C14トリマー/獣医師視点
サロンで最初に触る場所が決まっている理由
トリミングの現場では、テーブルに乗せる前に、床でその子の肩に手のひらを5秒置きます。いきなり抱き上げることも、頭をなでることもしません。肩から背中、胸、前足の付け根と進んで、顔と足先はいちばん最後に回ります。この触る順番は、店ごとの流儀ではなく、どこも似た並びに落ち着きます。選ばれている場所には、共通する3つの条件があります。その子から手が見えていること、骨の上で押しても痛みが出にくいこと、そして逃げる向きをふさがないこと。家での毎日のケアにも、この並びはそのまま移せます。
肩に手のひらを5秒置くところから始まる|サロンでトリミングの触る順番が決まっていった背景
来店した子を迎えるとき、現場がまずやるのは、床にしゃがんで肩に手のひらを置くことです。声をかけながら5秒ほど置いて、そのまま背中へ手を滑らせる。抱き上げるのはそのあとです。トリミングで触る順番がこの形に決まっていった背景には、押さえ込まずに全身を通しきるという目的があります。作業の時間は決まっていますから、途中で受け入れてもらえなくなると、そこから先が全部やり直しになります。
頭からなでるほうが自然に見えますが、現場ではあまりやりません。真上から来る手は、その子から見ると顔の上で視界が切れます。肩なら、多くの子が首をひねらずに手を目で追えます。最初の一手で大事なのは優しさの度合いではなく、手が見えているかどうかです。見えている手に触られた経験が積み上がると、次に同じ場所へ手が来たときに、体が先に構えなくなります。
| 順 | 触る場所 | その場所が選ばれている条件 |
|---|---|---|
| 1 | 肩から肩甲骨の上 | 手が視界に入る/骨の上で押しても痛みが出にくい/体の横なので逃げ道が残る |
| 2 | 背中から腰 | 1の手の続きとして届く/毛の流れが読みやすい |
| 3 | 胸から前足の付け根 | 正面だが、下から入るので視界が切れない |
| 4 | わきの下と内もも | 皮膚が薄く、力を抜いた状態でないと触れない |
| 5 | 後ろ足からひざの裏 | 後ろへ回る前に、前で手の重さを覚えてもらう |
| 6 | しっぽの付け根 | 見えない位置なので、体に触れた手の続きとして入る |
| 7 | 足先と肉球の間 | 逃げる手段そのもの。ここを先に押さえると全部が止まる |
| 8 | 顔まわりと耳 | 視界の外から手が来る。最後に回してよい場所 |
この並びは、どこを丁寧に扱うかという優先順位ではありません。受け入れてもらいやすい場所から順に、体の中心から外側へ向かっているだけです。1から3までが終わった時点で、その子は手の重さと動く速さを覚えています。4以降で皮膚の薄い場所に入っても、同じ手だと分かっているぶん、体が固まりにくくなります。トリミングで触る順番が現場で共有されているのは、この積み上がりを飛ばすと戻すのに時間がかかるからです。
見える・押しても痛くない・逃げ道をふさがない|トリミングで触る順番が決まっている理由
最初に選ばれる場所は、3つの条件を同時に満たしています。ひとつでも欠けると、その場所は順番の後ろへ下がります。理由を条件の側から並べると、家の中で手を出す場所を自分で決められるようになります。
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その子から手が見えていること
視界の中で動いた手は、触れる前に予告になります。真上や後ろから来る手は、触れた瞬間が最初の情報になるので、体が先に反応します。肩から入るのは、ほとんどの体勢で目の端に手が残るためです。
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骨の上で、押しても痛みが出にくいこと
肩甲骨の上、背中、腰の骨に沿った線は、手のひら全体で体重を預けても沈み込みません。わきの下や内ももは皮膚が薄く、同じ力で触ると押された感覚のほうが大きく残ります。だから順番の後ろに置きます。
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逃げる向きをふさがないこと
体の横から入る手は、前にも後ろにも空間を残します。正面から抱えるように入ると、その子から見て出口がなくなります。足先を先に握るのも同じで、立って動くための道具を最初に押さえることになります。
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音と気配が急に変わらないこと
耳のまわりは、手が近づくだけで聞こえ方が変わります。顔まわりと耳が最後になるのは、作業として難しいからではなく、他の場所で同じ手を覚えたあとのほうが受け入れられるからです。
この4つを裏返すと、順番を崩したときに何が起きるかも見えてきます。足先から入った日は、そのあと肩に手を置いても、前の感触が残っていて体が固いままです。崩れた順番は、その日のうちには戻りません。現場で「今日はここまで」と切り上げる判断が出るのは、残りを押し切ると、次の来店の1手目が難しくなるからです。トリミングの触る順番が守られている理由は、その日の作業より先の回まで見ているところにあります。
猫の場合は、3つめの条件の重みがさらに大きくなります。高さのある場所に乗っている猫は、逃げる向きが上か横に限られます。下から手を伸ばすと、その1本の道もふさがることになります。同じ高さの横から、肩に手を置くところまでで一度終わる日があってかまいません。順番は、1回で全部を通しきるための並びではなく、どこで止めても次につながる並びです。
家の5分に、同じ並びをそのまま移す|トリミングの触る順番の考え方
家で使うときの考え方は単純で、始まりと終わりだけを固定します。肩から始めて、顔で終わる。途中は省いてもかまいません。肩、背中、胸、足先、顔の5か所だけでも、並びが同じなら同じ働きをします。毎日ばらばらの場所から手を出していると、その子は次にどこへ来るかを予測できず、毎回ゼロから身構えることになります。
この並びを毎日回すには、手を出すきっかけが要ります。犬も猫も、体から出る脂で毎日少しずつ汚れていきます。外へ出る日は外の汚れも足されますし、昨日きれいにしても今日また汚れる。それでも、シャンプーは毎日できませんし、トリミングに毎日通うこともできません。この毎日の側を成り立たせるためにあるのが mofuwa グルーミングスプレーです。吹きかけてブラシか手のひらを通すだけなので、5か所の並びを回しても5分で終わります。
アルカリ電解水と油が乳化する仕組みなので、汚れのもとになっている余分な脂は落ち、地肌に残っていてほしい皮脂はそのままです(deck p16)。舐めても差し支えのない基準でつくられていますから、口のまわりや足先でも、量を加減して手を止める必要がありません。順番の最後に回る顔まわりは、手が止まると気配で伝わる場所です。同じ速さで通しきれるかどうかが、翌日の1手目に返ってきます。
湯を使うこと自体が負担になる子ほど、この毎日の並びで差が出ます。シニアの犬や猫は、洗う行為そのもので体力を使います。グルーミングスプレーとブラシで回せる日をつくっておくと、洗う日を体調のいい日に寄せられます。できない子として扱うのではなく、湯を使わないほうがいい時期があると考えてください。触る順番が決まっていれば、その日の調子に合わせて途中で止めても、翌日は同じ場所から再開できます。
先月までは触れていた場所に、今月は手を出すと体をひねる/押していないのに手を引く/触ろうとすると同じ側だけ耳が伏せる/順番の途中で止まる場所が、3週続けて同じ。並びを固定していると、こうした変化は場所の名前つきで残ります。いつから、どこで止まるようになったかを書き出して、動物病院で診てもらってください。飼い主への説明として現場が渡すときも、状態に名前はつけず、「痛がっています」ではなく「先週は触れた左の後ろ足で、今日は3回とも止まりました」という形にします。
3週間、同じ場所から手を出したあと|トリミングの触る順番で積み上がる経験
同じ並びを3週間続けた家では、肩に手を置いた時点でその子の体の力が抜けます。覚えているのは手の優しさではなく、このあとどこへ手が来るかという見通しのほうです。見通しがあると、途中で止めても不安が残りません。経験として積み上がるのは、通しきった回数ではなく、同じ場所から始めた回数です。
今日決めるのは、最初に手を置く場所ひとつだけです。肩でも、背中の真ん中でもかまいません。明日からその1か所を変えずにいれば、触る順番は勝手に後ろへつながっていきます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
