C09シーン別・暮らし
引越しの前後、保護犬・保護猫を迎えた人はどうしている?
引越しの前の晩、その子がいつも寝ている布を1枚、洗わずにそのまま段ボールへ入れてください。きれいにしてから運ぼうとすると、新しい部屋には、その子が知っているにおいが1つも無い状態が生まれます。犬も猫も、部屋を目より先ににおいで覚えます。壁ぎわ、床、家具の脚。自分でこすりつけたにおいと、その家に元からあるにおいが混ざって、「ここは自分がいていい場所だ」という地図になっています。保護犬・保護猫を迎えた家では、その地図がまだ薄い時期に引越しが重なることがあります。やっと覚えた場所が丸ごと入れ替わるので、その子から見れば、迎えられた日がもう一度来ることに近い。この記事では、引越しの前後に家でできることを、におい・場所・体に触る順番の3つに分けて並べます。以前その子がどう暮らしていたかは分からないので、そこは推測せず、いま目の前で確かめられることだけを材料にします。
迎えた日がもう一度来る|引越しが保護犬・保護猫の毎日をどう入れ替えるか
引越しで最初に動くのは、たいてい部屋の隅です。使っていない棚を空にして、段ボールを積む。その段ボールが1つ置かれた時点で、保護犬・保護猫にとっての部屋は、もう昨日までの部屋ではありません。人は「まだ何も変わっていない」と思っていますが、犬も猫も、床に見えている面積と、壁ぎわのにおいの並びで部屋を測っています。棚が1つ空いただけで、その並びは書き換わります。
迎えてから日が浅い子ほど、この地図はまだ薄いままです。どこで寝るか、どこなら人の手が届かないか、どの部屋なら足音が少ないか。その子が自分で試して、少しずつ埋めてきた情報が、引越しでは一度に無効になります。保護犬・保護猫を迎えた人が引越しで戸惑うのは、荷物の量ではなく、この積み上げが見えないところで消えることのほうです。
しかも、飼い主の側の条件も同時に変わります。荷造りをしている数週間は、手が空きません。時間が読めず、部屋にいる人の数も日によって違う。この時期に「毎日やることを増やす」方向の準備は、まず続きません。増やすのではなく、いつもの毎日から1つだけ残す。引越しの前後に家でできることは、実際にはその1つを決めるところから始まります。
犬と猫で少し差はあります。犬は人の動きに合わせて場所を移すので、飼い主がどの部屋にいるかで落ち着き先が変わります。猫は逆に、高い場所や狭い場所を自分で選んで、そこから部屋を見ています。ただ、引越しで失われるものは同じで、どちらも「自分で選んで決めた場所」を一度に失います。だから手順も、犬と猫で別々に作る必要はありません。
- におい:家具が動き、荷物が出て、床のにおいが入れ替わります
- 床の見え方:物が減って、隠れられる場所と身を寄せる縁が消えます
- 音:反響が変わり、同じ生活音が違う音として届きます
- 人の動き方:立ったり座ったりの回数が増え、いつもの場所を通らなくなります
- 時間:食事とケアの時刻がずれ、毎日の区切りが分からなくなります
保護犬・保護猫の記事では、以前の環境を想像して手当てを決める書き方をよく見かけます。ここではそれをしません。分からないことは分からないままにして、いま確かめられることだけを材料にします。どこで寝ているか、どの布に自分から乗るか、手が近づいたときにどう動くか。この3つは今日その部屋で見られます。引越しの準備に使えるのも、この3つです。
前の家のにおいを1枚だけ運ぶ|引越し当日までの手順
ここからが実際の手順です。目的はただ1つ、新しい部屋に、その子が知っているにおいを1か所だけ作ることです。全部を持っていくことはできません。家具も床も置いてきます。だからこそ、残すものを1枚に絞ります。増やすほど管理が要るので、荷造りの最中には回りません。
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2週間前:その子が自分から乗っている布を1枚決める
毛布でも、座布団の上のタオル地でも、着なくなった服でも構いません。条件は1つで、人が置いたものではなく、その子が自分で選んで乗っているものにすること。保護犬・保護猫を迎えた家では、寝床として用意した場所ではなく、そのわきの布を使っていることがよくあります。使われていないほうを運んでも意味がありません。
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その1枚を、洗濯の予定から外す
引越しの前に寝具をまとめて洗いたくなりますが、この1枚だけは洗わずに運びます。におい移りを気にして洗ってしまうと、新居で頼れるものがゼロになります。汚れが気になるなら、その1枚は最後に洗って、代わりに使われはじめた布を新しい1枚として引き継いでください。洗うか運ぶかを迷ったら、運ぶほうを選びます。
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荷造りは、その子がいる部屋から遠いほうへ回す
部屋を1つずつ片づけて、その子がふだん過ごしている部屋を最後にします。1日で全部屋に手を入れると、逃げ場が同じ日に全部消えます。引越しの日程が決まったら、部屋の順番も一緒に決めてしまってください。順番を先に決めておくと、忙しくなってからも迷いません。
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前日:キャリーとケージを、開けたまま部屋に出しておく
当日いきなり入れるのがいちばん負担になります。前日から扉を開けたまま置いて、中にさっきの布の切れ端か、いつも使っている敷きものを入れておきます。入らなくても構いません。置いてあることが分かっていれば、当日その中が「知っているもの」の側になります。無理に押し込むと、そこが入りたくない場所になります。
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当日:最後に積んで、最初に降ろす
運ぶのは、例の布1枚と、いつもの食器と水入れ、それにトイレまわりの一式です。この4つは新居で最初に降ろします。他の荷物より先に置いてしまうほうが、あとの手間も減ります。段ボールの山ができてから場所を探すと、結局あとで動かすことになり、その子はもう一度覚え直すことになります。
| 運ぶもの | 洗うか | 新居で置く順番 |
|---|---|---|
| 自分から乗っている布1枚 | 洗わずに運ぶ | いちばん最初 |
| いつもの食器・水入れ | 運ぶ前に洗ってよい | 布のすぐそば |
| トイレ・トイレ砂 | 砂は少し残して運ぶ | 布から見える位置に |
| その他の寝具・敷きもの | 先に洗ってよい | 2〜3日たってから |
| キャリー・ケージ | 前日から出しておく | 扉は開けたまま置く |
「におい1枚」という考え方は、犬と猫のどちらにも同じように使えます。犬の場合は、その布を人が座る場所のそばに置くと落ち着きやすい。猫の場合は、部屋の隅か、少しだけ高さのある面に置くほうが選ばれます。置き方だけ変えて、運ぶものは変えません。引越しの荷物を減らしたい時期に、増える荷物はこれ1枚で足ります。
先に触る、先に片づける|引越し後のやり方でつまずく3か所
新居に着いてからのほうが、実はつまずきやすい。荷物が片づいていく速さと、その子が部屋を覚え直す速さが、まったく違うからです。ここでは、保護犬・保護猫を迎えた家で起きやすい3つを挙げます。3つとも、良かれと思ってやることばかりです。
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つまずき1:到着してすぐ、体を拭こうとする
移動で汚れた気がして、着いた直後に手を出したくなります。けれど、触られることに慣れていない子にとって、環境が変わった直後は、いちばん手を受け取りにくい時間です。ここで無理に押さえると、新しい部屋の最初の記憶が「押さえられた」になります。体はあとから何日でも拭けます。引越し当日は、水と、置き場所と、静かさの3つだけで足ります。
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つまずき2:段ボールを一気に片づけて、部屋をきれいにする
早く元の生活に戻したいので、休みの日にまとめて片づけたくなります。ただ、積まれた段ボールは、その子にとっては当面いちばん頼れる壁と隠れ場所です。全部たたむと、身を寄せる縁がその日のうちに消えます。1〜2箱は、わざと部屋の隅に残しておいてください。数日たって、その子が別の場所を選び始めてから片づければ間に合います。
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つまずき3:においを消そうとして、部屋中を一度に整える
新居のにおいが気になって、掃除と消臭を全面的にやってしまうことがあります。そうすると、せっかく運んだ1枚のまわりまで人の手が入り、唯一の目印が薄くなります。拭き掃除は、布を置いた一帯だけあとに回してください。部屋の他の場所は先に整えて構いません。順番を変えるだけで、目印は残ります。
| やってしまうこと | 起きること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 着いてすぐ体を拭く | 最初の記憶が「押さえられた」になる | 水と置き場所だけ用意する |
| 段ボールを全部たたむ | 隠れる縁が同じ日に消える | 隅に1〜2箱残しておく |
| 部屋中を一度に拭く | 運んできたにおいまで薄くなる | 布のまわりだけ後回しにする |
| 家具の配置を毎日変える | 覚え直しが振り出しに戻る | 1週間は動かさないと決める |
| 来客を早く呼ぶ | 人の出入りが場所より先に増える | その子が部屋を一周してから |
引越しの直後に、家具の裏やベッドの下から出てこないことがあります。心配になりますが、そこは今その子が自分で選んだ場所です。引き出すと、選び直しがもう一度必要になります。水と食事とトイレを、その場所から見える範囲に置いて、あとは人が近くで普通に過ごしてください。ただし、まる一日以上、水も食事もとっていない、排泄がない、呼吸が速いといったときは待たずに、動物病院に連絡してください。
体に触るのは最後|新居で保護犬・保護猫に家でできること
引越しのあとに戻していく順番は、場所 → 時間 → 体、の3段です。この順番を守ると、その子の許容の範囲を、こちらから試さずに済みます。逆にすると、まだ場所が決まっていない子に、時刻と手を同時に持ち込むことになります。保護犬・保護猫を迎えた家では、この順番の差がそのまま数週間の差になって出ます。
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1段目:場所(最初の3日)
運んできた布と、食器と、トイレの位置を動かさないことだけを守ります。やることはこれだけで、増やしません。その子が部屋を一周する、別の場所で寝てみる、窓ぎわに座る。そういう動きが出てきたら、場所の段は終わりです。3日で終わる子もいれば、2週間かかる子もいます。日数はこちらが決めません。
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2段目:時間(次の1〜2週間)
食事の時刻を、引越し前と同じ時刻に戻します。ごはんの前に何をするか、寝る前に部屋のどこを通るか。毎日の区切りは、時刻ではなく順番のほうで覚えられます。荷ほどきが終わっていなくても構いません。1日のうち2回だけ、同じ順番で同じことをする。それだけで、その子の側に予測できるものが戻ります。
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3段目:体(時間が戻ってから)
最後が体です。こちらから呼ばず、その子が自分から近くに来た日だけにしてください。触る場所は、顔と背中ではなく、足先や胸元のように視界に入る側から。1回10秒で切り上げて、嫌がる前にこちらからやめます。引越し前にブラッシングができていた子でも、道具はいったん置いて、手だけの日を何日か挟むほうが早く戻ります。
荷ほどきが続いているあいだも、その子の体は毎日汚れます。犬も猫も体から脂を出すので、昨日なでた足先が、今日また同じだけ汚れています。この毎日の側を受け持つ道具が、mofuwa グルーミングスプレーです。吹きかけて拭くだけなので、給湯の場所も乾かす場所もまだ決まっていない部屋で、そのまま1日目から使えます。舐めても問題のない基準でつくられているので、布に含ませる量は気にしなくて構いません。グルーミングスプレーはその子に直接吹きかけず、布に移してから、足先や胸元を毛の流れに沿ってなでるように使ってください。音と霧が苦手な子が多いので、噴霧の音を体の近くで出さないことのほうが大事です。1日1か所で足ります。
| 段 | 期間の目安 | その日にやること |
|---|---|---|
| 場所 | 最初の3日〜2週間 | 布・食器・トイレを動かさない |
| 時間 | 次の1〜2週間 | 1日2回、同じ順番で同じことをする |
| 体 | 時間が戻ってから | 自分から来た日に、1回10秒だけ |
食べない日が2日以上続く、水を飲まない、排泄がない、同じ場所をなめ続けている、皮膚が赤い、脱毛が広がっている、歩き方が変わった、呼吸が速い、隠れたまま出てこない状態が1週間を超える。これらは環境の変化として様子を見るより先に、動物病院にご相談ください。引越しから何日目かは、待ってよい理由にはなりません。日数ではなく、上の項目が出たかどうかで決めてください。
最後に、いちばん大事なところをもう一度書きます。引越しでその子が失うのは、荷物ではなく、自分で選んで決めた場所です。だから家でできることは、選び直すための材料を1つだけ先に置いておくこと。前の家のにおいを1枚残し、新居でそれを最初に置き、体に触るのは最後に回す。保護犬・保護猫を迎えた家の引越しで、こちらから動かせるのは、この順番のほうです。日数は、その子が決めます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 引越しの何日前から準備を始めればいいですか?
- 布を1枚決めるのは2週間前が目安です。ただ、決めるだけなので前日でも間に合います。間に合わないのは荷造りの順番のほうで、こちらは日程が決まった時点で決めてしまってください。その子がふだん過ごしている部屋を最後に片づける、と決めておくだけで、逃げ場が同じ日に全部消えることを避けられます。
- 引越し当日、その子はどこにいてもらうのがいいですか?
- 作業をしない1部屋に入れて扉を閉め、その部屋を最後に片づけるのが現実的です。人の出入りと荷物の動きが同じ場所で重なると、逃げ場がなくなります。ケージやキャリーに入れる場合も、前日から出しておいたものを使ってください。当日はじめて出したものに入れると、移動そのものより負担が大きくなることがあります。
- 新居に着いて、どのくらいで元の様子に戻りますか?
- 3日で部屋を一周する子もいれば、2週間隠れている子もいて、日数はこちらでは決められません。目安にするのは日数ではなく、動きの種類です。水を飲む、排泄する、別の場所で寝てみる、窓ぎわに座る。この4つのうち出てきたものを数えてください。2日以上食べない、排泄がないといったときは、日数に関係なく動物病院にご相談ください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
