C09シーン別・暮らし
水が苦手な猫と暮らす人のための多頭で暮らす|5分で終わらせるケア
雨の日の帰宅後、玄関で足先を拭かれている猫の横を、もう一頭がすっと通り抜けていきます。拭かれているほうは、湿った布を当てられても平気な子です。通り抜けたほうは水が嫌いで、湿った布が近づいただけで部屋の奥へ行きます。多頭飼いの家では、この2頭が同じ床と同じ寝床を使います。そこで起きるのは、拭いた水分とにおいが、拭けないほうの子へ移っていくことです。しかも移ったぶんを、人が取ることはできません。その子は触らせてくれないからです。この記事では、水が嫌いな猫を守る手を、その子ではなく、もう一頭の乾かし方の側から組み立てます。帰宅後の5分を、3つに割る話です。
水を使える子と、水が嫌いな猫が同じ家にいる背景|多頭飼いで最初に分かれるもの
2頭、3頭と暮らしていると、水に対する反応が同じ子はまずいません。湿らせた布で足先を拭かれて、そのまま毛づくろいを始める子がいます。同じ布を見ただけで、キャットタワーの上まで登ってしまう子がいます。多頭飼いの家では、水を使える子と、水が嫌いな猫が、同じ室内で同じ床を歩いています。ここが、1頭で暮らしている場合といちばん違うところです。
1頭だけなら、その子が水を嫌いなら、水を使わない毎日を組めばそれで済みます。道具も習慣も、その子1頭に合わせて選べます。ところが多頭飼いでは、そうはいきません。水を使える子には水を使ったほうが早いし、実際そのほうがきれいになるからです。その結果、同じ家の中に、濡れた子と濡れていない子が同時に存在する時間が生まれます。
水が嫌いな猫の側から見ると、この時間は少し奇妙な条件です。自分は一度も水に触っていないのに、家の中に湿ったものが増えている。しかも、その湿ったものは動きます。次の4つが、多頭飼いの帰宅後によく起きていることです。
- 拭かれた子が、すぐに寝床へ入る:足先の毛がまだ湿ったまま、いつもの場所に体を預けます
- 2頭が体を寄せて寝る:接している面は、乾く速さがいちばん遅い場所です
- 互いに毛づくろいをする:湿った毛を舐めた口で、濡らせない子の首や耳のうしろを舐めます
- 同じ通路を通る:廊下の角、キャットタワーの踏み板、食器の前。体の側面が同じ場所をこすります
- においが先に届く:湿った毛のにおいは、体が触れる前から室内に回ります
つまり、水が嫌いな猫は、自分が濡れなくても濡れます。量としてはわずかですが、問題は量ではなく、そのあとです。濡らせる子なら、湿った場所をもう一度拭いて終わりにできます。水が嫌いな猫では、それができません。移ってきた水分は、その子の毛の中で自然に乾くのを待つしかない。多頭飼いで手が足りなくなるのは、頭数で時間が割られるからだけではなく、この「取り返しのきかない側」が家の中にいるからです。
水を嫌いな理由をさかのぼって、慣れさせようとする話は、この記事では扱いません。濡らせないという条件を、そのまま前提として置きます。多頭飼いでは、条件を変えられない子が1頭いるだけで、家全体の組み立てが決まります。変えられるのは、その子ではなく、隣にいるもう一頭のほうです。
水分とにおいは、濡れた子から移るという考え方|多頭飼いで受け取る側になる猫
毛が濡れたとき、水はすぐに蒸発しません。表面の水は数分で減りますが、根元に入った水は、室内の湿度と風の通りしだいで、30分から1時間そこにとどまります。その30分のあいだに、濡れた子は家の中を歩き回ります。寝床に入り、隣の子に体を寄せ、同じ台の上に乗る。移動する湿ったスポンジが、家の中を移動しているのと同じ状態です。
移るのは水分だけではありません。においも一緒に移ります。湿った毛のにおいは、乾いた毛のにおいよりはっきりします。水が嫌いな猫の首や背中がなんとなくにおうとき、そのにおいの出どころがその子ではないことがあります。においだけを頼りにその子を拭こうとすると、嫌がられたうえに、原因は残ります。
| 経路 | 移るもの | 水が嫌いな猫の側で起きること |
|---|---|---|
| 同じ寝床に続けて入る | 水分。布に残った湿り | 背中と脇の根元が、翌朝まで湿っています |
| 体を寄せて寝る | 水分とにおい | 接している面だけ、毛の流れが乱れます |
| 互いに毛づくろいをする | においと唾液 | 首のうしろと耳の付け根が、いちばん濡れます |
| 同じ通路ですれ違う | 水分。体側どうしのこすれ | 毛先が寝て、光の返り方が変わります |
| 同じ台・同じ踏み板に乗る | 水分。足の裏から | 肉球のあいだが、乾きにくくなります |
| 空気を通して届く | におい | 体には何も付かないが、人がその子を疑います |
表の最後の行を、少していねいに書きます。多頭飼いでにおいが気になり始めると、まず疑われるのは、いちばん手が入っていない子です。水が嫌いな猫は、たいていその位置にいます。ところが実際には、その子は水を使えないぶん、毛づくろいの時間を自分でしっかり取っていることが多い。においの出どころは、濡れて中途半端に乾いた側にあることのほうが多いのです。
ここまでを整理すると、多頭飼いで水が嫌いな猫を守る手は、その子への手ではありません。もう一頭を、どこまで乾かしてから合流させるか。手を入れる相手が入れ替わります。これが、この記事でいちばん覚えて帰っていただきたい考え方です。毎日の5分を、水が嫌いな猫に使うのではなく、濡れた子の乾かし方に使ってください。
多頭飼いでは、拭ける子のほうが手が早く終わります。だから、拭いてすぐ解放してしまう。そこから合流までの15分が、家の中でいちばん水分が移る時間です。拭く時間を長くする必要はありません。拭き終わってから合流するまでの時間を、少しだけ後ろにずらす。それだけで、水が嫌いな猫に届く水分は目に見えて減ります。
乾かし方を変えると、水が嫌いな猫に届く水分が変化する|帰宅後5分の割り方
帰宅後に使える時間は、多頭飼いだと頭数で割られます。3頭いれば、1頭あたり2分もありません。だから「5分で全部」と決めて、その5分をどう割るかを先に決めます。ここで割るのは頭数ではなく、工程です。濡らす面積を決める、乾かす順を決める、合流までの待ち場所を決める。この3つに割ります。
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濡らす面積を、玄関に入る前に決める
全身ではなく、その日に外気と地面に触れた場所だけです。雨の日なら足先と腹側、乾いた日なら足の裏だけ。濡らした面積が広いほど、乾くまでの時間が伸び、水が嫌いな猫に移る量が増えます。多頭飼いでは、拭く面積を決めることが、隣の子を守ることと同じ意味になります。
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拭く順を、根元から毛先ではなく、接触面から始める
脇の下、内股、胸の下、足の付け根。この4か所が、隣の子と体を寄せたときに触れる面です。ここを先に乾いた布で押さえてから、そのあと足先に移ります。順番を入れ替えるだけで、合流したときに水分を渡す面が先に乾きます。
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乾いた布を2枚使い、途中で必ず持ち替える
1枚で全身を拭くと、後半は湿った布で水を塗り広げていることになります。2枚目に持ち替える合図は、布の温度です。ひやりとしてきたら、それは水を吸いきった布です。多頭飼いの毎日で、道具を増やしていいのはここだけです。
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合流までの15分を、別の場所で過ごしてもらう
部屋を分ける必要はありません。玄関からリビングまでのあいだ、キッチンの前、廊下の窓際。風が通る場所で、水が嫌いな猫が使っていない床の上にいてもらいます。おやつを一粒置くと、この15分はたいてい成立します。合流を後ろにずらすのは、この記事でいちばん効く一手です。
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水が嫌いな猫には、その15分のあいだに乾いた手だけを入れる
ブラシを1往復、背中に手のひらを1回。水は一切使いません。濡らせない子に必要なのは、水を使わないケアの習慣が毎日そこにあることです。触れる時間が短くても、毎日同じ時間に同じ場所へ手が来ると、その子のほうが先に慣れます。
水が嫌いな猫は、洗えない子ではなく、水に触らせないほうがいい子です。それでも猫は体から脂を出すので、水を使わない子の毛も毎日汚れます。そこへ毎日手を届かせるために、乾いた布に含ませて使うのが mofuwa グルーミングスプレーです。その子に直接吹きかけず、必ず柔らかい布に含ませてから、片手で届く範囲だけをなでてください。水が嫌いな猫にとって、霧が飛んでくること自体が水と同じ意味を持ちます。布に移してから使えば、その子が受け取るのは布の感触だけになります。舐めても問題のない基準でつくられているので、毛づくろいの多い猫でも、含ませる量は気にしなくて構いません。濡れた子のほうにグルーミングスプレーを使うなら、乾ききってからにしてください。湿った毛の上に重ねると、乾く時間が伸びます。
室内の条件も、1つだけ動かせます。濡れた子が乾くまでのあいだ、その部屋の空気が止まっていないこと。換気扇を回す、扉を10センチ開けておく、エアコンの風向きを天井に向ける。乾く時間が15分から10分に縮めば、そのぶん水分が移る時間も縮みます。多頭飼いの家で、道具を増やさずに変えられる条件は、たいていこの空気の側にあります。
2週間の経験でわかること|濡らしていない猫の毛が湿っているときの順番
この組み立てを2週間続けると、多頭飼いの家の中で何が起きているかが、だいたい見えてきます。水が嫌いな猫の背中や首のうしろが、それでも湿っている日があるなら、原因は隣の子の乾き方だけではありません。順番に見ていってください。次の順で確かめると、たいてい途中で止まります。
- 1. 濡れた子が合流した時刻を思い出す:15分待てなかった日が続いていないか。ここでほとんど説明がつきます
- 2. 寝床を触ってみる:布が湿っていれば、猫ではなく寝床が水を持っています。乾いたものに替えてください
- 3. 湿っている場所を確かめる:首のうしろと耳の付け根なら、毛づくろいの唾液です。水ではありません
- 4. 左右の差を見る:片側だけなら、寄せて寝ている向きが決まっています。寝床の位置を変えられます
- 5. その子がその場所を気にしていないか:なめる、かく、床にこすりつける。ここからは湿りの話ではありません
- 6. においが翌日も残る:拭いた直後ではなく、翌日の同じ時間に確かめてください
地肌が赤い、じくじくしている、においが翌日も強く残る、同じ場所をなめ続けている、毛が抜けて地肌が見えている、触ると嫌がる、食欲や元気が落ちている。いずれかに当てはまるときは、乾かし方や道具を変える前に、動物病院にご相談ください。水が嫌いな猫は触らせてくれる範囲がせまいぶん、家で確かめられることに限りがあります。多頭飼いでは、1頭に起きたことが他の子にも起きていないか、あわせて見てもらうと早く進みます。
受診のときは、頭数/その子が水に触れない子であること/湿っていた場所と時刻の3つを持っていってください。多頭飼いだと伝えるだけで、見てもらう範囲が変わります。「この子だけ水を使っていません」という一言は、家庭でのケアの内容をいちばん短く説明できる言葉です。毎日の記録を残していれば、そのまま読み上げれば足ります。
最後に、5分の配分の話に戻ります。多頭飼いで水が嫌いな猫がいると、その子に何かしてあげなくては、という気持ちのほうが先に立ちます。けれど、この記事で組み立てた5分のうち、その子に使うのは1分もありません。残りの4分は、隣にいる、水を使える子に使っています。守る対象と、手を入れる対象が違う。多頭飼いというのは、そういう組み立てが成り立つ暮らし方です。
水が嫌いな猫と暮らしていると、できないことばかり数えたくなります。洗えない、拭けない、押さえられない。ただ、多頭飼いには1頭では使えない手があります。隣の子の状態を変えれば、触っていない子の条件が変わる。頭数で時間が割られるのは事実ですが、割られた先の1分は、必ずしもその子自身に使わなくていい。帰宅後の5分をどう割るかは、今日から変えられます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
