C14トリマー/獣医師視点
グルーミングは「美容」ではなく健康チェックの時間
全身のグルーミングを1回終えるまでに、手は15か所ほどを通ります。耳の入り口、耳のうしろ、首の下、わきの下、胸、背中、腰、しっぽの付け根、内もも、ひざの裏、足先、肉球の間、あごの下、口のまわり、目のまわり。家で毎日触るのは、このうち頭と背中と胸の3か所くらいです。グルーミングが健康チェックの時間だと現場で言われるのは、手つきが特別だからではなく、同じ場所を、同じ順で、毎回通るからです。同じ順で通れば、先週と今週を同じ条件で比べられます。この記事では、トリミングの現場が手で拾っているものを、家の5分に移すところまで書きます。
1週間のうち、全身に手が届く時間は何分あるか|グルーミングを健康チェックとして使う見分け方の前提
トリミングの現場で、毛を切っている時間より長いのは、触っている時間です。洗う前に全身を触り、乾かしながら毛の層に指を入れ、仕上げにもう一度同じ場所を通る。見た目を整える作業の手数を分解すると、大半は手のひらと指の腹が皮膚と被毛に触れている時間になります。グルーミングが健康チェックの時間だと言われるのは、この触っている時間そのものを指しています。
家での1週間を同じように数えると、差がはっきりします。抱き上げるときに胸、なでるときに頭と背中、散歩のあとに足先。触っているつもりでも、通っているのは3か所か4か所です。残りの10か所以上は、目で見ているだけで、手では確かめていません。毛のある動物では、見ただけで分かる変化は、すでに毛の外側まで出てきたものに限られます。
- 左右の差:同じ子の右と左を比べる。その子の平常値が分からなくても、左右なら同じ日の同じ条件で比べられます
- 戻る速さ:皮膚を軽くつまんで離し、元に戻るまでの秒数を数える。手ざわりの印象を、数字に置き換える手です
- においの出どころ:強さではなく、どこから出ているか。耳の入り口か、肉球の間か、しっぽの付け根かで、見る場所が変わります
この3つは、道具がなくても家でそのまま使えます。逆に言えば、現場と家の差は器具ではなく、同じ順で通っているかどうかだけです。順番がその日の気分で変わると、先週と比べたつもりが別の場所を比べていることになります。グルーミングを健康チェックとして使う見分け方の前提は、ここに尽きます。触る場所を決めて、その並びを変えないこと。
左右の差・戻る速さ・においの3列に置く|犬のグルーミングでの健康チェックの見分け方
触る場所ごとに、何を確かめるかは決まっています。手を当てる順に並べたのが次の表です。犬でも猫でも並びは同じですが、猫は1回で全部を通そうとせず、上半分と下半分で日を分けたほうが最後まで続きます。この表は、グルーミングの健康チェックの見分け方を、場所の側から書き出したものです。
| 場所 | 確かめるもの | その場で分かれる判断 |
|---|---|---|
| 耳の入り口 | 指は入れず、ふちのにおいを5秒 | 左右でにおいが違えば、片側だけで起きている話 |
| 耳のうしろ | 毛をかき分けた地肌の温かさ | 左右で違えば、その日の日付といっしょに残す |
| わきの下 | 皮膚を軽くつまんで離す | 戻るまで2秒以上かかる日が続けば、水を飲む量を数える |
| 背中から腰 | 毛の層に指の腹を沈める | 指へ毛が寄ってくる場所は、その日は乾いている |
| 内もも | 毛を分けたときの地肌の見え方 | 左右で違えば、こすれている側を先に探す |
| 肉球の間 | 毛をかき分けて指を通す | 片側だけ湿っていれば、そこをなめている |
| しっぽの付け根 | 手のひらで軽く押す | 逃げる向きが毎回同じなら、場所として記録に残す |
表を通して主役になっているのは、いちばん右の列の「左右で違うか」です。毛の量も、皮膚の厚みも、においの強さも、その子ごとの幅が大きく、多い少ないだけでは意味を読み取れません。左右は、同じ日の、同じ子の中での比較です。現場が飼い主へ最初に伝えるのが「左のわきだけ」「右の耳だけ」という言い方になるのは、この比較の形をそのまま渡しているからです。
戻る速さのほうは、秒数で残せます。わきの下か、肩の後ろの皮膚を、指2本で1cmほどつまんで離す。1秒で戻るのがふつうで、2秒以上かかる日が3日続いたら、その週は飲み水の減り方も並べて数えます。数字にしておくと、翌週に「なんとなく」で上書きされません。グルーミングの健康チェックが続くかどうかは、この「数えられる形に落ちているか」で決まります。
拾ったその場で、続けるか手を止めるか|グルーミング中の健康チェックのサインを3つに仕分ける
触って何かを拾ったとき、現場がまずやるのは仕分けです。作業を続けながら直せるもの、1週間かけて見るもの、その日のうちに人へ渡すもの。この3つに分けてしまえば、その場で悩む時間がなくなります。グルーミング中に出てきた健康チェックのサインは、必ずこのどれかに入ります。
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今日のうちに変えられるもの
毛の絡み、肉球の間に挟まった砂、しっぽの付け根の毛が重なって空気が通っていない状態。その場で分けるか、拭くか、乾かすところまでで終わります。翌日に同じ場所を触って、戻っていれば終わりです。
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1週間そのまま見るもの
左右差のある地肌の色、戻るまで2秒かかる皮膚、片側だけの耳のにおい。日付と場所をメモして、同じ曜日にもう一度同じ順で触ります。1週間で消えるものと、同じ場所に残るものが分かれます。
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その日のうちに人へ渡すもの
触られると同じ場所だけ毎回いやがる、押していないのに手を引く、前の週になかったふくらみが同じ場所にある。家で答えを出そうとせず、場所と日付を持ったまま次の手へ移ります。
この仕分けを続けるには、触る時間が毎日あることが前提になります。ところがトリミングの間隔は3週間から6週間で、その間は家だけの時間です。犬も猫も体から脂を出しますし、散歩にも行かせたい。毎日きれいにしてあげたいのに、シャンプーは毎日できず、サロンにも毎日は通えません。この毎日の側を埋めるためにつくられたのが mofuwa グルーミングスプレーです。
吹きかけてブラシを通すだけなので、1か所30秒で終わります。毎日の短いブラッシングが決まった順番で回るようになると、そのままグルーミングの健康チェックの時間になります。アルカリ電解水が油となじんで乳化するため、汚れのもとになる余分な脂は落ち、地肌に要る皮脂は残ります(deck p16)。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にせず使えます。口のまわりや肉球の間でも手を止めずに済むぶん、表の7か所を同じ日に通せます。
湯を使うこと自体が負担になる子には、この毎日の側の比重がさらに大きくなります。シニアの犬や猫では、洗う回数を増やすより、触る回数を増やすほうが記録は残ります。グルーミングスプレーとブラシだけで回せる日をつくっておくと、洗う日をその子の体調に合わせて動かせます。現場で「間隔があいても大丈夫な子」と言われるのは、家の側でこの触る時間が確保できている子です。
何日待って、何を持っていくか|グルーミングの健康チェックから動物病院へ渡す目安
家で決められるのは、何が起きているかではなく、どれだけ待つかと、何を持っていくかです。触って拾ったものに名前をつける必要はありません。場所と、日数と、変化の向きの3つがそろっていれば、渡した先で読み取ってもらえます。次の表は、グルーミングの健康チェックで拾ったものごとの目安です。
| 拾ったもの | 家で見る日数 | 持っていくもの |
|---|---|---|
| 左右で違う地肌の色 | 7日 | 分け目を同じ角度で撮った写真を、初日と7日目で2枚 |
| つまんで戻るのが2秒以上 | 3日 | 何秒だったかを日付ごとに並べた数字 |
| 片側だけの耳のにおい | 3日 | いつから、どちらの耳か。触った日のメモ |
| 肉球の間が片側だけ湿る | 5日 | なめている時間帯と、その前にどこを歩いたか |
| 同じ場所を触るといやがる | 待たない | いやがりはじめた日と、そのときの触り方 |
| 前の週になかったふくらみ | 待たない | 気づいた日付と、指で測ったおおよその大きさ |
下2行の「待たない」は、様子を見て変わるものではないためです。残りの行も、日数が過ぎたら自然に終わりということではなく、その日数で消えたかどうかを見るための区切りだと考えてください。消えていれば記録はそこで閉じ、残っていれば持っていく材料がそろっています。
飼い主への説明でつまずきやすいのは、言葉のほうです。現場では、状態の名前をつけずに伝えます。「腫れています」「炎症が起きています」ではなく、「先週は左右同じでしたが、今日は左のわきだけ戻るのに3秒かかりました」と言う。場所と、比べた相手と、数字だけを渡す形です。家の記録を動物病院へ持っていくときも、同じ形にしておくと話が早く進みます。
前の週になかったふくらみが同じ場所にある/触られると同じ場所だけ毎回いやがる/押していないのに手を引く/食べる量と飲む量が同じ週に両方変わった。これらは、家で日数を数えても向きが分かりません。気づいた日付と、どこを、どう触ったときだったかを書き出して、動物病院で診てもらってください。家でできるのは、そこまでの記録を切らさずに続けることです。
5分でも、同じ順で触れば記録になる|グルーミングの健康チェックが続く形
続くかどうかを決めているのは、かけた時間ではなく、順番が固定されているかどうかです。15か所を毎日通す必要はありません。耳の入り口、わきの下、背中から腰、肉球の間。この4か所を同じ並びで通すだけなら、5分あれば終わります。同じ並びなら、先週の5分と今週の5分が比べられます。
今日決めるのは、触る4か所とその並びだけです。紙の端に書いて、ブラシの置き場所に貼っておく。グルーミングが健康チェックとして働きはじめるのは、その並びが2週目に入ったときからです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 毎日は無理なので、週に1回まとめて全身を触るのでは足りませんか。
- 週1回でも記録にはなりますが、比べられる間隔が7日になります。左右差や戻る速さは数日で動くことがあるので、週1回だと、変わりはじめた日が分からないまま次の週に入ります。全身を週1回にするなら、そのあいだの日は場所を減らしてください。わきの下と肉球の間の2か所だけなら1分で終わります。全身を丁寧に触る日と、2か所だけ触る日を分けると、間隔が詰まったまま続けられます。
- トリミングに出しているので、家では触らなくてもよいのではありませんか。
- サロンで全身を触るのは3週間から6週間に1回です。その間に起きた変化は、次の来店まで誰の手も通りません。現場としても、前回との差は家の様子と合わせないと読み取れないことが多く、「いつから」が分かるだけで話が変わります。家での役目は、細かく見分けることではなく、いつから変わったのかという日付を持っておくことだと考えてください。
- 触ると嫌がる子で、全身を通せません。どこから手をつけますか。
- 嫌がる場所を飛ばして、通せる場所だけで並びを作ってください。背中と肩の2か所でも、同じ順で触れば比較はできます。触れない場所が増えていないかどうか自体が、記録のひとつになります。先月は触れたのに今月は嫌がる、という変化が出た場所は、その日付をメモしておいてください。無理に押さえて通すと、次の日に触れる場所がさらに減ります。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
