C14トリマー/獣医師視点

プロが毛玉を「切らない」理由

公開日 2021年6月6日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床の上で、体の力を抜いて横になっている白っぽい犬
毛玉を切らないと決められるかどうかは、触り始めた最初の10秒で分かれます。写真:3194556/Pixabay

毛玉にはさみを入れる前に、現場ではまず、毛玉の根元と地肌のあいだに指の腹が1枚入るかどうかを確かめます。ここで指が入る毛玉は、切らないで済む側にあります。入らない毛玉は皮膚ごと持ち上がっていて、引っぱっても動きません。プロが毛玉を切らないのは、手先が器用だからではなく、切った断面が次の毛玉の芯になることを何度も見てきたからです。切らない判断は毛を残すために置かれているのではなく、2週間後の同じ場所を軽くするために置かれています。この記事では、切らないで済む毛玉と、そうでない毛玉を、手ごたえと戻り方で分けます。

根元に指が1枚入るか|毛玉のチェックで最初に見る場所

毛玉のチェックを「大きさ」から始めると、判断はほぼ切る側に寄ります。大きい毛玉は、見た目のとおり手強く見えるからです。現場が見るのは大きさではありません。毛玉の根元、つまり地肌に近いほうに、指の腹が1枚ぶん入る空間が残っているかどうかです。ここが空いていれば、毛玉はまだ被毛の途中でからまっているだけで、地肌の側には固定されていません。切らないで済む毛玉は、ほぼ例外なくこの状態です。

  1. 1. 毛玉に触れる前に、まわりの毛を寝かせる

    毛玉そのものを先に触ると、その子が身構えて皮膚が緊張します。まわりの被毛を手のひらで2〜3回、毛の向きにそって寝かせてから始めます。ここで嫌がる場所があれば、毛玉より先にそちらを覚えておきます。

  2. 2. 根元と地肌のあいだに、指の腹を差し入れる

    爪ではなく指の腹です。1枚ぶん入れば、毛玉と地肌のあいだに空間があります。入らないときは、毛玉が地肌の側までつながっているか、皮膚ごと持ち上がっています。

  3. 3. 毛玉を軽く横へ動かす

    指で1センチほど横へずらします。毛玉だけが動けば、まだ被毛の中で浮いています。地肌ごとついてくるなら、そこから先は手の力では動きません。

  4. 4. 毛先の側を1本だけ引いてみる

    毛玉の外側から毛を1本つまんで、毛先の方向へゆっくり引きます。すっと抜ける毛が混じっていれば、その毛玉は外側からほどける側です。まったく動かないなら、芯ができています。

この4つを順番にやると、10秒ほどで終わります。切らないで済むかどうかの判断は、この10秒でほとんど決まります。逆に、この10秒を飛ばしてはさみを持つと、毛玉の大きさに引きずられて切る方向へ進みます。毛玉のチェックは、道具を持つ前にやる作業です。

Point換毛期は、同じ毛玉でも手ごたえが変わります

抜けた毛が被毛の中に留まる時期は、毛玉の中身が「からまった毛」ではなく「留まっている抜け毛」になります。この時期の毛玉は大きく見えるわりに、根元の空間が残っていることが多いため、切らないで済む割合が上がります。換毛期に入ったら、大きさで驚かずに根元から確かめてください。

切らないで済むあいだに出る、犬の毛玉のサイン

毛玉のサインは、毛玉ができてから出るのではなく、できる数日前から出ています。犬の毛玉のサインで現場がいちばん当てにしているのは、ブラシが止まる位置です。全体を梳かしているときに、同じ場所で毎回わずかに引っかかる。その引っかかりは、まだ毛玉と呼べない密度の差です。ここで手を入れておくと、毛玉になる前に終わります。

触ったときの手ごたえと、切らないで済むかどうか
手ごたえ何が起きているか切らないで済むか
毛先の側だけ密で、根元はふわりとしている被毛の外側でからまり始めた段階済む。毛先から少しずつ分ける
横に1センチ動く地肌とのあいだに空間が残っている済む。うるおいを足して外側からほどく
指で押すと形が変わる中身がまだ抜け毛で、固まっていない済む。換毛期に多い形
横に動かず、地肌ごとついてくる皮膚の側まで巻き込んでいる手ではほどけない。無理に引かない
中心に硬い芯がある以前に切った断面が核になっているほどきにくい。s3で扱う
触ると体をよじる、声が出る皮膚が引かれて痛みが出ているその日は触らない

表の上から3つが、切らないで済む毛玉のサインです。下の3つは腕でどうにかなるものではなく、その日は手を止める合図です。犬の毛玉のサインを大きさで覚えていると、この上下がひっくり返ります。小さくても地肌ごと動く毛玉はほどけませんし、手のひら大でも横に動く毛玉は切らないで終わります。

毛玉のサインを毎日ひとつ拾うつもりでブラシを入れると、切らない判断は自然に通るようになります。切らないで済ませるための作業は、毛玉ができたあとではなく、引っかかりの段階にあります。

同じ場所に毛玉が続くのは、前に切った断面が芯になっているから

毛玉が同じ場所で続くとき、いちばん多い原因は、前にそこを切ったことです。はさみを入れると、その毛は途中で終わります。伸びかけの短い毛が束になって残り、まわりの長い毛の中で立ち上がります。立った短い毛は、動くたびに周囲の毛を拾います。こうして、切った場所が次の毛玉の芯になります。毛玉が続くのは、その子の毛質が悪いからではありません。

切らずにほどいた毛玉と、はさみで切った毛玉の、2週間後 同じ場所の毛玉でも、切らないで終えたか切ったかで、次に触るときの状態が変わります。違いが出るのは毛の長さではなく、断面が角として残るかどうかです。 切らずにほどいた場合 毛先がそろったまま残る 拾う角ができない 根元の空間が保たれる 2週間後も同じ密度 はさみで切った場合 短い毛の束が立つ 周りの毛を拾い続ける 根元が詰まっていく 2週間後に同じ場所で太る
毛玉が続くかどうかを決めているのは、前回どちらで終えたかです。

毛玉が続く原因は、切った断面だけではありません。もうひとつ多いのが、乾かし終わりの水分です。地肌の側に湿りが残ったまま被毛をかぶせると、毛どうしがくっついた状態で寝てしまい、翌日そこから密度が上がります。毛玉が続く場所と、乾かすときに最後に回している場所は、たいてい一致します。

毛玉が続くときに、さかのぼって確かめる3つ
確かめるもの見かた続いているときの見え方
前回そこを切ったかその場所の毛の長さが周りとそろっているか1〜2センチだけ短い毛が混じっている
乾かし終わりの順番最後に乾かしている場所はどこか毛玉の場所と最後の場所が同じ
静電気の起きる時間帯梳かし始めに毛が浮くか浮いた毛が別の毛に巻きつく
その子の寝る向き床に接している側はどちらか片側だけ毛玉が続く

この4つのうち、飼い主の側で変えられるのは後ろの3つです。前回切った断面は、伸びてそろうまで待つしかありません。だからこそ、いま目の前の毛玉を切らないことが、次の2週間を軽くします。切らないという判断は、その場の毛玉のためではなく、次の毛玉を作らないために置かれています。毛玉が続く流れを止める入口は、ここにしかありません。

毎日の1本で、毛玉を切らないで済む側に戻す

毎日きれいにしてあげたい、という気持ちと、毎日シャンプーはできない、という現実のあいだに、毛玉はたまります。犬も猫も体から脂を出しますし、散歩に行けば外の細かい汚れも毛先につきます。昨日整えても今日また密度は戻ります。サロンに毎日通うわけにもいきません。この毎日を埋める1本として、mofuwa グルーミングスプレーがあります。

ブラッシングの前に吹きかけてから梳かすと、毛の表面がうるおって滑りが戻り、静電気の起きにくい状態で毛先から根元へ向かって梳かせます。静電気で浮いた毛は、隣の毛に巻きついて密度を上げます。そこが止まるだけで、毛玉のできはじめる速さは変わります。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、毛玉の手入れと日々のブラッシングを別の道具に分ける必要がありません。

落ちるほうの仕組みも、切らない判断と相性があります。アルカリ電解水が毛先の油となじんで乳化するので、汚れのもとになっていた余分な脂が浮き、地肌にとって要る皮脂は残ります。毛先がべたついたまま乾くと、そこが翌日のからまりの起点になります。うるおいと滑りが戻っている毛は、そもそも密度が上がりにくくなります。

量を気にしなくてよいのも、毎日続けるうえでは大きい点です。舐めても問題のない基準でつくられているので、耳の後ろでも内股でも、毛玉ができやすい場所にたっぷりかけられます。お風呂そのものが負担になるシニアの子や、水を嫌がる猫にも、この1本なら毎日の手当てとして置けます。毛玉を切らないで済ませるために必要なのは、強い道具ではなく、毎日そこに手が届くことです。

Caution毛玉の話ではなくなっている、4つの残り方

同じ場所の毛玉が、ほどいても2週間以内に3回戻る/毛玉の下の地肌が赤い、あるいは色が濃く変わってきた/毛玉に触れていないのに、その場所をその子が舐め続ける/毛玉ではない場所の毛が、まとめて抜ける。この4つは、毛玉の手入れの範囲から外れます。毛玉の受診を考えるのは、大きさが増えたときではなく、この残り方が出たときです。ほどけなかった日付と、地肌の色が変わった日を書き出して、動物病院で診察の枠を取ってください。毛玉の受診では、いつから同じ場所で続いているかが、その場で見るよりも手がかりになります。

切らないと決めた日から、2週間後に残るもの

切らないで終えた毛玉は、2週間後に同じ場所を触ったとき、前より軽くなっています。毛先がそろったまま残るので、周りの毛を拾う角ができません。反対に、切って終えた場所は2週間後に少し太っています。毎回の判断の差は小さくても、半年ぶん重ねると被毛の状態は別のものになります。

切らない判断を続けたときに、手元に残るもの
残るもの中身次に使うところ
根元の空間地肌と被毛のあいだに指が入る状態次の毛玉も外側からほどける
そろった毛先途中で終わっている毛がない拾う角ができない
続いた場所の記録どこに何回できたか乾かす順番を組み替える材料になる
毎日の1本ブラッシングの前に使う習慣密度が上がる前に手が入る

切らないという判断は、特別な腕ではなく、順番の問題です。触る前にまわりの毛を寝かせ、根元に指を入れ、横へ動かし、毛先を1本引く。この順番を守ると、切らないで済む毛玉かどうかが先に分かります。分かってから道具を選ぶので、はさみを持つ回数そのものが減ります。

今日できるのは、毛玉を探すことではありません。ブラシが毎回わずかに止まる場所を1か所だけ覚えて、そこに明日も手を入れることです。切らないで済む毛玉は、毛玉になる前の引っかかりの段階でしか作れません。毎日の1本と、その1か所。この2つが続いていれば、次に毛玉に触れる日は軽くなります。

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mofuwa グルーミングスプレー

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300ml / 2,970円(税込)

特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。

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よくある質問

どうしてもほどけない毛玉は、最終的に切るしかないのでしょうか。
地肌ごと動く毛玉を家で切るのはすすめられません。はさみの刃先と皮膚のあいだに空間がないため、毛と一緒に皮膚を持ち上げてしまいます。家でできるのは、毛玉のまわりの毛を寝かせて、その子が引っかけないようにしておくところまでです。ほどけない毛玉は、サロンでバリカンを入れて根元から外すのがふつうの手順で、これは切るのとは別の作業です。バリカンなら断面が地肌の高さでそろうので、短い毛が立ち上がって次の芯になる形になりません。切らないという判断は、家では最後まで持っていて構いません。
毛玉をほどくときに、ブラシとコームのどちらを先に使いますか。
毛玉そのものにはコームの端を使い、周りの被毛にはブラシを使います。ブラシは面で当たるので、毛玉の外側を撫でるだけで中心には届きません。コームは歯が1本ずつ立っているため、毛玉の毛先の側に1本だけ差し込んで、外側から少しずつ分けられます。順番は、まず周りをブラシで整え、毛の流れを作ってから、コームの端で毛先の側だけをほぐす。中心から攻めると、根元に力がかかって痛みが出ます。毛玉は外側から減らすものだと覚えておくと、切らないで済む範囲が広がります。
換毛期は毎年同じ場所に毛玉ができます。毛質のせいでしょうか。
同じ場所に出るのは、毛質より生活の型が理由になっていることのほうが多いです。寝るときに床についている側、ハーネスが当たる位置、その子が自分でこすりつける場所。この3つはほとんど変わらないので、毎年同じところに密度が集まります。換毛期に抜けた毛がそこに留まって、毛玉の形になります。毛質を変えることはできませんが、寝床の面の素材を変える、ハーネスの位置を1センチずらす、抜け毛の多い2週間だけブラシの回数を1日1回増やす、といった変更は今年からできます。来年の同じ時期に、同じ場所を触って比べてみてください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。