C09シーン別・暮らし

サロン通いをしている人が防災と避難で困ること、その手当て

公開日 2021年7月24日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色のブランケットの上に、白い毛の小さな犬が静かに座っている
整えるための道具は、避難先には持って行けません。残せるのは、もつれを作らない1本だけです。写真:SLZ/Pexels

次のトリミングの予約まで、あと3週間。サロン通いをしている家では、毎日のケアがこの日付を軸に回っています。プロが整えた状態から、少しずつ戻っていく4〜6週間を、ブラシと手でつないでいく。防災の話をこの軸の上に置くと、最初に決まるのは持ち物ではありません。避難先には、サロンも、乾かす道具も、自由に使える水もないということです。だからペットの防災では、整えることを最初からあきらめておくほうが、結果として手が減ります。あきらめたうえで、どこまでを持っていくのか。ここでは、サロン通いの家で出てくる7つの問答を、ペットの防災とトリミングの側から並べます。

「なぜ、トリミングの話は後回しになるのですか」|ペットの防災で最初に手放すもの

ペットの防災でまず用意するものを挙げると、食べ物、水、薬、ケージ、そして名前と連絡先を書いたものになります。トリミングに関わる道具は、この並びのどこにも入りません。順番として、それは自然です。数日を渡るための持ち物と、見た目を保つための道具では、優先が違います。この記事も、その順番をひっくり返すつもりはありません。

ただ、サロン通いをしている家には、ほかの家にない条件が1つあります。プロが整えた状態は、手を入れないと戻っていくという条件です。4〜6週間の予約の間隔は、その戻る速さに合わせて決まっています。毎日のブラッシングは、その間隔を守るための作業です。予約が動かせない期間が入ると、この前提だけが先に崩れます。

避難の場面では、条件がさらに重なります。水が自由に使えない。乾かす道具が使えない。室内の空間が狭く、床に広げて作業する場所がない。そして時間が読めない。この4つがそろうと、トリミングでやっていたことは、家庭ではほとんど再現できません。ペットの防災でトリミングの話が後回しになるのは、優先が低いからだけでなく、そもそも持って行けるものが少ないからです。

だからこの記事は、「トリミングの代わりに家でここまでやる」という形では書きません。あきらめる範囲を先に決めて、残った1つか2つだけを持っていくという形にします。あきらめる範囲がはっきりしているほど、荷物も、避難先での毎日の手も軽くなります。ペットの防災は、増やす話より減らす話のほうが続きます。

Noteここで書けるのは、家でできる備えだけです

避難先の設備や受け入れの条件は、住んでいる地域や場所によって違います。この記事では、その部分は扱いません。お住まいの自治体が出している案内を、落ち着いているうちに一度読んでおいてください。ここで書くのは、ペットの防災のうち、今日の室内で手を動かせる範囲だけです。

「毛はどこまで伸びても大丈夫ですか」|ペットの防災とトリミングの、あきらめていい線

サロン通いをしていると、伸びてきた毛がいちばん気になります。ただ、毛が伸びること自体は、しばらく待てます。予約が1か月延びても、体の作りとして困ることはほとんどありません。困るのは長さではなく、もつれのほうです。ここを分けておくと、避難の日に何を見ればいいかが決まります。

もつれは、毛の長さではなく、動きと湿りで進みます。歩いてこすれる場所、体重がかかる場所、濡れて乾ききらない場所。同じ日数がたっても、この3つに当たる場所だけが先に締まっていきます。だから、全身を等しく気にする必要はありません。手を入れる場所は、最初から4か所に絞れます。

伸びたときに待てる場所と、待てない場所
場所待てるかなぜそこだけ見るか
背中・体の側面待てます見た目は変わりますが、暮らしの側には出ません
しっぽ・胸の飾り毛待てますからまっても、ほどく時間を後ろへ回せます
目のまわり待てません毛が視界にかかると、その子の動きが慎重になります
口のまわり待てません食べたものと水が残り、においの出どころになります
足の裏・指のあいだ待てません床で滑ります。避難先は床の材質が変わります
おしりのまわり待てません排泄のたびに汚れが毛に残ります

この表の下3つは、見た目の話ではありません。見えるかどうか、歩けるかどうか、汚れが残るかどうかという、その日の暮らしに直結する場所です。ペットの防災でトリミングの話をするなら、持っていくのはこの4か所ぶんの手だけで足ります。背中がぼさぼさに見えていても、それは次のサロンで戻せます。

Point「整っているか」ではなく「通るか」で見てください

サロン通いをしていると、目の基準がどうしても仕上がりの側に寄ります。避難のあいだは、基準を1つだけ入れ替えてください。コームが根元まで通るかどうか。通るなら、見た目がどうであれ大丈夫です。通らない場所だけが、その日に手を入れる場所になります。

「持ち出し袋には、何を入れておけばいいですか」|トリミング用品はほとんど入りません

ペットの持ち出し袋に、トリミング用品を一式入れる必要はありません。入れても使えない道具のほうが多いからです。電気が要るもの、水が要るもの、床に広げる場所が要るもの。この3つに当てはまる道具は、避難先ではかばんの中で場所を取るだけになります。入れるものと入れないものを、先に分けておいてください。

ペットの防災袋に、トリミング関係で入れるもの/入れないもの
もの理由
入れる目の粗いコーム1本電気も水も要らず、もつれを見つけるのに使えます
入れるmofuwa グルーミングスプレーを小さい容器で1つ電気も流す水も要らず、吹いてそのまま梳かせます
入れる拭き取り用のシート、または布1枚口まわりとおしりに、その場で手が届きます
入れる小さいゴム数本目にかかる毛を、切らずに上げておけます
入れるポリ袋を数枚汚れたものを分けて閉じられます。においが室内にこもりにくくなります
入れるサロンと動物病院の連絡先を書いた紙1枚携帯が使えないときのために、紙で持ちます
入れないドライヤー電気が要ります。使えない日のほうが長くなります
入れないシャンプー類流す水が要ります。中途半端に濡らすと乾きません
入れないはさみ・バリカン使わないと決めるものです(次の問答で書きます)
入れないスリッカーブラシ力の加減が要る道具です。落ち着かない場所では手が滑ります

コームを1本だけにするのには理由があります。コームは、整える道具ではなく、確かめる道具だからです。根元まで通れば、そこは何もしなくていい。途中で止まれば、そこだけ指でほぐす。持ち物が1本だと、やることも1つに決まります。ペットの防災で道具を選ぶときは、できることが多い道具より、迷わない道具のほうが向いています。

袋は、作って終わりにしないでください。毎日の暮らしのどこかに、点検の時間をつけておきます。月に1回、袋を開けて、拭き取り用品の期限とゴムの本数だけを見る。これだけなら3分で終わります。ペットの防災で持ち物が古びるのは、たいてい袋を開けない習慣のほうが原因です。

「毛が伸びたら、家でカットしていいですか」|ペットの防災で、やらなくていいこと

7つのうち、これだけが手を減らす問答です。答えは、家でカットしなくていい、です。サロン通いをしていると、伸びてきた毛を自分で整えたくなります。とくに目のまわりは、視界にかかっているのが分かるので、切ってあげたくなります。ただ、ペットの防災という場面では、はさみを持たないと決めておくほうが、あとの時間が短くなります。

理由は3つあります。1つ目は、慣れない持ち方で切ると、毛先が段になることです。段になった毛はそこからもつれやすくなり、次のトリミングでかかる時間が、切らなかった場合より長くなります。2つ目は、落ち着かない場所では、その子が動く回数が増えることです。3つ目は、切った日をこちらが忘れることです。あとでサロンに伝えるときに、どこを誰が切ったのかが分からなくなります。

代わりにやることは2つだけです。目にかかる毛は、切らずにゴムで上げる。もつれは、切らずに指で分ける。どちらも道具が要りません。ゴムは根元をきつく縛らず、毛束の途中で軽くまとめる程度にします。指で分けるときは、もつれの先端側から少しずつです。根元から引くと、皮膚のほうが引っぱられます。

Caution固まった毛のかたまりを、無理にほどかないでください

指で分からない硬さになっているところは、その場で終わらせなくて構いません。ほどこうとして引くと、皮膚のほうが動きます。その子が声を出す、体をひねる、その場所に口が来る。こうなったら手を止めて、そこはそのままにしておいてください。次にサロンや動物病院へ行けたときに、まとめて見てもらうほうが早く終わります。ペットの防災でいちばん避けたいのは、家での作業でその子が痛い思いをすることです。

「水が使えない日は、どこから手をつければいいですか」|順番だけ先に決めておく

水が限られている日は、体全体に手を回そうとすると、どこにも届きません。だから、順番を先に決めておきます。上から下でも、汚れている順でもありません。汚れがほかへ移っていく順、つまり出口の側から手をつけます。1日で全部やる必要はなく、1日1か所で足ります。

  1. 1つ目:おしりのまわり

    排泄のたびに汚れが毛に残る場所です。ここが残っていると、寝床にも、抱いたときの服にも移ります。拭き取り用のシートか、湿らせた布で、毛の流れに沿って押さえるように拭きます。こすらないでください。1回で落としきらず、翌日また同じ場所を見るほうが、毛も皮膚も傷みません。

  2. 2つ目:足の裏と指のあいだ

    避難先では床の材質が変わります。滑る床では、指のあいだの毛が伸びているほど踏ん張りがききません。ここは切らずに、コームを縦に入れて毛の向きをそろえるだけにします。指のあいだに小石や砂が入っていないかも、このとき見ておきます。

  3. 3つ目:口のまわり

    食べたものと水が残ると、においの出どころになります。避難先は室内が狭く、においが人の側の条件にもなります。湿らせた布で、口の横から下あごへ向かって拭きます。拭いたあとに乾かないままだと、そこが湿ったままになります。乾いた面で最後にもう一度押さえてください。

  4. 4つ目:目のまわり

    毛が視界にかかっていないかを見て、かかっていればゴムで上げます。目やにが乾いてかたまっているときは、湿らせた布をしばらく当ててからにします。指でこすり取らないでください。ここは4か所のうち、いちばん力を抜いて扱う場所です。

この4つを1日1か所ずつ回すと、4日で一周します。毎日全身をやるより、4日で一周するほうが、水も時間も手も足ります。順番を紙に書いて、持ち出し袋に入れておいてください。落ち着かない場所では、覚えていたはずの順番から抜けます。ペットの防災で紙に書いておく価値があるのは、道具の名前より、この種の順番のほうです。

「においが気になってきたときの疑問」|避難の時間が延びたときに出てくること

数日が過ぎると、においの話が出てきます。サロン通いをしている家では、においが出るまでの間隔も予約の周期でつかんでいるので、いつもと違うことに早く気づきます。この疑問には、洗う日が先に延びている前提のまま答えることになります。洗う以外に、においに対して家で動かせるものが3つあります。空気と、毛の向きと、毎日の拭き取りです。

においは、毛と、毛のあいだの空気に残ります。毛が寝たまま固まっていると、そこだけ空気が動きません。コームを根元まで通して毛を起こすと、そのぶんだけ空気が入れ替わります。予約が延びているあいだにできるのは、毛を起こして空気を入れ替えることと、表面に重なったぶんを毎日拭いておくことの2つです。背中と首まわりを、根元までコームで通すところから始めてください。

mofuwa グルーミングスプレーは、電気も流す水も使わずに、吹いてそのまま梳かせるスプレーです。サロン通いの家が毎日やっているブラッシングと、道具の使い方がそのまま重なります。コームを通す前に背中と首まわりへ吹いて、そのまま根元から梳かす。増える手は、ひと吹きぶんだけです。犬は体から脂を出すので、予約が延びた日数のぶんだけ、毛の表面には毎日のぶんが積み上がります。コームが通る状態を保つというのは、そのぶんを毎日落としておくという話です。原料の成分が清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口のまわりやおしりのような、そのあと口が来る場所にも同じ1本で手が届きます。持ち出し袋に入れるなら、小さい容器を1つで足ります。

室内の側にもできることがあります。汚れたものはポリ袋に入れて閉じる、寝床に敷く布を1枚だけ決めて回す、その子が寝ている場所の空気を1日に何度か動かす。においの話は、その子の体だけの話ではありません。周りに人がいる場所では、こちらの手当ての半分は室内の側にあります。

Cautionにおいの質が変わったときは、防災の話として片づけないでください

洗えていないことで出るにおいと、皮膚の側で起きていることは別です。片側だけからにおう、においの質が変わった、その場所をなめ続けている、地肌が赤い、じくじくしている、食欲や元気が落ちている。こうした変化があるときは、落ち着いたところで動物病院にご相談ください。避難のあいだは診てもらえる場所が限られるので、連絡先を書いた紙を袋に入れておくことが、そのまま備えになります。

「サロンに戻れたとき、何を伝えればいいですか」|トリマーが知りたいのは3つだけ

予約が取れて、久しぶりにトリミングへ行けるようになったとき。ここで伝えることを決めておくと、その日の作業が短くなります。知りたいことは3つです。説明が長くなるより、この3つが正確なほうが役に立ちます。

もう1つ、行く前にやらないほうがいいことがあります。前の晩に、頑張ってほどいてから行かないでください。もとの状態が分からなくなり、どこがどれだけ進んでいたのかが伝わりません。ペットの防災の期間にできなかったことは、できなかったまま持って行くほうが、次のトリミングの組み立てが正確になります。

サロン側の状況も、そのときによって変わります。予約が取りにくい、営業時間が短い、いつもの担当ではない。こうした日のために、いつものカットの内容を紙に1枚書いて、持ち出し袋に入れておいてください。写真が撮れるなら、落ち着いているうちに正面と横から1枚ずつ撮っておくと、口で説明しなくて済みます。

7つの問答を、今日の室内でできる順に置き直す

最後に、ここまでの7つを、今日から手を動かせる順に並べ直します。ペットの防災でトリミング側にできることは、実際にはこれだけです。大きな買い物も、新しい習慣も要りません。いまある毎日のブラッシングの中身を、少しだけ組み替える話になります。

  1. 今日:持ち出し袋にコームを1本入れる

    目の粗いものを1本だけです。家で使っているものと同じ形にしておくと、避難先でも手が迷いません。あわせて、ゴム数本とポリ袋、拭き取り用のシートを入れます。ここまでで、トリミング関係の備えは9割が終わります。

  2. 今週:紙を1枚書いて、袋に入れる

    サロンの連絡先、動物病院の連絡先、いつものカットの内容、水が使えない日の4か所の順番。この4項目を1枚に書きます。携帯が使えない日を想定して、紙で持ちます。ペットの防災で紙が要るのは、この情報だけです。

  3. 毎日:ブラッシングを、4か所から始める

    おしり、足の裏、口のまわり、目のまわり。ふだんのブラッシングでも、この順で先に見る習慣にしておきます。いつもやっている順番は、条件が変わった日にも残ります。逆に、ふだんやっていない順番は、その日には出てきません。

  4. 月に1回:袋を開けて3分で点検する

    拭き取り用品の期限、ゴムの本数、紙の内容が古くなっていないか。トリミングの間隔が4〜6週間なら、予約の前日を点検の日に決めてしまうと忘れません。予約という、もともとある時間に重ねるのがいちばん続きます。

この4つを見て分かるとおり、増える手はほとんどありません。ペットの防災で本当に必要なのは、道具ではなく、あきらめる範囲を先に決めておくことです。背中の見た目は戻せます。もつれも、次のトリミングで戻せます。戻すのに時間がかかるのは、視界と、歩くことと、汚れが残ることのほうです。だから、その4か所だけを持っていきます。

サロン通いをしていると、整った状態が当たり前になります。その状態を保つ側にいるからこそ、崩れたときの手当ても具体的に組めます。ペットの防災とトリミングの話は、備える話ではなく、あきらめる範囲を決める話です。今日の室内で、コーム1本と紙1枚。始められるのは、そこからです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。