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ダブルコートとは?上毛と下毛の二層構造

公開日 2021年1月15日|文=mofuwa編集部

明るく片づいた部屋で、やわらかい敷物の上に伏せている淡いクリーム色の犬
表面の毛がふわりと立って見えても、その下にもう一層あります。写真:https://kaboompics.com//Pexels

ドライヤーを止めた背中に手を入れると、表面は乾いているのに、指の先だけがまだ冷たく湿っている——ダブルコートの犬や猫で、いちばん起きやすいことです。ダブルコートとは、上毛と下毛の二層でできた被毛のことをいいます。外側にある太くて硬い毛を上毛(オーバーコート)、その内側にある細くて密な毛を下毛(アンダーコート)と呼びます。この言葉を知って、明日から変わるのは乾かし方です。二層あるということは、乾く時間も二重にかかるということだからです。そして、換毛期に抜けるのは下毛のほう。家でのケアでいつも手が届かないのも、下毛のほうです。この記事は、ダブルコートという言葉を、辞書の一行ではなく、毎日のケアの側から読み直す読みものです。

乾いていたのは上毛だけだった|ダブルコートとは何を指す言葉か

ダブルコートとは、上毛と下毛という性質の違う毛が、二層になって生えている被毛のことをいいます。外側の一層だけを見て「乾いた」と判断してしまうのが、この毛質でいちばん多い読み違いです。手のひらで表面をなでると、確かに乾いています。ところが指を毛の中へ差し込むと、地肌に近いところだけが冷たく湿っている。乾いていたのは、二層のうちの外側だけだったということになります。

言葉の中身をもう少し開きます。上毛とは、外側にある太くてまっすぐな毛で、オーバーコート、あるいはトップコートとも呼ばれます。雨や日ざし、外から当たるものを最初に受ける側です。下毛とは、その内側にある細く短い毛で、アンダーコートと呼ばれます。密に生えていて、あいだに空気を抱えることで温度を保つ側とされています。二つは太さも、長さも、生えかわる時期も違います。同じ「毛」という一語でまとめてしまうと、この違いが見えなくなります。

上毛と下毛は、同じ被毛のなかで役目が分かれている
上毛(オーバーコート)下毛(アンダーコート)
生えている場所外側の一層上毛の内側、地肌に近い側
毛の太さ太くて硬め細くてやわらかい
毛の長さ長い短い
密度まばらに見えるびっしり詰まっている
主な役目とされること外から当たるものを受けるあいだに空気を抱えて温度を保つ
生えかわり少しずつ季節でまとまって抜けるとされる
家の手が届く度合いブラシがそのまま通る地肌に近く、届きにくい

この表を一度見ておくと、ダブルコートという言葉が「毛が多い」という意味ではないことが分かります。多いのではなく、種類が二つあるということです。毛量の話だと思っているうちは、ケアの答えは「よくとかす」「よく乾かす」しか出てきません。二層の話だと分かると、どちらの層に手が入っていないのかを考えられるようになります。この記事で書きたいのは、そこから先です。

Note犬種や猫種の名前を出さずに書いています

ダブルコートとは毛の構造を指す言葉であって、特定の血統だけの話ではありません。同じ呼び方をされる子のあいだでも、下毛の量には幅があります。季節、年齢、暮らしている部屋の温度でも変わります。だからこの記事では、名前で分けずに「手を入れたときに、地肌の近くがどうなっているか」で分けます。自分の家のその子の毛に手を入れて確かめるほうが、名前で調べるより早く答えが出ます。

犬や猫の毛が二層になっている背景と、上毛・下毛が別の仕事をしている理由

毛が二層になっている背景には、「外から受けるもの」と「中に保つもの」を、一種類の毛で両立させにくいという事情があるとされています。外側の毛を太く硬くすると、当たるものを受け流しやすくなります。ただ、太い毛だけを密に並べても、あいだに空気は残りません。細い毛を密に生やすと空気を抱えられますが、その毛は外から当たるものに弱い。求められる性質が逆なので、層を分けているという読み方ができます。

上毛と下毛が別の仕事をしている理由は、ここから素直につながります。上毛は表面に立っていて、外から来たものを最初に受けます。下毛は上毛の内側にこもっていて、外の空気とのあいだに一枚はさまる位置にいます。位置が違うから、役目が違う。そして、位置が違うということは、家のケアで届く距離も違うということです。ブラシも、ドライヤーの風も、拭くための布も、すべて外側から入っていきます。

上毛と下毛は、届き方が違う ダブルコートの二層を、家のケアで手が届くかどうかの側から並べたものです。同じ一回のブラッシングでも、二つの層に同じだけ手が入っているとは限りません。 同じ一頭の、同じ背中の話をしています 上毛 外側の一層にある 太くてまっすぐ ブラシがそのまま通る 風が最初に当たる 見た目に結果が出る 下毛 地肌に近い側にある 細くて密に詰まる ブラシが表面で止まる 風が入りにくい 見た目では分からない 手が届いていないほうは、いつも同じ側です
外側は届きます。内側は、届かせるつもりで手を入れないと届きません。

図の右側を見ていると、ダブルコートのケアで起きていることが一つに見えてきます。やっていないのではなく、届いていないのです。毎日ブラシをかけていても、通っているのが上毛の表面だけなら、下毛には手が入っていません。時間をかけていないわけではないので、飼い主の側からは「ちゃんとやっている」ように見えます。ここが、この毛質でいちばんすれ違いが起きるところです。

もう一つ、背景として押さえておきたいことがあります。下毛の量は一年を通して同じではありません。寒い時期に向けて増え、暖かい時期に向けて減るのが一般的な変化とされています。つまり、去年と同じやり方が今日も同じだけ届くとは限りません。ダブルコートとは、季節によって厚みが変わる被毛でもある、ということです。

二層だから乾く時間も二重になる、というダブルコートの考え方

ここがこの記事の中心です。二層あるということは、乾く時間も二重にかかるということ。上毛が乾く時間と、下毛が乾く時間は別々に進みます。しかも、外から見えているのは上毛の乾き具合だけです。上毛が乾いた時点でドライヤーを止めると、下毛は途中で残ります。ダブルコートの考え方としては、「表面が乾いた」は、折り返し地点であって終点ではないと置いておくのが実際的です。

なぜ下毛のほうが遅れるのかは、構造から説明がつきます。下毛は細い毛が密に詰まっていて、そのあいだに空気を抱えています。抱えた空気は、湿っているときは湿った空気のまま、そこにとどまります。上から風を当てても、外側の一層で風がそれてしまい、内側の空気が入れ替わりません。だから、時間を長くするより、風の入り口をつくるほうが効きます。

  1. 指を毛の中に差し込んで、地肌の温度を見る

    手のひらで表面をなでるのではなく、指を立てて毛のあいだに入れます。地肌に近いところが冷たければ、まだ水分が残っています。ぬるく感じるところまで来ていれば、その場所は乾いています。判断は見た目ではなく、指先の温度で行います。

  2. 風を上からではなく、毛の流れに逆らって入れる

    上毛の上を風がすべっているあいだは、下毛に届きません。毛を手で分けて、地肌が見える筋をつくってから風を当てます。一度に広い面を乾かそうとせず、筋を一本ずつ移していくほうが早く終わります。

  3. 乾きにくい場所を、先に済ませる

    背中の真ん中、腰の上、尾のつけ根、脇、内股。下毛が厚い場所と、風が届きにくい場所は、だいたい重なります。元気があるうちに厚いところから始めると、最後に残るのが薄い場所になります。

  4. 最後にもう一度、同じ3か所に指を入れる

    背中の真ん中、腰の上、尾のつけ根。この3か所が乾いていれば、ほかの場所はたいてい乾いています。逆に、ここが冷たいままなら、全体としてはまだ途中です。確認の場所を決めておくと、毎回同じ基準で終われます。

この考え方には、もう一つ効きどころがあります。「どのくらい乾かせばいいですか」という問いに、時間で答えなくてよくなることです。10分なのか20分なのかは、その子の下毛の厚さと、その日の湿度と、風の当て方で変わります。時間を目安にすると、厚い日は足りず、薄い日は当てすぎます。指を入れて温度を見るという基準なら、どの日でも同じ判断ができます。

Point「乾いた」を、見た目で決めない

ダブルコートの被毛は、上毛が乾いた時点でふわりと立ち上がります。見た目としては、そこがいちばん乾いて見える瞬間です。ところが、内側の下毛はその時点でまだ途中にいることがあります。見た目がきれいに整った瞬間に手を止めたくなるのが、この毛質の難しいところです。終わりの合図は、毛の立ち方ではなく、地肌に入れた指先の温度に置いてください。

換毛期に抜けるのは下毛のほう|季節で起きる変化と、家の手が届かない場所

換毛期とは、季節の変わり目に被毛がまとまって生えかわる時期のことをいいます。ダブルコートでまとまって抜けるのは、主に下毛のほうだとされています。床に落ちている毛をよく見ると、細くて短くて、先がとがっていないものが多いはずです。上毛は太くまっすぐで、指でつまむとしっかりしています。落ちているのがどちらなのかは、拾って指のあいだで転がしてみると分かります。

落ちている毛から、どちらの層が動いているかを読む
見るところ上毛らしい特徴下毛らしい特徴
太さ太く、こしがある細く、ふにゃりとしている
長さ長い短い
色表面の色に近い薄い色をしていることが多い
まとまり方一本ずつ落ちる綿のようにかたまる
出てくる時期一年を通して少しずつ季節の変わり目に増える
どこから出るかブラシの表面に残るブラシの根元にたまる

ここで、この記事のはじめから続いている線が一本につながります。換毛期に動いているのは下毛で、家のケアで手が届かないのも下毛です。抜けかけた下毛は、すぐに落ちるとは限りません。上毛のあいだに引っかかったまま、しばらくそこにとどまります。とどまった毛は空気の通りをふさぐので、乾きにくい場所がさらに乾きにくくなります。ダブルコートの変化が、そのまま乾かす時間の変化になるのはこのためです。

6か所に共通しているのは、「見えないところ」ではなく「手が上からしか入らないところ」だということです。ダブルコートの手入れがうまくいかないとき、原因はたいてい道具でも時間でもなく、手を入れる向きにあります。上から下へ流すのをやめて、毛を分けて横から入れる。それだけで、届く層が一つ増えます。

洗える日ばかりではない、というのもこの毛質の現実です。二層あるぶん、乾かしきるまでに時間がかかるので、寒い日や夜遅い日には洗わない選択のほうが合っています。水を使わない日のケアとして、mofuwaのグルーミングスプレーを布に含ませ、毛を分けてつくった筋に沿って一往復させる方法があります。全身を濡らさずに、下毛の側へ手を入れる筋だけをつくるという使い方です。洗わない日でも、届かせる場所を決めておけば、季節の変化に追いつけます。

Caution抜け方の変化が、季節では説明できないとき

換毛期の抜け毛は、下毛が綿のようにかたまって出てくるのが一般的な形とされています。これに対して、一か所だけ地肌が見えるほど薄くなる、左右で抜け方が違う、地肌に赤みやかさつきがある、同じ場所をなめ続ける、においが変わった。こうした変化があるときは、ブラッシングを増やす前に動物病院にご相談ください。いつから、どの場所が、どう変わったかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。ダブルコートとは季節で厚みが変わる被毛なので、季節の変化とそれ以外を分けて見ておくことが、そのまま早い気づきになります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。