C12Q&A・豆知識

アンダーコートとは?保温を担う内側の毛

公開日 2021年3月5日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色の敷き物の上に落ち着いて伏せているクリーム色の犬
ブラシに残る綿のような毛。あれが、体のいちばん内側で空気を抱えていた側です。写真:Ketut Subiyanto/Pexels

ブラシを通したあとに綿のように残る、細くて短いあの毛が、アンダーコートと呼ばれている毛です。アンダーコートとは、体の内側に生える、保温を担う細く柔らかい毛のことです。外側にある太い毛の下に、もう一層あるという構造になっています。ここまでは辞書に載っている説明で、たいていの記事はここで終わります。この記事で書きたいのは、その先です。温めているのは、毛そのものではありません。毛と毛のあいだに止まっている空気のほうです。そう読むと、アンダーコートとは「毛」というより「空気を抱える層」だということになります。層だと思って見ると、換毛の時期にやっている作業の意味も変わります。詰まれば保温も通気も同時に落ちるので、やることは取り除くことではなく、通すこと。犬と猫の被毛を、その順番で見直す読みものです。

アンダーコートとは何を指す言葉か|外側の毛の下にある、もう一層

まず場所から書きます。アンダーコートとは、皮膚のすぐ上に生えている、細く柔らかい毛の層のことです。その外側に、太くてまっすぐな毛がもう一層あります。人の目に見えていて、手で触れているのは、たいてい外側のほうです。アンダーコートは、その下に隠れています。

この二層のつくりは、すべての子にあるわけではありません。内側の毛がほとんどない子もいますし、季節によって量が大きく変わる子もいます。「うちの子にアンダーコートはあるのか」は、ブラシに何が残るかで分かります。太くてまっすぐな毛だけが取れるなら、内側の層は薄い。綿のようにふわふわした短い毛が固まって取れるなら、その層があります。

外側の毛と、アンダーコートの違い 同じ体に生えている二種類の毛を並べたものです。太さも、面している場所も、抜け方も違います。触っているとき手が触れているのは、たいてい左側です。 同じ1匹の体の、上下に重なった二層の話です 外側の毛 太くて、かたく、まっすぐ 水と汚れをはじく側 体の外に面している 抜ける量は年間で平らか 手が触れているのはこちら アンダーコート 細くて、やわらかく、縮れる 空気を抱えて保温する側 皮膚に面している 時期によってまとめて抜ける ブラシに残る綿がこちら 外側だけを整えても、内側の層の状態は変わりません
ブラシに残る綿のような毛は、右側の層から来ています。

言葉の使われ方も整理しておきます。アンダーコートとは、毛の種類の名前です。「下毛」と呼ばれることもあります。外側は上毛、オーバーコートなどと呼ばれます。呼び方は文献や場面で揺れますが、指しているものは同じです。この記事では、皮膚に近い側の細い毛をアンダーコートと書きます。

二層の毛の、役割の分かれ方
外側の毛アンダーコート
太さ太い細い
手ざわりかたい・張りがあるやわらかい・綿のよう
主な役目とされること水と汚れをはじく空気を抱えて温度を保つ
生えている場所外側皮膚のすぐ上
抜け方少しずつ時期によってまとまって
ブラシへの残り方1本ずつかたまりで

ここまでが、辞書に載っている範囲の説明です。この説明だけを覚えても、明日のケアは何も変わりません。変わるのは、次の節で書く「何が温めているのか」を知ったときです。アンダーコートとは何かを、役割の側から読み直します。

保温を担うのは毛そのものではない、という理由

毛は、それ自体がよく温まる素材ではありません。温度を保っているのは、毛と毛のあいだにできた、動かない空気のほうだとされています。細い毛が密に立ち、そのすき間に空気が止まる。止まった空気は熱を伝えにくいので、体の熱が逃げにくくなります。アンダーコートとは、この「動かない空気」を作るための構造だ、という読み方ができます。

細くて縮れている理由も、ここから説明がつきます。まっすぐな毛は、ぴったり寄り添ってしまうので、あいだに空気が入りません。縮れた細い毛は、たがいに寄りかかりながらすき間を作ります。すき間の数だけ、空気を抱える場所ができる。アンダーコートが外側の毛と違う形をしているのには、そういう理由があるわけです。

最後の項目が、この記事の核です。アンダーコートは、多ければ多いほどいいというものではありません。抱えている空気が入れ替われる状態で、はじめて層として働きます。毛の量そのものではなく、毛が作っているすき間の質のほうが効いている。これがアンダーコートとは何かを、役割から読んだときの答えになります。

犬でも猫でも、この理屈は同じです。ただ、猫は自分で毛づくろいをするぶん、内側の層に手が入る量が変わります。自分で届く場所と、届かない場所があるからです。背中のまんなかや尾のつけ根は、年齢が上がるほど届きにくくなります。同じ被毛でも、場所によって層の詰まり方に差が出るのは、そのためです。

Note「二層だから暖かい」で止めない

アンダーコートの説明は、たいてい「二層あるから暖かい」で終わります。この言い方だと、層があること自体が保温だと読めてしまいます。実際には、層のなかの空気が止まっていて、かつ入れ替われる状態にあることが条件です。条件のほうを覚えておくと、毎日のケアで何をしているのかが自分で説明できるようになります。

詰まったときの変化は、冬より先に夏へ出ることがある

空気の層として読むと、詰まったときに何が起きるかも見えてきます。抜けた毛がその場に残ると、すき間が埋まり、空気が動かなくなります。動かない空気は熱を伝えにくいのですが、同時に、湿気も熱もその場に留めます。保温という役目だけが残って、逃がすほうの役目が落ちる、という状態です。

抜けた毛が層に残ったあと、何が変わるか 外側の毛の下にアンダーコートがあり、その下が皮膚です。抜けた毛が層のなかに残ると、空気の出入りが止まり、湿気がその場に残ります。 外の毛 はじく 内の層 空気 皮膚 体温 すき間へ 熱と湿気 抜けた毛が残ったまま 空気が動かなくなる 湿気がその場に残る 毛を通したあと 空気の層が作り直される 湿気が外へ抜けていく
取り除くことが目的ではなく、空気が入れ替わる状態に戻すことが目的です。

だから、詰まりの変化は寒い時期より先に、暑い時期や湿度の高い時期に出ることがあります。冬の詰まりは「暖かい」で済んでしまい、気づかれません。気づくのは、湿度が上がって、同じ層が熱と湿気を抱えたままになったときです。夏に急に気になり始めた、という経験のもとをたどると、詰まり自体は前の季節から続いていた、ということがよくあります。

アンダーコートの状態と、家で気づける変化
層の状態手で触れたときの感じ見て分かること起きやすい時期
すき間が保たれている指が根元まですっと入る毛を分けると地肌が見える通年
抜け毛がたまり始めた指が途中で止まる毛を分けても地肌まで届かない毛が入れ替わる時期
層が固まってきた面として押し返してくる分け目が作れない湿度の高い時期
濡れたまま置かれた冷たく、重い乾くのに時間がかかる洗ったあと・雨の日
層が薄い場所がある外側の毛だけが指に当たる地肌がすぐ見える年齢が上がったあと

表の下から2行目は、ケアの話というより順番の話です。濡れた層は、乾いた層とはまったく別の状態になります。すき間が水で埋まっているので、空気の層としては働いていません。洗ったあとに根元まで乾かす、という手順が繰り返し語られるのは、この層を空気の側へ戻すためです。

いちばん下の行も書いておきます。年齢が上がると、内側の層が薄くなる場所が出てきます。薄くなること自体は、必ずしも異常とは限りません。ただし、左右のどちらかだけ薄い、同じ場所をなめ続けている、地肌の色が変わっている、といった変化がそろうときは、被毛の話ではなくなっている可能性があります。判断は動物病院にご相談ください。

取るのではなく、通す|アンダーコートとどう付き合うかの考え方

ここまでを1文にすると、こうなります。アンダーコートとは空気を抱える層であり、目的はその空気を入れ替えられる状態に保つことです。この一文に立つと、毎日のケアでやることが変わります。取れた毛の量を成果にするのをやめて、根元まで指が通るかどうかを成果にします。

  1. まず、指で確かめる

    ブラシを持つ前に、毛の流れに逆らって指を差し込みます。根元まですっと入る場所と、途中で止まる場所を分けます。止まる場所だけが、この日の作業対象です。全身を一律にやる必要はありません。

  2. 止まった場所を、少しずつ割く

    力で引き抜こうとしないでください。層が固まっているところは、外側から少しずつ範囲を狭めます。一度に取ろうとするほど、皮膚を引っぱることになります。1か所につき数分で切り上げ、翌日に続きをやるほうが結果がそろいます。

  3. 取れた量ではなく、指の通りで判断する

    抜けた毛が山になっても、根元まで指が通らなければ層は詰まったままです。逆に、ほとんど取れなくても指が通るなら、その場所は終わりです。アンダーコートの手入れは、量ではなく通り道を作る作業だという考え方に切り替えます。

  4. 湿ったまま終わらせない

    作業のあとに毛が湿っているなら、そこは空気の層に戻っていません。乾いた面で押さえ、根元の湿りが残らない状態にしてから終わります。ここを飛ばすと、通したはずの場所がまた閉じます。

  5. 同じ場所を、次の日にもう一度見る

    1回で終わる場所と、翌日また詰まる場所が分かれます。翌日また詰まる場所は、抜け毛ではなく別の理由で寝ている可能性があります。その場所の記録を残しておくと、相談するときの材料になります。

mofuwaのグルーミングスプレーは、この「指が通るか」を成果にする手入れのためにつくられたケアスプレーです。中身は高機能性電解還元水で、無香料、界面活性剤は使っていません。布に含ませてから、毛の流れに沿って通します。層の内側まで押し込む必要はありません。外側の毛の滑りが変わると、ブラシが途中で止まりにくくなり、そのぶん指を入れたときに根元まで届く場所が増えます。毛づくろいで口に入る量まで含めて考えられている中身なので、換毛の時期に毎日通しても、かける量を減らしながら使う必要はありません。1か所あたり数分で切り上げる、という上の手順と、かかる手間の大きさがそろっている1本です。

ここでも線は同じです。層に通り道を作るのは指とブラシ、外側の毛の滑りを変えるのがグルーミングスプレーで、成果の測り方はどちらも同じ「指の通り」です。この2つを同じ日にそろえておくと、翌日に同じ場所を見たときの判断が早くなります。被毛のケアが続かなくなるのは、たいてい1回あたりの作業が長すぎるときで、換毛の時期に毎日やれる長さへ収めることのほうが、1日に取れた量より結果に効きます。

Caution手入れの前に、相談したほうがいい変化

地肌の赤みが続いている、かさぶたやふけが増えた、左右のどちらかだけ毛が薄い、同じ場所をなめ続けている、触ると嫌がるようになった、においが強くなった。こうした変化があるときは、ブラシを入れる前に動物病院にご相談ください。詰まりだと思って手を入れると、皮膚のほうへ負担がかかることがあります。いつから、どの場所で、左右差があるかどうかの3つをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらいやすくなります。

最後に、この言葉を知ったことで何が変わるかを書いておきます。アンダーコートとは何かを、毛の名前としてではなく、空気の層として覚えておくこと。それだけで、換毛の時期に「たくさん取れた」を目標にしなくなります。冬に暖かそうに見える層が、湿度の高い時期には別の顔をすることも分かります。毎日の手入れの目的が、量から通り道へ移る、というのがこの言葉の使いどころです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。