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キューティクルとは?毛の表面を覆う鱗状の層

公開日 2021年5月28日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、やわらかな自然光の中に並んで落ち着いている淡い色の犬と猫
キューティクルとは、毛の表面をうろこ状に覆っている層のことを指します。写真:Jessika Arraes/Pexels

毛先から根元へ向かって指をすべらせたときに出る、あのわずかな引っかかりをつくっているのがキューティクルです。キューティクルとは、毛の表面をうろこ状に重なって覆っている層のことです。逆向きに、根元から毛先へすべらせると引っかからないのは、この層が向きを持って重なっているからです。この記事でいちばん書きたいのは、その層が「向き」を持っている、という一点です。うろこは根元から毛先に向かって、屋根瓦のように重なって並んでいるとされています。だから毛先の側から逆にたどると、瓦の端に指が当たって立ちます。ブラッシングを毛の流れに沿わせるようにと言われる理由も、艶を出すためというより、この重なりの向きに逆らわないためです。キューティクルという言葉を1つ覚えると、毎日のケアで手が動く向きの意味が変わって見えてきます。犬と猫の被毛を前に、この言葉が何を指していて、どういう条件で変化するとされているのかを、順に開いていきます。

キューティクルとは何を指す言葉か|この言葉が使われる背景

定義をもう一度書きます。キューティクルとは、毛の表面をうろこ状に重なって覆っている層のことです。毛小皮(もうしょうひ)と呼ばれることもあります。人の髪の話で登場することが多い言葉ですが、犬や猫の被毛にも同じような層があるとされています。厳密な形や重なりの枚数は種によって違うとされますが、「表面を覆う、重なりを持った層」という点は共通しています。

毛は、外側から内側へ向かっていくつかの層でできているとされています。いちばん外がキューティクルで、その内側に太い部分があり、さらに中心に空洞のような部分があるという説明が一般的です。それぞれの層に名前が付いています。

毛を外から内へ見たときの3つの層(一般に言われている呼び方)
層の名前どこにあるか何をしているとされるか
キューティクル(毛小皮)いちばん外側うろこ状に重なって表面を覆い、内側を包む
コルテックス(毛皮質)その内側。毛の大部分を占める毛の太さやしなやかさに関わる
メデュラ(毛髄質)中心。細い毛では見られないこともある空気を含む構造だとされる

この3つのうち、飼い主が手で触れているのはキューティクルだけです。ブラシが当たるのも、布が触れるのも、水が最初に届くのも、すべてこの層です。コルテックスやメデュラは、触ろうと思って触れる場所ではありません。だから毎日のケアで話題になるのは、ほとんどキューティクルの話だということになります。

この言葉が出てくる場面も、だいたい決まっています。ブラッシングの向きの説明、洗ったあとの手ざわりの説明、静電気で毛が広がる話。どれも「表面がどうなっているか」の話で、体の中の話ではありません。キューティクルとは、そういう意味では、外から触れる範囲のことを指す言葉だと考えると分かりやすくなります。

Noteこの記事では、医学的な定義を言い切りません

キューティクルの構造や枚数は、調べ方や対象によって説明が変わります。この記事では「〜とされています」という形で書き、特定の論文や機関の名前を出典として挙げることはしません。持っていない出典を装うほうが、説明そのものより読む人を誤らせるからです。皮膚や被毛の状態そのものについて正確なことが必要な場面なら、それは言葉の意味を調べる話ではなく、動物病院で相談する話になります。

うろこには向きがあります|逆から触ると毛が立つ理由

ここが、この記事の中心です。キューティクルは、ただ表面を覆っているのではなく、向きを持って重なっています。根元の側から毛先の側へ向かって、少しずつずらしながら重なっている。屋根瓦を軒先に向かって並べていく、あの並べ方に近いとされています。

向きがあるということは、たどる方向で手ざわりが変わるということです。根元から毛先へなでれば、瓦の重なりの上をすべっていくので引っかかりません。毛先から根元へなでると、瓦の端に指が引っかかり、その端が持ち上がります。これが、逆から触ると毛が立つ理由です。

毛の流れに沿うか、逆らうか キューティクルは根元から毛先へ向かって重なっているとされます。同じ手の動きでも、向きが変わると起きることが変わります。 強さの話ではなく、向きの話です 根元から毛先へ(沿う) 重なりの上をすべっていく 指も道具も引っかからない 毛が寝たまま揃う 光の反射がそろって見える 抜けかけた毛だけが外れる 毛先から根元へ(逆らう) うろこの端に当たる 途中で引っかかる感じが出る 毛が立ち、根元が起きる 光が散って見え方が変わる 隣の毛とからみやすくなる
同じ1回の手の動きでも、向きだけで起きることが変わります。

逆立てること自体が悪いわけではありません。下毛の様子を見たいとき、地肌の色を確かめたいときは、あえて逆から起こす必要があります。大事なのは、逆から起こしたあとに、必ず沿う向きで戻しておくことです。起こしっぱなしにすると、隣り合った毛のうろこ同士が向かい合う形になります。

ブラッシングで「毛の流れに沿って」と言われる理由は、ここにあります。艶を出すための作法ではなく、うろこの向きに逆らわないための物理です。沿わせれば、道具はうろこの上をすべります。逆らえば、うろこの端を1枚ずつ起こしながら進むことになります。同じ1往復でも、毛の側で起きていることがまったく違います。

Point向きを覚える方法は、指1本で足ります

ブラシを持つ前に、背中に指を置いて前後にすべらせてみてください。引っかからないほうが、うろこに沿った向きです。体の場所によって毛の流れる向きは変わります。背中は頭から尾へ、脇や内股は下へ流れ、尾のつけ根の周りは向きが入り組みます。「全身を同じ向きで」ではなく、その場所の流れを指で確かめてから道具を当てる、という順番にすると迷いません。

濡れた日と乾いた日で、犬と猫のキューティクルはどう変化するとされているか

向きの話が分かると、次に効いてくるのが状態の話です。キューティクルは、条件によって寝たり起きたりすると言われています。いちばん分かりやすいのが、濡れているかどうかの違いです。

毛が水を含むと、表面のうろこは起きやすい状態になるとされています。つまり濡れているあいだは、いつもより引っかかりやすい状態にある、ということです。洗ったあとに毛がからみやすい、ブラシが途中で止まる、といった感覚には、この変化が関わっているとされます。

条件ごとに、キューティクルがどうなるとされているか
条件うろこの状態手や道具で起きること
乾いていて、流れに沿っている寝て重なっているすべる。引っかかりが少ない
濡れている起きやすい状態になるとされるからみやすく、道具が止まりやすい
半乾き起きた形のまま固まりかけるそのまま乾くと、寝かせ直すのに手数が要る
こすれ続けている端が傷みやすいとされる手ざわりが場所によって変わってくる
空気が乾いていて静電気が起きている毛どうしが反発して立つ向きをそろえても、すぐ広がる

この表から言えることは1つです。濡れている時間は、キューティクルにとって「向きが崩れやすい時間」だということ。だから洗ったあとの手順は、乾かしてから整えるのではなく、乾くまでのあいだに向きをそろえておくほうが理にかないます。乾いてから直そうとすると、すでに固まった形をほどく作業が1つ増えます。

犬と猫で違うところも書いておきます。猫は自分で毛づくろいをするので、向きをそろえる作業をある程度自分でやっています。ただし、背中の真ん中や尾のつけ根のように、自分の舌が届きにくい場所があります。犬は自分でそろえる手段が少ないぶん、人が入れる一往復の意味が大きくなります。同じキューティクルの話でも、どこに人の手が要るかは変わるということです。

年齢による変化にも、少し触れておきます。年をとると、体をひねる範囲が狭くなり、届く場所が減っていきます。猫の場合、毛づくろいの回数が減ったのではなく、届く範囲が減っただけ、ということがあります。同じ場所だけ手ざわりが変わってきたときは、その場所にその子の口が届いているかどうかを一度見てみてください。

艶の話ではなく、物理の話|キューティクルという言葉を知ったあとの毎日の経験

ここまでを一言でまとめます。キューティクルとは、向きを持った層のことです。だからケアの手は、強さで決めるものではなく、向きで決めるものになります。力を入れて何往復もするより、正しい向きで一往復するほうが、毛の側では起きていることが少なくて済みます。

この見方に切り替えると、毎日のケアで判断が変わる場面がいくつも出てきます。今まで「もっとやったほうがいい」と考えていた場面の半分くらいが、「向きが合っていなかっただけ」に置き換わります。実際に変わるところを並べておきます。

キューティクルという言葉を知る前と、知ったあと
場面知る前の考え方知ったあとの考え方
ブラシが引っかかるからみをほどく力が足りない当てている向きが逆かもしれない
毛が広がって見える毛の質が変わった立ったまま戻していない可能性がある
洗ったあとにからむ洗い方が悪かった濡れているあいだは起きやすい状態にある
手ざわりが場所で違うその場所だけ弱っているこすれる回数が場所ごとに違っている
何度もブラシを通す回数を増やせば整う向きが合えば往復は少なくて済む

洗う日と洗う日のあいだの話も、同じところに落ちます。犬や猫を洗う間隔は、人が体を洗う間隔よりずっと長くなります。だから暮らしのほとんどは、洗わずに向きだけを整えている日です。その日にできるのは、全身を完璧に整えることではなく、流れが崩れている1か所を戻すことです。

  1. 指で流れを確かめる

    道具を持つ前に、背中・脇・尾のつけ根の3か所を指でなでます。引っかからない向きが、その場所の流れです。

  2. 崩れている場所を1か所だけ決める

    全身をやろうとすると途中で終わります。今日いちばん立っている場所を1か所選びます。

  3. 沿う向きで一往復して終わりにする

    戻ったら、そこで手を止めます。往復の回数を増やすほど、こすれる回数も増えます。

この記事の中でいちばん扱いにくいのは、濡れている時間でした。湯を使うと全身がその時間に入りますが、mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて当てれば、一往復した1か所だけが短く湿ります。うろこが起きやすい時間を、いま向きを直したい場所のぶんだけつくれる、ということです。湿っているあいだの毛は沿う向きに動きやすく、そのまま寝た形で乾いていきます。乾いた布だけで戻そうとすると静電気で毛が立つので、布を湿らせる側に一手を置くほうが、往復の回数は少なくて済みます。無香料で界面活性剤を使っていないので、毛に乗せたまま手を離せます。グルーミングスプレーは、力を足す道具ではなく、向きをそろえる側の道具です。

最後に、この言葉の限界も書いておきます。キューティクルとは、あくまで毛の表面の話であって、皮膚の中で起きていることを説明する言葉ではありません。手ざわりが変わった理由を、この言葉だけで説明しきることはできません。表面の向きを整えても戻らない変化があるときは、そこから先は別の話になります。

Caution毛だけでなく地肌に変化があるときは、動物病院にご相談ください

同じ場所だけ毛が薄くなる、地肌が赤い、かさぶたがある、なめる回数が増え続けている、触ると痛がる、においが急に変わった。こうした変化があるときは、ブラッシングの向きを見直す前に動物病院にご相談ください。いつからその場所が変わったのか、毎日のケアで何を使っているのかを書き出して持っていくと、その場で切り分けてもらえます。被毛と皮膚の状態を判断できるのは、言葉の定義ではなく、実際に見てもらった獣医師の目のほうです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。