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シングルコートとは?抜けにくいぶん伸び続ける被毛

公開日 2021年2月12日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡い色の敷物の上に伏せている、やわらかく長い毛の淡色の犬
抜け毛が少ない被毛では、手入れの中身が「出す」から「整える」に入れ替わります。写真:Eduardo Sepulveda/Pexels

ブラシに毛がほとんど付かないのに、目の上の毛だけが半年前より伸びている——シングルコートの被毛では、この2つが同時に起こります。シングルコートとは、下毛がほとんどない、一層でできた被毛のことです。抜けにくいぶん、伸び続けます。換毛期が目立たない代わりに、切らないかぎり長さが止まらない、という言い方もできます。だから、二層の被毛とは家でやることの向きが逆になります。この記事では、シングルコートとはどういう状態を指す言葉なのか、その言葉を知ると明日から何が違って見えるのかを、8つの問答に分けて書きます。抜け毛の量で被毛を判断していた人ほど、読み替えが起きるはずです。

シングルコートとは、何を指している言葉ですか

定義から書きます。シングルコートとは、下毛がほとんどない、一層でできた被毛のことです。「単層被毛」と呼ばれることもあります。犬や猫の被毛は、外側にある太くて長い上毛(オーバーコート)と、その下にある細くて短い下毛(アンダーコート)の2種類でできているとされています。この2つがそろっているものがダブルコート、上毛だけで下毛がほとんどないものがシングルコートです。

言葉としてはそれだけなのですが、この定義を知ると、抜け毛の量の読み方が変わります。抜け毛が少ないことを「毛が丈夫だから」「体が健康だから」と読んでいた人は、そこを読み替えることになります。抜け毛が少ないのは体の状態の話ではなく、季節でまとめて抜ける層を最初から持っていない、という構造の話だからです。

そして、この記事でいちばん伝えたいのはその先です。抜けにくい被毛は、抜けない代わりに伸び続けます。シングルコートとは、言い換えると「掃除の仕事が減って、切る仕事が回ってくる被毛」のことでもあります。ここが分かると、毎日のケアで何を見ればいいかが決まります。

Note被毛の分類は、体質の良し悪しではありません

シングルコートとダブルコートは、どちらが優れているという話ではありません。寒い場所で暮らすために下毛を厚く持つ体と、そうでない体があった、という違いだとされています。どちらの被毛でも、皮膚の状態が良いことも悪いこともあります。分類を知る目的は、優劣を決めることではなく、家でやる作業の向きを決めることです。この記事はその一点だけのために書いています。

なぜシングルコートの被毛は、季節でごっそり抜けないのですか

春と秋に、家じゅうが毛だらけになる——あの現象で抜けているのは、主に下毛のほうだとされています。気温が変わる時期に、下毛がまとまって役目を終えて抜け落ちる。これが換毛期と呼ばれるものです。シングルコートには、その下毛がほとんどありません。だから、まとめて抜け落ちる層そのものがないということになります。

ただし、まったく抜けないわけではありません。ここは誤解されやすいところです。毛は1本ずつ、伸びる時期・伸びが止まる時期・抜け落ちる時期をくり返しているとされています。シングルコートの被毛でも、その1本ずつの入れ替わりは毎日起きています。ただ、全部が同じタイミングで抜けないので、量としてまとまらず、目に見えにくいだけです。

抜け毛の出方が、被毛の種類でどう違うか
シングルコートダブルコート
季節でまとまって抜けるかまとまりません春と秋にまとまります
1本ずつの入れ替わり毎日起きています毎日起きています
床に落ちる毛の量年間を通して少なめ季節で大きく変わります
ブラシに残るもの抜けた上毛が少しずつ換毛期は下毛がかたまりで
掃除の負担が変わる時期とくにありません季節の変わり目に集中します

この表の右下、「掃除の負担が変わる時期がとくにない」というのが、シングルコートの暮らしやすさとして語られる部分です。ただ、負担が消えたわけではありません。時期に集中しない代わりに、別の形でならされて出てくる——それが次の項です。

抜けないのに毛が伸び続けるのは、どういう仕組みですか

ここがこの記事の核です。毛が伸びている期間が長いほど、その毛は長くなります。毛には、伸びる時期・伸びが止まる時期・抜け落ちる時期があるとされています。抜け落ちる時期が早く来る毛は、短いところで止まります。抜け落ちる時期がなかなか来ない毛は、そのぶん伸び続けます。

シングルコートの被毛は、後者に近い性質を持つとされています。つまり、抜けにくいという性質と、伸び続けるという性質は、同じことを別の側から言っているだけです。抜け毛が少なくて助かる、と感じている部分と、いつのまにか目にかかっている、と感じている部分は、切り離せません。

だから、シングルコートの被毛では「切る」という作業が必ずどこかで発生します。自然に落ちて長さが止まる仕組みが弱いので、人が長さを決めることになります。ダブルコートの被毛で「抜けたものを外へ出す」のが手入れの中心だとすれば、こちらは「伸びたものを整える」が中心になります。

この5か所は、抜け毛の量をいくら見ていても分かりません。見るのは量ではなく、長さです。シングルコートとは何かを一言で持ち帰るなら、「見るところが量から長さに移る被毛」だと考えてください。

換毛期が目立たないのは、手がかからないという意味ですか|いちばん多い疑問

この疑問には、はっきり答えられます。掃除の手間は減ります。ただし、手入れの手間は減りません。減った掃除のぶんが、そのまま長さの管理と絡まりの管理に移っているだけです。総量が減ったわけではなく、置き場所が変わったと考えるほうが実態に合います。

絡まりのほうは、とくに見落とされます。抜けた毛が外に落ちずに、伸びている毛のあいだに残るからです。抜け毛が少ない被毛ほど、抜けた毛は床ではなく体の上にとどまります。それが伸びた毛と絡んで、ほどけない塊になっていきます。床に毛が落ちていないことを「手がかかっていない証拠」と読むと、この段階を見逃します。

換毛期が目立たない被毛で、手間がどこへ移るか
減るもの増えるもの気づくきっかけ
床の毛の掃除長さを決める判断目にかかる、床に毛が触れる
季節ごとの抜け毛の山年間を通した絡まりの管理ブラシが途中で止まる
衣服につく毛毛の中に残る抜け毛の回収指を入れると綿のような感触がある
換毛期の集中したケア毎日の短いケア同じ場所ばかり毛先が割れる
季節による負担の波一定して続く負担気づく時期が来ないまま進みます

絡まりやすい場所は決まっています。脇の下、内股、耳の後ろ、首輪の下、尾のつけ根。どこも動きで毛がこすれる場所か、人の手が届きにくい場所です。シングルコートの被毛では、毎日のケアでこの5か所だけを指で確かめる習慣にすると、塊になる前に気づけます。ブラシを全身に通す時間がない日でも、指を入れるだけなら30秒で終わります。

二層の被毛と手入れの向きが逆になる、とはどういうことですか

「逆になる」とは、ブラシを入れる目的そのものが違う、という意味です。二層の被毛では、毛の中にたまった抜け毛を外へ出すためにブラシを入れます。シングルコートでは、伸びている毛どうしが絡まないように、流れをそろえるためにブラシを入れます。同じ道具を使っていても、やっていることが違います。

手入れの向きが、被毛の種類でどう入れ替わるか 下毛があるかどうかで、家でやる作業の目的が入れ替わります。片方は「たまったものを外へ出す」作業、もう片方は「伸びたものを整える」作業です。道具が同じでも、目的が違います。 どちらが手間が少ないという話ではありません シングルコート 下毛がほとんどない一層の被毛 季節でごっそり抜けない 伸びるので長さが止まらない 仕事は「伸びたものを整える」 抜け毛より絡まりが出やすい ダブルコート 上毛と下毛の二層の被毛 季節で下毛がまとまって抜ける 一定の長さで伸びが止まりやすい 仕事は「抜けたものを外へ出す」 絡まりより抜け毛が出やすい 被毛の種類を知る目的は、この2列のどちらを見るかを決めることです
同じブラシを持っていても、通す理由が違います。理由が違えば、頻度も力加減も変わります。

向きが逆だということは、片方でうまくいった方法が、もう片方では空振りするということでもあります。二層の被毛向けに作られた、下毛をかき出す道具を強く使うと、シングルコートでは伸びている上毛のほうを引っぱることになります。逆に、流れをそろえるための道具を二層の被毛に使っても、下にたまったものは出てきません。

道具を選ぶときは、名前ではなく「これは出す道具か、そろえる道具か」で見てください。この1問だけで、被毛に合わない選び方はだいたい避けられます。

家で確かめる方法が知りたい|毛をかき分けて、根元を見ます

自分の家の子がシングルコートなのかどうか、家でつく見当があります。背中の毛を指で左右にかき分けて、根元を見てください。見るのは3つです。地肌がすぐ見えるか、細く柔らかい毛が密に詰まっているか、指を入れたときに綿のような手ざわりがあるか。

  1. 背中の真ん中の毛を、指で左右にかき分ける

    毛の流れに逆らって、山を作るように分けます。いちばん毛が厚い場所で見るのが基本です。腹や内股はもともと毛が薄いので、そこで見ると判断を誤ります。

  2. 地肌がすぐ見えるかを確かめる

    分けた谷の底に、地肌がはっきり見えるなら、下毛が少ない被毛の可能性があります。細く柔らかい毛が詰まっていて地肌が隠れるなら、下毛があるほうだとされています。

  3. 指の腹で、根元をなでてみる

    上毛だけの被毛は、根元まで指がすっと入ります。下毛がある被毛は、途中で綿のような抵抗があります。目で見るより、この手ざわりのほうが分かりやすいことがあります。

  4. 1年を通して、抜け毛の量が変わるかを見る

    春と秋に急に増えるなら、二層の被毛の性質が出ています。年間を通してほぼ変わらないなら、シングルコートに近い出方です。この確認だけは、その場ではできません。

ただし、この確認は目安です。被毛のつくりは1頭ずつ違いますし、混ざった性質を持つ子もいます。見た目と手ざわりだけで、被毛の種類を言い切れるものではありません。シングルコートとは何かを知る目的は、分類を確定させることではなく、毎日のケアで何を見るかを決めることでした。そこに戻れば十分です。

毎日のケアは、抜けにくい被毛だとどこを変えますか

変えるのは3つです。回数の考え方、力の入れ方、そして水を使う頻度。順に書きます。

水を使う頻度についても書いておきます。伸び続ける被毛は、汚れやにおいのもとが毛の長さぶんだけ乗ることになります。そのたびに洗っていると、回数が増えます。洗う日と、洗わない日のケアを分けておくと、毎日の手間が一定になります。洗わない日は、布に含ませたもので拭き取る形にします。

mofuwaのグルーミングスプレーのような洗い流さないタイプを使うときも、直接吹きかけるより布に含ませてから、毛の流れに沿って一往復させるほうが向いています。伸びている毛に直接かけると、根元まで届く前に毛の途中で止まってしまうためです。布で押し当てるようにすると、長さのある被毛でも根元まで届きます。顔まわりは、必ず布に取ってからにしてください。

Point切る作業は、家で全部やろうとしないほうが続きます

シングルコートの被毛で必ず発生する「切る」は、家で全部を引き受けると負担が大きくなります。家でやるのは、目にかかる毛と、足の裏の毛の2か所までと決めておくと、続けやすくなります。全身の長さを整えるほうは、間隔を決めてプロに任せる。そのあいだの毎日を、指で確かめるケアでつなぐ。この分担にすると、絡まりが塊になる前の段階でほぼ止められます。

「シングルコートだから皮膚も大丈夫」とは言えない部分はどこですか

最後に、線を引いておきます。被毛の種類は、皮膚の状態を保証しません。シングルコートとは被毛のつくりを指す言葉であって、その下の皮膚が丈夫だという意味は含んでいません。抜け毛が少ないことも、皮膚に問題がないことの証明にはなりません。

むしろ、一層の被毛では地肌と外の空気のあいだにある層が薄いぶん、乾いた空気や日差し、冷たい風の影響が届きやすい面があるとされています。これは弱いという意味ではなく、条件が違うという意味です。夏の冷房、冬の暖房、外に出る時間。同じ環境でも、届き方が二層の被毛とは違います。

被毛の種類で説明できること、できないこと
被毛の種類で説明できるか
抜け毛の量の出方説明できます
毛が伸び続けるかどうか説明できます
絡まりやすい場所おおよそ説明できます
皮膚が赤くなる理由説明できません
フケが増えた理由説明できません
かゆがっている理由説明できません
においが強くなった理由説明できません

この表の下半分に入るものは、家でのケアの範囲を超えています。被毛の話で説明をつけようとすると、判断がそこで止まってしまいます。シングルコートとは何かを知ることの価値は、説明できる範囲とできない範囲の線が引けるようになることでもあります。

Caution皮膚の変化が続くときは、動物病院にご相談ください

地肌が赤い、フケが急に増えた、同じ場所をなめ続けている、毛が薄くなった場所がある、においが強くなった、触られるのを嫌がるようになった。こうした変化が数日続くときは、ブラシの種類や毎日のケアを見直す前に、動物病院にご相談ください。被毛が一層か二層かは、この判断には使えません。相談に行くときは、気になり始めた時期と場所、使っている道具、洗った間隔をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらいやすくなります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。