C09シーン別・暮らし

防災と避難を楽にする、大型犬と暮らす人の毎日の習慣

公開日 2021年1月16日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床に、クリーム色の大きな犬が落ち着いて伏せている
持ち出せる量は体重で決まります。だから大型犬の備えは、歩ける足のほうに寄ります。写真:3194556/Pixabay

体重30キロを超える犬にリードをつけて、片手にキャリー、もう片方に水と食器を持って玄関を出る。この絵が成り立たないことは、一度やってみるとすぐ分かります。手は2本しかなく、そのうち1本はリードで埋まります。残った1本で持てるのは、せいぜい数キロです。ペットの防災の話は、たいてい持ち物の一覧から始まります。フード、水、食器、薬、写真。どれも要ります。ただ大型犬と暮らす人には、その一覧を全部持つ手がありません。抱えて階段を降りることもできません。持ち出せる量は、その子の体重で先に決まっています。変えられないほうを数えても増えません。この記事は、持ち物ではなく体の側——大型犬が自分で歩ける状態を、毎日どう保つかという話です。

玄関で、手が2本しかない|大型犬の防災が持ち物の話にならない背景

夜、家を出ることになったとします。まずリードを持ちます。この時点で片手が埋まります。大型犬は、リードを持つ手を離せません。人が多い場所、暗い場所、いつもと違う音がする場所では、なおさらです。残るのは片手だけで、そこに乗るのは数キロぶんです。ペットの防災でよく並ぶ持ち物の一覧は、この片手に全部は乗りません。

小さな体格の子なら、キャリーに入れて肩にかけ、両手を別のことに使えます。大型犬は、その選択肢が最初からありません。持ち上げられない、階段を抱えて降りられない、抱えたまま数百メートル歩けない。これは飼い主の体力の問題というより、体重という数字がそのまま条件になっているという話です。20キロを超えたあたりから、抱えて移動するという前提は現実的でなくなります。

ペットの防災でよく挙がる持ち物と、大型犬で起きること
持ち物なぜ挙がるか大型犬で起きること
フード食べ慣れたものを切らさないため体格に比例して量が増え、数日ぶんで重くなる
水と食器飲む量が体格で決まるため同じく量が増える。片手では持ちきれない
キャリー移動と待機のため本体が大きく重い。片手では運べない
ケアの道具一式室内で過ごす時間が伸びるため後回しになり、いちばん先に置いていかれる
リード・ハーネス手から離さないためこれだけは必ず持つ。だから片手が固定される

ここで持ち物を削る話をしても、あまり前に進みません。削れるものは、もともとそう多くないからです。持ち出せる量が体重で決まっているなら、動かせるのは持ち物のほうではありません。大型犬と暮らす人のペットの防災は、この一点から組み直したほうが、毎日の暮らしに落ちます。

なお、避難先での受け入れの条件は地域によって違います。ここでは触れません。この記事で書けるのは、家でできることだけです。お住まいの地域の案内は、落ち着いているうちに一度目を通しておくと、当日に迷う時間が減ります。それ以上のことは、ここでは断定しません。

Note怖がらせるための話ではありません

防災の話は、想像を大きくしすぎると手が止まります。ここで扱うのは、今日の帰宅後にできる1分の習慣です。起きるかどうか分からないことのために、毎日の暮らしを変えるのではなく、毎日やっていることがそのまま備えになっている状態を作ります。大型犬と暮らしていると室内で過ごす時間も長いので、その時間の使い方が、そのまま条件になります。

抱えて逃げられない体格では、歩けることが持ち物の代わりになる理由

持ち出せる量が体重で決まっているなら、逆側を見ます。大型犬が自分で歩けるかどうかは、体重では決まりません。ここが唯一、毎日の側から動かせる条件で、ペットの防災を組み直す足場になります。歩ける子と、歩けない子では、必要になるものの量そのものが変わります。歩けるなら、飼い主の手はリードだけで足ります。歩けないなら、そこから先は人の力の話になり、体重が全部のしかかります。

では、歩けなくなるのはどういうときか。年齢や病気は、毎日の習慣では動かせません。動かせるのは、足の裏側で起きていることのほうです。肉球が硬く乾いて割れている、指のあいだが湿ったままになっている、爪が伸びて指が広がったまま接地している。どれも、ふだんの散歩では気づかない程度でも、いつもと違う地面を長く歩くときには、そこが先に痛みます。

この5つに共通しているのは、どれも1日では起きないし、1日では戻らないという点です。いつもと違う日にだけ足を見ても、そこから整えるには何日もかかります。だからペットの防災として意味があるのは、その日に何かを足すことではなく、ふだんから足が使える状態で置かれていることのほうです。持ち物は当日に持ち出しますが、足の状態は当日には作れません。

もう1つ、大型犬ならではの理由があります。体重が重いぶん、同じ距離を歩いても足にかかる負担が大きくなります。ふだんの散歩コースなら問題なくても、コンクリートやアスファルトの上を長く、しかも人に囲まれて歩くとなると、条件が変わります。歩けるかどうかは、意欲の話ではなく、足の側の余裕がどれだけ残っているかの話です。その余裕を毎日少しずつ足しておくのが、家でできる備えになります。

Point備えを「持ち物」から「体」に移すと、毎日に置けます

持ち物の備えは、点検の日を決めないと動きません。半年に一度、期限を見て入れ替える。それも要りますが、忘れます。体の側の備えは、帰宅後という毎日必ず来る時間に置けます。忘れない場所に置いた備えのほうが、結局は残ります。大型犬の防災を毎日の習慣として組む理由は、ここにあります。

肉球と指のあいだを、帰宅後の1分で見る|毎日に置く防災の考え方

やることは1つです。散歩から帰ったら、玄関を上がる前に、足を4本とも1回ずつ見る。1本15秒、4本で1分です。拭くのは、そのついででかまいません。玄関に布とmofuwa グルーミングスプレーを置いておくと、見る手と拭く手がひと続きになります。大型犬は面積が広いので、全身を毎日やろうとすると続きません。足だけに絞ると、体格に関係なく1分に収まります。

  1. 玄関で座らせて、前足から1本ずつ持ち上げる

    大型犬を立たせたまま足を上げさせると、その子は3本で体重を支えることになります。体重があるほど、この姿勢は長く続きません。座らせてから持ち上げると、支える負担がなくなり、こちらも落ち着いて見られます。毎日同じ順番でやると、その子も先が読めるようになります。

  2. 肉球の面を、親指の腹で軽く押す

    見るのではなく、押します。健康な肉球は、押すと少し沈んで戻ります。沈まずに硬いままなら、乾いています。ふちにざらつきや割れ目があるかも、押したときの指の感触で分かります。左右差があるときは、その足だけ翌日ももう一度見てください。

  3. 指を1本ずつ開いて、あいだを見る

    大型犬は指のあいだが深く、外から見ただけでは奥まで見えません。指を広げると、砂粒や小石、絡んだ毛が残っていることがあります。濡れているときは、乾いた布で押さえて水気を取ってから室内に上がってください。湿ったまま上がると、乾くまでの時間がそのまま室内で続きます。

  4. 爪の先が床に当たるか、立たせて確かめる

    立った状態で、爪の先が床に触れて音が鳴るなら伸びています。爪が接地していると、肉球より先に爪が地面を受けることになります。切るのは家でも動物病院でもトリミングでも構いません。ここでは、伸びているかどうかを毎日1回見る、というところまでです。

  5. 気になった足を、1行だけ書き留める

    「右前、ふちが硬い」で足ります。数日ぶん並ぶと、その日だけのことか、続いていることかが分かれます。毎日見ていると、かえって変化に気づきにくくなります。書いたものだけが、時間をまたいで比べられます。

この1分に、においの話も乗ります。大型犬は面積が広いぶん、室内でにおいが出やすいと感じる人が多いのですが、その多くは足のあいだと、そこに残った湿りから出ています。玄関で水気を取る習慣ができると、室内のにおいのほうも一緒に落ち着いていきます。ペットの防災のために始めた1分が、毎日の暮らしの側でも返ってくる形になります。

mofuwa グルーミングスプレーは、スプレーしてそのままブラシを通せる形のケア用品です。見て終わりにせず、拭くところまでを1分の中に収めるための道具として置いてください。足に直接吹きかけるより、布に移してから指のあいだと肉球のふちに当てるほうが、嫌がられにくくなります。大型犬は肉球1枚の面積も指の間隔も大きいので、指のあいだに残った湿りが乾くまでの時間も、そのぶん長くなります。毎日そこに手が入っているかどうかが、翌日の足の状態にそのまま出ます。原料の成分が清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、拭いた足をその場でなめる子でも、量のほうを気にせずに使えます。

Note毎日やるのは1分だけ。全身は週に1回で足ります

大型犬の全身を毎日整えるのは、時間の面でも姿勢の面でも続きません。毎日は足の4本だけ、全身は週に1回。粒度を分けておくと、忙しい週でも足のほうは止まりません。ペットの防災の備えとして残したいのは、途切れない側です。週に1回のほうが飛んでも、毎日1分が続いていれば、歩ける足は保てます。

歩き方が変わった日は、毎日の習慣の話ではありません

ここまでは、家でできる備えの話でした。ただし、足を見る習慣そのものが、いちばん早く異変に気づく仕組みでもあります。毎日15秒ずつ4本を見ていると、いつもと違う日がはっきり分かります。そのときは、防災の話でも習慣の話でもなく、体の話として受け取ってください。

Caution片足をかばう日は、残りの3本に体重が乗ります

特定の足をかばう、持ち上げると痛がる、指のあいだが赤い、じくじくしている、においがある、同じ足をなめ続けている、立ち上がるのに時間がかかるようになった。いずれかに当てはまるときは、家でのケアを増やす前に、動物病院にご相談ください。大型犬は体重があるぶん、片足をかばうと残りの3本に負担が集まります。見てもらう日を決めるなら、かばい始めた日から数えて早いほうにしてください。

相談に行くときは、いつから、どの足で、どの場面で気づいたかの3つを持って行ってください。帰宅後の1分で書き留めた1行が、そのまま材料になります。前の晩に念入りに洗ってしまうと、もとの状態が分かりにくくなります。気になる足は、そのまま連れて行くほうが伝わります。

最後に、備えの向きをもう一度置き直します。ペットの防災でよく語られるのは、何を持つかという話です。大型犬と暮らす人にとって、ペットのために持てる量は体重で上限が決まっていて、毎日の努力では増やせません。増やせるのは、その子が自分の足で歩ける距離のほうです。肉球が割れていないこと、指のあいだが乾いていること、爪が接地していないこと。この3つは、帰宅後の1分を続けていれば保てます。

防災を、特別な日のための準備として置いておくと、たいてい忘れます。毎日必ず来る帰宅後という時間に置き直すと、忘れる余地がなくなります。その1分は、いつか来るかもしれない日のためだけのものではありません。室内で滑らずに歩けること、においが残らないこと、痛みに早く気づけること。大型犬と暮らす毎日そのものが、少しずつ楽になっていきます。備えというのは、本当はそういう形で残るものだと思います。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。