C05犬種・猫種別ケア
シベリアンハスキーと暮らすなら知っておきたい、アンダーコートの詰まりの話
朝、寝床から立ち上がった場所に、綿のかたまりのような毛が握りこぶし大に残っていた。シベリアンハスキーと暮らしていると、春と秋にこういう朝が来ます。前の日まで、そんな抜け方はしていなかったはずです。アンダーコートが、その週に役目を終えて、いっせいに地肌から離れ始めた合図です。1本ずつ少しずつ抜けていく犬種とは、抜け方そのものが違います。まとまって剥がれるぶん、行き場を失った下毛は上毛のあいだに留まり、そこで詰まりになります。この記事では、剥がれ始めた週に手を入れた場合と、2週間遅れた場合を並べて比べます。
季節ごとに全部が入れ替わる|シベリアンハスキーのアンダーコートの剥がれ方
シベリアンハスキーの被毛は、性格の違う2つの層でできています。表面の上毛は、まっすぐで張りがあり、風と雪をはじきます。その下にあるのがアンダーコートで、こちらは綿のように細く、密に詰まっていて、体のまわりに空気の層をつくって熱を逃がさない役目を持っています。極寒の土地で橇を引き、雪の上で体を丸めて眠る仕事から生まれた作りです。
ここで大事なのは、この下毛が季節に合わせてまるごと入れ替わるということです。厚さを少しずつ調節するのではなく、暖かい季節に向かうときには一度ほとんど手放し、寒い季節に向かうときにまた新しく詰め直す。冬に必要だった密度をそのまま夏まで残していたら、その体格では熱を逃がせません。
だからシベリアンハスキーのアンダーコートは、抜け方そのものがほかの犬種と違います。少しずつ、毎日いくらかずつ床に落ちていくのではありません。ある週を境に、面でまとまって剥がれます。前日まで何ともなかった寝床に、翌朝いきなり綿のかたまりが残る。飼い主が驚くのは、量が多いからというより、始まり方が急だからです。
- 上毛は張りがあり、まっすぐ立っている:外側の枠として残り、抜けにくい層です
- 下毛は細く密で、綿のように絡む:地肌から離れても、上毛の枠の中に残ります
- 入れ替わりが一度に来る:少しずつではなく、面ごと役目を終えます
- 体格が大きく、面積が広い:一度に全身を回すのは、人にも犬にも重い作業です
- 皮脂が下毛にまわる:離れた下毛が皮脂を含むと、面のまま固まっていきます
剥がれたアンダーコートは、そのまま外へ落ちてはくれません。上毛がまっすぐ立った枠になっているので、離れた綿の層は、その枠の内側に留まります。そこへ次の面が剥がれてきて重なり、皮脂を含み、寝返りや体をこすった動きで押し固められる。これがシベリアンハスキーのアンダーコートの詰まりです。
つまり詰まりは、毛の量の問題ではありません。剥がれた下毛が、外へ出るまでの時間の問題です。だから、いつ手を入れたかで結果が変わります。抜け始めた週に手を入れられたかどうか。ここが、この記事でいちばん書きたいことです。
換毛期という言葉は、毛が減る時期のように聞こえます。実際に起きているのは入れ替えです。古い下毛が離れ、新しい下毛が下から出てきます。古いほうを外へ出しきれていないと、新しい層は行き場のないまま押し込まれることになります。ブラッシングは毛を減らす作業ではなく、出口をつくる作業だと考えてください。
剥がれ始めた週を、手のひらと指でつかむ見分け方
シベリアンハスキーのアンダーコートで手を入れる週を外さないためには、始まりに気づける必要があります。カレンダーの日付では決まりません。その年の気温の動き方、日の長さ、家の中の暖房の切り方で、毎年1〜2週ずれます。見分け方は、犬の体のほうにあります。
| 確かめる場所 | 手がかり | まだ始まっていないとき |
|---|---|---|
| 腰ともも裏 | 輪郭がふくらんで見える | 体の線に沿って寝ている |
| 背中 | 手のひらでなでると毛がついてくる | ほとんどつかない |
| 脇腹 | 指でつまむと綿の塊が抵抗なく外れる | つまんでも動かない |
| 首の付け根 | 上毛のあいだから薄い色が透ける | 上毛の色だけが見える |
| 寝床 | 1本ではなく、面のかたまりで残る | 細い毛が数本 |
5つのうち、いちばん早く出るのは手のひらに毛がついてくる量です。毎日のケアのついでに、背中から腰へ手のひらを1往復させる。それだけで足ります。昨日と比べて明らかに増えた日があれば、その週が始まりです。この差は、目で見るより手のほうが数日早く分かります。
次に確かめるのが、脇腹での指の感触です。親指と人差し指で、上毛ごと軽くつまんで持ち上げます。まだ始まっていなければ、下毛は地肌に固定されていて動きません。剥がれ始めていれば、綿の塊だけが、抵抗なく手に残ります。力はいりません。引っぱらないと取れないものは、まだその時期ではないということです。
腰ともも裏の輪郭は、少し離れて見ます。剥がれた下毛が上毛の内側に溜まると、そこだけ体の線から浮いて、輪郭がふくらんで見えます。正面からではなく、真横から、目線を犬の高さに落として見てください。体格の大きい子ほど、この見分け方が効きます。
手のひらに毛がついてきた日を、カレンダーに1行書いておいてください。それだけで、いま何週目かが分かります。そして翌年、同じ時期の何週前から気にすればいいかの目安になります。シベリアンハスキーの換毛期は年に2回。2年ぶんの記録があれば、3年目からは待ち構えられます。
抜け始めた週に入れた場合と、2週間遅れた場合の違い
同じシベリアンハスキーの、同じ換毛期でも、手を入れた週が2週間ずれるだけで、そのあとの作業がまったく変わります。変わるのは量ではなく、下毛がどういう状態になっているかです。並べて比べます。
| 抜け始めた週 | 2週間遅れた週 | |
|---|---|---|
| 下毛の状態 | 地肌から離れて浮いている | 上毛にからみ、面になっている |
| 取れ方 | つまむと抵抗なく外れる | 引くと地肌ごと持ち上がる |
| 皮脂の混ざり方 | ほとんど混ざっていない | 含んで、しっとり固まっている |
| 1回にかかる時間 | 全身で10分ほど | 1か所で10分。場所を分ける |
| 回数 | 週に2〜3回で足りる | 毎日、数日から数週間 |
| 犬の側の負担 | 気持ちよさそうにしていることが多い | 同じ場所を触られるのを嫌がる |
| 終わりの合図 | 手のひらに毛がつかなくなる | 指が地肌まですっと入る |
違いが生まれるのは、剥がれたアンダーコートが皮脂を含む時間の長さです。離れた直後の下毛は、乾いた綿のような状態で、上毛の枠に引っかかっているだけです。そこに時間がかかると、皮脂がまわり、寝返りや床とのこすれで押されて、面のまま密度が上がります。ここまで来ると、外から見えている毛は表面の1枚だけになります。
遅れた側の作業がつらいのは、量ではなく地肌まで届かないことです。コームを入れても途中で止まり、無理に通せば、下の皮膚ごと引っぱることになります。犬の側も、同じ場所を触られるのを嫌がるようになります。1回で終わらせようとしないことが、遅れた側での最初の判断になります。
固まった面にコームを立てて引くと、抜けるのは離れた下毛だけではありません。まだ地肌に残っている毛と、その下の皮膚が一緒に持ち上がります。一度で全部取ってしまおうと、強く何度も引くという進め方はしないでください。時間をかけて分けたほうが、結果として早く終わります。
遅れた側から始めるときの、道具の選び方と使い分け
シベリアンハスキーのアンダーコートが動き出したことに気づいたときには、もう2週間経っていた。そういう年もあります。そこから始めるときの手順です。どちらの週にいるかで、最初に手に取るものが変わります。ここが道具の使い分けの分かれ目です。
| 抜け始めた週 | 2週間遅れた週 | |
|---|---|---|
| 最初に手に取るもの | 目の粗いコーム | 自分の指 |
| 次に使うもの | アンダーコート用のブラシ | 目の粗いコームを毛先から |
| 動かす向き | 毛の流れに沿って、根元から外へ | 面の端から、少しずつ内側へ |
| 1か所の時間 | 全身をひと回りで10分 | 1か所5〜10分で切り上げる |
| やらないこと | 同じ場所を何度も往復する | 根元からコームを差し込む |
| 進める順番 | 背中から腰、もも裏へ | からんでいない場所から先に |
-
面の輪郭を、指でなぞって確かめる
コームより先に、指で境目を探します。どこからどこまでが固まっているのかが分かると、力を入れる場所が減ります。面の内側ではなく、まわりのほぐれている場所から手をつけてください。
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面の端を、指で少しずつ分ける
端から数ミリずつ、毛の束を横へずらしていきます。道具は使いません。分けるのは指、外へ運ぶのはコームと決めておくと、力の入れどころを間違えません。1日で終わらせなくてかまいません。
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分かれた場所に、毛先の側からコームを入れる
根元から差し込むと、地肌を引っぱります。毛先の側から入れて、少しずつ上へ移してください。途中で止まったら、そこがまだ分かれていない場所です。指の工程に戻ります。
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からんでいない場所を、先に終わらせる
背中や首まわりのように、まだ綿のまま浮いている場所は、その日のうちに外へ出せます。先に軽い場所を済ませておくと、詰まっている場所の輪郭がはっきりします。順番を逆にすると、どこが残っているのか分からなくなります。
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1回の終わりを、時間ではなく犬の様子で決める
体格の大きい犬ほど、同じ姿勢でいる時間が長くなります。立たせたまま足を踏みかえ始めたら、そこで区切ってください。毎日のケアとして続けるほうが、1日で終わらせるより結果が早く出ます。
洗って浮かせるという手を思いつくかもしれませんが、順番が逆になります。面のまま水を含んだ下毛は、乾くときにさらに締まります。ほどいてから洗う、が順番です。洗う回数そのものを増やすと、上毛の張りを保っている皮脂まで一緒に流れます。換毛期だからといって、洗う頻度を上げないでください。
体格の大きい犬ほど、1日で全身を回すのは無理があります。この作業は、毎日少しずつのほうへ寄せることになります。毎日手を入れるなら、その手が入りやすい状態にしてから始めるほうが早く終わります。コームを入れる前に、これから触る場所の表面へ mofuwa グルーミングスプレーを吹きかけてください。乾いた日に広がっていた毛先がまとまり、コームの通り方がそろいます。ブラッシングスプレーとしても使えるものなので、静電気で綿毛が空中に舞う量も減ります。
シベリアンハスキーで助かるのは、量を数えなくていいことです。背中から腰、もも裏まで通してかけると、顔まわりだけを拭く犬とは必要な量がまるで違います。mofuwa グルーミングスプレーは舐めても問題のない基準でつくられているので、途中で足りるかどうかを気にせず、その日に触る場所ぜんぶへかけられます。換毛期のあいだ毎日続けるなら、量を気にしないで済むことが、そのまま続けられる条件になります。ひとつだけ、面になっている場所へ直接吹きかけて、そのまま置かないでください。ほどく前に湿らせると、乾くときにまた締まります。
剥がれ終わったはずなのに、背中が波打っているとき
ここまでは、換毛期の週数で説明のつく詰まりの話でした。アンダーコートが出きって手のひらに毛がつかなくなったあとも、体の線が戻らないときは、別の見方をしてください。剥がれ終わった体は、真横から見たときに輪郭がなめらかになります。波打ったままなら、まだ内側に何か残っているか、詰まり以外のことが起きています。
- 換毛期が終わっても、輪郭のふくらみが残る:内側にまだ面が残っています。指で境目を探し直してください
- 同じ一か所だけが、毎年同じ場所に戻る:ハーネス、寝床の縁など、毎日当たっているものを疑ってください
- 季節と関係なく、いつも抜け続けている:入れ替わりの山がないなら、換毛期の話ではありません
- その場所を気にして、なめる・かく:毛より先に、地肌のほうを見てください
- ほどいたあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 毛が根元から薄くなり、地肌が広く見える:家で見ているだけでは、量の変化は追えません
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、左右で毛の量が明らかに違う、元気や食欲が落ちている。これらが出たときは、自分でほどこうとしないでください。上毛が枠になっているぶん、地肌の様子は外から見えず、気づくまでに数週間かかることがあります。ほどく順番を考えるより先に、動物病院で地肌のほうを診てもらってください。
相談やトリミングに行くときは、手のひらに毛がついてきた日、詰まりに気づいた場所、これまでにどこまでほどけたかの3つを伝えてください。この3つがあると、週数で説明のつく詰まりなのかどうかが、その場で切り分けられます。ほどけなかった場所は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。途中まで引いた跡があると、もとの状態が分からなくなります。
シベリアンハスキーと暮らすうえで、アンダーコートの入れ替わりはなくなりません。寒い土地で生きるための作りが、そのまま残っているからです。変えられるのは、剥がれ始めた週に気づけるかどうかだけです。手のひらを1往復させる。ついてきた毛の量を昨日と比べる。それだけで、そのあとの数週間の手間が変わります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 換毛期に、シャンプーで浮かせて一気に抜いてしまうのはどうですか?
- 順番が逆になります。上毛の枠の中で面になっている下毛は、水を含むと乾くときにさらに締まります。ほどいてから洗う、が順番です。まだ綿のまま浮いている状態なら、洗う前にコームを通しておくだけで、外へ出る量がずいぶん変わります。換毛期だからといって、洗う回数そのものを増やさないでください。
- 毎日ブラッシングしているのに、腰だけ詰まります。何が違うのでしょうか。
- 回数ではなく、アンダーコートまで届いている深さの違いです。表面の上毛だけをとかしていると、手ざわりは良くなりますが、内側の下毛は動きません。腰ともも裏は上毛が長く、体格の大きい子ほど厚みがあるので、いちばん届きにくい場所になります。毛の流れに沿ってとかす前に、指で面を分けて、地肌まで指が入るかを確かめてください。
- 春と秋で、やることを変える必要はありますか?
- 手順は同じですが、シベリアンハスキーの場合、始まりの見分け方だけ少し違います。春は暖かくなる前に大きく剥がれ、量がまとまって出ます。秋は新しい下毛が下から詰まってくるので、抜けた量より、地肌までコームが届くかどうかで判断してください。どちらも、手のひらに毛がついてきた日を起点に数えるという点は変わりません。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
