C12Q&A・豆知識

静電気とは?湿度40%を切るあたりから起きる

公開日 2021年6月18日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色のクッションの上に落ち着いて座っている淡い色の猫
毛先が広がるのも、パチッと鳴るのも、同じ1つの状態から出てきた別々の顔です。写真:Antoine Pittet/Pexels

暖房を入れた1月の部屋でブラッシングを始めたら、3ストロークめで毛先が扇のように広がって、ブラシのほうへ寄ってきたことがあります。静電気とは、こすれてできた電気の偏りが、逃げずに溜まった状態のことです。言葉の頭にある「静」は、動かない、つまり流れずにその場に留まっている、という意味です。だから静電気は、乾いているから起きるのではありません。逃げ場がないから溜まります。こすれること自体は、湿った日にも同じように起きています。違うのは、できた偏りがその場に残るか、それとも空気を通って抜けていくかのほうです。この記事では、静電気という言葉が何を指しているのかを定義から開いて、こすれると何が移るのか、湿度40%という数字は何の境目なのか、パチッと鳴る瞬間に何が起きているのかを、8つの問答に分けて書きます。

静電気とは、何が起きている状態を指す言葉ですか

定義から書きます。静電気とは、こすれてできた電気の偏りが、逃げずに溜まった状態のことです。「電気」という言葉が入っていますが、電池やコンセントのように流れている電気とは扱いが違います。流れていない、その場に留まっている、というところが「静」の意味です。

もう少しだけ開きます。物はふつう、プラスとマイナスが同じだけあって、外から見ると打ち消し合っています。ここに別の物がこすれると、片方から片方へ、ごく小さな粒が少しだけ移ります。移った側と移られた側で数が合わなくなり、これが「偏り」です。偏りができること自体は、珍しいことでも季節限定のことでもありません。毎日、どの季節でも起きています。

静電気と、流れている電気の違い
静電気流れている電気
状態溜まって留まっている回路の中を動き続けている
起きる場所こすれた物の表面つないだ道すじの中
終わり方どこかへ一度に逃げて終わる切るまで続く
家で気づく場面毛先が広がる、パチッと鳴る照明がつく、家電が動く
季節との関係冬に気づきやすい季節では変わらない

この記事で扱うのは、上の表の左側だけです。静電気とは、動いていない電気のこと。この一行を持っているだけで、あとに出てくる話が全部つながります。犬や猫の被毛で起きていることも、人の指先で起きていることも、同じ仕組みの上に乗っています。

こすれると、物のあいだで何が移っているのですか

移っているのは電子と呼ばれる、とても小さな粒です。物の表面には電子がいて、こすれたり、触れて離れたりすると、その一部が相手の側へ移ります。どちらからどちらへ移るかは、組み合わせで決まります。同じ被毛でも、当たる相手が変わると向きが変わる、というのがここのポイントです。

「なぜ毎回同じ服のときにパチッとくるのか」という疑問には、これで答えが出ます。相手の素材が同じなら、偏る向きも大きさも毎回だいたい同じになるからです。抱き上げたときに着ていた服、敷いていたブランケット、ブラッシングに使っている道具。静電気の話は、毛の話であると同時に、毛が触れている相手の話でもあります。

ここで一度、言葉を整理しておきます。ここまでで説明したのは「偏りができる」ところまでです。静電気とは偏りが「溜まった」状態のことなので、まだ半分しか説明していません。残りの半分、つまり溜まるかどうかを決めているのが、次に出てくる湿度の話です。

湿度40%という数字は、何の境目を指しているのですか

静電気の話には、たいてい湿度40%という数字がついてきます。一般に、湿度が40%を切るあたりから静電気が起きやすくなるとされています。ただし、この数字を「40%より上なら起きない、下なら起きる」という切り替えのスイッチのように読むと、実際と合いません。素材の組み合わせも、こすれた回数も、部屋の温度も関わるので、境目はもっとぼんやりしています。

では40%は何を指しているのか。空気を通って偏りが逃げていく道が、細くなり始めるあたりです。空気中の水分は、電気の偏りにとっての通り道になります。水分が多いほど道が太く、少ないほど細くなります。道が太ければ、こすれてできた偏りは、溜まるより先に少しずつ抜けていきます。道が細くなると、抜けるより足されるほうが速くなり、その差が溜まっていきます。

同じ摩擦でも、逃げ道の太さで結果が変わる
空気の湿りできる偏り抜けていく速さ結果
湿っている同じだけできる足されるより速い溜まらないので気づかない
ふつう同じだけできる足されるのと同じくらいたまに気づく
乾いている同じだけできる足されるより遅い差が溜まっていく
とても乾いている同じだけできるほとんど抜けない触れた瞬間にまとめて逃げる

この表でいちばん大事なのは、左から2列目が全部同じだというところです。できる偏りの量は、湿度では変わりません。変わるのは抜けていく速さのほうです。だから「冬になると静電気が発生する」という言い方は、半分だけ正しいことになります。発生は一年じゅうしていて、冬は溜まりやすいだけです。

数字の扱いについても、ひとこと添えておきます。40%という値は、条件をそろえた場面で言われている目安であって、家の中のどこでも同じように当てはまる線ではありません。同じ部屋の中でも、暖房の吹き出し口の近くと窓ぎわでは、空気の状態が違います。数字は「このあたりから逃げ道が細くなる」という感覚をつかむために使い、実際の判断は次の項の分け方でしてください。

「起きる」と「溜まる」を分けると、何が変わるのですか

ここがこの記事の中心です。静電気は、起きるかどうかではなく、溜まるかどうかで決まります。こすれることは止められません。ブラッシングをすればこすれますし、抱き上げても、寝床の上で寝返りを打っても、そのたびに偏りはできます。止められないものを止めようとするから、静電気の対処は難しく感じます。

偏りができてから、パチッと鳴るまで こすれて偏りができるところまでは、どの季節でも同じように起きています。分かれるのは、その偏りが抜けていくか、溜まって最後にまとめて逃げるかのほうです。 摩擦 偏り 被毛 溜まる 放電 パチッ 電子が移る 逃げ道がない 逃げ道がないとき 触れた瞬間にまとめて逃げる 毛先どうしが反発して広がる 逃げ道があるとき 溜まる前に少しずつ抜けていく 同じ摩擦でも鳴らずに終わる
見るところは、こすれた回数ではなく、逃げ道が開いているかどうかです。

分けて考えると、家でできることの向きも変わります。こすれる回数を減らす方向ではなく、抜ける道を細くしない方向です。ブラッシングを減らすと、抜けかけた毛が被毛の中に残って、かえってこすれる回数が増えることもあります。減らす方向は、思ったほど素直には効きません。

静電気の話を、2つに分けて読む
起きる(発生)溜まる(蓄積)
いつこすれるたび、一年じゅう逃げ道が細いときだけ
決めているもの素材の組み合わせと回数空気の湿り、触れている相手
家で分かることどの服・どの道具のときかどの季節・どの部屋でか
止められるか止められない条件しだいで変わる
見るところ何と何がこすれているか抜ける先があるかどうか

「なぜ夏はパチッとこないのか」という疑問も、これで解けます。夏もこすれています。偏りもできています。ただ、できた先から抜けていくので、溜まるところまで行きません。静電気とは溜まった状態のことなので、溜まらなければ、そもそも静電気にならない、という言い方になります。

パチッと鳴る瞬間には、何が起きているのですか

溜まっていた偏りが、一度にまとめて逃げた瞬間です。逃げ先は、たいてい触れた相手です。金属のドアノブ、人の指先、ケージの柵。溜まっている量そのものは大きくありませんが、抜ける時間がとても短いので、短い時間に集中します。音と光と、チクッとした感じは、そこから来ています。

ここから、実際に役に立つことが1つ出てきます。まとめて逃げるから強く感じるのであって、少しずつ逃がせば同じ量でも感じ方は変わります。人どうしでも、指先で触るより手のひら全体で触れるほうが弱く感じるのは、逃げる場所が広くなるからです。犬や猫に触れる前に、いったん壁や布に手のひらを当てておく、というのは、この理屈の上に乗った手です。

犬や猫の側から見ると、この瞬間はもう1つの意味を持ちます。予測できない刺激だ、ということです。いつも同じ場所で、同じタイミングで来るわけではありません。ブラッシングの最中に一度パチッと来ると、その道具が来ること自体を身構えるようになる子がいます。静電気で困るのは体への影響より、こうした「道具との関係」のほうが先に出ます。

毛先が広がるのは、パチッと鳴るのと同じことですか

元は同じですが、出方が違います。パチッと鳴るのは、溜まったものが逃げた瞬間。毛先が広がるのは、溜まっている最中の姿です。被毛の一本一本が同じ向きに偏ると、同じ符号どうしは反発し合います。隣り合った毛が互いに離れようとして、扇のように広がります。

広がるのが毛先からなのにも理由があります。根元は皮膚に固定されていて動けませんが、毛先は自由に動けます。だから、同じだけ反発していても、目に見えて動くのは毛先のほうです。ブラッシングのあとに毛先だけがふわりと立ち上がるのは、根元より毛先のほうが軽くて動きやすい、というだけのことです。

同じ状態から出てくる、3つの違う見え方
見え方何が起きているか気づく場面
毛先が広がる同じ符号どうしが反発しているブラッシングの途中
ブラシに毛が張りつく偏りの向きが逆で引き合っているブラシを離したとき
パチッと鳴る溜まったものが一度に逃げた触れた瞬間
毛にほこりがつく細かいものが引き寄せられている床から立ち上がったとき
何も起きない溜まる前に抜けている湿りのある日

換毛期に静電気の話が増えるのも、ここでつながります。抜けかけた毛は根元での固定がゆるんでいるので、被毛の中で動きやすくなっています。動きやすい毛が増えれば、こすれる回数が増え、広がる姿も目立ちます。換毛期そのものが静電気を作っているわけではなく、動く毛の本数が増えることで、同じ現象が見えやすくなっているという順番です。

うるおいの話も、ここでは同じ枠に入ります。毛の表面に水分があるということは、抜ける道が毛の側にもある、ということです。乾いた毛は道が細く、湿りのある毛は道が太い。被毛のうるおいが静電気と結びつけて語られるのは、しっとりして見えるからではなく、逃げ道の太さの話だからです。

静電気は体に大丈夫なのですか、という疑問への答え

溜まる量そのものは、体にとって大きなものではないとされています。ただ、大丈夫かどうかを量だけで答えると、実際に困っていることとずれます。飼い主が困っているのは、たいてい体のことではなく、その子がブラッシングを嫌がるようになった、抱き上げると身をよじる、といった側です。予測できない刺激が繰り返されると、その場面ごと避けるようになります。

だから、対処の目標も変わります。静電気をゼロにすることではなく、溜まる時間を作らないこと。抜ける道を細くしないこと。この2つに絞れば、家でやることは自然と少なくなります。

  1. 触れる前に、逃がす場所を作る

    壁や布に手のひらを当ててから触れます。先に逃がしておけば、その子の体に向かって一度にまとめて逃げることがありません。いちばん手数が少なくて、いちばん確実です。

  2. こすれる相手を1つだけ替えてみる

    毛の側は替えられませんが、当たる相手は替えられます。ブランケット、抱くときの服、ブラシの持ち手。1回に1つだけ替えて、変化を見ます。同時に替えると、どれが効いたのか分からなくなります。

  3. 毛の側にわずかな湿りを持たせる

    毛が乾ききっていると、毛の側の逃げ道が細くなります。ブラッシングの前に、被毛の表面をわずかに湿らせておくと、毛先の動き方が変わります。地肌まで届かせる必要はなく、表面の一枚ぶんで足ります。

  4. 根元から毛先へ、一方向で梳く

    行ったり来たりさせると、そのぶんこすれる回数が増えます。根元に近いところから毛先へ、一方向で抜けるように動かすほうが、回数も抵抗も減ります。

3つめの「わずかな湿り」に使うものについて書きます。水そのものを霧吹きで大量にかけると乾かす手間が増えますし、乾ききらないまま置くとにおいの出どころになります。mofuwaのグルーミングスプレーは、梳く前にひと吹きすることを前提につくられたケアスプレーです。グルーミングスプレーでありブラッシングスプレーでもある、と二つの名前で呼ばれているのは、毛を梳く場面がもともと使いどころに入っているからです。中身は特許電解水で、無香料、界面活性剤は使っていません。梳いたあとにその子が毛をなめても差し支えない中身なので、かける量の上限を気にしながら手を動かす必要はありません。やっていることは1つで、毛の側の逃げ道を細いままにしておかない、という状態づくりです。この記事の手順と相性がいいのは、2つめをくずさずに済むところです。ブランケットも服もブラシも持ち替えないまま、毛の側の乾き方だけを動かせるので、毛先の立ち方が変わったときに、変わった理由を1つに絞れます。無香料なので、その子が毎日嗅いでいるにおいのほうは増えません。

静電気という言葉を、家の中の言葉に置き換える|見るのは逃げ道と素材

最後に、ここまでを家で使える言葉に直します。静電気とは、こすれてできた偏りが、逃げずに溜まった状態のこと。知りたいのが「なぜうちの子だけ」なら、見るのは毛ではなく、毛が触れている相手と、部屋の空気の湿りです。この2つが、逃げ道の太さを決めています。

気づいたことを、言葉に置き換える
気づいたこと何を見ている状態か次に見るところ
毛先だけが広がる溜まっている最中こすれている相手の素材
パチッと鳴った一度にまとめて逃げた触れる前に逃がす場所があるか
ブラシに毛が張りつく逆向きに引き合っているブラシの持ち手の素材
冬だけ起きる抜ける道が細い季節部屋ごとの空気の状態
換毛期に増えた動きやすい毛が増えた梳く回数と、抜けた毛の残り方
一年じゅう起きる季節では説明がつかない毎日触れている布と道具

この表の右端が、次にやることです。静電気という言葉のままでは動けませんが、「逃げ道」と「相手の素材」に置き換えると、確かめる先が具体的になります。言葉の意味を知ることの効き目は、たいていこういう形で出ます。

Caution静電気では説明がつかない変化は、動物病院にご相談ください

季節が変わっても毛の立ち方が戻らない、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、フケが目立つようになった、触ると痛がる、毛が薄くなってきた、かゆがる回数が増えた。こうした変化は、静電気という言葉では説明がつきません。素材を替えたり湿りを足したりする前に、動物病院にご相談ください。相談のときは、いつから、どの部位で、どんなときに起きているかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

もう一度だけ、定義を置いて終わります。静電気とは、こすれてできた電気の偏りが、逃げずに溜まった状態のことです。乾いているから起きるのではなく、逃げ場がないから溜まる。この一行を持っていれば、冬にパチッと鳴った理由も、夏に鳴らない理由も、換毛期に話が増える理由も、同じ場所から説明できます。言葉の意味を1つ知ると、次に困ったときに探す場所が変わります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。