C09シーン別・暮らし
保護犬・保護猫を迎えた、大型犬と暮らす人はどうしている?
体重30キロを超える保護犬が、前足の先に手を近づけた瞬間、腰を落として後ろへ下がった。そのまま横向きに体重をかけられると、こちらは片手で支えることも、押さえて元の姿勢へ戻すこともできません。大型犬を迎える家では、嫌がったときの最後の手段が、最初から手元にありません。体の小さな子なら抱き上げて向きを変えれば終わる場面が、ここでは終わらないままになります。だから、保護犬を迎えるときの手順は、こちらが触る場所を決めていく形では組めません。触れる範囲を決めるのは、その子のほうです。この記事では、大型犬の保護犬を迎える家で、触っていい場所を1か所ずつ増やしていく順番と、その頻度を書きます。
押さえて終わらせる手が、最初からありません|大型犬の保護犬を迎える日の順番
40キロ近い体を、片手で支えることはできません。保護犬を迎える準備として、寝床も食器も先に用意した人でも、この1点だけは買いそろえて埋めることができません。大型犬を迎える家では、その子が嫌がって体重をかけた瞬間に、こちらの手が足りなくなります。体の小さな子なら、抱き上げて向きを変えれば、その場面はそこで終わります。大型犬では終わりません。腰を落とされたら、こちらが動かせる範囲はもう残っていません。
力で止められない、というのは、乱暴に扱うかどうかの話ではありません。押さえて終わらせるという最後の手段が、最初から手元にないという条件の話です。この条件が先にあると、毎日のケアの組み方そのものが変わります。こちらが今日触る場所を決めて、上から順番に進めていく形は使えません。順番の起点が、人の側からその子の側へ移ります。
保護犬を迎えるときに、つい考えてしまうのが「前はどうしていたのか」です。ただ、そこは分かりません。分からないことを想像で埋めても、今日できることは1つも増えません。分かるのは、目の前で起きたことだけです。前足に手が近づくと下がる、肩の上なら動かない。この2つを、その日の事実として書き留めてください。理由の側は、迎えるときには要りません。
大型犬にはもう1つ、体格から来る条件があります。面積が広いぶん、全身に手が回るまでの時間が長くなります。立たせたまま支えていられる時間も、人の側の腕が先に限界を迎えます。顔の高さが人の腰の位置にあるので、こちらがかがむと、その子の視界をふさぐ形になります。大型犬を迎える家では、時間・姿勢・視界の3つが同時に効いてきます。どれも、体の小さな子では気にしなくてよかったものです。
- 抱き上げて向きを変える:体重で持ち上がりません。人の腰のほうが先に痛みます
- 膝に乗せて動きを止める:大型犬では、そもそも乗りません
- 片手で押さえて、もう片方でケアをする:押さえる側の手が足りません
- 嫌がった場所を、その日のうちにやりきる:やりきれた記憶より、嫌だった記憶のほうが残ります
- 逃げた先を追いかけて捕まえる:走られたら追いつけません。追う人になると、次の日から距離が開きます
この5つが使えないと分かると、残る手は多くありません。残っているのは、触っていい場所を1か所だけ決めて、そこを崩さずに続け、その子が許した順に隣へ広げていくという進め方です。地味ですが、大型犬を迎える家では、これがいちばん早く進みます。押さえられないぶん、拒否されたときに引き返す場所をあらかじめ作っておく、という考え方でもあります。
力で止められない相手と暮らすとき、順番を決めておく理由は2つあります。1つは、その子が「今日はここまで」と分かるようになること。もう1つは、人の側が、無理をしていい場面をあらかじめ持たないでおくことです。大型犬を迎える家では、こちらが体勢を崩した拍子にけがをすることもあります。手順を先に決めておけば、その場の勢いで踏み込む回数が減ります。
触っていい場所は、その子が決めます|大型犬の保護犬を迎えるときのコツ
ここからが実際の手順です。保護犬を迎えて最初の1か月にやることは、全身をケアできるようにすることではありません。触っていい場所を、確実に1か所だけ作ることです。コツは、その1か所を毎日崩さないこと。広げるのはそのあとで、しかも隣へ1つずつです。次の5段階で進めてください。
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手に何も持たず、床に座って、その子より低くなる
大型犬を迎える家で最初に変えるのは、こちらの姿勢です。立ったまま上から手を伸ばすと、腕がその子の視界を横切ります。床に座って、こちらの頭の位置をその子より低くしてください。ブラシもタオルも、この段階では持ちません。手に何かを持っていると、その物のほうが先に警戒されます。
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手を出したところで止めて、3秒待つ
手を伸ばしたら、その子の体に触れる手前で止めます。近づいてくるか、動かないか、下がるか。3秒のあいだに起きたことが、今日の答えです。下がったら、その日はそこで終わりにしてください。手を引くのが早いほど、次の日に近づいてくるまでの時間が短くなります。
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最初の1か所を「肩の上」に決める
動かなければ、肩の上に手のひらを置きます。ここを起点にするのには理由があります。その子の視界に手が入ったまま触れる場所で、しかも逃げ道をふさがない位置だからです。頭の上は視界から消えます。背中の真ん中は、大型犬では手を伸ばす距離が長く、こちらの体が前へ出ます。肩の上なら、座ったままで届きます。
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同じ1か所を、2週間そのまま続ける
広げたくなりますが、ここは動かしません。同じ場所、同じ時刻、同じ長さで2週間です。変えないでいる期間そのものが、その子の側の材料になります。毎日同じことが起きると分かってから、次の場所へ進みます。2週間のうちに1日でも下がった日があれば、その週はもう一度同じ場所を続けてください。
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隣へ1つだけ広げ、下がったら前の1か所に戻す
肩の上が続いたら、次は背中の上側です。首でも足でもなく、いま触れている場所のすぐ隣にします。広げた先で下がったら、その日はすぐに肩へ戻ります。戻すのは失敗ではありません。戻る場所があると分かっていることが、その子にとっても人にとっても、次の日を作ります。
広げる順番には、体の作りから決まる目安があります。視界に入る場所から、視界に入らない場所へ。逃げ道をふさがない場所から、ふさぐ場所へ。大型犬は体が大きいぶん、こちらが回り込む距離も長くなります。回り込んだ時点で、その子からは人が見えなくなっていることがあります。次の表を、順番の下敷きにしてください。
| 段階 | 場所 | なぜその順番か |
|---|---|---|
| 1 | 肩の上 | 座ったまま届き、その子の視界に手が入ります |
| 2 | 背中の上側 | 肩の隣で、こちらが体を前に出さずに触れます |
| 3 | 首の横 | 顔に近いので、手のひら全体を当てて、指先を立てません |
| 4 | 胸の前 | 正面から手を出さず、横に座ったまま届く角度で |
| 5 | 腰・尾のつけ根の手前 | 後ろへ回らず、横から。ここで一度止まる子が多い場所です |
| 6 | 脇・内股・足先 | 毛が薄く、体を支える場所。いちばん最後で構いません |
拒否のサインは、下がることだけではありません。大型犬は下がるより先に、その場で体を固くすることがあります。顔だけをそむける、あくびをする、体重を反対側の足へ移す。この3つが出たら、下がる一歩手前です。ここで手を止めておくと、その日は「触られたけれど嫌なことは起きなかった」で終わります。下がってから止めると、「下がったから終わった」になり、下がる回数のほうが増えていきます。
保護犬を迎えると、ケアの時間を新しく作りたくなります。ただ、大型犬では準備そのものに時間がかかるので、独立した時間は続きません。すでに毎日起きていることの、すぐ後ろにつけてください。ごはんの器を下げた直後、水を替えた直後、散歩から帰って足元が落ち着いた直後。その子の側にも、次に何が起きるかが読めるようになります。
1回10秒を、1日3回から|大型犬を迎える最初の1か月の頻度
次に決めるのが頻度です。ここを間違えると、順番を守っていても進みません。大型犬を迎える家での頻度は、1回の長さではなく、1日に何回かで考えてください。最初は1回10秒、1日3回です。10秒は短すぎるように見えますが、その子が「終わった」と分かる長さであることのほうが大事です。長く触れた日より、短くても毎日同じだった日のほうが積み上がります。
増やすのは秒数ではありません。増やすのは、同じことを続けた日数のほうです。10秒を3回のまま2週間続けて、はじめて次の場所へ移ります。移ったら、また10秒に戻します。場所が変われば、その子にとっては別のことだからです。秒数を伸ばすのは、体のほとんどの場所に手が届くようになってからで足ります。
| 時期 | 触れる場所 | 1回の長さ | 1日の回数 |
|---|---|---|---|
| 1〜3日目 | 触れません。同じ部屋にいるだけ | — | — |
| 4〜7日目 | 手を出して3秒待つところまで | 3秒 | 2回 |
| 2週目 | 肩の上に手のひらを置く | 10秒 | 3回 |
| 3週目 | 肩の上のまま。変えません | 10秒 | 3回 |
| 4週目 | 背中の上側へ1つ広げる | 10秒 | 2〜3回 |
| それ以降 | 隣へ1つずつ。下がったら前へ戻す | 10〜20秒 | 2〜3回 |
この表のとおりに進まないことのほうが、実際には多くなります。つまずき方には、大型犬を迎える家に共通する形が3つあります。どれも、進めたい気持ちが素直に出た結果です。
- 調子がいい日に、2か所いっぺんに広げてしまう:翌日から前の1か所まで嫌がるようになります。広げるのは、いい日でも1つまでです
- 来客のある日や、掃除機をかけた日に進めてしまう:その日はもともと条件が違います。家の中がいつもと違う日は、いつもの1か所だけにしてください
- ブラシや爪切りを出した日に、触れる練習も重ねてしまう:道具の記憶と手の記憶が混ざります。道具を出す日は、触れる練習を休みにします
3つに共通しているのは、同じ日に条件を2つ以上動かしていることです。大型犬は1回の場面が長引きやすいので、条件が混ざると、どれが原因で下がったのかが分からなくなります。分からないままだと、次の日にどこへ戻せばいいかも決められません。動かす条件は、1日に1つまでと決めておいてください。
記録というと、できるようになったことを書きたくなります。ただ、後から役に立つのは戻した日のほうです。いつ、どこで、何をした直後に下がったか。この3つだけを1行で書いてください。1か月ぶんが並ぶと、下がる場面に共通しているものが見えます。人が立っていた日ばかり、道具を持っていた日ばかり、というように、条件のほうに偏りが出ます。ケアの中身を変えるより先に、その条件を1つ外すほうが早く進みます。
観察・記録・部屋の条件の3つ|大型犬の保護犬を迎えた家で、触れずにできること
最後に、家でできる範囲を書いておきます。保護犬を迎えて最初の数か月、家でできるのは大きく3つです。観察すること、記録すること、そして部屋の側の条件を変えることです。体に触れる範囲を広げるのは、この3つのあとに少しずつついてきます。逆に言えば、触れなくてもできることが3つもある、ということでもあります。
- 床の滑りをなくす:大型犬は体重があるぶん、滑ったときに踏ん張ろうとして足に負担がかかります。よく通る線にマットを敷きます
- 寝床を、人の動線から外す:通るたびに人が近づく位置だと、休んでいる時間が細切れになります
- ごはんと水の器の高さを見る:大型犬は首を下げる角度が深くなります。台に載せるだけで、食べているあいだの姿勢が変わります
- 毎日、同じ時刻に同じことをする:ケアの中身より、時刻がそろっていることのほうが先に効きます
- 触れない場所を、目で見て記録する:脇・内股・尾のつけ根は、手が届く前に汚れが出る場所です
被毛と皮膚の話も、この順番の中にあります。触れる範囲が肩の上だけのあいだは、体のほかの場所に手が入りません。そこで見るのは、手ざわりではなく見た目のほうです。毛が寝ている場所と立っている場所、地肌が見えている場所、左右で毛の量が違って見える場所。大型犬は面積が広いので、写真を1枚撮っておくと、2週間後に比べられます。
触れる場所が肩から背中へ広がったころには、mofuwa スキンケアミストを、その10秒の中に入れられます。手のひらに取って、肩から背中へ、毛の流れに沿ってなでるように広げてください。いま触れられている範囲の地肌に、水分をそのまま行き渡らせる一手です。舐めても問題のない基準でつくられているので、広げた直後にその子が体をねじって口を持っていっても、止めに入る必要がありません。押さえられない相手と暮らす家では、ここが使えるかどうかで、体に届く範囲が変わります。顔の高さが人の腰にある大型犬で、こちらが回り込まずに届くのは肩から背中の帯までです。スキンケアミストもその帯にだけ使って、次の2週間で隣へ広げてください。
同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、じくじくしている、においが強くなった、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、食欲や元気が落ちている、足を引きずる、触れると声を出す。いずれかに当てはまるときは、触れる練習を進める前に動物病院にご相談ください。大型犬は体が大きいぶん、こちらの目が届かない面が広くなります。触れない場所ほど、見て確かめておく必要があります。触れる範囲が肩の上だけの時期は、こちらの目が届いている面のほうが狭いので、判断を家で抱えないでください。
受診の日は、家でつけていた記録をそのまま持って行ってください。触れる場所、下がった日、その日に何があったか。この3つがあると、診察台の上で無理に押さえずに済む場面が増えます。大型犬は、動物病院でも人が2人がかりになりがちです。家でどこまで触れるのかが先に伝わっていれば、そこから始めてもらえます。
保護犬を迎える家で、大型犬という条件は、たしかに手を1つ減らします。押さえて終わらせることができないぶん、こちらの都合で進められる日がありません。ただ、その1つが使えないことが、順番を先に決める理由になります。1か所を決めて、頻度を決めて、隣へ1つずつ。下がったら戻る。大型犬を迎えるという条件の中で動かせるのは、この4つです。触れる範囲が広がっていく速さは、その子が決めます。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見るよくある質問
- 保護犬を迎えて何日目から、体に触れてもいいですか?
- 日数で決めるより、その子の側の反応で決めてください。目安として最初の3日は同じ部屋にいるだけにして、4日目から手を出して3秒待つところまで進みます。手前で止めたときに近づいてくるなら、肩の上に手のひらを置く段階へ入れます。大型犬は体格があるぶん、こちらが立って近づくだけで圧になります。座った姿勢で待つところから始めてください。
- 大型犬が嫌がったとき、押さえずにどうやってやめさせればいいですか?
- やめさせるのではなく、こちらが先に手を引きます。体を固くする、顔をそむける、あくびをする。この3つが出た時点で終わりにしてください。下がってから止めると、下がれば終わると学びます。手前で止めていれば、触られても何も起きなかった、という形で終われます。押さえずに済ませる方法は、押さえる前に終わらせることです。
- 体をほとんど触らせてくれないあいだ、ケアは何もできませんか?
- 触れない期間にできることが3つあります。部屋の側を整えること、毎日同じ時刻に同じことをすること、見た目の記録を残すことです。とくに大型犬は面積が広く、脇や内股のように手が入らない場所ほど見落とされます。2週間おきに同じ角度で写真を撮っておくと、変化があったときに気づけます。皮膚や被毛で気になる点が出たら、触れるようになるのを待たずに動物病院へ相談してください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
