C05犬種・猫種別ケア

アラスカンマラミュートはなぜ抜け毛が起きやすいのか。ダブルコートから考える

公開日 2021年4月27日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、厚い被毛の大型犬が静かに伏せている
厚い下毛は、一度に全部が緩むわけではありません。その日に取れるのは、浮いてきた層のぶんだけです。写真:Павел Гавриков/Pexels

アラスカンマラミュートのブラッシングを1時間かけて終えた翌日、同じ場所からまた同じだけ毛が出てくる。手を抜いたわけでも、道具が合っていないわけでもありません。抜け毛が終わらないように感じるのは、下毛が一枚ではなく、層になって重なっているからです。表面の層を取っても、その下にまだ層が残っています。昨日「取り終わった」と感じたのは、1枚目を取り切ったという意味でした。この記事では、なぜ層になるのかを橇犬としての体からたどったうえで、今日は何層目まで届いたのかを確かめる手順と、毎日のやり方を書きます。

荷を運ぶために作られた体|アラスカンマラミュートの抜け毛が層になる理由

アラスカンマラミュートは、アラスカの内陸で人と暮らし、重い荷を長い距離運んできた橇犬です。同じ橇犬でも、速さで走る犬たちとは役割が違いました。速く走るためではなく、重いものを引き続けるために作られた体です。そのぶん骨格が大きく、寒さを通さない被毛を持っています。

アラスカンマラミュートの被毛は二層です。外側の上毛は粗くまっすぐで、雪や水を弾きます。その内側に、油分を含んだ密な下毛があります。手を差し込むと、指先だけでなく手のひらがまるごと沈む。この「沈む厚さ」が、抜け毛の話のほとんどを説明します。厚いということは、重なっているということだからです。

下毛の1本1本は皮膚から生えていますが、長さも、緩む時期もそろっていません。先に緩むのは、表面に近い側の毛です。その下の毛は、まだ皮膚のほうに留まっています。ブラシが持ち上げられるのは、その日に浮いてきた分だけ。まだ緩んでいない毛を無理に引き出そうとすれば、地肌のほうを引っぱることになります。

上毛・下毛の上層・下毛の下層 アラスカンマラミュートの被毛は、上毛の内側に厚い下毛があります。下毛は一度に全部が緩むのではなく、表面に近い側から順に浮いてきます。その日に取れるのは、浮いている層までです。 ブラシが届く深さは、その日に何層が緩んでいるかで決まります 上毛 雪と水を弾く外側 最初に手が触れる 撫でるだけで取れる 下毛の上層 先に緩んで浮く コームが通る 今日の1層目 下毛の下層 まだ皮膚側に残る 抵抗が出る 明日以降の層 緩む境目 今日の底 抵抗が出たところが、その日の底です。押し込まずに止めます
取り終わったと感じた日でも、取れているのは今日浮いた層までです。

この見方に切り替えると、いくつかの「よくある困りごと」の説明がつきます。

Note「終わった」の意味を決め直す

毛が出なくなるまでやる、を目標にすると終わりません。緩んだ層を取り切っても、翌日には次の層が浮くからです。その日の終わりは「毛が出なくなったとき」ではなく「同じ場所を2回続けて通して、取れる量が変わらなくなったとき」に決めてください。これなら、今日の底に届いたかどうかが自分で判定できます。

今日は何層目まで届いたか|アラスカンマラミュートの抜け毛を取る手順

手順の目的は、全部取ることではありません。今日どこまで届いたかを、自分で分かるようにすることです。届いた深さが分かれば、明日の始め方が決まります。分からないままだと、毎日ゼロから同じ場所をやり直すことになります。

  1. 毛を分けて、地肌の線を出してから始める

    厚い下毛は、上からブラシを当てても表面で滑ります。片手で毛を上へ寄せて押さえ、地肌が細い線になって見える状態をつくってください。この線が見えていないうちは、まだ被毛の外側にいます。順番としては、いちばん最初に来る動作です。

  2. 手で撫でて、浮いている毛を先に落とす

    道具を持つ前に、手のひらで毛の流れに沿って2〜3回撫でます。もう外へ出かかっている毛が、ここで落ちます。この分を先に減らしておくと、コームが下の層に当たったときの手ごたえがはっきりします。ここまでが上毛と、下毛の表面の話です。

  3. コームを寝かせて、抵抗なく通る深さまで入れる

    出した線に沿って、コームを地肌と平行に近い角度で入れます。抵抗なく通るあいだは、緩んでいる層です。引っかかりを感じたら、そこで止めてください。そこが今日の底です。押し込んでも、まだ緩んでいない毛は出てきません。出てくるのは、痛みだけです。

  4. 同じ場所を2回通して、量が変わるかを見る

    1回目より2回目のほうが明らかに少なければ、その層はまだ残っています。もう一度通します。2回続けて量が変わらなくなったら、その場所は今日の分が終わりです。時計ではなく、この判定で切り上げてください。

  5. 終わった場所と、届いた深さをメモする

    「右の腰・2層目まで」「首まわり・1層目で抵抗」。この程度で足ります。翌日は、抵抗が出た場所から始めます。層を数えるというのは、毛の枚数を数えることではなく、昨日の続きから始められるようにすることです。

換毛期に入ると、この底が日ごとに深くなります。昨日は1層目で止まったのに、今日は同じ場所が2層目まですっと通る、という日が出てきます。下毛がまとまって緩んでいる合図です。この時期だけは、同じ場所に続けて手を入れる価値があります。

Caution抵抗が出たところで止める

厚い被毛は、力を入れれば入れるほど「取れている感じ」がします。けれどまだ緩んでいない下毛を引き出すというのは、生えている毛を根元から引っぱるということです。地肌が赤くなる、その場所を気にしてなめる、といったことにつながります。抵抗が出たら、その日はそこで終わりにしてください。層は逃げません。

毎日のやり方は、時間ではなく層と区画で決める

アラスカンマラミュートのように体の大きな犬の全身を1日で一巡させようとすると、1回が長くなりすぎます。長くなると、飼い主も犬も続きません。毎日のやり方は「何分やるか」ではなく「どの区画を、何層目まで」で決めてください。体を4つに分けて、順番を固定します。

区画を固定して回す、毎日の順番の例
区画見る場所その日の目安
1日目首まわりと胸上毛のあいだが厚い。線を細かく出す
2日目背中と腰面が広い。2回通して量を比べる
3日目脇と内股こすれる面。抵抗が出やすいので浅く
4日目後ろ脚としっぽ飾り毛が長い。毛先から順に
毎日指を垂直に1回全区画。止まる場所がないかだけ確かめる

順番を固定しておくと、「昨日どこをやったか」を思い出さずに済みます。思い出す作業が要らないことが、毎日続くかどうかをいちばん左右します。4日で一巡するので、換毛期でなければこの間隔で追いつきます。追いつかない時期は、一巡を2日に縮めるのではなく、1区画あたりの層を1枚増やしてください。

空気が乾く季節は、静電気で下毛が浮き上がり、コームに毛がまとわりついて動かなくなります。とかす前に、毛の表面の滑りをそろえてから始めてください。表面が湿る程度で足ります。mofuwa グルーミングスプレーはブラッシングスプレーとしても使えるので、その日の区画にひと吹きしてから手で毛を分けると、静電気の起きにくい状態でコームを入れられます。舐めても問題のない基準でつくられているため、大型犬の広い面にかける量を気にせずに済みます。表面を湿らせた日は、その日のうちに根元まで乾かしきるところまでを一続きにします。厚い下毛は、湿ったまま残ると絡みやすくなります。

抜け毛が多いからといって、洗う回数を増やさないでください。緩んだ下毛は、洗っただけでは外へ出ません。水を含んで重くなり、乾くときに絡みます。順番は、取ってから洗う、です。とはいえ、体から脂が出るのは毎日ですし、散歩に出れば外の細かいものも毎日乗ります。洗う日と洗う日のあいだを、ブラッシングのついでに埋めておくと考えてください。グルーミングスプレーを毛の表面にかけ、脇や内股のようにこすれる面を手のひらでなでてから、コームを入れます。毎日きれいにしてあげたいという気持ちを、1時間かけずに続けられる形にするための道具です。

Point道具を増やす前に、線を出す時間を増やす

アラスカンマラミュートと暮らしていると、道具を買い足したくなります。ただ、届いていない原因のほとんどは道具ではなく、地肌の線を出さないまま表面から当てていることです。同じ10分でも、線を出す時間に3分使ってから7分とかすほうが、下の層まで届きます。道具の検討は、そのあとで十分です。

層の数え方では説明がつかない抜け方

ここまでは、アラスカンマラミュートの抜け毛が、緩んだ下毛の層として出てくるという話でした。層の話で説明がつかない抜け方は、別のものとして見てください。目安になるのは、次のような出方です。

Cautionブラッシングを続けずに連絡したい出方

地肌が広く見えている、赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、左右で毛の量が明らかに違う、フケが増えた、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、ブラッシングで様子を見ようとせず、動物病院にご相談ください。厚い被毛は下が見えないぶん、変化に気づくのが遅れがちです。気づいた時点で連絡しておくと、次のブラッシングをどう続けるかまで一緒に決められます。

相談に行くときは、気づいた日、場所、左右の差、その週に何層目まで届いていたかをメモしていくと話が早くなります。写真は表面しか写りませんが、毛を分けて地肌の線を出した状態なら残せます。無理にほどいたり抜いたりせず、そのまま連れて行ってください。

アラスカンマラミュートの抜け毛は、量そのものを減らせるものではありません。寒い土地で重いものを運ぶために持っている被毛だからです。変えられるのは、緩んだ下毛が体の上に何日残るか。今日は何層目まで届いたのかを一行だけ残して、明日はその続きから始める。この毎日のやり方に切り替えると、同じ時間でも手ざわりが変わってきます。

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よくある質問

毎日ブラッシングしているのに、アラスカンマラミュートの抜け毛が減りません。
減っていないのではなく、1日に1層ずつ取れている状態だと考えてください。下毛は表面に近い側から順に緩むので、今日の層を取り切っても、翌日には次の層が浮いてきます。その日の終わりを「毛が出なくなったとき」ではなく「同じ場所を2回通して取れる量が変わらなくなったとき」に決めると、届いた深さが自分で分かるようになります。
抜け毛を早く終わらせたいのですが、力を入れて取ってもいいですか。
おすすめしません。厚い被毛は力を入れるほど取れている感じがしますが、まだ緩んでいない下毛を引き出すというのは、生えている毛を根元から引っぱるということです。コームに抵抗が出たところが、その日の底です。そこで止めて、翌日その場所から始めてください。地肌が赤い、痛がるといったときは、先に動物病院にご相談ください。
換毛期は、毎日どのくらいの時間をかければいいですか。
時間ではなく区画で決めるほうが続きます。体を4つに分けて順番を固定し、1日1区画を「2回続けて量が変わらなくなるまで」通してください。追いつかない時期は、一巡を短くするより、1区画あたりに取る層を1枚増やすほうが結果は変わります。犬が飽きる前に切り上げるのも、翌日につなげるためのやり方です。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。