの時間をその子が隠れて過ごします。家具の裏、キャリーの中、カーテンの陰。近づくと動きが止まり、手を伸ばすと体が固くなる。触られることに慣れていない子にとって、人の手はまだ、正体の分からないものです。ここで無理に押さえて体を拭くと、その日の1回はできても、次の日から距離が伸びます。

いっぽうで、ペットのにおいのケアは、ふつう体から始まる作りになっています。皮脂は毛の根元でつくられ、被毛に薄く広がり、そこへ空気中のほこりが乗る。口のまわりや足の裏には、飲んだ水と歩いた床のにおいが残る。においの出どころは、どう考えても体の側にあります。だから一般的な手順は、ブラシを通し、布で拭き、必要なら洗う、という順で組まれています。迎えたばかりの保護犬・保護猫では、この入口が最初から閉じています。

ここに賃貸という条件が重なります。賃貸で暮らす人が気にしているのは、その子の体のにおいそのものより、においが部屋の側に残っていくことのほうです。壁と床の面積に対して部屋が小さく、廊下や窓の数もかぎられている。空気の入れ替わる回数が少ない部屋ほど、においは布と床に留まります。体に触れないまま日数だけが進むと、気になるのは部屋の側だけが先に変わっていくことになります。

Note「においが移る」とは、においの元になるものが物へ乗り移ることです

においが移る、とは、においそのものが飛んでいくことではありません。皮脂やたんぱく質を含んだ細かい粒が、毛や空気を経由して布と床の繊維に入り込み、そこに留まることです。だから、その子の体に触れなくても、その子が長く接している面を替えれば、においの残り方は変わります。賃貸でにおいを気にする人にとって、ここが最初の手がかりになります。

そしてもうひとつ。以前その子がどこでどう過ごしていたのかを、迎えた側は知りません。分からないことを想像で埋めるより、いま目の前で確認できることだけを数えたほうが、手が早く決まります。体に触れなくても、次のことは初日から分かります。

この5つが分かれば、においのケアは体を待たずに始められます。ペットのにおいを扱う場所を、体から部屋へ、いったん振り替えるという考え方です。賃貸で保護犬・保護猫と暮らしはじめた人が家でできることは、この時期はほとんどが部屋の側にあります。体は、その子が許してくれた日に足せばいい。順番を逆にしないことだけが条件です。

寝床の布から、その子が通る場所へ|保護犬・保護猫のにおいを毎日ひと手ずつ動かす4つの手順

ここからが具体的な手順です。4つとも、その子に触らずにできます。毎日ぜんぶをやる必要はありません。1日にひと手ずつ、部屋の側から順に動かしてください。順番には理由があります。においがいちばん濃く留まるのは、その子が長い時間ふれている面だからです。

  1. 手順1:寝床の布を、1枚から2枚に増やす

    いちばん長く体が乗っている面が、いちばんにおいを受け取ります。同じ布を1枚だけ使っていると、洗っているあいだ寝床が空きます。2枚にして交互に回すと、その子を動かさずに交換できます。賃貸では洗濯物を干す場所もかぎられるので、大きい1枚より小さい2枚のほうが回ります。交換は数日に一度で足ります。

  2. 手順2:その子が通る線を、1本に絞る

    隠れ場所から水皿まで、その子は毎日ほぼ同じ経路を通ります。その線の床だけを、毎日ひと拭きします。部屋全体を拭く必要はありません。歩いた足の裏から床へ、床から毛へ、においは往復します。線を1本に決めておくと、拭く場所を毎日考えずに済み、その子の動きを邪魔する時間も短くなります。

  3. 手順3:食器と水皿の下に、拭ける面を1枚置く

    食べたあと、飲んだあとの口のまわりは、その子が自分で床にこすることがあります。食器の下に拭ける面が1枚あるだけで、においが床材そのものへ入るまでの段階が1つ増えます。ペットのにおいで先に手を入れるのは、体ではなく、この一帯です。洗う頻度は1日1回、その子が食べ終わって離れてからにしてください。

  4. 手順4:空気の入れ替えは、その子のいない部屋から

    換気は賃貸でいちばん効く手ですが、順番があります。その子がいる部屋の窓をいきなり開けると、音と外の気配で隠れる時間が伸びます。まず別の部屋、または廊下側を開けて、空気の逃げ道をつくる。そのあとで、その子から遠い側の窓を少しだけ開けます。1回5分を1日2回で、においの留まり方は変わります。

  5. 手順5:触れるようになったら、はじめて体へ

    その子から近づいてくる日、体を横にして寝る日が来たら、体の番です。順番は首の後ろから。頭の上や足先は、最後まで残しておきます。この段階に入るまで、何日かかっても構いません。保護犬・保護猫を迎えた人にとって、待った日数は無駄になりません。部屋の側の手順が、そのあいだずっと働いています。

4つの手順は、触る相手と頻度が違います
手を入れる場所その子に触るか頻度の目安
手順1寝床の布触らない数日に一度、交互に交換
手順2通り道の床触らない1日1回、線の上だけ
手順3食器まわりの面触らない1日1回、離れてから
手順4空気触らない1回5分を1日2回
手順5首の後ろから体へ触る許した日だけ、30秒
Point毎日ぜんぶをやろうとしないでください

4つの手順は、賃貸のワンルームなら合計で1日10分もかかりません。ただ、迎えた直後は人の側も落ち着いていない時期です。今日は寝床の布だけ、明日は床の線だけ、という進め方で足ります。においのケアは、1日に濃くやるより、途切れずに続くほうが部屋の側に効きます。その子が隠れている時間が長い日は、手順2と手順4だけにしてください。

拭く頻度を上げても、においが戻ってくる場所|賃貸で手が止まる3つの場面

ここまでの手順を始めた人が、たいてい次にぶつかる場面を3つ挙げます。どれも、まじめにやっている人ほど起きます。においを早く動かしたくて、頻度と強さを上げた結果として起きるものだからです。

1つめ。拭く頻度を上げるほど、その子が動かなくなる。床を拭くには人が部屋の中を移動します。保護犬・保護猫を迎えた直後は、人が動いているあいだ、その子は隠れ場所から出てきません。1日3回拭けば、その子が水を飲みに出る時間が3回削られます。においを減らそうとして、その子が部屋を使う時間のほうを減らしているという入れ替わりが起きます。ペットのにおいを減らす手より先に、その子が部屋を使う時間のほうを確保してください。頻度は1日1回で足ります。

2つめ。香りを足すと、においの変化に気づけなくなる。賃貸でペットのにおいを気にする人ほど、香りのあるものを部屋に置きたくなります。ただし香りは、においの元を減らしていません。元のにおいの上に、別のにおいが重なっているだけです。迎えたばかりの時期は、その子の体調の変化がにおいの側に出ることがあります。それを最初に受け取るのは、同じ部屋にいる飼い主の鼻です。手がかりを自分でふさがないでください。

3つめ。布を全部いっぺんに洗ってしまう。においが気になった日に、寝床の布もクッションカバーもまとめて洗濯機に入れると、その日の夜、部屋からその子のにおいが1枚残らず消えます。自分のにおいがついた場所は、その子にとって落ち着ける目印です。手順1で布を2枚にするのは、洗い替えのためだけではありません。1枚は必ず残す、という形をつくるためです。

3つの場面と、代わりにやること
手が止まる場面何が起きているか代わりにやること
1日に何度も床を拭くその子が部屋を使う時間が減る通り道の線だけ、1日1回
香りのあるものを置くにおいの変化に気づけなくなるまず空気の入れ替えを1日2回
布をまとめて洗うその子の目印が全部なくなる2枚を交互に。1枚は残す
体を押さえて拭く次の日から距離が伸びる首の後ろに30秒だけ手を置く

4つめとして表に入れた「体を押さえて拭く」も、同じ形の入れ替わりです。その1回でにおいは減りますが、翌日から手順5に進める日が遠のきます。賃貸のにおいは、1日で決着をつける相手ではありません。部屋の側の手順は毎日積み上がり、体の側は、その子が許した日から始まります。ペットのにおいと、その子との距離。この2つを別々の時計で動かしてください。

触れるようになった日から体へ移す|部屋の手順を減らさずに足していく

その子から近づいてくる日が来たら、体の番です。ここでのコツは1つだけ。部屋の側の手順をやめないまま、体を足すことです。体に触れるようになると、部屋の手順を省きたくなります。けれど、においが留まる面は変わっていません。足し算にしてください。

  1. 首の後ろに、手のひらを30秒置くだけの日をつくる

    拭くのではなく、まず手を置くだけです。その子が体を離さなければ、翌日は同じ場所を1回なでます。ここで一気に全身へ広げないことが、順番を戻さないコツになります。嫌がるそぶりが出たら、その日はそこで終わりです。

  2. 布を1枚、手に持って作業する

    容器や道具をその子に近づけると、音と形で驚かせます。先に布へ含ませてから、手だけを近づけてください。mofuwa のグルーミングスプレーを使うときも、この持ち方が前提になります。その子の体に直接吹きつけないでください。

  3. 首の後ろ、背中、体の横、脚の順に広げる

    顔と足先は最後です。1日に1か所ずつでかまいません。1回30秒、週に2〜3回。毎日きれいにしておきたいなら、この頻度から始めて構いません。ペットのにおいで気になる場所があっても、順番を飛ばして先にそこへ行かないでください。

  4. 部屋の手順は、そのまま続ける

    寝床の布の交換、通り道の床、食器まわり、空気の入れ替え。体に触れるようになっても、この4つは減らしません。賃貸でにおいが残るのは、体ではなく面の側だからです。ここまで来ると、部屋と体の両方から手が入る形になります。

触れる範囲を広げていくための道具が、mofuwa のグルーミングスプレーです。布に含ませて、首の後ろから背中へ、毛の流れに沿ってなでるように拭く。迎えたばかりの子は、自分で毛づくろいをしている時間がとても長いです。グルーミングスプレーは清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、なめられる前提のまま、首から背中まで量を気にせず使えます。首の後ろだけの日、背中まで届いた日と、ふれた範囲がそのまま日々の記録になります。

Cautionにおいの変化には、家のケアで扱わないものがあります

耳から強いにおいがする、口のにおいが数日で急に変わった、体の一か所だけがにおう、皮膚が赤い、同じ場所をなめ続けている、食欲や便の様子が変わった。いずれかに当てはまるときは、拭く頻度を上げる前に動物病院にご相談ください。迎えて間もない時期は、健康診断を兼ねて一度受診しておくと、そのあとの変化を比べる基準ができます。においは、その基準づくりの手がかりの1つです。

最後に、順番だけもう一度書いておきます。寝床の布、その子が通る場所、食器のまわり、空気。そして触れるようになってからの体。賃貸で保護犬・保護猫を迎えた人が、においのケアを体から始められないのは、手を抜いているからではありません。その子の許容が先にあるという、順番の問題です。ペットのにおいは部屋の側から動かせます。体に手が届く日までのあいだ、部屋の手順が働いていてくれます。

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よくある質問

迎えてから何日で、体に触れるようになりますか?
日数では決まりません。数日で寄ってくる子もいれば、数週間かかる子もいます。目安にするのは日数ではなく、その子の動きのほうです。人がいる時間帯に隠れ場所から出てくる、同じ部屋で体を横にして寝る、自分から近づいて足元を通る。この3つが出てきたら、首の後ろに手を置く段階に入れます。
賃貸でにおいがいちばん残りやすいのは、どこですか?
その子が長い時間ふれている面です。寝床の布、いつも同じ場所で通る床、食器のまわりの3か所から確認してください。壁や天井より先に、この3か所です。布は交換ができ、床は拭けます。面積の広い場所を探すのではなく、接している時間の長い場所を探すという見方に変えると、ペットのにおいで手を入れる場所が絞れます。
保護犬と保護猫で、始め方は変わりますか?
部屋の側から始める順番は同じです。違うのは、体に触れる段階に入ってからの範囲です。猫は自分で毛づくろいをする時間が長いので、人が代わる範囲は口のまわりや背中の一部にとどまることが多くなります。犬は散歩に出る時期になると、足の先と口のまわりから手が入ります。どちらも、首の後ろから始める点は変わりません。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。