C05犬種・猫種別ケア

サモエドのダブルコート|毛玉を毎日のケアで防ぐ

公開日 2021年4月20日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、白くふわふわした被毛の犬が静かに座っている
表面はいつもどおり白いままです。サモエドの毛玉は、目に見えるより先に、指のほうに当たります。写真:Pragyan Bezbaruah/Pexels

サモエドの背中に手を入れたら、地肌に届く前に指が止まった。目で見ているかぎり、そこはいつもどおり真っ白でふわふわのままです。毛玉に気づくのは、たいていこの瞬間です。写真に撮っても、指が止まった場所だけは写りません。サモエドの上毛は、体に沿って寝ているのではなく、皮膚から立ち上がるように生えています。立った毛のあいだに抜けた下毛が縦に詰まっていくので、毛玉は平たいかたまりではなく、皮膚から立ち上がった柱のような形になります。この記事では、その背景と理由をたどりながら、毎日のケアで防ぐための手の入れ方を書きます。

白い毛の中で、指だけが止まる|サモエドの毛玉が見えない理由

首のまわりを撫でていて、いつもと同じ手ざわりのまま、途中で指が進まなくなる。サモエドと暮らしている方から聞くのは、たいていこういう話です。目では、何も変わって見えません。白い被毛は光をよく返すので影ができにくく、表面のふくらみも均一に見えます。毛の乱れが、そもそも影として出ないのです。

毛が体に沿って寝ている犬なら、毛玉ができると、その部分だけ毛が引っぱられて凹みます。見た目が変わるので、写真でも分かります。サモエドの上毛は立っているので、下で何が起きていても、表面の高さがほとんど変わりません。だから「見て探す」という方法が、最初から効きません。

この4つが重なると、サモエドの毛玉は「見つける」ものではなく「当たる」ものになります。探し方は、見るのではなく、指を毛の流れに逆らって垂直に差し込むことです。地肌まですっと入れば、その場所は今日のところ大丈夫。途中で止まったら、そこに何かが詰まっています。手のひらで表面を撫でているかぎり、いつまでもふわふわのままです。

Note見えないことと、無いことは別です

手入れをしていれば毛玉ができない、という被毛ではありません。できていないのではなく、できていても表からは見えないという作りを持っています。ブラッシングを終えたあとに、指を数か所だけ垂直に入れて確かめる。この一手間があるかどうかで、次の週にかかる時間がまるごと変わります。

上毛が立って生えている背景と、縦に詰まっていく毛玉

サモエドは、シベリアの寒い土地で人と一緒に働いてきた犬です。橇を引き、群れを追い、夜は人のそばで眠っていたと伝えられています。寒さの中で体温を保つために、被毛は二層になっています。皮膚に近いところに柔らかく密な下毛があり、その外側に、太くまっすぐな上毛が生えています。

多くのダブルコートの犬は、この上毛が体に沿って寝ています。サモエドは、上毛が皮膚に対して立ち上がるように生えている子が多いという点が違います。立っているぶん、毛と毛のあいだに空気の層を厚く抱えられます。あのふくらんだ白い輪郭は、毛の量そのものというより、抱えている空気の形です。

ここが毛玉の話につながります。立った毛が並んでいるということは、そのあいだが縦の隙間になっているということです。換毛期に下毛が緩んで抜けると、その1本は横へ逃げられません。立った上毛にはさまれたまま、根元のほうへ落ちていきます。次の1本も、また次の1本も、同じところへ落ちます。

毛が寝ている被毛と、毛が立っている被毛 上毛が体に沿って寝ている被毛では、抜けた下毛は横へ滑って外へ出るか、平たく広がります。上毛が立っている被毛では、抜けた下毛が縦の隙間に落ちて、その場に積み上がります。同じダブルコートでも、毛玉の形が変わります。 抜けた下毛が、どちらへ動くか 毛が寝ている被毛 上毛が体に沿って流れる 抜けた下毛は横へ滑る 毛玉は平たく広がる 表面が凹んで見た目が変わる ブラシは流れに沿わせる 毛が立っている被毛 上毛が皮膚から立ち上がる 抜けた下毛は縦に落ちる 毛玉は柱の形で伸びる 表面は白いまま変わらない ブラシの前に縦へ開く サモエドは右側です。見た目が変わらないので、手で確かめます
上毛の向きが変わると、抜けた下毛の行き先が変わります。

だからサモエドの毛玉は、平たく広がりません。皮膚から立ち上がった、柱のような形で伸びていきます。手のひらを横に滑らせても引っかからず、指を1本、垂直に差し込んだときだけ当たります。奥に隠れているというより、根元から毛先の側へ向かって育っている、と考えるほうが実際に近い形です。

詰まりやすい場所は、体のどこでも同じではありません。上毛の長さと、こすれる回数で決まります。

同じ子でも、この5か所が同じ速さで詰まるわけではありません。どこが早いかは、寝る向き、よく通る場所、首輪やハーネスの当たり方で変わります。1年つきあうと、その子の順番が見えてきます。順番が分かれば、毎日全身を触らなくてよくなります。

縦に開いてから横へ動かす|サモエドの毎日のブラッシング

ブラシを表面で往復させると、手ごたえはあります。毛もごっそり取れます。それでも数日後にまた指が止まるのは、立った上毛の先だけをなでていたからです。取れていたのは、もう外へ出かかっていた毛でした。縦の隙間に落ちて止まっている下毛には、ブラシの先が届いていません。

順番を変えます。先に縦へ開いて、それから横へ動かす。時間を増やす必要はありません。同じ10分でも、開いてから動かすほうが根元まで届きます。

  1. 指を垂直に入れて、止まる場所を先に探す

    首まわり、耳の後ろ、脇、内股、しっぽのつけねの順に、指を1本、毛の流れに逆らって差し込みます。すっと地肌まで入る場所は、今日は飛ばしてかまいません。止まった場所だけを、その日の持ち場にします。全身を均等にやろうとすると、いちばん詰まっている場所にいちばん短い時間しか使えなくなります。

  2. 毛を上下に分けて、地肌の線を出す

    止まった場所の毛を、片手で上へ寄せて押さえます。押さえた下に、地肌が細く一本の線になって見えるはずです。この線が見えていないうちは、まだ縦に開けていません。白い毛の中に、うすいピンクの線を探すつもりで探してください。

  3. 線に沿って、根元から毛先へ少しずつ

    見えている線のところだけに、ブラシやコームを入れます。根元を指ではさんで支えたまま、短く動かします。その日のうちにほどききらなくても構いません。抵抗が強いところは、そこで止めて次の日に回します。柱の形になった毛玉は、上から押し込むほど締まります。

  4. 押さえる手を1〜2センチ上げて、次の線へ

    1本の線が通ったら、押さえていた手を少しだけ上へずらします。また新しい線が出ます。これを繰り返すと、体の一面が下から順に開いていきます。面をなでるのではなく、線を積み上げていく。これが、立った毛の被毛に合ったやり方です。

  5. 換毛期は、同じ場所を1日に2回へ分ける

    春と秋、下毛がまとまって緩む時期は、開いた線からいくらでも毛が出てきます。1回で終わらせようとすると、犬のほうが先に飽きます。朝に首まわり、夜に後ろ脚というように、場所と時間を分けてください。終わらせることより、続くことを優先します。

空気が乾く季節は、立った上毛どうしが静電気で反発したり、毛先だけが寄ったりします。表面がいつもより大きくふくらんで見える日は、たいてい乾いている日です。とかす前に、毛の表面の滑りをそろえておいてください。mofuwa グルーミングスプレーはブラッシングスプレーとしても使えるので、その日の持ち場にひと吹きしてから毛を上下に分けると、静電気で毛先が寄らない状態でコームを入れられます。表面がうっすら湿るだけで足ります。濡らしたら、その日のうちに乾かしきるところまでを一続きにします。

毛玉が気になるからといって、洗う回数を増やさないでください。ほどけていない毛玉は、水を含んで締まります。順番は、ほどいてから洗う、です。洗う回数そのものを増やすと、地肌のうるおいも一緒に減っていきます。とはいえ、体から脂が出るのは毎日で、散歩に出れば外の細かいものも立った上毛に乗ります。洗う日のあいだにある毎日を、ブラッシングのついでに拾っておく。グルーミングスプレーを首のまわりや脇のようにこすれる面にかけ、手のひらでなでてからコームを入れてください。舐めても問題のない基準でつくられているので、首や脇のように口が届く場所でも、かける量を数えずに済みます。

Caution引っぱられているのは、毛ではなく皮膚です

柱の形になった毛玉は、下の皮膚を引っぱって持ち上げています。毛を切っているつもりで、ハサミの先が皮膚に届きます。白い被毛は、毛と地肌の境目が光で飛んで見えにくいぶん、なおさら危ないところです。ほどけないものは無理をせず、次のトリミングまで待つか、場所を伝えてサロンに任せてください。

はじめての換毛期の経験を、次の一年の考え方に変える

サモエドと暮らして最初の春は、たいていの飼い主が驚きます。下毛が綿のようにまとまって浮いてきて、取っても取っても翌日また出てきます。この時期は、縦の隙間へ落ちる下毛の量そのものが増えるので、毛玉ができる速さも上がります。1週間手をつけないでいると、先週すっと指が入った場所で、今週は止まるようになります。

ここで大事なのは、その年の経験を、来年のための材料として残しておくことです。換毛の始まる時期は、住んでいる土地の気候や、家の中の暖房の入れ方でずれます。よその犬の話より、去年のその子の記録のほうが当たります。書くのは3つだけで足ります。

この3つがあると、次の年は先回りできます。去年、首のまわりが最初だったなら、今年もそこから見る。3日で戻った場所は、3日おきに触る。毎日全身を触るのは続きませんが、順番だけ決めておけば1日3分でも回ります。サモエドの毛玉を毎日のケアで防ぐというのは、時間を増やすことではなく、当たりをつけて手を入れることです。

Cautionほどいたあとの地肌に、変化が残っているとき

ほどいたあとの地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、左右で毛の量が明らかに違う、元気や食欲が落ちている。この並びに心当たりがあるときは、自分でほどく前に動物病院で診てもらってください。厚い被毛は下が見えないぶん、地肌の変化に気づくのがどうしても遅くなります。

相談やトリミングに行く前には、気づいた日、場所、指が止まる深さ、その週の換毛の様子をメモしておくと話が早くなります。ほどけなかった毛玉は、崩さずその形のまま連れて行くほうが伝わります。触ってほぐしてしまうと、どこまで深く詰まっていたのかが読めなくなります。

サモエドの毛玉は、手入れを怠ったから出るというより、立った毛のあいだに下毛が落ちるという作りから出ています。ゼロにする考え方ではなく、落ちた下毛を毎日少しずつ外へ運び出す考え方へ切り替えてください。あの白いふくらみは、空気を抱えている形です。抱えている空気を、詰まったままにしないこと。手を入れる場所さえ決まっていれば、次の換毛期の手ざわりは変わってきます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。