C09シーン別・暮らし
車内のにおいを楽にする、はじめて犬を迎えた人の毎日の習慣
助手席に乗った友人が、車のドアを閉めてシートベルトを締めたあと、窓を三センチだけ下げました。暑い日でもなく、エアコンも動いていました。運転席にいる側は、そのときの車内のにおいを何も感じていません。犬を迎えて半年、この車には週に二回か三回乗っています。初めて犬を迎えた人がここでつまずくのは、拭き方でも道具でもありません。自分の車のにおいが、よその車と比べて濃いのか薄いのか、それを判断する材料を持っていないことです。ペットと暮らす人にとって、車のにおいの話は、たいてい他人の側から始まります。この記事では、飼い主の鼻がいちばん先に慣れてしまう仕組みと、他人が乗る日を基準として置いておくという考え方を書きます。
同乗した人が窓を下げた三秒|初めて犬を迎えた人と、車のにおいの背景
そのあと友人は、においについて何も言いませんでした。窓は目的地に着くまで三センチ下がったままで、会話はふつうに続きました。言われていないので確かめようがないのに、その三秒だけが残ります。初めて犬を迎えた人が車のにおいを気にしはじめるきっかけは、たいていこういう小さな動作です。指摘ではなく、動作。だから確認もできません。
困るのは、比べる相手がいないことです。犬がいなかった頃の自分の車がどんなにおいだったか、半年もたてば思い出せません。ふだん乗るのは家族だけで、家族の鼻も同じように慣れています。初めて犬を迎えた人の車には、基準になる第三者がほとんど乗りません。ペットのにおいについて「これがふつうです」と言ってくれる人が、生活の中にいないのです。
そのうえ車は、家よりも先に他人が入ってくる場所です。家に人を招くには理由がいりますが、車は駅まで送る、荷物を運ぶ、雨だから乗せる、といった用事でかんたんに人が乗ります。ペットのにおいが「他人の側の問題」になる場所は、家より車のほうが先に来ます。初めて犬を迎えた一年目に、この順番を知らないまま迎える人は多いと思います。
念のために書いておくと、犬が乗っている車から犬のにおいがすること自体は、直すべき失敗ではありません。問題になるのは濃さのほうです。そして濃さは、自分では測れません。ここが車のにおいの厄介なところで、道具や洗剤の話に入る前に、まず「自分の鼻は使えない」という前提を置く必要があります。
- 犬がいなかった頃の自分の車を覚えていない:半年もあれば、比較の記憶は消えます
- 同居している家族の鼻も同じように慣れている:家の中に基準を持っている人がいません
- 他人はにおいを指摘しない:窓を開ける、エアコンを強くする、といった動作にしかなりません
- ペット可の施設では周りも同じ条件:外で比べる機会にもなりません
- 初めての一年目は、変化と慣れが同じ方向に進む:気づく機会そのものが来ません
犬と一緒に車に乗れば、毛も皮脂も車内に移ります。ゼロにするという目標を置くと、拭き取りの回数だけが増えて、続かなくなります。初めて犬を迎えた人がまず決めるとよいのは、におい自体をなくす方法ではなく、いまの濃さがどのあたりにあるのかを知るための手順のほうです。濃さが分かってはじめて、毎日どこまでやるかが決められます。
ペットと乗る車で、飼い主の鼻がいちばん先に慣れる|においの変化に気づけなくなる仕組み
人の鼻は、同じにおいの中にいると数分で感じ取らなくなります。自分の家の玄関のにおいが自分にだけ分からないのと同じことで、これは鈍いからではなく、鼻がそういう働き方をしているからです。車は乗るたびに新しく嗅ぎ直すはずの場所なのに、乗り込んだ直後の数分でその機会が終わります。ドアを開けた最初の一呼吸を逃すと、その日はもう分かりません。
しかも初めて犬を迎えた人ほど、乗る前に外の空気を吸っている時間が短くなります。玄関を出て、犬を抱えて、リードを持って、荷物を積んで、そのまま運転席に座る。この一連の動きのあいだ、鼻はずっと犬のにおいの中にいます。車に乗り込む前から、すでに慣れが始まっています。だから「乗った瞬間に確かめよう」と決めても、うまくいきません。
もうひとつ、においの出どころを取り違えやすいという問題があります。車内のにおいは、内装そのものから出ているのではありません。犬が座った面に、被毛から皮脂と水分が移り、それが布の繊維の中に入ります。布は含んだものを離すのが遅く、湿った状態が長く続けば、雑菌が増えやすい条件がそろいます。においの多くは、車ではなく「車に移ったもの」から出ています。
| 場所 | 何が移るか | 乾きにくさ |
|---|---|---|
| 後部座席のシート | 被毛、皮脂、足の裏の湿り | 座面が厚く、内側まで乾くのが遅い |
| 敷いている毛布(寝床代わり) | 被毛と皮脂がまとまって溜まる | 洗えるが、洗う頻度が落ちやすい |
| シートベルトとハーネスの帯 | 口のまわり、首まわりの湿り | 細いのに、いちばん洗われない |
| ドリンクホルダーと折りたたみの食器 | 飲み残した水、食べこぼし | 水が残ったままになりやすい |
| ドアの内張りの下側 | 足の裏、外から持ち帰ったもの | 拭き取りの手が届きにくい |
この表を見ると、においの側に手を入れるなら、内装より先に「布」だと分かります。走行中に窓を開けて換気をすると、空気は入れ替わります。ただし換気で動くのは空気だけで、布の中に入った水分と皮脂はそのまま残ります。換気で消えたと感じるのは、鼻がリセットされたからで、においが減ったからとはかぎりません。ここも、初めての人が取り違えやすいところです。
そして、慣れることとにおいが濃くなることは、同じ時間軸で進みます。犬と暮らしはじめて半年たてば、車に犬が乗った回数も半年ぶんです。飼い主の鼻はその半年で完全に慣れています。濃くなる速さと、慣れる速さが、ほぼ同じなのです。だから、初めて犬を迎えた人の車では「ある日ふいに気づく」という瞬間が来ません。
「自分では気づけなかった」と落ち込む必要はありません。同じにおいの中にいる人の鼻がそれを拾わなくなるのは、体のつくりの話です。だからこそ、気づく力を上げるのではなく、気づける場面を外に用意するほうが確実です。次のセクションで書く三つの手順は、どれも「自分の鼻をいったん元に戻す」か「他人の鼻を借りる」かのどちらかになっています。
他人が乗る日を、月に一度置いておく|初めて犬を迎えた人の、車のにおいの考え方
基準が他人の側にしかないなら、他人が乗る機会を先に予定として置いてしまうのが早い、というのがこの記事の考え方です。ただし「におう?」と直接聞くのはおすすめしません。聞かれた側は、ほぼ確実に「気にならないよ」と答えます。言葉ではなく、動作を見てください。窓に手が伸びるか、エアコンの風量を上げるか、乗ってすぐ深く息を吸うか。
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手順1:自分の鼻を五分だけ戻してから、ドアを開ける
車から十メートルほど離れて、五分ほど別の空気を吸います。そのあと戻って、ドアを開けたら乗り込まずに、外に立ったまま最初の一呼吸だけを使ってください。乗ってしまうと数分で分からなくなるので、判断はこの一呼吸で終わりです。月に一度、洗車のついでにやるくらいの頻度で足ります。
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手順2:布を一枚だけ、家の中に持ち帰る
後部に敷いている毛布を家に持ち込んで、別の部屋に一晩置きます。翌朝、その部屋に入った最初の一呼吸で嗅いでください。車の中では分からないにおいが、別の空気の中に移すと分かります。寝床代わりに毎回使っている布ほど、はっきり出ます。ここでにおいが立つなら、車を掃除するより先に、その布を洗うほうが順番として先です。
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手順3:他人が乗る用事を、月に一度つくる
駅まで送る、買い物に付き合う、荷物を運ぶ。理由は何でも構いません。乗ってから五分のあいだの、その人の手だけを見ます。窓とエアコンに手が伸びなければ、いまの濃さは大きく外れていません。伸びたら、その週のうちに布を洗う。判断はこれだけで足ります。ペットのにおいを他人に評価してもらう場ではなく、自分の鼻の答え合わせをする場と考えてください。
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手順4:日付と、やったことだけを三行で残す
「八月十日/後部の毛布を洗った」「八月二十四日/同乗者あり、窓に手は伸びず」。この三行があると、次に気になったときに、前回から何週間たっているかがすぐ分かります。初めて犬を迎えた一年目は、この記録そのものが基準の代わりになります。
| 手順 | 分かること | 向いている頻度 |
|---|---|---|
| 五分あけてドアを開ける | 車内の空気の、いまの濃さ | 月に一度 |
| 布を家に持ち帰る | においの出どころが布かどうか | 二週間から一か月に一度 |
| 他人に乗ってもらう | よその鼻から見た位置 | 月に一度 |
| 三行の記録 | 前回からの間隔 | そのつど |
ここまでが確かめる側の話で、ここからが毎日の側です。車に移る前に毛の側で止めておくと、布を洗う間隔が延びます。散歩のあとにそのまま車へ乗せる前、足の裏と腹側だけを拭き取りしてください。全身をやる必要はありません。車の中で床に近い面に触れるのは、そのふたつだからです。所要は一分ほどで、乗せる直前の一回だけで構いません。
拭き取りに使うものを一つ決めておくと、毎日のことになります。グルーミングスプレーを布に含ませて、毛の流れに沿ってなでてください。犬は毎日散歩に行って、毎日体から脂を出します。前の日に拭いた子でも、今日また毛の側に汚れがついているのはそのためです。すすぎがいらないので、玄関の前で一分あれば終わります。舐めても問題のない基準でつくられているため、初めて犬を迎えた人が量で迷うこともありません。車の内装に直接吹きかけて、そのまま置くような使い方はしないでください。
水と食器も見ておいてください。折りたたみの食器や携帯用の水入れを車に置きっぱなしにすると、飲み残しがそのまま残ります。車のにおいの相談で、いちばん見落とされているのが食器と水です。使ったその日に持って降りる、と決めるだけで、ひとつ減ります。
耳のあたりだけが強くにおう、口のまわりからにおう、体の一か所をなめ続けている、その場所の皮膚が赤い、じくじくしている。こうした変化があるときは、車のにおいの話としてではなく、動物病院にご相談ください。初めて犬を迎えた人ほど、どこまでがふつうか分からないぶん、迷ったら早いほうを選んでください。ペットの体の一か所から強く出るにおいは、車を掃除しても変わりません。
一年たつと、におうのは車ではなく毛と布だと分かる|初めての一年で積み上がる経験
この習慣を続けていると、気にする場所が少しずつ移っていきます。最初の三か月は車の内装が気になり、半年で布に移り、一年たつころには、その日の犬の毛の状態を見るようになります。初めて犬を迎えた人の一年は、においの出どころを外側から内側へたどっていく一年でもあります。
| 時期 | 気にしていること | 実際に手を入れている場所 |
|---|---|---|
| 最初の一か月 | 車の中がにおうかどうか | 消臭剤、内装の拭き取り |
| 三か月 | どこからにおうのか分からない | 座席まわり全体 |
| 半年 | 布に溜まっていると気づく | 毛布、シートベルト、食器 |
| 一年 | 乗せる前の毛の状態を見ている | 散歩のあとの足の裏と腹側 |
手の数はむしろ減ります。最初のころは、乗るたびに車内を拭いて、消臭剤を置き直して、換気のために窓を開けて走っていました。一年たつと、やることは「乗せる前に一分」と「二週間に一度、布を洗う」の二つに落ち着きます。乗せる前の一分で手に持つのは、グルーミングスプレーを含ませた布一枚だけです。どこに手を入れれば変わるかが分かるほど、毎日にかかる時間は短くなります。
そして、他人が乗る日を月に一度置いておくという習慣だけは、一年たっても残ります。自分の鼻は、何年たっても自分の車には慣れます。経験を積んでも、そこだけは変わりません。だから基準の置き場所を、自分の外に持っておく必要があります。初めて犬を迎えたときに作ったこの一手が、そのあとずっと使えます。
ペットと車で出かける時間は、犬と暮らす楽しみのかなりの部分を占めます。においが気になって出かける回数が減るのは、もったいない話です。においを測る場所を他人の側に置き、手を入れる場所を布と毛の側に置く。この二つが決まっていれば、車のにおいのことで迷う時間は短くなります。初めて犬を迎えた人にとって、それは道具をそろえることよりも先に決めておける習慣です。
思い出したときにやる、という形にすると続きません。「毎月第二土曜は誰かを乗せる日」のように、日付の側に置いてしまってください。その日に窓へ手が伸びなければ、次の一か月は今までどおりで構いません。伸びたら、その週に布を洗う。判断する材料が月に一度は必ず入ってくる、という状態を作ってしまうのがいちばん楽です。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
