C12Q&A・豆知識

犬の耳道はL字型。だから湿気がこもる

公開日 2021年8月27日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色のブランケットの上に落ち着いて伏せている淡い色の犬
外から見えているのは、耳道のうち垂直な部分の入り口までです。写真:https://kaboompics.com//Pexels

犬の耳の穴をのぞきこんでも、途中から先が見えなくなります。そこで通り道が一度折れていて、その先が視線から外れるからです。犬の耳道は、耳の入り口から下へ向かう垂直の部分と、そこから内側へ向かう水平の部分が続く、L字型の構造になっているとされています。比べる相手は人の耳道です。人の耳道はほぼまっすぐで、外から奥まで一本の道になっています。この形の違いが、そのまま「入ったものが自然には出てこない」という条件になります。水も、湿った空気も、いったん水平の部分へ入ると、重力だけでは戻ってきません。この記事では、犬の耳の構造を人の耳と並べて比較しながら、L字型という形が毎日のケアにどう関わるかを書きます。耳の中を掃除する方法や、道具の入れ方は書きません。そこは家で決める話ではないからです。書くのは、形の話と、外から見て分かることだけです。

犬の耳の構造は、どこで折れているか|L字型という形が指しているもの

犬の耳の構造を、外側から順に並べます。まず、外から見えている耳たぶの部分。次に、そこから下へ向かって落ちていく垂直な部分。そして、途中で向きを変えて内側へ進む水平な部分。この2つがつながって一本の通り道になっているので、全体としてはL字型に近い形になります。

「L字型」というのは、模式的な言い方です。実際には角がきれいに直角に折れているわけではなく、ゆるやかに曲がっているとされています。大事なのは角度そのものではなく、通り道が途中で一度向きを変える、という構造のほうです。この記事でも、角度を数字で言い切ることはしません。犬は体格の幅が広く、1つの数字にまとまらないからです。

長さについても、条件つきで書きます。犬の耳道は、垂直の部分と水平の部分を合わせると、人の耳道より長いとされています。ただし、体格によって差が大きいので、センチ単位の数字を1つに決めることはできません。一般に言われているのは「人より長く、しかも途中で折れている」という関係のほうです。

犬の耳道を、外側から順に並べる
位置呼び方の目安外から見えるか
いちばん外耳たぶ(耳介)見えます
その内側耳道の垂直な部分入り口だけ見えます
折れたあと耳道の水平な部分見えません
いちばん奥鼓膜のある側見えません

ここで押さえておきたいのは、飼い主が外から見えているのは、この4つのうち上の2つだけだということです。耳の入り口をのぞきこんで「きれいだった」と思えたとしても、それは垂直な部分の入り口についての観察です。折れた先のことは、外からは分かりません。この構造が、家でできることの範囲をそのまま決めています。

2つの軸で見る|「途中で曲がるかどうか」と「乾くまでの距離」

犬の耳の構造を人と比較するときに、見る軸を2つに絞ります。1つ目は、通り道が途中で曲がるかどうか。2つ目は、入った水分が乾くまでにどれだけの距離を戻る必要があるか。この2つで並べると、形の違いが暮らしの話につながります。

1つ目の軸から見ていきます。人の耳道は、外から奥までほぼまっすぐで、途中で大きく向きを変えません。だから、水が入っても、頭を傾けるだけで重力にしたがって出てきます。犬の耳の構造では、この「重力にしたがって出る」が途中で止まります。水平な部分に入ったものは、下に向かって落ちる先がありません。頭を傾けても、折れ目より奥のものはその位置にとどまります。

2つ目の軸は、乾き方です。湿ったものが乾くには、水分が空気に触れて外へ抜けていく必要があります。まっすぐな通り道なら、外の空気が奥まで届きます。L字に折れた通り道では、折れ目から先の空気が入れ替わりにくくなります。だから、犬の耳の構造は、いったん湿ると乾くまでに時間がかかる側にあります。これが「湿気がこもる」と言われるときの中身です。

2つの軸で、人と犬の耳道を並べる 通り道が途中で曲がるかどうかと、入った水分が乾くまでにどれだけ戻る必要があるか。この2つの軸で並べます。 優劣ではなく、通り道の形の違いです 人の耳道 ほぼまっすぐ 外から奥まで一本 水は傾けると出る 外の空気が届きやすい 乾くまでが短い側 犬の耳道 途中で一度折れる 垂直部と水平部が続く 折れ目より奥は落ちない 空気が入れ替わりにくい 乾くまでが長い側
形が違うので、同じ出来事が起きても、そのあとの経過が変わります。

この2つの軸は、どちらも構造から出てきます。湿気がこもりやすいのは、耳が汚れているからでも、ケアが足りないからでもありません。通り道の形がそうなっているから、というだけの話です。ここを取り違えると、「もっときれいにしなければ」という方向へ手が動いてしまいます。形の話は、手の入れ方ではなく、水を入れない工夫のほうへつながります。

Noteこの記事では、耳の中に何かを入れる話をしません

犬の耳の構造がL字型だと分かると、「奥まで届かせるにはどうするか」という発想が出てきます。この記事では、その方向の話は書きません。耳道の奥は外から見えず、鼓膜との距離も外からは測れないからです。家で判断できる範囲を超えます。耳の中をどう扱うかは、動物病院で診てもらったうえで決める話になります。ここで書けるのは、形の説明と、外から見て分かることまでです。

人と犬の耳を並べる|構造の比較と、湿気のこもり方がどう変わるか

2つの軸が決まったので、比較表にします。ここでの比較は、どちらが優れているかという話ではありません。形が違うと、同じ出来事が起きたあとの経過が変わる、という話です。人の感覚をそのまま犬に当てはめると、この経過の違いが抜け落ちます。

人と犬の耳道の構造を、6つの項目で比較する
項目人の耳道犬の耳道
通り道の形ほぼまっすぐ垂直な部分と水平な部分が続くL字型
外から見える範囲入り口から少し奥まで垂直な部分の入り口まで
水が入ったとき頭を傾けると重力で出やすい折れ目より奥は、傾けても落ちない
空気の入れ替わり外の空気が届きやすい折れ目より奥は入れ替わりにくい
乾くまでの時間短い側長い側
本人が伝えられるか違和感を言葉にできる首を振る、こする、といった動きで出る

表の3行目と4行目が、この記事の中心です。L字型の構造だから、入ったものが自然には出てこない。そして、出てこないものは、そこで乾くのを待つことになります。水そのものだけの話ではありません。湿った空気も、シャンプーのときに飛んだしぶきも、雨に濡れた日の水分も、同じ条件に置かれます。

だから、犬と暮らす家で構造の知識が役に立つのは、耳の中をどうするかではなく、耳の中に水を入れないためにどうするかという側です。体を洗うときに顔まわりをどう扱うか。雨の日に帰ってきたあと、被毛の水分をどこまで拭き取るか。乾かすときに、耳のまわりを最後に残さないこと。手が届く場所は、耳の中ではなく耳のまわりです。

皮膚の話も1つ足しておきます。耳道の内側も皮膚です。体の表面の皮膚と地続きになっているので、湿った状態が長く続けば、皮膚としての条件も変わります。ただし、そこで何が起きているかを外から判断することはできません。構造の話から言えるのは、条件が変わりやすい場所だ、というところまでです。

立ち耳と垂れ耳、どっちを基準に毎日のケアを組み立てるか|選び方の線

耳の構造の話をすると、次に出てくるのが「うちの子は垂れ耳だから」という話です。先に線を引いておくと、L字型という構造そのものは、立ち耳でも垂れ耳でも共通しています。耳たぶが立っているか垂れているかは、耳道の入り口にふたがかかっているかどうかの違いです。折れ目から先の形が変わるわけではありません。

では、どっちがより湿気を抱えるのか。耳たぶが入り口をおおっている状態のほうが、空気の入れ替わりは少なくなります。これは形から言えることです。ただし、そこから「垂れ耳は問題が起きやすい」と一足飛びに読むのは、話を1段飛ばしています。実際に何が起きるかは、被毛の量、その日の湿度、体を洗う頻度、そのほかの条件が混ざって決まります。

立ち耳と垂れ耳を、構造の側から比較する
項目立ち耳垂れ耳
耳道の形L字型L字型(同じ)
入り口のふた開いている耳たぶがかぶさっている
空気の入れ替わり起きやすい側起きにくい側
外から見える範囲入り口が見えるめくらないと見えない
毎日のケアで見る場所入り口のまわりめくったところと、そのつけ根
湿った日の乾き方早い側遅い側

毎日のケアの選び方としては、どっちであっても見る場所は同じで、見る回数が変わると考えるのが実際的です。立ち耳なら通りがかりに入り口が目に入りますが、垂れ耳は自分でめくらないと見えません。つまり垂れ耳の子では、「見る」という動作を毎日の中に予定として置く必要があります。構造が違うのではなく、観察のきっかけが自然には来ない、という違いです。

毎日のケアの中身についても、選び方を1つ。耳のまわりのケアは、耳ではなく被毛と皮膚のケアとして組み立てます。耳のつけ根から首にかけての被毛は、水分が残りやすく、乾きにくい場所です。ここを乾いた状態に保つことは、耳の中へ手を入れずにできることの中では、いちばん距離が近い作業になります。

その子が自分の耳のまわりにできるのは、後ろ足でかくことと、頭を振ることの2つだけです。どちらの動きも、耳のつけ根の被毛が湿ったままかどうかを変えません。乾いた側に戻す作業だけは、人の手が引き受けることになります。ここで使う mofuwa スキンケアミストは、中身が電解水だけで、オイルも香料も入っていません。乾くまでの距離が長い通り道のすぐ手前を扱う場所なので、当てたあとに膜も香りも残らないことが、そのまま選ぶ条件になります。布に取ってから、耳のつけ根から首へ、毛の流れどおりに一往復。垂れ耳の子なら、めくって見る予定を1日のどこかに置いた、そのついでにやってしまうのが早いです。耳の中には入れません。毎日のケアとして手が届くのは、耳のまわりの被毛を乾いた側に置いておくところまでです。

耳に触らずにできる見分け方と、3つの記録

最後に、構造の話を家での見分け方へたたみます。犬の耳はL字型なので、中を見て判断することができません。だから見分け方は、耳の中ではなく、その子の動きと、耳のまわりから取ります。触らなくても取れるものだけを並べます。

  1. 首を振る回数を数える

    1日のうちに、頭を大きく振る動作が何回あったかを数えます。数えるのは回数だけで、原因は考えません。ふだんが何回かを知っておくと、変化したときにすぐ分かります。回数は、耳の中を見なくても取れる数字です。

  2. 左右のどちらを気にしているかを見る

    後ろ足で耳のまわりをかく、床や家具に頭をこすりつける。そのとき左右のどちらが多いかだけを見ます。片側に偏っているかどうかは、動物病院で伝えたときに意味を持つ情報です。耳をめくって覗きこむ必要はありません。

  3. 耳のまわりのにおいと、被毛の湿り方を見る

    耳の中へ鼻を近づけるのではなく、耳のつけ根の被毛の状態を見ます。乾いているか、湿っているか。湿った状態が何日続いているかは、家でしか分からない情報です。ここも、触らずに目と鼻で取れます。

この3つは、そのまま動物病院で渡せる記録になります。いつから、何回、どちら側。耳の構造上、外から見えないぶん、家で取った経過の記録が診察のときの手がかりになります。逆に、家で耳の中をいじってしまうと、その状態が変わってしまい、診るときの情報が減ります。触らないほうが、結果として渡せるものが多くなります。

動物病院に渡す3つの記録
記録書き方の例なぜ役に立つか
いつから3日前の夜から経過の長さが分かります
何回1日に5〜6回、頭を振るふだんとの差が分かります
どちら側右ばかり気にしている左右差があるかどうかが分かります
直前にあったこと2日前に体を洗った/雨に濡れた水分が入る機会があったかが分かります
耳の中に入れたもの何も入れていない状態がそのまま保たれているか分かります

犬の耳の構造をL字型として知っておくことの、いちばん実用的な使い道は、ここだと思います。見えないと分かっているから、見ようとせずに、外から取れるものを記録する。構造の知識が、手を入れる理由ではなく、手を止める理由になります。

Caution耳を気にする様子が続くときは、動物病院にご相談ください

頭を振る回数が増えた、片側ばかりかいている、耳のまわりが赤い、においが変わった、触ろうとすると嫌がる、耳を下げたままにしている。こうした様子が続くときは、家でのケアを増やす前に動物病院にご相談ください。犬の耳の構造は外から見えないので、様子が変わった理由を家で切り分けることはできません。上の3つの記録を持っていくと、その場で確かめてもらえます。耳の中に何かを入れてから受診すると、そのぶん分かりにくくなります。

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よくある質問

犬の耳の構造がL字型だというのは、どの犬にも当てはまりますか
耳道が途中で向きを変えるという構造は、犬に広く共通しているとされています。ただし、折れ方の角度や耳道の長さには体格による差が大きく、数字で言い切れるものではありません。この記事でセンチや角度の数値を出していないのは、そのためです。立ち耳か垂れ耳かで変わるのは耳たぶのかぶさり方で、耳道の形そのものではありません。
人の耳掃除と同じ感覚で、犬の耳を掃除してもいいですか
この記事では、耳の中の扱い方について方法を書きません。人の耳道はほぼまっすぐで、外から見える範囲も犬とは違います。犬の耳は途中で折れているため、外から鼓膜までの距離も見当がつきません。どこまで触れてよいかは、その子の耳を実際に診た上で決まる話です。かかりつけの動物病院で確かめてください。
耳の中が湿っているかどうかは、家でどうやって見分けますか
耳道の中は外から見えないので、中の湿り具合を家で見分けることはできません。家で取れるのは、耳のつけ根の被毛が湿っているか、頭を振る回数が増えていないか、左右のどちらを気にしているか、という外側の情報だけです。この3つを日付つきでメモしておくと、受診したときにそのまま渡せます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。