C12Q&A・豆知識

シャンプーの適温は人のお湯より低い

公開日 2021年8月6日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋の白い床に、落ち着いて立っている淡い色の犬
同じお湯でも、毛の中に留まる時間が人とは違います。写真:Leohoho/Pexels

犬のシャンプーで目安とされるお湯は、35度前後。手を入れて「ぬるい」と感じるあたりです。この温度は、人が湯船に入るときのお湯より低いところに置かれています。数字だけ見ると不思議に思えるはずです。犬の平熱は38度台とされ、人より高いとされているのに、シャンプーのお湯のほうは人より低くていい。この記事では、その理由を2つに分けて書きます。1つは皮膚が薄いこと、もう1つは毛の中に熱がこもることです。体温との差の話ではありません。あわせて、温度計がない家でお湯を確かめる方法と、温度を下げたぶんを手順のどこで補うかまで、8つの問答に分けて整理します。数字はすべて目安とされている値で、断定できるものではないことも先に書いておきます。

犬のシャンプーのお湯は何度が目安ですか

答えから書きます。犬のシャンプーで使うお湯は、35度前後を目安とされることが多いです。幅を持たせるなら、34度から36度あたり。人が湯船に入るお湯が38度から40度あたりだとすると、そこから3度から5度ほど下げた位置になります。

この数字は、断定できる値ではありません。季節、その子の年齢、洗う場所の室温、その日の体調で、ちょうどいい温度は動きます。目安とされている、という以上のことはこの記事では書きません。数字を1つに固定すると、そこから外れた日にどう考えればいいかが分からなくなります。

犬のシャンプーで語られる温度の目安と、比べる相手
おおよその温度手で触れたときの感じ方
人が入る湯船38〜40度あたり温かい、気持ちいい
人のシャワー40〜42度あたりはっきり温かい
犬のシャンプーの目安35度前後ぬるい、少しもの足りない
犬の平熱とされる値38度台―
人の平熱とされる値36度台―

この表でいちばん引っかかるのは、下の2行だと思います。犬の平熱のほうが人より高いのに、シャンプーのお湯は犬のほうが低い。体温が高いなら、もっと温かいお湯のほうが合いそうに見えます。この記事の疑問は、ここから始まります。

Note「ぬるい」は人の皮膚を基準にした感想です

35度のお湯に手を入れると、人はたいてい「ぬるい」と感じます。ただし、その感想は人の皮膚の感じ方であって、犬の皮膚の感じ方ではありません。人が快適だと思う温度は、人の皮膚が快適だと思う温度です。犬のシャンプーの温度を人の体感で決めると、必ず高いほうへずれます。この記事では、ずれる方向が決まっている、というところまで書きます。

犬のシャンプーの適温とは、何を基準に決めた温度ですか

適温という言葉の中身を、先に開いておきます。ここでいう適温とは、「洗える」と「熱がたまらない」の両方が成り立つ範囲のことです。快適さの話ではありません。洗うためには、皮脂を動かせるだけの温度が要ります。熱がたまらないためには、体温より高い熱を長く当てないことが要ります。この2つがぶつかる場所に、35度前後という数字が置かれています。

人の入浴には、この2つに加えて「温まる」という目的が入っています。湯船に入るのは、汚れを落とすためだけではありません。だから38度から40度という、体温より高い温度が選ばれます。犬のシャンプーには、この3つめの目的が入りません。温まることが目的ではないので、体温より高い温度にする理由がありません。

適温とは何かを1行にすると、こうなります。汚れを動かせる下限と、熱がこもらない上限のあいだ。この考え方を持っておくと、季節でずらす方向も決まります。冬に室温が低い日は、洗っているあいだに体が冷えるので、下限に近づけすぎないほうがよい。夏に室温が高い日は、上限のほうが先に来るので、少し下げる。数字を覚えるより、どちらの端が近いかを考えるほうが実用的です。

疑問としてよく出てくるのが、「ぬるいと汚れが落ちないのではないか」というものです。ここは正直に書きます。温度が下がれば、油汚れの動きは鈍くなります。ただし、汚れを落としているのは温度だけではありません。s7に書きますが、温度を下げたぶんは、時間と手順で補えます。温度を上げて短時間で済ませるか、温度を下げて手順で補うか。犬のシャンプーでは後者を選ぶ、というのがこの記事の立場です。

平熱は人より高いのに、なぜシャンプーのお湯は低くていいのですか

ここがこの記事の核です。お湯の温度は、体温との差では決まっていません。体温が38度台だから、それより少し高い40度が心地よいはずだ、という発想がそもそも成り立ちません。理由は2つあります。皮膚が薄いことと、毛の中に熱がこもることです。

先に、成り立たない理由を書きます。体温との差で考えるやり方は、「熱がどれくらい入るか」だけを見て、「入った熱がどれくらい留まるか」を見ていません。人の入浴では、湯から上がれば熱は空気へ逃げます。裸の皮膚は、外気に直接触れているからです。犬の場合、この逃げ道の条件が違います。

そしてもう1つ、犬は汗で体温を下げる手段が人ほどありません。犬の汗をかく腺は、体温調節に使える形では肉球にしかないとされています。人は全身の皮膚から汗を出して熱を逃がせますが、犬にはその手段がありません。熱が入りやすくて、抜けにくい。この組み合わせが、お湯の温度を下げる理由になっています。

同じお湯をかけたときに、人と犬で何が違うか 人の入浴と犬のシャンプーでは、熱が入る条件と、抜ける条件の両方が違います。温度だけを比べても、体の上で起きていることは比べられません。 犬の平熱は38度台、人の平熱は36度台とされています 人が湯船に入るとき 皮膚が外気に直接触れる 湯から出れば熱が抜ける 全身の汗で熱を逃がせる 自分で温度を変えられる 温まることが目的に入る 犬をシャンプーするとき 毛が水と熱を抱えたまま残る 毛の内側は外気に触れない 汗で逃がす手段が少ない 人が温度を決めている 温まることは目的ではない 体温の高さは、お湯を高くしてよい理由になりません
違うのは温度ではなく、熱が留まる時間のほうです。

この2つの列を並べると、体温の差が判断材料にならないことが分かります。右の列にあるのは、どれも「熱がどれくらい留まるか」の条件です。犬のシャンプーの温度を決めているのは、こちら側です。次の2つのセクションで、皮膚と毛のそれぞれを開きます。

皮膚が薄いというのは、犬のシャンプーの温度の話ではどこを指しますか

1つめの理由です。犬の皮膚は、人の皮膚より薄いとされています。とくに薄いのは、いちばん外側にある表皮と呼ばれる部分です。人の表皮が層を何枚も重ねているのに対して、犬はその重なりが少ないとされることが多いです。

ただし、ここで具体的な層の数や厚さの数値を1つ挙げることはしません。同じ1頭でも、背中と腹と脇の下では厚さが違いますし、報告されている数字にも幅があります。「人の何分の1」という言い方をされることもありますが、部位差と個体差が大きく、1つの数字では表せません。この記事で確かなこととして書けるのは、人より薄い側にある、という方向だけです。

薄いことが温度の話で何を意味するかというと、熱が奥まで届くのが速い、ということです。外側の層は、外からの刺激と、内側の水分の両方を受け持っています。ここが薄ければ、同じ温度のお湯でも、内側に届くまでの距離が短くなります。人が「ちょうどいい」と感じる温度が、犬の皮膚では別の感じ方になりうる理由の1つです。

もう1つ、薄いことは水分が抜けやすいこととも結びついています。熱いお湯で洗ったあと、皮膚がつっぱる感じがするのは人でも同じですが、犬の場合はその条件が最初から強めに出ます。温度を下げると、洗ったあとの乾き方が変わります。これは温度を下げる理由のうち、シャンプーの当日ではなく翌日以降に効いてくるほうです。

Point薄いのは皮膚で、覆っているのは毛です

犬の体は毛で覆われているので、皮膚が丈夫そうに見えます。でも、毛が守っているのは物理的な接触や日差しであって、お湯の温度ではありません。お湯は毛のあいだを通って地肌まで届きます。むしろ毛があることで、届いたお湯がそこに留まります。次のセクションはその話です。

毛の中に熱がこもるとは、どういうことですか

2つめの理由です。被毛は、毛のあいだに空気を抱えることで保温しています。保温するということは、外との熱のやりとりを遅くするということです。寒い日に役立つこの仕組みが、お湯をかけたときには逆に働きます。

順を追って書きます。お湯をかけると、毛のあいだの空気が水に置き換わります。その水は、毛に絡まった状態で体に密着したまま残ります。人の場合、シャワーのお湯は皮膚を流れて落ちるので、触れている時間は一瞬です。犬の場合、かけたお湯は毛の中に留まり、体の表面で温度を保ったまま接し続けます。

  1. お湯をかけた瞬間

    人も犬も、皮膚に触れる温度は同じです。ここまでは違いがありません。

  2. 数秒後

    人の皮膚では、お湯が流れて落ち、残った水膜が外気で冷え始めます。犬では、毛の内側に入ったお湯が留まり、外気に触れていないので冷めません。

  3. 洗っているあいだ

    犬の体は、留まったお湯に包まれた状態が続きます。お湯をかけ続けていれば、その温度が常に補充されます。接している時間が、人の入浴とはまったく違う長さになります。

  4. 洗い終わったあと

    毛が水を抱えているので、そのままでは温度も湿り気も抜けません。タオルで水分を取ると、この滞留が切れます。タオルの役割は、乾かす前段というより、こもりを止めることです。

ここまで並べると、40度のお湯を犬にかけることが何を意味するかが見えてきます。体温が38度台の体に、40度の水を、長い時間くっつけたままにする、ということです。人の入浴で同じことをすれば、のぼせます。しかも犬には汗で熱を逃がす手段が少ない。だから、お湯のほうを体温より低いところに置いておく。これが35度前後という目安の理由です。

毛が長い子、下毛が厚い子ほど、この条件は強く出ます。毛量が多いということは、抱える水の量が多く、外気に触れない部分が広いということです。同じ温度のお湯でも、体に残る熱の総量が変わります。温度を下げる余地があるなら、毛量が多いほうを先に下げてください。

裏返すと、毛が抱える水の量は、濡らした範囲で決まります。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて当てるやり方なら、濡れるのは布が触れた面だけで、毛の内側まで水は入りません。散歩から帰ったあとの足まわりや、口のまわりの食べこぼしは、この形で片づきます。全身を35度のお湯に包む日を月に何回とるか、という問いの答えは、そうでない日にどれだけ手が入っているかで変わります。

温度計がない家で、犬のシャンプーのお湯をどう確かめればいいですか

給湯器の表示があれば、それを35度に合わせるのがいちばん簡単です。ただし、給湯器の設定温度と、実際に体に当たる温度は同じではありません。ホースの中で冷めることもあれば、混合の具合で上下することもあります。だから、最後は手で確かめます。

最後の行が、いちばん確かな指標です。温度計より、その子の呼吸のほうが正直です。洗っているあいだに呼吸が速くなったり、口を開けて息をし始めたりしたら、いったん止めてください。熱が抜けていないサインとして扱えます。シャンプーは中断できます。中断しても、その日の汚れが元に戻るわけではありません。

手で確かめるときに、人の感覚が高いほうへずれることを覚えておいてください。人が「ちょうどいい」と感じたときには、犬にとっては高いことが多い。だから、迷ったら下げます。ぬるすぎて困ることは、室温が低い日でなければ、あまりありません。

Caution洗ったあとに続く変化は、温度の話ではないかもしれません

シャンプーのあとに、赤みが出た、同じ場所をかき続ける、フケが増えた、皮膚が熱を持っている。こうした変化が翌日以降も続くときは、お湯の温度を下げて様子を見るより先に、動物病院にご相談ください。温度は原因のひとつになりえますが、原因の全部ではありません。いつ洗ったか、何度のお湯だったか、どこに出ているかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

温度を下げたぶんは、犬のシャンプーの手順のどこで補えますか

s2で保留にした疑問に戻ります。ぬるいお湯で汚れが落ちるのか。答えは、手順を変えれば足りる、です。汚れを動かしているのは温度だけではありません。予洗いの時間、泡の量、触れている時間、すすぎの丁寧さ。この4つで補えます。

温度を下げたぶんを、どこで取り戻すか
手順温度が高いとき35度前後のとき
予洗い短くても落ちる地肌まで濡らす時間を長めにとる
泡立て手の中で足りる先に泡にしてから体に置く
置く時間すぐ流せる泡を置いたまま少し待つ
こすり方強くなりがち強くしない。時間で補う
すすぎ流れやすい毛の内側に残りやすいので長めに
タオル軽く拭く水分をしっかり取ってから乾かす

この表で強調したいのは、「こすり方」の行だけは補ってはいけないということです。温度を下げたぶんを、力で取り戻そうとすると、薄い皮膚に負担がかかります。s4に書いたとおり、犬の皮膚は人より薄い側にあります。補うのは時間で、力ではありません。

音についても書いておきます。シャワーの音は、温度と同じくらい、その子にとっての条件になります。お湯の勢いを弱めると、音も静かになり、同時に体に当たる勢いも落ちます。温度を下げるついでに水圧も落とすと、洗う時間は伸びますが、途中で暴れる回数は減ります。結果として、全体にかかる時間は変わらないことが多いです。

乾かす工程についても一言だけ。ぬるいお湯で洗ったあとは、体が温まっていないぶん、乾かすまでの時間で冷えます。タオルで水分をしっかり取ってから始めてください。s5に書いたとおり、毛は水を抱えたままにします。タオルの段階でどれだけ取れているかで、そのあとの時間が決まります。

8つの答えを、手首の内側と3つの数字に畳む|洗う日と洗う日のあいだまで

最後に、ここまでを短く畳みます。覚えるのは3つの数字と、1つの動作です。数字は、35度前後という目安、38度台という犬の平熱、そして人が快適だと感じる38〜40度。動作は、手首の内側を10秒当てて「ぬるい」を確かめること。この4つで、犬のシャンプーの温度についての判断はほぼ足ります。

犬のシャンプーの温度をめぐる疑問と、この記事の答え
疑問この記事の答え
何度が目安ですか35度前後とされます。34〜36度あたりが幅です
犬の平熱は高いのに、なぜお湯は低いのですか熱が入る話ではなく、熱が抜けない話だからです
適温とは何を指しますか汚れが動く下限と、熱がこもらない上限のあいだです
皮膚が薄いとどうなりますか同じ温度でも奥まで届くのが速くなります
毛があると温かくないのですか毛が水を抱えるので、熱が抜けにくくなります
温度計がありません手首の内側に10秒。ぬるいと感じたら合っています
ぬるいと汚れが落ちませんか時間と手順で補えます。力では補いません

そして、洗う日と洗う日のあいだの話につなげます。犬のシャンプーは毎日するものではありませんが、体から脂が出るほうは毎日です。mofuwa グルーミングスプレーは、その毎日の側を受け持つケアスプレーです。中身は電解水で、すすぎがいらないので、湯温を合わせる工程も、乾かす工程も出てきません。布に含ませてから当てると、どこにどれだけ触れさせるかを人の側で決められます。s5に書いた「毛が水を抱える」という話が、この形では起きません。地肌の側が気になる日は、mofuwa スキンケアミストを直接なじませます。

最後に、この記事の数字の性格をもう一度書いておきます。35度前後というのは目安とされている値で、その子にとっての正解ではありません。季節、室温、毛量、年齢、体調で動きます。洗ったあとに続く変化があるときは、温度を調整して様子を見る前に動物病院にご相談ください。何度のお湯で、いつ洗ったかをメモしておくと、そこから話が始められます。

覚えて帰るのは、3つの数字と1つの動作だけです。35度前後という目安、38度台という犬の平熱、38〜40度という人の快適。そして手首の内側に10秒。次に洗う日は、温度計を探す前に手首を当ててみてください。数字を覚えるより、洗っているあいだの呼吸を見るほうが早い、という順番だけは変えないでください。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。