C08季節・行事
待合室で隣に座った犬が、やけにきれいだった日のこと
椅子が4つしかない待合室に、犬が6頭待っていました。春の予防注射で混む時期の、開院してすぐの時間です。順番が来るまでの20分、となりに座った犬の背中にずっと目が行っていました。毛づやが、うちの子とはっきり違って見えたからです。同じ蛍光灯の下で、片方は光が毛の流れに沿って一本の線になり、片方は同じ光が細かく散っていました。その差がどこでついたのかを、その日から7日間、家で数えてみることにしました。
待合室の20分で、犬の毛づやの差だけが目に残った経験
受付をすませて座ったとき、待合室の椅子は4つで、犬は6頭いました。2頭ぶんの飼い主は立ったまま、リードを短く持って順番を待ちます。うちの子は椅子の下に伏せ、となりの犬はその向かいで座っていました。呼ばれるまでにかかったのは20分です。その20分のあいだ、私が見ていたのは診察室の扉ではなく、となりの犬の背中でした。
毛の長さも色も、うちの子とそれほど変わりません。違って見えたのは毛づやのほうです。天井の蛍光灯は待合室に2本だけで、当たる光の量はどの犬も同じはずでした。それなのに、となりの犬の背中では光が首から腰まで一本の帯になって流れ、うちの子の背中では、肩の後ろから先で同じ光が細かく散って、白っぽく曇って見えました。
- となりの犬の背中は、首から腰まで光の線が途切れずにつながっていた
- うちの子の背中は、肩の後ろで線が切れ、そこから腰までが白っぽく見えた
- 2頭とも毛は乾いていて、その日に洗ってから来た犬は1頭もいなかった
- 6頭とも同じ町から来ていて、その週に浴びた外の気温も湿度も同じだった
- 待合室の床に落ちていた抜け毛は、どの犬のものか分からないほど混ざっていた
春の予防注射の日に、朝から洗って乾かしてから連れてくる家は多くありません。その場にいた6頭も、たぶん普段どおりの背中で来ています。待合室で見えていたのは、その日の手入れの差ではなく、そこへ来るまでの何日かの差でした。だから帰ってから、うちの子の背中で何が起きているのかを、7日かけて数えることにしました。
春に毛づやの差が開く理由|待合室で並んだ犬が同じ外の条件にいた日
毛づやは、毛の量でも毛の長さでもなく、光の返り方です。上毛の表面の向きがそろっていれば、当たった光は同じ方向へ返って線になります。表面に浮いているものがあると、光はその粒ごとに散ります。待合室で見えた差は、この「そろっているかどうか」の差でした。
春は、冬のあいだ地肌の側で寝ていた下毛が抜け始める時期です。抜けた下毛は、そのまま床へ落ちるわけではありません。上毛の内側にひっかかって、しばらくそこに残ります。1本ずつは細くて短いので、目で見て分かるものではありません。分かるのは、その上を通った光が散っているほうです。
抜けかけの下毛が上毛の内側に留まる時間は、家の中の条件で変わります。冬のあいだ暖房を入れていた部屋は、室温が保たれるかわりに湿度が下がります。乾燥した毛は静電気を持ちやすく、静電気を持った毛どうしは反発して、抜けても落ちずに浮いたまま残ります。4月は、その暖房を切る週が来る時期です。室温が朝晩だけ下がり、窓を開ける回数が増え、湿度は上がり始めます。気温と湿度と換毛期が同じ週にまとめて動くのが、季節の変わり目のこの時期です。
| 条件 | 3月までの状態 | 暖房を切ったあとの動き | 毛づやに出るところ |
|---|---|---|---|
| 室温 | 暖房で一日中ほぼ一定 | 朝晩だけ下がるようになる | 根元まで乾いたまま過ごす時間が減る |
| 湿度 | 低いところで動かない | 窓を開ける回数が増えて上がる | 浮いていた下毛が落ちやすくなる |
| 換毛期 | 下毛は地肌の側で寝ている | 下毛が根元から抜け始める | 抜けた分が上毛の内側にたまる |
| 散歩の長さ | 短く、日中に寄っている | 朝と夕方へ伸びる | 外の砂やほこりが毛に乗る回数が増える |
| 家と外の乾燥の差 | 家の中のほうが外より乾く | 差が縮んで逆転する日も出る | 静電気で毛が立つ日が減る |
待合室にいた6頭は同じ町から来ていて、同じ週の外気の中を歩いています。外の条件はそろっていました。違ったのは家の中の条件と、そこで過ごした時間に何が起きたかです。毛づやの差の理由を外の季節に求めると、飼い主の側に打てる手が一つも残りません。家で動かせるのは、室温でも湿度でもなく、抜けかけの下毛を上毛の内側から出す回数のほうです。
待合室のあと7日、背中に通した回数を数えた|犬の毛づやに出た変化
帰ったその日に、紙の端へ7つのマスを書きました。数えるものは1つだけです。ブラシが首から腰まで、途中で止まらずに1回通った日に丸をつける。止まった日は、止まった場所を横に書いておく。決めたのはそれだけでした。
7日のうち、丸がついたのは3日でした。残りの4日は、どれも肩の後ろで止まっています。止まった場所は、待合室で光の線が切れて見えた場所とぴったり同じでした。毎日ブラシは手に持っていたのに、背中の端まで届いていた日は3日しかなかった、というのがこの7日で分かったことです。
| 日 | 腰まで通ったか | 止まった場所 | そのときの様子 |
|---|---|---|---|
| 1日目 | 止まった | 肩の後ろ | 抜けかけの毛がブラシの先にからんだ |
| 2日目 | 通った | — | 前の日にからんだ分が減っていた |
| 3日目 | 止まった | 肩の後ろ | 引かれた途中で立ち上がってしまった |
| 4日目 | 止まった | 腰の手前 | 毛が乾いていて、静電気で立っていた |
| 5日目 | 通った | — | 散歩から帰って毛が湿っているうちに通した |
| 6日目 | 止まった | 肩の後ろ | 同じ場所で3回目 |
| 7日目 | 通った | — | 吹きかけてから梳かした |
止まる日の中身は、どれもだいたい同じでした。抜けかけの下毛がブラシの先にからみ、引っぱられたその子が体をずらし、そこで終わりになります。背中を一度も通し切れないことが、待合室で見えた毛づやの差の正体でした。その子の毛の質でも年齢でもなく、腰まで届いた日の数です。
7日の後半で足したのが、mofuwaグルーミングスプレーです。梳かす前に肩から腰まで一度吹きかけておくと、ブラシの先に下毛がからみにくくなり、止まらずに背中の端まで通せます。7日目に通ったのは、その子が我慢したからではなく、途中で引っぱられる場面のほうが消えたからです。手つきを変えたわけでも、かける時間を延ばしたわけでもありません。
吹きかけたものは、そのあとその子が自分でなめます。背中も腰も、犬が口を回せる範囲です。この1本は口に入っても差し支えのない規格、つまり清涼飲料水の規格基準をクリアした成分でできているので、毎日ぶんの量を加減しなくて済みます。7日のうち3日しか通らなかったものを7日とも通す形にしたいのに、量を惜しんで薄くかけると、からむ場所がそのまま残ります。
止まらずに通せるようになると、グルーミングスプレーはもう一つのほうにも関わってきます。アルカリ電解水は油となじんで乳化するので、上毛の表面に残って光を散らしていた余分な脂が浮いて落ちます。地肌の側に要る皮脂は残るので、家と外の乾燥の差が縮みきらない季節の変わり目に、地肌から取りすぎることにもなりません。光を散らしていたものが表面から減れば、同じ蛍光灯の下でも光は線に戻ります。ブラシを通すときにそのまま使えるので、道具を1つ増やさずに、この工程だけを足せます。
丸が6つ以上ついているのに、肩の後ろの毛づやだけが2週間たっても変わらない。/数えているあいだに、同じ1か所を後ろ足で掻く回数が日ごとに増えた。/毛を分けて地肌を見ると、赤みが出ている、あるいは指にべたつきが移る。この3つは、室温や換毛期といった季節の条件では説明がつきません。次の予防注射の日まで待たずに、7日ぶんの丸と、止まった場所を書いた紙を持って、動物病院の診察の枠を取ってください。何日目から変わったのかが紙に残っていれば、口で思い出す時間がいりません。
毛づやを1年の予定の側に置く考え方|次に犬と待合室へ座る日まで
次に同じ待合室へ座るのは1年後です。そのあいだに季節は4回変わり、換毛期は春と秋の2回来ます。7日で分かったことを1年持たせるなら、覚えておくのは丸の数ではなく、止まった場所のほうです。肩の後ろで止まった犬は、次の換毛期にも同じ場所で止まります。場所さえ分かっていれば、そこから先に吹きかけて、そこから梳かし始められます。
紙のマスは7つで足ります。毎月つける必要はありません。暖房を切った週と、暖房を入れた週。この2回だけ7つのマスを書いて数え直せば、その年の毛づやがどこで崩れるかは同じ紙の上に並びます。1年中数え続けるのではなく、条件が動く週にだけ数えに戻る。これなら、去年の春と今年の春を同じ形で比べられます。
今日できるのは、紙の端に7つのマスを書いて、今夜の1回で肩の後ろまで通ったかどうかに丸をつけることだけです。1年後の待合室でとなりの犬の毛づやを見たときに思い出すのは、その日の手入れの話ではありません。この7日と同じ紙が、そのときも家の引き出しに入っているかどうかです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
