C14トリマー/獣医師視点

乾燥する季節のブラッシング|静電気を減らす順番

公開日 2021年3月14日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床に、落ち着いて座っている白っぽい小型犬
乾燥する季節に最初に確かめるのは毛の表面ではなく、指の腹が触れた地肌の側です。写真:Pexels/Pixabay

湿度が35%まで下がった日、静電気で毛が立ちはじめるのは背中の広い面ですが、サロンで最初にブラシが入るのは後ろ足のももの外側です。面積の小さいところから入って、広い面はいちばん後ろへ回す。ブラッシングの順番をこう組むのは、静電気がこすれた回数の積み上がりで溜まっていくからです。先に背中を長く梳かしてしまうと、その日の残りの時間を、すでに帯電した被毛の上でやり直すことになります。家とサロンの差は、道具の性能でも手の速さでもなく、どこから触りはじめるかという順番のほうに出ます。乾燥する季節のブラッシングを、家にあるブラシのまま組み直していきます。

乾燥する季節に、ももの外側から入る|静電気とブラッシングの順番が現場で決まった背景

3月の乾いた部屋で、トリマーが最初にブラシを入れるのは、後ろ足のももの外側です。ここは1回のストロークが10cmほどしかなく、毛の層も薄いので、梳かしながら指の腹を地肌まで沈められます。その日の被毛がどれくらい乾いているかを、道具ではなく手で測るための場所です。静電気とブラッシングの順番が現場で決まっていった背景には、この「最初に情報を取る」という目的があります。

静電気は、性質の違うものがこすれたときに起きて、逃げ場がないと溜まります。つまり溜まる量は、こすれた回数と、その日の被毛と空気の乾きの掛け算で決まります。ブラシを入れる回数は減らせませんから、順番のほうで配り方を変えることになります。1回のストロークが長い場所ほど、一度に稼いでしまう回数が多いという見方をすると、どこを後ろへ回せばいいのかがそのまま出てきます。

入りはじめる場所と、1回のストロークの長さ
場所1回のストロークの長さそこから入ると起きること
後ろ足のももの外側10〜15cm地肌の乾きを指で確かめながら、短いストロークで始められる
肩から前足の付け根15〜20cm毛の流れが切り替わる場所なので、絡みの有無が先に分かる
耳のうしろ5〜10cm細い毛が集まっていて、途中で向きが変わる
背中の中央30〜40cm1回が長いぶん、こすれた回数が早く積み上がる
腰からしっぽの付け根25〜35cm毛が立ちはじめると、家の照明でもいちばん目立つ

表の左から3行が、現場で先に触る場所です。共通しているのは面積の小ささで、こすれた回数がまだゼロに近いうちに、その日の地肌の状態を読んでしまうという狙いがあります。皮膚が乾いている日は毛の根元がぱさついて、指を沈めたときに毛が指のほうへ寄ってきます。うるおいが残っている日は、指を抜いたあとに毛がすっと流れへ戻ります。ここまでを最初の30秒で済ませてから、梳かす順番を決めます。

乾燥する季節は、家の側の条件も同じ方向に動きます。暖房で部屋の湿度が下がり、静電気の起きやすさが上がり、地肌のかさつきが気になって洗う回数が増える。ところが洗いすぎると地肌のうるおいはさらに減るので、翌日のブラッシングで毛が立ちやすくなります。手を入れる場所が同じでも、季節によって順番の重みが変わるのはこのためです。夏場なら気にしなくていい30cmのストロークが、3月には最後に回すべき30cmになります。

広い面をいちばん後ろへ回す|静電気を減らすブラッシングの順番の考え方

順番の考え方は一つで、こすれる回数を、被毛のいちばん目立つ場所へ最後に届くように配ることです。静電気を減らすブラッシングは、特別な手つきを覚えるものではありません。同じ本数のストロークを、どの場所からどの場所へ流すかという配り方の問題です。次の5つの手順は、サロンでの入り方をそのまま家の道具に落としたものです。

  1. 地肌に指を当てて、3か所で乾きを測る

    背中の中央、腰、耳のうしろ。指の腹を毛の中へ沈めて5秒、地肌の感触をそれぞれ確かめます。指を抜いたときに毛が指へ寄ってくる場所ほど、その日は後ろへ回します。

  2. 面の小さいところから入る

    後ろ足のももの外側、前足の付け根、耳のうしろの順に進めます。1回が短いので、こすれた回数をこちらで数えられます。ここで絡みが見つかれば、広い面へ行く前に手で分けておけます。

  3. 1か所5ストロークで次へ移る

    同じ場所を往復しないこと。往復は、見た目の作業量が同じでもこすれた回数が倍になります。5回で落ちなかった抜け毛は、その場で粘らず、一周してから戻ってきます。

  4. 背中と腰は、いちばん後ろに置く

    面積が広く、毛が立ったときに最も目立つ場所です。最後に回せば、立った状態のまま他の場所を梳かす時間がなくなります。順番を変えた差がいちばん分かりやすいのがここです。

  5. 手のひらを毛の流れに沿って通して終える

    ブラシを置いてから、手のひらで頭の側から腰の側へ一度だけ通します。立った毛の向きをそろえる動作で、ここで毛先がどこを向くかが、その日の記録になります。

Point順番を組み替えるときは、1か所だけ動かす

5つをまとめて入れ替えると、翌日に毛の立ち方が変わっても、どれで差が出たのか分からなくなります。最初の1週間は「背中を最後へ回す」だけを動かして、残りはこれまでどおりにしてください。ブラッシングの順番は手順の暗記ではなく、その子と家の条件に合わせて削っていくものなので、比べられる形で1つずつ動かすほうが早く決まります。

この5つを逆にするとどうなるかを書いておきます。背中から30cmのストロークで10回入れた時点で、その日のこすれた回数の半分近くを背中で使っています。毛はすでに立っていて、次に足先へ行くとブラシのほうへ寄ってきます。同じ本数を梳かしているのに、後半の作業がすべて帯電した被毛の上で行われます。順番の話が手つきの話より先に来るのは、後半をやり直せる形で残しておくためです。

猫の場合は、この順番をさらに短く切ります。1回で全身を終えようとせず、ももの外側と肩まわりで一度やめて、背中は別の時間帯に回します。時間で区切るのも、順番の一部です。静電気の起きやすい時期に、続けて梳かす時間が長くなるほど、こすれた回数はそのまま積み上がります。犬でも、途中で体をひねる回数が増えてきたら、そこで区切って次の日へ渡してかまいません。

3ストロークめの毛先が、どこを向くか|静電気のブラッシングの順番で見る変化

順番を変えた日に見るのは、毛の見た目ではなく、梳かしたあとに毛先が流れへ戻るまでの速さです。3ストローク入れて手を止め、毛先がどこを向いているかを1秒だけ見る。これだけで、その日の順番が合っていたかどうかが分かります。静電気そのものは目に見えませんが、戻る速さという形でなら家でも比べられます。

1か所を梳かしたあとに見る、5つの変化
見るもの順番が合っている日組み直したい日
毛先が戻る速さ手を止めて1秒以内に流れへ戻る立ったまま10秒たっても残っている
ブラシに残る抜け毛指でつまむと素直に離れる目に貼りついて、振っても落ちない
梳かすときの音布ずれのような音だけ小さく鳴る音が1か所で何度も混じる
その子の姿勢同じ向きで座ったまま動かない3回に1回、体をひねって向きを変える
地肌の見え方左右で同じように毛が分かれる片側だけ分け目が立ち上がって戻らない

右の列が2つ以上そろった日は、順番よりも先に乾きのほうが進んでいます。ここで手数を増やすと、こすれた回数だけが足されていきます。梳かす面に先にうるおいを渡してから、同じ順番をもう一度やり直すほうが早く収まります。犬も猫も体から脂を出しますし、散歩にも行かせたい。毎日きれいにしてあげたいのに、シャンプーは毎日できないし、サロンにも毎日は通えません。この毎日の側を埋めるために作られたのが mofuwa グルーミングスプレーです。

使い方は、梳かす面へ吹きかけてブラシを通すだけです。乾いた被毛にいきなりブラシを入れるのと比べると、1か所あたりのストロークが短くて済むぶん、こすれる回数の積み上がり方が変わります。アルカリ電解水が油となじんで乳化するので、汚れのもとになる余分な脂は落ち、地肌に要る皮脂のほうは残ります(deck p16)。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にせず使えます。顔まわりで手を止める必要がないぶん、耳のうしろのような細かい場所まで同じ順番で通せます。

お風呂そのものが負担になる子にも、グルーミングスプレーは置き場所を選びません。シニアの犬や猫は、湯を使うこと自体が体力を削ります。洗える子と洗えない子で分けるのではなく、その子にとって湯を使わないほうがいい時期がある、という分け方をしてください。乾燥する季節に洗う回数を増やすと、洗いすぎで地肌のうるおいが先に減ります。毎日の側をスプレーとブラッシングで埋めておくと、洗う日の間隔をその子の体に合わせて決められます。

Caution湿度が戻った日でも、毛の立ち方が変わらないとき

湿度が60%まで戻った日でも同じ場所の毛だけが立つ/片側の地肌にだけ赤みが3週間残っている/梳かしている最中に同じ場所を自分でなめる/同じ順番なのに、かかる時間が前の月の倍になった。こうした残り方は、乾燥とこすれの積み上がりでは説明がつきません。梳かした日の日付と部屋の湿度、手が止まった場所を控えて、動物病院で診てもらってください。順番を変えた前と後で写真が残っていれば、いつから変わったのかを伝える材料になります。

一冬ぶんの手が覚えるもの|静電気のブラッシングの順番で積み上がる経験

ひと冬こうして続けると、次の乾燥期には、最初に触る場所を手のほうが先に選びます。覚えるのは手順の並びではなく、指を沈めたときの地肌の感触と、そのときに背中を後ろへ回すかどうかの判断です。同じ順番でも、その日の湿度によって配り方は変わります。経験として残るのは、その変え方のほうです。

今日できるのは、いつも最初に入れていた場所を思い出して、そこが30cmの面かどうかを見ることだけです。もし背中から入っていたなら、明日は後ろ足のももの外側から始めてみてください。ブラッシングの順番は、それひとつで毛の立ち方が変わります。

Product

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。