C12Q&A・豆知識
重曹やクエン酸で洗ってもいい?
台所の棚にある重曹の袋には、たいてい「掃除用」か「食品添加物」とだけ書かれていて、水で何倍に薄めて使うかは書かれていません。掃除用として売られている重曹やクエン酸で、犬を洗うのはやめておいてください。理由は濃度にあります。掃除用の重曹もクエン酸も、袋の中身は粉です。粉のままでは使えないので、どれくらいの濃さにするかは、使う人が決めることになっています。床ややかんが相手なら、その決め方で困りません。犬の体を洗うときには、その「決まっていない」という状態そのものが条件になります。この記事では、重曹とクエン酸という2つの粉について、犬を洗う話に入る前に確かめられることを8つの問答に分けて書きます。危ないと煽る話でも、ほかのやり方を否定する話でもありません。濃度が書いてあるか、用途に動物が書いてあるか。その2つだけを見る、という話です。
重曹やクエン酸で犬を洗ってもいいですか|掃除用のものを体に使わない
答えから書きます。掃除用として売られている重曹やクエン酸で、犬を洗うのはやめておいてください。これがこの記事の答えです。ただし、その理由を「重曹は強いから」「クエン酸は酸だから」と説明すると、話が半分ずれます。理由になるのは成分の強さではなく、濃度が決まっていないという1つの条件です。
重曹もクエン酸も、袋に入っているのは粉です。粉のままでは何もできないので、使うときに水へ溶かします。ここで、どれくらいの濃さにするかを決めるのは、製品ではなく使う人です。同じ袋から出た同じ粉でも、溶かす水の量が変われば、できあがる液体は別のものになります。床を拭くときには、この自由度が便利に働きます。犬を洗うときには、同じ自由度が「毎回違うものを使っている」という状態になります。
この記事では、重曹やクエン酸を危険なものとして書きません。掃除の場面で長く使われてきた粉で、用途に合った場所で使うぶんには便利なものです。書くのは1点だけです。体に使うものは、濃度と用途が表示されているかどうかで選ぶ。重曹とクエン酸は、掃除用として売られている時点で、その2つが表示から外れています。
犬を洗うときに何を使うかは、その子の皮膚の状態や、かかりつけの獣医師の判断と結びつきます。ここで書けるのは、手元にある袋を見て、家で確かめられることだけです。皮膚に赤みやかさぶた、においの変化があるときに何で洗うかは、家で決める話ではなく動物病院で相談する話になります。この記事の答えは、その相談に入る手前の段階に立っています。
重曹とは何ですか|袋に書かれている3つの規格と、書かれていない1つのこと
重曹とは、炭酸水素ナトリウムという物質の呼び名です。ふくらし粉として食品に使われ、掃除の粉としても売られ、医療の分野でも使われています。同じ名前の同じ物質が、まったく違う棚に並んでいるところが、この粉のややこしさです。犬を洗う話に入る前に、まず袋のどこを見るかを決めておきます。
日本で売られている重曹は、一般に3つの規格に分かれているとされています。薬用(日本薬局方)、食品添加物、工業用(掃除用)の3つです。粒の細かさと、含まれる不純物の量が規格ごとに違います。棚での値段の違いは、たいていここから出ています。
| 規格 | 袋に書かれている表示 | 想定されている使い方 |
|---|---|---|
| 薬用 | 「日本薬局方」「薬用」 | 医療・口腔などの用途。粒がもっとも細かいとされます |
| 食品添加物 | 「食品添加物」「食用」 | ふくらし粉、あく抜きなど、口に入る用途 |
| 工業用 | 「掃除用」「工業用」 | 換気扇、コンロ、鍋の焦げ、消臭 |
| 表示がないもの | 規格の記載なし | どの規格かを袋から読み取れません |
ここで大事なのは、3つのどれにも「動物の体を洗う」という用途は書かれていないということです。薬用も食品添加物も、規格としては純度の話をしているだけで、犬の皮膚に使ってよいという意味にはなりません。純度が高いことと、その用途に向いていることは別の話です。だから「薬用の重曹なら犬を洗ってもいい」という読み方も成り立ちません。
そして、3つのどの袋にも書かれていないものが1つあります。体に使うときの濃度です。掃除用の袋には「水200mlに小さじ1」といった目安が書かれていることがありますが、それは油汚れを落とすための目安であって、犬の皮膚を洗うために決められた数字ではありません。目安の出どころが違う数字を、そのまま体に持ち込むことになります。
クエン酸は重曹の反対側にあります|pHの位置と、混ぜたときに出る音の正体
クエン酸は、柑橘類などに含まれる酸の名前です。粉のまま売られていて、水に溶かすと酸性の液体になります。重曹を水に溶かすとアルカリ性寄りの液体になるので、この2つはpHの反対側に立っています。掃除でこの2つがセットで売られているのは、汚れの側にも酸性寄りのものとアルカリ性寄りのものがあるからです。
pHは、酸性かアルカリ性かを0から14の数字で表したものです。7が中性で、それより小さければ酸性、大きければアルカリ性になります。pHは強い・弱いの順位ではなく、どこに位置しているかを表す座標です。だから「クエン酸は酸だから体に悪い」という読み方も、「重曹は自然のものだから安心」という読み方も、どちらも位置の話を強さの話にすり替えています。
| 水に溶かしたときの位置 | 掃除で向けられている相手 | |
|---|---|---|
| 重曹 | アルカリ性寄り | 油、皮脂、こげつきなど酸性寄りの汚れ |
| クエン酸 | 酸性寄り | 水あか、石けんかすなどアルカリ性寄りの汚れ |
| 水道水 | おおむね中性 | ― |
この2つを一緒に水へ入れると、シュワシュワという音が立ちます。あの音の正体は二酸化炭素の泡です。酸とアルカリが出会って中和が起き、そのときに気体が出ます。掃除では、この泡が汚れを持ち上げる働きに使われます。ただし、中和が起きたということは、重曹のアルカリ性もクエン酸の酸性も、そこで打ち消し合っているということでもあります。
だから、犬を洗うために「重曹とクエン酸を混ぜてから使う」という手順には、二重の意味で条件がありません。混ぜる前のそれぞれの濃度も決まっていませんし、混ぜたあとに何がどれだけ残っているかも家では分かりません。音が出たかどうかで、できあがったものの性質は測れません。洗うために使う液体としては、中身が確かめられない状態になります。
泡は目に見えるので、何かが起きたという手ごたえになります。ただし、泡の量と、汚れが浮いた量は同じものではありません。掃除でも、泡が立たない洗い方で落ちる汚れはあります。犬を洗う話で「音が出たからよく働いている」と読むと、そこから濃度の話が抜け落ちます。見るのは音ではなく、使っているものに濃度が書いてあるかどうかです。
「濃度が決まっていない」というのが、この疑問のいちばん奥にあります
重曹やクエン酸で犬を洗っていいのかという疑問は、たいてい「安全か危険か」という形で立てられます。ところが、その形では答えが出ません。安全か危険かは、濃度が決まってはじめて言える話だからです。濃度が決まっていないものについては、安全とも危険とも言えません。この記事が「やめておいてください」と答えているのは、その言えなさのほうを指しています。
体に使うものとして売られている液体には、たいてい濃度が決まっています。何をどれだけ含んでいるか、そのままで使うのか薄めるのかが、製品の側で固定されています。固定されているから、使う人が変わっても、日が変わっても、同じものが出てきます。粉を自分で溶かす方法には、この固定がありません。
- その日の気分で濃さが動く:汚れが気になる日ほど濃く溶かしたくなります
- 計量の道具が家ごとに違う:小さじ1杯の量は、すりきりか山盛りかで変わります
- 溶け残りが分からない:溶けきっていない粒が、毛の中に残ることがあります
- 作り置きの状態が読めない:溶かした液体をいつまで使えるかは、袋に書かれていません
- 2回目が1回目と同じにならない:前回と比べるための記録が手元に残りません
最後の1つが、実際にはいちばん困ります。犬の体に何かを使ったあとで様子が変わったとき、何を使ったのかを再現できないと、切り分けができません。製品なら「これを使いました」と持っていけます。自分で溶かした粉は、濃さも量も記録に残っていないことがほとんどです。動物病院で相談する場面になったときに、伝えられる情報が減ります。
重曹はもともと食品にも使われているので、犬を洗うのに使っても安全です。この書き方が成り立たないのは、ここが理由です。食品に使われているのは、決められた量を、決められた用途で使ったときの話です。量と用途が外れたところに、もとの表示は付いてきません。
用途表示を読む|掃除用のものが想定している相手は、床とやかんです
袋の裏には「用途」という欄があります。掃除用の重曹なら、換気扇、コンロまわり、鍋の焦げ、生ごみの消臭。クエン酸なら、電気ケトルの水あか、シンク、蛇口。この欄に書かれているのが、その製品が想定している相手です。犬を洗う話をするときに、まず読むのはここになります。
想定している相手が違うと、何が変わるのか。3つあります。ひとつ目は、すすぎの前提です。掃除では、拭き取るか、流すかで終わります。相手が平らで、表面しかありません。犬の体には被毛があり、毛は重なっています。同じ量をかけても、残る場所が生まれます。
| 条件 | 掃除用が前提にしている相手 | 犬を洗うときに起きること |
|---|---|---|
| 表面の形 | 平ら。届かない場所がない | 毛が重なり、脇や内股に液が残りやすい |
| すすぎ | 拭き取るか、水で流して終わり | すすぎ残しが毛の内側に残る |
| 乾くまで | 空気にさらされて短時間で乾く | 地肌まで乾くのに時間がかかる |
| 痛みの合図 | 相手は何も言わない | しみても本人からは伝えられない |
| なめる可能性 | 想定されていない | 乾いたあとに自分でなめる場所がある |
| やり直し | 気になれば何度でも洗える | 洗う回数を増やすほど条件が増える |
ふたつ目は、なめることです。掃除用の製品は、相手がなめることを想定していません。犬は、洗って乾いたあとに前足や体をなめます。用途表示に動物が書かれていない製品は、なめる量を計算に入れていない、ということでもあります。これは製品の欠点ではありません。想定していない使い方をされたときのことまでは、表示に書きようがない、というだけの話です。
みっつ目は、洗ったあとの時間です。掃除の相手は、洗い終わった時点で話が終わります。犬の体は、洗い終わってからが長い。濡れた状態が続き、乾かす作業があり、その日の夜まで続きます。洗う瞬間だけを比べて選ぶと、この長さが抜け落ちます。
「犬に使っても大丈夫」と書かれているのを見たときに、確かめる3つ
重曹やクエン酸で犬を洗う方法は、いろいろな場所で紹介されています。「大丈夫」と書かれているものもあれば、「やめたほうがいい」と書かれているものもあります。どちらが正しいかを外から判定するのは難しいので、確かめる場所のほうを決めておきます。3つだけです。
-
濃度が書いてあるか
「水◯mlに小さじ◯杯」という記述があるかどうかではありません。その数字が、動物の体に使うために決められた数字かどうかです。掃除の目安をそのまま転記したものは、根拠の出どころが違います。数字の出どころが書かれていないときは、濃度は決まっていないものとして扱ってください。
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用途に動物が書いてあるか
手元の袋の「用途」欄に、犬や猫が入っているかを見ます。入っていなければ、その製品はその使い方を想定していません。これは家で、袋を裏返すだけで確かめられます。成分表を読み解く必要はありません。
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誰の判断で使うことになるか
製品として濃度と用途が決まっているものは、判断の一部が製品の側にあります。粉を自分で溶かす方法は、濃さも回数も全部が使う人の判断になります。判断が全部こちらにあるということは、うまくいかなかったときに切り分ける材料も、全部こちらで用意する必要があるということです。
この3つで「大丈夫」と言い切れる形になるものは、掃除用の重曹とクエン酸の中にはありません。だから、答えとしては「掃除用のものを体に使わない」で止まります。ほかのやり方を否定しているのではなく、この3つを通せるかどうか、というだけの線です。
重曹やクエン酸で犬を洗ってしまったあとに、この記事を読んでいることもあると思います。あわてて洗い直さないでください。洗う回数を増やすと、条件がもう1つ増えます。見るのは48時間です。同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、かさぶたが出た、毛を気にしてかく回数が増えた、においが変わった。こうした変化があるときは、拭き取りを増やす前に動物病院にご相談ください。そのとき「何を、どれくらいの濃さで、どこに使ったか」を伝えられると切り分けが早く済みます。分からない部分は、分からないままで構いません。
洗う手順よりも先に知りたいのは、乾かすところです|シャンプーとタオルの話
何で洗うかを決めたあとに、たいてい抜けるのが乾かす手順です。犬を洗う作業でいちばん時間がかかるのは、洗っている時間ではなく、乾き終わるまでの時間です。ここを先に決めておくと、洗う日そのものを短くできます。
犬用として売られているシャンプーは、犬の皮膚と被毛を前提に設計されています。用途に動物が書かれていて、そのまま使うのか薄めるのかも決まっています。この記事で言っている「濃度と用途が表示されているか」を、そのまま満たしているのがシャンプーです。どのシャンプーを選ぶかは、その子の皮膚の状態によって変わるので、迷うときはかかりつけで相談してください。
| 手順 | 実際にかかる時間の目安 | つまずきやすいところ |
|---|---|---|
| ぬるま湯で全身を濡らす | 3〜5分 | 毛の内側まで湯が入るのに時間がかかります |
| 洗う | 5分前後 | 脇と内股は最後に回りがちです |
| すすぐ | 洗った時間の2倍 | 残りやすいのは、洗いにくかった場所と同じです |
| タオルで水を移す | 5分 | こするのではなく、押し当てて水を移します |
| 乾かす | 20〜40分 | 地肌が乾いたかどうかは、指を入れて確かめます |
| 落ち着くまで | その日の夜まで | 洗った日は、いつもと違う場所で寝ることがあります |
タオルの使い方だけ、少し具体的に書きます。こすらずに、押し当てて離す。これを場所を変えながら繰り返します。こする動きは毛をからませ、からんだところは乾きにくくなります。タオルで移せる水の量が多いほど、そのあと乾かす時間が短くなります。ここが短くなると、洗う日そのものの負担が下がります。
乾かすときは、地肌の温度を手で確かめながら進めてください。毛の表面が乾いていても、地肌が湿ったままのことがあります。指を毛の中に差し入れて、根元が冷たく感じないか。これが家でできる、いちばん簡単な確認です。洗う手順を工夫するより、ここを見るほうが結果として早く終わります。
洗わない日に手元でできることと、答えを3つの文にたたむ
犬を洗う回数は、そんなに多くありません。月に1〜2回という家が多く、季節や皮膚の状態によってはもっと少なくなります。ということは、1か月のほとんどは「洗わない日」です。重曹やクエン酸で洗う方法を探している人が本当に困っているのは、多くの場合この洗わない日のほうです。
洗う日と洗う日のあいだに手元でできるのは、水を使わずに体の表面を整えることです。mofuwaのグルーミングスプレーは、薄めずにそのまま使う形で中身が決まっています。用途に犬と猫が書かれていて、濃度も製品の側で固定されているので、この記事で見てきた2つの表示を、両方持っていることになります。中身は電解水で、布に含ませて足の裏から順に一往復させると、汚れの原因になる脂と混ざり合って布のほうへ移ります。散歩から帰ったあと、ブラッシングの前に。
粉を溶かす方法でいちばん困るのは、2回目が1回目と同じにならないところでした。グルーミングスプレーは、今日かけた液と来月かけた液が同じです。だから、皮膚の様子が変わったときに、容器をそのまま持っていって「これを使いました」と言えます。何を使ったのかが手元に残る、という一点だけでも、粉を自分で溶かす方法とは条件が違います。
最後に、この記事の答えを3つの文にたたみます。ひとつ、掃除用として売られている重曹やクエン酸で、犬を洗うのはやめておく。ふたつ、理由は成分の強さではなく、濃度が決まっていないこと。みっつ、体に使うものは、濃度と用途が表示されているかどうかで選ぶ。この3つだけを持ち帰ってもらえれば、袋を裏返すだけで判断できるようになります。
| 見る場所 | 何が書いてあれば通るか | 書いていないときの読み方 |
|---|---|---|
| 用途の欄 | 犬、猫、ペットのいずれか | その使い方は想定されていません |
| 使い方の欄 | そのまま使うか、薄めるかが固定されている | 濃度は使う人が決めることになります |
| 規格の表示 | 薬用・食品添加物・工業用のいずれか | 純度の話であって、用途の話ではありません |
| 保管と期限 | 開封後どれくらいで使い切るか | 溶かした液体の期限は、家では分かりません |
何で洗うかという疑問の手前に、皮膚の状態があります。赤み、かさぶた、脱毛、においの変化、同じ場所をなめ続ける、かく回数が増えた。こうした変化があるときは、洗い方や洗うものを家で変えるより先に、動物病院にご相談ください。洗う頻度を変えたばかりのタイミングだと、変化の出どころが分かりにくくなります。いつから、どこに、何を使ったか。この3つをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
